苦肉艦闇雲、鎮守府に見参す   作:グッジョブ佐藤

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第3話「その名は愛宕」

 

 翌朝、私は部屋の姿見に映る自分の姿に見惚れていた。

 と言うのも。

 

「すっごく似合ってるのですっ」

「いーじゃん、よく似合ってるよぉ」

「帽子、要る?」

「ま、まあ……私程じゃないけど、よく似合ってるわよ」

「あ、ありがとうございます」

 

 昨日の歓迎会中に渡してもらったお揃いの制服を着たからである。だから正確には、お揃いの制服姿の自分に見惚れている、と言える。

 

「でもさでもさ、電はちょっとだけ嫉妬とかしちゃってるんじゃないの?」

「そんなことないのです」

「末っ子属性が消えちゃうじゃん」

「そんなこと、考えたことないのです」

「本当は?」

「す、少しだけ……なのです」

「やっぱあるんかーいっ!」

 

 突然、雷と電が何かを始めたけど……これってもしかして、あの提督の影響?

 

「ツッコミのキレ、まだ鈍い」

「電もまだ照れがあるわね。そんなんじゃ立派なレディにはなれないわよ?」

「アンタらもかいっ!」

 

 私としたことが、思わずツッコミを……。

 

「闇雲、キレが良い」

「やるわね。私程ではないけど」

「師匠、って呼ばさせてもらうわねっ」

「すごいのですっ」

「あはは……」

 

 やっぱ大丈夫かな、ここ。

 

 

 顔合わせをする、ということで私は今、お姉ちゃんたちよりも一足先に執務室へと訪れていた。

 そこで待っていたのは、提督の相も変わらずの腑抜け顏。

 

「お。その服よく似合ってるな。溶け込めたようで何よりだ、うん」

「どうも。それと……その、まだよくは分かりませんけど、貴方が言って下さったこと、少しだけ分かった気がします」

「僕が言ったこと?」

「その……笑い合う為に、とかの話です」

「ああ」

 

 もしかして。

 

「あの、忘れていたんですか?」

「いやいや。さすがに昨日の今日で忘れないさ。ただ、こんなにも早く分かってくれるとは思っていなかったからさ、驚いただけだよ」

「とか言いつつも、これが狙いであの部屋割りにしたのではないですか?」

 

 この提督はタヌキだ。

 これくらいの化かし、やってのけるに決まってる。

 

「確かに。何れは、程度に考えてはいたんだけどな」

「やっぱりそうでしたか」

「怒ったか?」

「いえ……今はその、感謝しています」

「なら良かったよ」

 

 そんな無邪気な笑みを向けられると、本当に化かされてしまいそうになる。

 そう思って目を背けた時、ちょうど執務室の扉が盛大に開け放たれた。

 バーン! 誇張も誇大もなしに、本当にそんな音を立てて。

 

「愛宕、入室しまーすっ!」

「あ、貴女は昨日の――」

「あら? 昨日着てた物より、その服の方がお似合いね」

 

 声からして視線を移さずとも分かったことだったが、今し方この執務室に姿を現したのは昨日の金髪の女性だった。

 名は愛宕というらしい。

 

「えっと、昨日はありがとうございま――うっ」

「ふふふ。やっぱりあの娘たちと同んなじで、抱き心地がイイわぁ」

 

 何故だろうか。胸の脂肪で圧死されそうになっていることよりも、この圧倒的な肉付きの差という事実の方が遥かに、私の心を蝕んでいく。

 

「お、おい愛宕、闇雲が動かなくなったぞ……」

「あら、ホントだわ。少しだけキツく抱き過ぎたかしら」

「……命に別状はありません。ありませんが、海水よりも冷たい何かが、私の中に溢れかえっています」

「闇雲。俺はな、無いは無いなりに大好ぶ――」

「もう提督さん? あんまりお口が過ぎると――私の連装砲が誤射しかねませんよ?」

「愛宕の連装、砲……」

 

 どうしてこの流れで青ではなく、顔を赤くしているのでしょうか。やはりこの提督、よく分からない……。

 

「居ないと思ったら、先に来てたのね闇雲」

 

 次いで扉をくぐって来たのは暁お姉ちゃんだった。

 

「すみません。提督と少しだけお話がありましたので」

「ん、そうだったのね。ならいいのよ。ただ、今度からは一声かけてから行ってちょうだい」

「はい」

「何だ闇雲。暁の前ではそんな可愛い笑顔、見せるんだな」

「え?」

 

 笑顔? 私が?

 

「ふふふ、ホントに素敵な笑顔よ」

「昨日の夜から普通に笑ってたわよ?」

 

 気づかなかったけれど私、笑えてたたんだ。

 どうしよう。何だか気恥ずかしくなってきた……。

 

「そ、それは私だって笑えますよ。一応は艦娘ですし……」

「そっか」

 

 またあの笑顔だ。

 

「それよりもさ司令官、顔合わせはいいのかしら?」

「あ、すっかり忘れてた――と言っても、もう愛宕とは知り合ってる訳だし、いいんじゃないか?」

「そうね。私だって闇雲ちゃんのこと知ってる訳だし」

 

 そんな適当な……。

 

「失礼ですけど、まだ私の所属する部隊についてお話を伺っておりませんが?」

「部隊と言ってもな……この鎮守府には闇雲、君を入れた六人しかいないんだ」

「は?」

 

 私を入れたって……愛宕さん、暁お姉ちゃん、響お姉ちゃん、雷お姉ちゃん、電お姉ちゃん、そして私の六人?

 終わってる……いやそこは、さすが沈守府と揶揄されているだけはある、のかな。

 

「って、そんな拠点あってたまるかーっ!」

「おお」

「わあお、すごいツッコミねぇ」

「ま、まあ私程じゃないけど、さすがね」

 

 本当に大丈夫か、ここ……。




次回予告!
顔見せを無事(?)に終えた闇雲。
しかし彼女は気付いていなかった……
自分が単装魚雷しか装備出来なかったことを!
次回「闇雲、ドックに散る」お楽しみ!

闇雲「お腹を出して寝ると、深海棲艦になっちゃうぞ」
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