「ねね! 大人の話って長くなるから二階に行きましょう!」
隣に座っている僕に耳打ちしてきたビアンカは、僕が答える間も無く手を引くと二階に向かって歩き出した。
「ねえねえビアンカ!」
今は僕の家。
久しぶりに帰ってきた家には、家事のサンチョおじさんだけがいると思ったら、すごいびっくりなことにビアンカがいたんだ!
隣町にビアンカは住んでるんだけど、ビアンカのおばさんと一緒でちょうど村に用事があったみたい。
声をかけたビアンカは「なによ?」と手を引いて僕の部屋に向かいながら振り返ると、少しだけ僕を見下ろした。
くやしいんだけど、僕よりちょっとだけ背が大きかった。
ちぇ。僕もあの頃より大きくなったんだけどなぁ。 二つも年が上だからしょうがないけどなんか悔しいや。
ビアンカは、金髪の髪を右と左にみつあみに作ってて、お人形さんみたいで、掴むには丁度良さそうで思わず両手で引っ張りたくなっちゃった。
「その髪可愛いね!」
「なによいきなり」
そう言うとビアンカはプイと前を向いちゃった。
階段を一段一段登るたびに三つ編みがぴょこぴょこ動くもんだから、僕はなんだか居ても立っても居られなくなって、気づいたら手が伸びてた。
「えい!」
「いたっ!」
そんな思い切りなんて引っ張ってなんかないけど、ビアンカは振り返ると、眉を思い切り釣り上げて
「リュカ!!」と僕の名を叫んだ。
僕の名、覚えてくれてたんだ。嬉しい!
僕がそう言うとビアンカは「あんたねえ……。まあいいわ。私はお姉さんだからすぐには怒らないの。でも次にまた髪引っ張ったら承知しないわよ。いーい?」
と訊いてきた。
ほら始まったぞ。偉そうにしちゃって。
「うんいいよ!」と僕は返事。返事だけはいいんだよね僕。
「返事だけはいいんだから」とビアンカも言った。おんなじこと思うだなんてビアンカってば、相変わらずビアンカなんだなぁ。
二年ぶり? よくわかんないけど、そんな感じしないや。なんか昨日も会ったみたい。
下でお父さんの笑い声が聞こえた。内容はよくわからないけど、僕とビアンカのことに対して笑ったみたい。まあいいや。
二階に着く。
僕の部屋。久しぶり!
日当たりが良くて小さいけど居心地がとってもいい部屋。
ベッドと本棚があるくらいでなーんもないけど、大好き!
僕は思わず自分のベッドにダイブ!
うーん! 気持ちいい!
もうこのまま目を瞑れば眠れそう。
「ねえリュカ」と声。
そう言えばビアンカがいたんだった。
がばっと起き上がる。
「ねえねえビアンカ!」と僕はビアンカを見る。
おでこ出してて、目はぱっちりでお鼻はちょこんと出てて、ほっぺたはプニプニみたいで、二年前よりなんだかなんだが可愛いかなと思ったけど、生意気だから
どっちかと言えば生意気さが勝っちゃうんだよね。だから普通かな!
「あたしが訊く番よ」とビアンカが言った。僕が訊こうと思ったのにほら生意気だ。
「二年間どんなだったの? いろんな所を見てきたんでしょう?」と訊いてきた。
「うん! いっぱい旅してきたんだ! 一番綺麗だったのは高い山から見た星空とオーロラかな! 夜なのに空がね!パアッて光ってて! あと滝!大っきいこんくらいの広がる滝がね! 空から水がたくさん落ちてきて! あとね!あとね!」
僕が話すとビアンカは「へぇー」と感心そうに聞いてくれた。
「ビアンカにも見せたいな」と僕は言う。
「いいわね。次は連れていってくれないかしら」
「いいけど、モンスターもいっぱいいるからね! 女の子にはちょっと無理かな!」
「あら? 忘れたのリュカ。私はあなたよりずっと強いわよ」と自信満々にビアンカはそんなこと言う。
「そんな昔のことなんて僕覚えてないし! それにいっぱい旅して僕強くなったからね! お父さんの次に強いんだ!」
ちょっと、大げさに言っちゃたけどまあいいや! 強くなったのは本当だし。
「そう? じゃあこんどスライム倒して見せてよ」とビアンカは意地悪そうな顔をする。
「いいよ! きっと僕の強さにビアンカは腰を抜かしちゃうね。スライムなんか僕の強さに顔を真っ青にして逃げ出して行くよ!」
「スライムはもともと青いわよ」
「そっか! じゃあ分からないね!」
「ふふふ。リュカってば可笑しい」とビアンカは笑った。
笑った顔はやっぱりちょっとは可愛いかなって思った。
生意気だけどね。