東方霊無鏡 〜Per hour 2.5 minutes 【完結】 作:LOORUME
(序)
“文々。新聞”
“霧雨魔理沙、博麗霊夢らを巻き込んだ異変 『無鏡異変』”
“犯人は八岐鏡映。犯行動機は『鏡の世界と幻想郷を繋げたい』
これに幻想郷の管理人・八雲紫は喜んで同意し、数ヶ月後に幻想郷の各地に鏡を設置する運びとなった。”
“異変解決と鏡の世界との同期を記念して、大宴会が催される事となった。”
“場所は博麗神社。時は同期の少し後。詳しくは続報を待たれよ。”
人里では滅多に御目にかかれない紅茶を啜りながら、“鏡の世界が解禁!!”と大きく印字された記事を読みながら彼女は、こう呟く。
「私も宴会、行きたいなぁ」
私は稗田阿求であり御阿礼の子である。つまりはあまり無茶はできないのだ。
御阿礼の子ということは30年弱ほどしか生きられない。つまりは好奇心のバリがビンビンなのである。
先程、この記事を見た時から、鏡の世界にはどんな妖怪がいるのか、八岐鏡映の特徴は何なのかと妄想が止まらない。
どうにか行ける策は無いか、模索してみたが思いつかない。
宴会が開催されるのは鏡が解禁されてから少し経ってからだ。それまでに思いつくか、さもなくば頼れるのはーー
新聞と編集作業という情報交換の利害一致から産まれた交友関係
ーー射命丸文さんくらいか。
人里でつい先刻配っていた新聞の新刊を出すべく新しい草案を綴りながら、“鏡の世界が解禁!!”と大きく印字された記事を見ながら彼女は、こう呟く。
「わたしならもうちょっと良い文句が思いつきそうだったのになぁ」
私は射命丸文。鴉天狗の新聞記者だ。
他の天狗に負けるわけにはいかない。なによりスピードが大事だ。
清く正しく潔く。時には如何なる手段も選ばず。七転ばってん起き上がるばい。
...最後のは関係ないか。思いつきだ。
何にせよ、今度の宴会では鏡の世界から恐らく沢山の妖怪が来る。
そんな妖怪たちをわたし一人で取材できるとはとても思えない。
分析にかけて頼れる友人はーー
無茶はできず取材ができない相手のための情報とわたしも知らない情報を交換するというギブアンドテイクで産まれた関係である、
ーー阿求さんくらいか。
ーーーそんなわけで私たち、大宴会を分析・取材します!
(前)
ざわざわと怪異どもが
ここにいる少女達が全員華やかな服を着て、お淑やかに、淑女的に談笑しあって、
いない。
華やかな服の少女もいるが、服がはだけてだらし無い者も少なくない。
談笑もしているが、怪談、猥談、相談して大いに盛り上がり、ゲラゲラとはした無い笑い声をあげている。
ちらほらと叫び声や泣き声が聞こえてくるが、まわりの騒音によってかき消されている。
騒音と言えばプリズムリバー三姉妹。彼女らは開演からずっとステージで演奏しており、同時に踊っているので脚がガクガクだ。
ステージの周囲には、演奏に耐性の無い者達が集まっており、演奏が終わるか気絶するまで踊らされ続ける。勿論踊らされている彼女らも脚がガクガクだ。
先ほどから筆が止まらない。妖怪の取材をしたいのに、そこまで頭が回らないのだ。どうやら私も騒音の影響をちゃんと受けているらしい。
これ以上書いてもしかたないので筆を止め、隣にいる文さんに話しかける。
カシャリ、カシャカシャ。
「あの、文さん」
カシャ。
「なんでしょう」
カシャカシャカシャ。
「シャッター切りすぎじゃないですか?ふぃるむ?が切れますよ?」
カシャカシャ。
「あやぁ。これは騒霊達のせいですねぇ。気分が舞い上がって夢中になっていました」
とどめのカシャリ。
「それにしても人が多いですねぇ」
「ええ、一歩も動けません」
文字通り、一歩も動けない。人が通れる道が全くないのだ。場所は食べ物と酒と怪異達で埋め尽くされている。
移動できるのは空を飛べる者のみ。
「どうします?誰からインタビューしますか?」
「そうですねぇ。まずはあそこの大きい羽を生やした人にしましょうか」
「はい。じゃあちょっと運んでください。飛べないので」
私は空を飛べない。だから分析の条件の一つとして人里から博麗神社の間や私が移動出来なくなった時に運んでもらっている。
分析の条件の二つ目というのは私の護衛。さすがに此処では無いと思うけど、万一襲われたら護ってもらうよう言ってある。
「合点です」
「あの〜すいません」
「はい、何でございましょうか?」
「私は稗田阿求。そしてこちらがーー」
「ーーわたしは射命丸文です。今日は、この宴会を取材してまわっているんですよ」
「そうなのですか。では、わたくしにインタビューということでございますか?鏡から来た、妖怪ということで」
「はい、そうですね、お名前は?」
「わたくしめはハニエル。実際は妖怪ではなくて天使です」
「.....取材しづらいので、そうですねぇ。敬語、無理にしなくてもいいんですよ?」
「あ、いえ、これは癖になってしまっているので、この喋り方以外はできないのです」
「でも取材対象としてリラックスしていただかないとーー」
「無理無理。ハニィは絶対にくそ下手な敬語以外話さないよ」
「あなたは?」
「ボクはピサース・ミラル、可愛い悪魔だよ」
「あやや、敬語以外話さないのですか。では....もしよろしければミラルさん、彼女の事について教えてもらえますか?」
「それで良い?ハニィ」
「はい。それで幻想郷と鏡源郷が近づくのなら」
さすがに大きく見過ぎだと思うけど。まあ少しはそうなるのかもね?
文さんがミラルさんに取材している間は、なんだか喋ったらいけないような気がしたので黙って見ていましょう。
「Youは何しに幻想郷へ?」
「アー、ボクはねえ、主人に呼ばれたから来ただけだよ」
「主人とは?」
「僕のご主人様は八岐鏡映で....あ、ハニィも同じくそこで従事しているんだけど、あ、その前に」
「何でしょうか」
「ボクとハニィが働いているのは鏡源郷の鏡刻塔という場所なんだけど、そこでは、八岐鏡映という御主人に従ってやってるのさ」
「お仕事とは具体的に?」
「鏡を護る仕事。鏡の守護者なんだよ。その鏡は幻想郷と鏡源郷を繫ぐものでは一番最初にできた鏡なのさ」
「八岐鏡映とは、今回の主犯のですか?」
「主犯...まあ、そうとも言えるかもね」
不思議な言い草に違和感を覚える。
これにはつい口を出してしまう。
「八岐鏡映は、主犯では無いのですか?」
「実をいうと、大元の原因ではあるのだけれど、犯人ではないんだよね」
なんと。
「あややぁ、これは大スクープのかほりがします」
「一体、何があったのですか?私、気になります」
「それはねーー」
話によると、八岐鏡映は長い年月をかけて鏡源郷を創った。そこで彼女は思う。自分の友人である八雲紫が管理している幻想郷と交流をさせてみたい、と。その事を紫に伝えに行くと、喜んで同意した。
どのように繋げるかは紫に任せて八岐鏡映は鏡源郷に帰ってきた。その後、八雲紫が霧雨魔理沙と博麗霊夢を鏡源郷に送り込んで解決、というか帰還させたらしい。
「ーーそして、鏡が解禁され、今日に至るということさ」
「ほお、なるほど。ありがとうございました」
「ぜんぜん」
「次は、お二人についてもっと詳しく教えてください」
「うーん、僕は可愛い悪魔だということ以外は特に語る事も無いけど、彼女、ハニィは色々とすごいんだよ」
何でしょうか。伝説とかでしょうかね?
「あや、どんなことが?」
「いや、どんなことじゃなくてどんなふうに、なんだけどね。
彼女、結構着痩せするタイプなんだ。だからあまりそういう風には見えないんだけど....上から96、60、85っていう.....」
「ちょ、ちょっと待ってくださいませ!ミラル!?」
驚いた時も敬語が崩れないのですか。
というかお二人、偉さは同じくらいですよね?呼び捨てですし。どうやらいつも下手な敬語で話しかけてるんですか。ミラルさんは何気に疲れそうですね、精神的に。
「ん?どうしたの?ハニィ」
「どうしたのも何も、公共の場でわたくしのスリーサイズを公開しないでもいいじゃないですか!」
「まあまあ、落ち着いてくださいハニエルさん。間違っても新聞に載せるなんてことは十中八九ありませんから」
「二割か一割残ってるじゃないですか!」
「あやや、バレましたか。言い訳にするつもりだったんですけど」
「やめてください!もう、力ずくで記憶を抹消してあげます!」
怒り心頭のハニエルさんである。
「阿求さん、逃げますよ」
「はい!優しくお願いします」
「合点承知」
境内を運んでもらいながら私は、ハニエルさんの敬語が崩れかかっていたなあ、などと思うのでした。
後半へ続く
「ミラルゥ!」
「やーごめーん!叩かないでぇ!」
「問答無用!」
この時、ミラルの能力『相手の心を弄る程度の能力』を使って怒りを和らげようとしたが焼け石に水でだった。
なんと約3500文字です!それもそのはず、側話帳の序編と前編のダブルでしたからね。
元々は序編単体でやるつもりだったんですけど、850文字くらいで1000に足りませんでした。
前編後編で終わらせられるといいなあ...
まあ、出来なくとも何とかしますw