「えーと……。そ…ら…に…く…せし……ありきしか……」とビアンカが言った。
「ありきしか?」
今は僕の部屋。
ビアンカのお父さんのお薬がまだ出来ていないと言うので、まだ僕の村に居たビアンカと遊ぶことにしたんだけど。
本を読んでくれるって言ってたから僕の部屋に来たのに、ビアンカってば本をベッドの上に開くなりなんだか難しい顔をしていた。
首を傾げ眉間にシワまで寄せちゃって、「うーん……」と唸っている。
僕はそんないっしょけんめいに本を見ているビアンカの隣に並んでその顔を眺めた。
相変わらずお人形さんみたいな顔をしていてなんだか突っつきたくなっちゃった。
「えいっ」
我慢出来ずにビアンカの眉間を指で突っつくとビアンカは「きゃっ」とか可愛らしい声をあげた。
不意を突けた僕は嬉しくなっちゃってもっとビアンカのお顔を指で突っつきたいなとウズウズ。
「何するのよリュカ!」
とシワの寄った眉間をさらに寄せて怒ってきたので、僕は教えてあげることにした。
「あんまりシワばっかり寄せてると不細工になっちゃうよ?」
「リュカが突然突つくからじゃない!」
ビアンカはまだ怒る。せっかく教えてあげたってのに困った子だなと思った。二つもお姉さんだからすぐには怒らないって言ってたのに。
ビアンカはため息しながら「まったくもう……、いーいリュカ?」と悟らせるようなことをまた言おうとしてきたので僕はすぐ、
「ビアンカ! 早く本読んで!」とお願いをした。
でもビアンカは首を振る。
「だーめ。ちゃんと良い子にしないリュカにはご本読んであげないんだから」
「僕良い子だもん! お父さんの言うことはちゃんと聞くし!」
昨日はお父さんの教えを破っちゃって痛い目に遭っちゃったけど、普段は自分で言うのもなんだけど凄く良い子なんだ。
「おじ様の言うことだけじゃなくて、私の言うことも聞きなさいよ」
「じゃあ、聞いたら本を読んでくれるの?」と訊く。
「もちろんよ」とビアンカ。
僕はすぐに頷く。いっぱい読んで貰って色んなこと知りたいし、覚えたいし。
だからビアンカが怒りんぼでも読んでくれるって言うならビアンカの言うこと聞いてもいいかな。
僕が素直に頷いたことが良かったのか、ビアンカも眉間のシワを解いてくれて笑顔を見せて「仕方ないわね。じゃあ、もう一回読んであげる」と言った。
「うん!」
また一緒に並んで本を眺める。僕は全く読めないけど、きっと楽しいことがたくさん書いてあるに違いない。
「えっと……。うーん……」とビアンカが言う。
「どうしたの?」
「ダメね。残念だけどリュカのおうちのご本、難しすぎて読めないわ」
「えぇ〜?」
がっくり。