「右? 左? どっちがいいのかな」
奥へ進むと分かれ道。一方は真っ暗でもう一方も真っ暗だ。
「悩んじゃうね」と僕はひとり言。
僕はよく、ひとり言をしているなとお父さんに注意されちゃうけど、今日ぐらいはいいよね、と思う。
暗いところばっかり歩いてるとちょっぴり不安になっちゃうからね。
でもだからって別にモンスターが怖いわけじゃないぞ。ただなんとなくだもん。
お父さんの言葉を思い出す。
壁伝いに歩けば迷うことはないって言ってたっけ。
理由はなんでか忘れちゃったけど、お父さんがそう言ってたから間違いないことなんだ。
あとでまた理由をきいてみようかな。
ランプの油の量はまだたっぷりあるし、真っ暗闇の中をしっかり照らしながら僕はボコボコに突き出した岩壁を壁伝いに進むことにした。
お父さんは何でこの洞窟に来たのかな。
何があるんだろう。
知りたくって知りたくって仕方ない僕はどんどん進む。
すると今度は暗闇からパタパタって真っ暗なコウモリのモンスターが飛び出してきて周囲を飛び交いながら「ギギギ!」と威嚇してきた。
「なにさ! 来るなら早く来いよこのよわむし!」
ついさっき一人でもモンスターを倒せたことに自信がついた僕に震えは無かった。
あるのはお父さんの様なカッコイイ強さを持ったイメージ。
僕の剣じゃ切れないけど、相手をコテンパンには出来るし、だてに長い間旅の途中でお父さんの戦いをただ眺めていたわけじゃないんだから。
「お父さんに比べたらお前なんて止まってみえるぞ!」
冷静に僕は噛みつこうと向かってきたコウモリのモンスターにひのきの棒をたたき込んだ。
バコッ!!
「ピギュ〜」と参ったような声で地面に落ちたモンスターは、翼を開いたり閉じたりして痛そうにじたばたのたうち回り始めた。
その苦しそうにもがく様子に僕はなんだか可哀想に思ったけど、容赦しては駄目ってお父さんが教えてくれていたことを思い出した。
お父さんがそう言っていたから間違いないことだから、とどめを刺さないと。
でも………。
「もぉ、今回だけだよ」
僕は腰に結びつけていた布袋から薬草を取り出すと、それを指に付けて痛そうにもがいているモンスターに塗り付けた。
「モンスターにも効くのかな……」
「ピギギ」
すぐに効いたのかモンスターは何事もなかったように立ち上がる。
「よかった。効いたみたいだね。もう悪いことしちゃ駄目だよ」と僕は言った。
でも。
「ギギギ!!」
「痛っ!!」
そのモンスターは僕の腕に噛み付くと、そのまま闇の中へと飛んで消えていってしまった。
「ちぇ……」と僕は言う。
僕はまた薬草を取り出して、血が出ている腕に薬草を塗った。
「ちゃんとお父さんの言うとおりにすれば良かったな……」
でも。薬を塗ってあげた後のモンスターの表情は、一瞬だけど優しそうに見えたんだ。
僕ってば変なのかな。