東方霊無鏡 〜Per hour 2.5 minutes 【完結】   作:LOORUME

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其前夜祭にて 裏 蛇足世界-03

「母ちゃん!」

 

 

嗚呼、この呼び方をされるのはいつぶりだろうか。軽く千は超えて、千四百年余か?

 

それにしても...『母ちゃん』。うちをこの呼び方をするのは1人を除いていないはずなんだが....まさか?

 

いやそんなはずはない。だって、別れてから今の今まで一回も会った事が無いんだから。

 

ちょっと待って今何て思った?『今の今まで一回も会った事がなかった』?

はは、そんなのもう、認めてるようなもんじゃないか。

 

愛しい愛しい萃香。

 

「久しぶり」

 

「うぅっ...」

 

抱きついてきた。()い奴め。

頭を撫でてやったけど、気持ち良さそうで、昔を懐かしんでいるようだった。

 

「とりあえず、話をするかい?」

 

そう言って、うちは隣の部屋を指して言った。

萃香がうちの胸(無いって言った奴ぶっこ)にうずくまりながら肯いた。

 

萃香の手を引っ張って違う部屋に来たけど、他の奴らの喧騒がうるさいなあ。まあこの際どうでもいいや。

 

「んんー。本当久しぶりだね。元気してた?」

 

満点の笑みでうち、やまたんは言った。が、しかし評判はいまいち。そっけなく返されてしまった。

 

「うん、元気だった...」

 

「友達はいるかい?」

 

「勿論。茨木や星熊もいるし、妖怪にもいっぱい」

 

「それは良かった。じゃあ、一緒に呑もーー」

 

「ーー聞かないの?」

 

「え?」

 

「私が出て行った理由...を、聞かないの?」

 

「言ったでしょ。良かった、萃香に会えただけで良いんだって。昔のことさ、水に流そう」

 

「でも...」

 

「大丈夫、うちは何より萃香の事を理解(わか)っているから。

さ、戻って呑もう?飲み会でベソかく奴がどこにいるんだよ。それも鬼が泣くなんて100年間笑われるぞ?」

 

パアアっと表情が明るくなった。

 

「うん!」

 

よし、これで席に戻って呑める。

 

 

席に戻ると、萃香も参加したということで仕切り直し。音頭は魔理沙が。

 

「親子の感動の再会を祝して、乾杯」

 

ああ酒が旨い。ん?乾杯?あぁ、乾杯。

 

その後は、連中に昔の事を聞かれたり、はぐらかしたり。

泣いたことをからかわれたり、顔真っ赤の萃香が照れ隠しに人妖を萃めたり。

 

萃まった奴らは、各々が勝手に持ってきた器で、持ってきた酒を呑み、持ってきたおつまみを喰らい、知らぬやつや知ってるやつと語らった。

 

とにかく愉快だった。

誰かが芸を仕込んだわけではない。

心が踊っていたのだ。

そう、それはまるで、博麗神社の雰囲気を好いたかのように。

 

ひいては幻想郷の雰囲気を好いたかのように。

 

 

そしてうちは思った。

うちは解った。

 

幻想郷が好きだ、って。

 

「そうか、好きなのか...」

 

「あら、なんだか知らないけどありがとう」

 

紫には言ってないけど...まあ言っているようなものか。

 

そんなわけで改めて幻想郷と繋がった事を安堵した。

 

「ねえ紫」

 

「なあに?」

 

「今度さ、幻想郷の面白い場所に連れてってよ」

 

「あら。いいわね、まずはどこに行きたいかしら?」

 

「そうだね、雑貨屋というか、とにかく色んな物が売ってる店は無いかい?鏡刻塔って地上階は何にも置いてないからさ」

 

「そうねえ.....ああ、それだったら香霖堂はどうかしら」

 

「香霖堂?」

 

「そう。人と妖怪のハーフのやってるお店よ。まあ、役に立つものがあるかどうかはわからないけどね」

 

「ガラクタは嫌いじゃないよ。良いものを探すんじゃなくて、良いものに利用して使えるのを探すのが楽しいわ」

 

「ふうん....違いがよく分からないけど、香霖堂もそういう考え方をすれば楽しいのかもね」

 

「まあ暫くは忙しくなると思うから無理だけど.....近いうちに!」

 

「ええ!行きましょう」

 

そういって約束をしたタイミングを見計らったかのように、ハニエルが倒れた。

バターン、と畳の音が響く。

 

様子を見ると、スースーと寝息をたてている。どうやら眠ってしまったようだ。

 

「じゃあ、ハニエルが眠っちゃったからうちらはそろそろ帰るよ。

ミラル!ハニエルを背負って!」

 

「えぇーこいつ胸がデカイから重いんだよー」

 

「いいから!

...じゃあ、紫、また今度」

 

「ええ、じゃあね」

 

そして鏡映は片手で空中を切り、印を結ぶ。するととたんに空間が光り、開いた。

 

その空間の闇の中に鏡映が入り、後ろにハニエルを背負ったミラルが続いた。

 

今回の主役と言える3人が消えても、萃香に萃められた妖怪共の勢いは治まらない。

 

やれやれ、と呟き紫はひとつの妖怪の輪に入っていった。

 

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