カイと結が異世界へと飛ばされた次の日。
結は同じベッドで寝ていたカイを起こさないように起きると、着替えてIS学園を探索していた。ついでにエリアも起きてきたので一緒である。ルイとルカはまだ寝ている。
その姿は昨日のアカデミアの服装から、IS学園の制服(楯無の物を借りた)に着替えており、一応変装みたいなものとして昨日と同じ伊達メガネに、髪を少し髪留めでまとめ髪型を変えている格好をしていた。
「流石に国立というだけあって設備がアカデミアに匹敵するわね」
アカデミアを運営しているのは世界でもトップクラスの企業、海馬コーポレーション。その財力は国家の資金に匹敵するのだ。
『でも、これって税金でできてるんでしょ?』
「そうよ~」
『兵士を育成するために税金を払うなんて、この世界は大変だね~』
「そうね~」
結とエリアは感心しているのか、呆れているのか、わからないことを言いあいながら学園の廊下を歩いていると、1人の生徒が目に入った。
誰もいない廊下に1人でいたからこそ、すぐに見つかったのだろうが結はたとえここが混雑した都心の大通りだろうがすぐに見つけられたという自信があった。
『あ!あれって』
エリアの言葉よりも早く、結は地面にかがんで構える。腰を少し高く上げて、勢いよく飛び出す。俗にいうクラウチングスタートだ。
『ちょ、ちょっと、結?まさか…』
そのまま目標めがけて…
「か~~ん~~ざ~~し~~ちゃ~~~ん!!!!」
「え?きゃああああ!!!!???!!」
跳びかかった。
「簪ちゃん!?もう会えないかと思っていたよー!!」
「きゃああああああ!!!??」
「こっちの世界の簪ちゃんだってわかっている!わかっているの!でもでもでもでも!!」
「いやああああああ!!!??」
「最近生徒会の仕事で補充できなかった簪ちゃん成分を補充したいの!だからもっともふらせて、触らせて、撫でさせて!!」
「いやあああああああ!!!!!」
抱きつき、全身を撫でまわし続ける結に簪は遂に、自身の専用機『打鉄弐式』を展開し、
「ごぶう!!??」
結を思いっきり吹っ飛ばした。
『あ~あ。自業自得だね』
「あ?あ、あ、あわわわわ!!??」
しばらくして、自分の行ったことによる惨状(ISで殴られて数メートル先で横たわっている結)に気が付きテンパる簪と、呆れたように溜息を吐くエリアの姿がそこにはあった。簪の様子を満足そうに結は見つめながら、気を失ったふりをしていた。
しかし、いつまでもその時間は続かない。
「か~~ん~~ざ~~し~~ちゃ~~~ん!!!!!!!」
もう1人のシスコンもといこっちの世界の簪の姉更識楯無が突っ走ってきた。ちなみにその後ろから『仕事を放り出すんじゃねぇ楯無コラァァァ!!!!!』とおまけもとい生徒会役員の仭が仕事を放ってきたらしい楯無を追いかけて来ていた。
「仕事しろ!何抜けだしてんだ!!俺や虚さんとて朝早くからからがんばってんだぞ!!」
「何やってんのお姉ちゃん!?っていうかなんで2人いるの!?!!」
「簪ちゃーーーーん!!だ~~いじょ~~ぶ~~~~!!!??」
「聞けぇ!!!!!!」
返事がない。シスコンモードが発動しているようだ。おそらく先ほどの簪の悲鳴が原因だろう。
仭はどうする?
→選択肢
1:ISを展開する
2:閃光手榴弾を投げる
3:織斑先生を呼ぶ
「4:追いかけるのを諦める!」
「何言ってんだ!?よくわからんがお前が諦めろ!!そして仕事しろ!!」
「簪ちゃんの方が大事!!!」
「5:ライダァァァキィーック!!」
「ぐはぁ!?」
面倒になった仭は強行手段で飛び蹴り(上履きは脱いでる)。それは見事に楯無の脳天に直撃し、女子らしかぬ声を上げさせ、動きを止める。
「からの6:フライング・レッグ・ラリアート!」
「ごはぁ!?」
そしてそのまま回し蹴りを放って結の方へと飛ばす。
「「…え?」」
そして楯無は結へと激突。頭からぶつかり合った2人は気絶した。
「…やば、やりすぎた」
「やりすぎたじゃないよ!?」
誰もいない廊下に簪の叫びが響いた。
『どこの世界でも、結は結だね』
ついでに、エリアの呟きも。
*
「…う~ん…ここは?」
「あれ?簪ちゃんは?」
「気が付いたか」
結と楯無が目を覚ますとそこは保健室。そしてカーテンを開けて仭が話しかけてきた。傍らには簪が椅子にちょこんと座っている。
「私…いったい…」
「覚えてないか?お前達は簪巡って突っ込んできて、お互いに頭を激突し合って気絶したんだぞ?」
当然そんなことはないが、仭は事実をごまかそうとする。
「ああ…」
「そうだったわね…」
「「ってそんなわけないでしょ!!あなたのせいだったじゃない!!」」
「ちっ…」
無論、そんなことでごまかされる更識家当主たち(もう片方は時期だが)ではなかった。
「で、一体何があったんだ?」
まずは楯無。
「簪ちゃんの悲鳴が聞こえたから、駆け付けたのよ」
「あそこから生徒会室までどれだけ距離があると思っている!?そんな声聞こえるわけないだろ!?」
「ふふふ、甘いわね。私にとっては簪ちゃんの声なんて、例え、1キロ離れていても手に取るようにわかるわ!」
「威張るな!そしてそれはもはやストーカーだ!」
「あいた!?また、私の頭を~」
「え!?ストーカーなの!?」
「お前もか!!」
次に結。
「簪ちゃんを見かけたから、思いっきりもふったわ」
「いや、何してんだ?!ただの変態行為だろ?!それ」
全く悪びれていない結に仭は全力で突っ込む。
「だってだって!最近、卒業式の後片づけや夏休みに入る前に、残りの仕事を終わらせるためにずっと生徒会室で仕事していたのよ?!その間、簪ちゃんには会いに行けないし、会いに行けたとしても、2人きりなることができなかったの!この苦しみがあなたに分かる?!」
「わからねえよ!?」
「私はわかるわ!」
「お前は少し黙っていろ!」
2人の言葉に、柄にもなく声を張り上げて突っ込む仭。簪は、息ぴったりで、仭をおちょくっている楯無と結を複雑そうな顔で見てる。
そんな言い争いをしていると、保健室のドアが開き、
「…来たぞ」
カイが入ってきた。
「来てくれたか、カイ。この2人の相手は死ぬほど疲れる…。後を頼む」
仭の憔悴したような姿と、ベッドの上にいる結と楯無。そして椅子に座って、こちらを少し警戒しながら見ている簪をみて大体の状況を理解し、
「…よくやった」
そうねぎらう。
「…ありが、とう」
カイのねぎらいの言葉に、仭は少し涙ぐみながら礼を口にし、保健室を出て行った。どうやら彼といえども、2人になった人たらし&シスコンには勝てないようだ。
仭が退席した後、カイはとりあえず、結の口を手でふさぐ。
「む!?」
「…少し、黙っていてくれ」
そう言った後、結の耳元に口を寄せ、
「今夜、たっぷりと付き合ってやる」
その言葉に、結は顔を赤くし、コクコク、と頷く。
それを確認した、カイは手を放す。
「プハッ」
息を吐く結。その顔は少し紅くなっている。これはカイが最近見つけた、結を大人しくさせる方法で、しばらく結はカイの言葉に酔った状態となる。
それを、この世界の更識姉妹は顔を赤くして見ていた。簪に至っては、真っ赤である。
「で、何があった?」
カイは3人から事情を聴き、
「あ~、悪かったな。こいつは最近かなりストレスがたまっていたんだ。もう暴発しないように俺が見ておく。だから許してやってくれないか?簪、楯無」
「は、はい」
「まあ、許してあげるわ」
カイの言葉にひとまず、この場は収まった。
「…で、だ。簪、俺と結のことは聞いているのか?」
「…うん。さっき、仭に説明してもらった」
「そうか。まあ、しばらく厄介になる」
「う、うん」
カイと簪が挨拶していると、さっきのカイの言葉の効き目が切れたのか、結が顔を出して、
「私のことは、もう1人のお姉ちゃんだと思ってくれてかまわないわよ♪」
そう言うが、簪は少し、離れる。
「あ、あれ?いつもなら、ここで抱きついてくるのに?」
「結。世界が違えば、人も違う。彼女は俺たちが知っている簪じゃない」
カイの言葉はもっともだ。結もそれにすぐに納得した。
「ふ~ん。すこーし気になるわね」
2人の会話の中に気になることがあったのか、楯無が身を乗り出してくる。
「ねえ、ねえ?そっちの簪ちゃんってどんな子なの?」
楯無の疑問ももっともである。簪も別世界の自分のことは気になるのか、聞きたそうだ。
「そうね~。勧善懲悪のヒーロー物語なんかが好きね」
「あら?それは簪ちゃんも一緒よ」
楯無の言葉に簪もうなずく。
「そうゆうのが好きだから、デッキもE・HEROを中心としたHEROデッキね。十代君とは出会ってすぐに意気投合しちゃって、いまじゃあ、ほとんど一緒にいるわね」
「へ~。あっちの私は、HEROデッキなんだ。私と少し、違う」
「…簪もデュエルモンスターズをするのか?」
「うん!」
「じゃあ、後で私とやってみない?向こうじゃ、最近、授業とか生徒会の仕事であまりやってないのよ」
「うん。やる!」
結と仲よさげに話す、簪。そんなふたりを楯無は少し、うらやましそうに見ている。
「…やってみるか?遊戯王」
「教えてくれるの!?」
カイの言葉に食いつく楯無。
「…時間があればな」
「ありがとう!(これで簪ちゃんと仲よく遊べる)」
楯無は、うれしさのあまりカイに少し抱きつくが自分が何をしているのかすぐに気付き顔を少し赤くして離れる。幸い、結は簪と話していて、みていなかった。
2人の話が終わるのを見計らって、カイはもう1つ、向こうの簪の特徴を言う。
「あとは、シスコンだな」
「「え?」」
その言葉が意外だったのか、更識姉妹が少し、戸惑いを含む声をあげる。シスコンとはどちらかといえば、結だと思っているからだ。
「普段は、押さえられているが結のことがかなり大好きな奴でな。クリスマスに結の布団に入ってきたり、お弁当をたまに作って持ってくることもあるぞ」
「あはは。う~ん、まあ、最近は少し、落ち着いて来て、そう言うのは十代君の方にいっているかな~」
続けられた言葉に、さらに驚く2人。
「どうしたのそんなに驚いて?」
「い、いえ。少し、意外でね」
「意外?」
「…わたしは、最近までちょっと…」
「あまり仲が良くなかったというか、ね」
「…少し、聞かせてもらえる?」
「「…うん」」
そこから2人は、ポツリポツリと話し始めた。
優秀だった楯無と、それをいつも比べられていた簪は、次第に楯無と距離を取るようになり、そんな妹とどう接したらいいかわからなかった楯無も、仲良くしたいけれど、どうすればいいのかわからなかった。
最近、仭や一夏達のおかげでやっと仲直りで来て、以前のように戻れたという。
「あ~、なるほどね~。私が思うに、更識家の違いと、私と簪ちゃんの過去の違いだね」
「どういうこと?」
結の言葉に楯無は聞き返す。
「私の世界の更識家は多種多様な人材を輩出、国に貢献してきた家でね。私は、次期当主にふさわしい、カリスマ性を見出され、そういう教育を受けてきたわ。一方、簪ちゃんは、そう言う能力はなかったけど、電子機器を扱わせたら、右に出る者はほとんどいないっていう才能を見出されたの。だから、幼いころから、そこを重点的に伸ばして、私以上の能力を身に着けたのよ。なにせ、私が教えてもらうほどだったんだから」
「そ、そんなに?」
結の言葉が信じられないのか簪が聞き返す。
「本当よ。だから、あの子は私に対する劣等感なんて持っていなかったのよ」
結の世界の更識家はその役目から、いろいろな才能を見出さねばならない。それが図らずも、姉妹中が悪くならないように一役買っていたのだ。
「それから、あのこともあるわね」
「あのこと?まだあるの?」
「うん。私の世界の簪ちゃんってさ、少し、変わった力があるの」
「変わった…」
「ちから?」
「うん。カードを実体化させるっていう力がね。その力のせいでデュエルをした相手を傷つけちゃったことがあったんだ」
「「!?」」
「そして、簪ちゃん、引きこもっちゃったんだけどね。私が無理やり引っ張って、何とか立ち直らせたの。その時に、体を張って、力の暴走を止めたりとかしてね~。その時のことがあったからかな?私たちの絆が強くなったって感じたわ」
体を張って、自分のために戦ってくれた。そんな姉を嫌いになることなどあり得ない。
楯無は、結の行動に深く感銘を受けるとともに、もし、妹の身に何かあったら迷わず、助けることを誓った。もし、自分の身が傷つくことになっても、絶対に助けて見せると。
そして簪もまた楯無と同じく、感銘を受け、もし自分に何かあったら姉は迷わず助けにくるだろうと思った。例え、その身がどうなろうと、自分のために傷つくだろう。そんなことが無いよう、姉とともに戦えるように強くなろうと誓ったのであった。
『ねえ、ねえ、カイ君』
「なんだ?エリア」
『私たち、空気だよね?』
「…気にするな」
カイは、何となく姉妹の絆が強くなったのを感じ、その様子を微かな笑みを浮かべながら見ていた。そしてふとカイは思い出す。
「そういやこっち(アカデミア)の世界の簪がカードを実体化させる力を発動させた事件があったな」
「!」
「へぇ、どんな?誰かが怒らせたりでもした?」
カイの言葉に楯無は聞いてくる。
「その時俺はいなかったんだけどな。聞いた話だと確か結とデュエルしてて、結が勝ったみたいだけど俺が帰ってきたときには―――」
その直後カイの意識は途絶える。10分ほどして目覚めたが本人は何を話していたか記憶が飛び、何があったか聞いてみたが結は睨み、楯無と簪ははぐらかし、エリアは教えない。釈然としない中カイはまあいいかと自己解決した。
ちなみにカイの意識が飛んだのは結の仕業であり、楯無と簪には自分から内容を話した。簪が暴走してデュエルをして何とか勝ったが、服がボロボロになり、見計らったようなタイミングでカイが帰ってきて自分のその時の姿を見られた…と。(詳しくは『遊戯王GX 五聖獣に選ばれし者たち』の『お菓子と大気の大鳥』の最後辺り)それには当然楯無と簪は色んな意味で驚いた。
その後空気が戻って、再び雑談に興じていると、
ドゴオオン!!
アリーナの方から何かが落ちてきたような音が響き、4人は、何事かと保健室を飛び出した。
シスコン×2でした。(苦笑)早速事件?次話をお楽しみに。