東方霊無鏡 〜Per hour 2.5 minutes 【完結】 作:LOORUME
...........。
.........んっ.........。
.........ああ、私、気絶しちゃったのか。
相手の弾に当たってこそいないものの、どうやらファイナルマスタースパークで力を使い果たしてしまった。
そのファイナルマスタースパークを使った相手ーー八岐鏡映はというと、まだ霊夢と戦っていた。
ということは、私が気絶してたのはかなり少ない時の間だけだったのかもしれない。せいぜい5分程度と言ったところか。
それにしても霊夢の弾幕は勿論、よけてる姿もかっこいいぜ...。さすが私が認めただけはある。それだけに.......。
《夢符『二重結界』》
霊夢が攻めに出たようだ。
私の使ったスペルを含めて2枚目のようだ。
《草剣!『八つ裂き』!》
おっと敵のスペルだ。
八岐はスペルをハンデで2枚しか使えないはずだから、今ので2枚目のはずだ。
しかし、まだ2枚目だったということは気絶してる時間がもっと短かったのかもなあ。それこそ30秒とかそんくらい。
いや、気絶後30秒で覚醒するってどんな奴だよ。エイリアンか?ロボットか?
八岐鏡映のファイナルスペル『八つ裂き』は弧状に並べられた弾幕が速さも大きさも間隔も、数も形も全てランダムに発射されるスペルカードだ。
それも密度がすごいぜ。
速さが違うから、よけ間違えると追い詰まされて当たる。
八つ裂きという言葉では足りないくらい難解で過酷で理不尽な、そして美しい弾幕だ。
霊夢以外だったらまず攻略は無理だろう。だってこれは勘じゃないと避けられないレベルだ。
《霊符!『夢想封印』!》
お、霊夢が勝負に出たな。
虹色の7つの超大型弾が八岐鏡映を襲う。どうやら勝負ありのようだ。
霊夢(と一応私)の勝ちだ。
BGM:平安の面影
「いやー負けちゃったね!降参降参!」
「ふぅ........」
「霊夢、お疲れさん」
「ありがと」
「で?やまたん、どうやったら幻想郷に帰れるんだ?」
「うーん、そうだねえ。その前に色々説明しなくちゃいけないんだよね」
「そうなのか?だったら手短に頼むぜ?」
「わかったわ。
まず、『鏡』の語源って知ってる?由来とも言うかな」
「鏡の?さてなあ.....。霊夢は知ってるか?」
「鏡......屈み....つまり、水面を屈んで見た時に景色が反射して見えたとか?」
「おお!それっぽいな!そうなのか?八岐」
「(あ、戻った)いんや、全然違うよ
『鏡(カガミ)』っていうのは元々『カガメ』っていうのが訛ってできた言葉なんだよ。
漢字をあてると『蛇目(カガメ)』。つまり蛇の目だね」
「なるほどね」
「蛇の目がなんで鏡になったんだ?」
「あ、それについては面倒だからカット」
「そこが一番大事なんじゃないのか?」
「気にしない気にしない!
で!蛇神様である私は鏡に関連する事柄にはうってつけってわけさ」
「なんか釈然としないが....まあいいぜ」
「手短にって言ったのはあんたでしょ」
「となると、どうしてこんなことをやったんだ?」
「こんなことって?」
「は、だからどうして私たちを鏡の世界に閉じ込めたり、もしくはそうなるように誘導したんだ?」
「閉じ込める?誘導?うちはそんなことはしてないよ」
「んんん、そうなのか。じゃあなんで.....」
「とにかく!私はあんたらを早く外へ帰してやらないといけないんだ」
「じゃあなんで弾幕ごっこや蛇目についての....」
「いいから!
幻想郷と幻想鏡は時間の流れが違うんだよ」
「どういうことなの?」
「霧雨、霊夢が幻想郷から居なくなってどのくらい経ってからこの世界に来た?」
「んんと、2日だぜ」
霊夢は驚いてこちらを見る。どうしたんだろう。
「じゃあ霧雨、あんたがこの世界に来てどのくらい経った?」
「なんだよ?
うーん、2時間くらいかな?」
「今度は博麗」
「なによ」
「あんたがここに来て、 どのくらいの時間が経過した?」
「............4時間よ」
んん?4時間?
つまり霊夢が鏡の中に来てから私が来るまでの時間はたった2時間?おかしいぞ。
「霊夢?46時間も気絶してたのか?それはいくらなんでも......」
「ね、寝てないわよ!
魔理沙、わからないの?」
「違うのか?だったらその46時間の間は違う世界に飛ばされてたとか.....」
「魔理沙、理解しなさい。幻想郷の一日は、幻想鏡の1時間ということをコイツは、八岐は言いたいのよ」
「.....まじか」
ま まあ、今更そんくらいのことがわかっても驚かないんだけどな?
でも時間の流れの速度が違うなんて咲夜みたいだな。
「つまり霊夢が二日間まるまる幻想郷から失踪していたのが、霊夢にとってはたった2時間だったってことか?」
「そういうことみたいね。こいつが言うには」
「さあさ、急がないと時間に置いていかれるよ?365時間、つまりこっちの約15日で1年は過ぎる」
「お、おい、もう帰ろうぜ」
「わかったわよ。で?帰る方法は?
まさか無いなんて言うんじゃないでしょうね」
多少の殺気を込めて。怖いぜ。
「言ったでしょ?うちは鏡も操れるの。そんくらい訳無いわよ。ほら」
八岐が手を伸ばすとそこに大きな姿見鏡が現れる。
「ま.....もっとも、この鏡には結界.....いえ、境界が張ってないから帰れないんだけどね。
使うのはあっち」
先ほど霊夢も大幣で指し示した鏡を八岐鏡映も指差す。
やっぱりでかいなあ。小さな手鏡と同様、結界ーー八岐鏡映曰く『境界』ーーが貼ってある。この境界って鏡がないと作れないものなのか?
「さあ魅入ってる暇はないよー。急いで帰りなー」
「へいへーい」
「わかったわ」
大きな鏡の前に2人で立つ。
くる時もこうだったらどれだけ力強かっただろうか。
「じゃあな、八岐!」
「ええ、また来れたらお酒でも頂戴ね」
「やっぱお前って酒が好きなんだな」
「あら?会ったこと、あったかしら?」
「いや、おまえの伝説が伝わってるんだぜ」
「あの若かりし頃かい。いやお恥ずかしい」
「酒は身を滅ぼす、身に言い聞かせろよ」
「実はそれっきりトラウマでね。酒を見ると全身すくみあがっちまうんだ。
あーおサケこわーい」
「饅頭みたいに言うなよ。ま、そこまで言うんだったら酒持って退治をしに言ってやるぜ」
「あと武器はアタリメを持ってくるといい、効果覿面だから。
あ、でも葡萄酒ならチーズとかもいいね」
「ふふん、いいよどれも持って行ってやる」
「話は終わったかしら?さ、行くわよ」
せっかちれーむさんだな。
「じゃあ博麗の!元気で!」
「ええ、あなたもね」
「酒係!また来なよ!」
「私は酒係かよ。じゃあまたな」
そして私は振り返る。
私は鏡の中にいるわたしを見つめる。意識が遠のいて行く感覚と共に。
第2章 完
第3章へ続く。