東方霊無鏡 〜Per hour 2.5 minutes 【完結】 作:LOORUME
「母ちゃん!」
嗚呼、この呼び方をされるのはいつぶりだろうか。軽く千は超えて、千四百年余か?
それにしても...『母ちゃん』。うちをこの呼び方をするのは1人を除いていないはずなんだが....まさか?
いやそんなはずはない。だって、別れてから今の今まで一回も会った事が無いんだから。
ちょっと待って今何て思った?『今の今まで一回も会った事がなかった』?
はは、そんなのもう、認めてるようなもんじゃないか。
愛しい愛しい萃香。
「久しぶり」
「うぅっ...」
抱きついてきた。
頭を撫でてやったけど、気持ち良さそうで、昔を懐かしんでいるようだった。
「とりあえず、話をするかい?」
そう言って、うちは隣の部屋を指して言った。
萃香がうちの胸
萃香の手を引っ張って違う部屋に来たけど、他の奴らの喧騒がうるさいなあ。まあこの際どうでもいいや。
「んんー。本当久しぶりだね。元気してた?」
満点の笑みでうち、やまたんは言った。が、しかし評判はいまいち。そっけなく返されてしまった。
「うん、元気だった...」
「友達はいるかい?」
「勿論。茨木や星熊もいるし、妖怪にもいっぱい」
「それは良かった。じゃあ、一緒に呑もーー」
「ーー聞かないの?」
「え?」
「私が出て行った理由...を、聞かないの?」
「言ったでしょ。良かった、萃香に会えただけで良いんだって。昔のことさ、水に流そう」
「でも...」
「大丈夫、うちは何より萃香の事を
さ、戻って呑もう?飲み会でベソかく奴がどこにいるんだよ。それも鬼が泣くなんて100年間笑われるぞ?」
パアアっと表情が明るくなった。
「うん!」
よし、これで席に戻って呑める。
席に戻ると、萃香も参加したということで仕切り直し。音頭は魔理沙が。
「親子の感動の再会を祝して、乾杯」
ああ酒が旨い。ん?乾杯?あぁ、乾杯。
その後は、連中に昔の事を聞かれたり、はぐらかしたり。
泣いたことをからかわれたり、顔真っ赤の萃香が照れ隠しに人妖を萃めたり。
萃まった奴らは、各々が勝手に持ってきた器で、持ってきた酒を呑み、持ってきたおつまみを喰らい、知らぬやつや知ってるやつと語らった。
とにかく愉快だった。
誰かが芸を仕込んだわけではない。
心が踊っていたのだ。
そう、それはまるで、博麗神社の雰囲気を好いたかのように。
ひいては幻想郷の雰囲気を好いたかのように。
そしてうちは思った。
うちは解った。
幻想郷が好きだ、って。
「そうか、好きなのか...」
「あら、なんだか知らないけどありがとう」
紫には言ってないけど...まあ言っているようなものか。
そんなわけで改めて幻想郷と繋がった事を安堵した。
「ねえ紫」
「なあに?」
「今度さ、幻想郷の面白い場所に連れてってよ」
「あら。いいわね、まずはどこに行きたいかしら?」
「そうだね、雑貨屋というか、とにかく色んな物が売ってる店は無いかい?鏡刻塔って地上階は何にも置いてないからさ」
「そうねえ.....ああ、それだったら香霖堂はどうかしら」
「香霖堂?」
「そう。人と妖怪のハーフのやってるお店よ。まあ、役に立つものがあるかどうかはわからないけどね」
「ガラクタは嫌いじゃないよ。良いものを探すんじゃなくて、良いものに利用して使えるのを探すのが楽しいわ」
「ふうん....違いがよく分からないけど、香霖堂もそういう考え方をすれば楽しいのかもね」
「まあ暫くは忙しくなると思うから無理だけど.....近いうちに!」
「ええ!行きましょう」
そういって約束をしたタイミングを見計らったかのように、ハニエルが倒れた。
バターン、と畳の音が響く。
様子を見ると、スースーと寝息をたてている。どうやら眠ってしまったようだ。
「じゃあ、ハニエルが眠っちゃったからうちらはそろそろ帰るよ。
ミラル!ハニエルを背負って!」
「えぇーこいつ胸がデカイから重いんだよー」
「いいから!
...じゃあ、紫、また今度」
「ええ、じゃあね」
そして鏡映は片手で空中を切り、印を結ぶ。するととたんに空間が光り、開いた。
その空間の闇の中に鏡映が入り、後ろにハニエルを背負ったミラルが続いた。
今回の主役と言える3人が消えても、萃香に萃められた妖怪共の勢いは治まらない。
やれやれ、と呟き紫はひとつの妖怪の輪に入っていった。