一夏SIDE
エフィさんが行ってしまった後、俺とシャルは避難場所である駅に向かっていた。
「はぁっ、はぁっ、一夏、エフィさんは、大丈夫、かな?」
長らく走っていたせいで息を切らせながらシャルは俺に不安そうに尋ねた。
「エフィさんなら大丈夫だろ。多分サーシャさんに連絡してるだろうし。あの人は無茶はしない人だから心配要らないさ」
シャルを安心させるように言った直後だった。
ーー警告。敵性IS接近中。数は3。
「!?」
待機形態の渦津火からの警告を聞き、思わず体を強ばらせてしまった。幸い禍津火の警告は俺にしか聞こえないため(体内のナノマシンを通して聞こえるらしい。俺にはよくわからないが)周りの人たちには聞こえなかったがシャルは俺の顔がいきなり強ばったのに気づいて「どうしたの、一夏?」と不安そうに聞いてきた。
(くそ、シャルを不安がらせて何をやってるんだ俺は!)
俺はまだポーカーフェイスが出来ない。そういう点を含めサーシャさんはまだ4分の1人前と言ってきていたのだろうと俺は痛感し、大人しくシャルに今の状況を報告することにした。
「シャル、落ち着いて聞いてほしい。今テロリストのISが2機こっちに向かってきている」
「っ!だったら僕と一夏で食い止めるしか」
「……いいのか?今から行われるのはいつもの訓練じゃない本物の殺し合いなんだぞ?」
「うん、大丈夫だよ一夏。私1人だったら怖くて恐ろしくて戦えなかったかもしれない。でも一夏がいるから。エフィさんが戦っているから。だから僕は戦える!」
「分かった。無茶はするなよ」
「一夏こそ!」
俺とシャルは笑い合った後、反転し人目に入らないような場所に行った
「ここなら大丈夫かな。来い!禍津火!!」
「僕と一緒に戦って!天照!!」
2人は一瞬白い光に包まれ、光が消えると一夏はまるで"中世の騎士"のような黒いISを纏い、シャルは全体的に灰色のカラーリングのISを身に纏った。その時シャルの耳に機械音声が聞こえた。
ーー搭乗者の生体登録を完了
ーー搭乗者の生体情報を認識。
ーー警告。搭乗者の肉体強度が基準値を下回っています
(え、何なのこれ?)
シャルが少し不安になっているのを余所に音声は続いていく。
ーー肉体強度を補填するためナンマシンを注入。
(え!?ナノマシンを注入とか言った!?このIS………痛!)
天照がいきなり物騒なことを言い始めたので一度一夏に相談しようとしたときチクリと首に痛みが走った。
「ナノマシン注入されたの、私!?」
「シャル落ち着け!サーシャさんが言うには健康を害さないらしいからそれ」
「え、それ本当なの?」
「ああ、現に俺も一回注入されたけどいたって健康だし。肉体を強化されたこと以外」
「あ、やっぱりそういうものなんだ」
と話をしていたらまた機械音声が聞こえてきた
ーー搭乗者の肉体強度が基準値を上回りました。
ーー続いて搭乗者との最適化を終了しました。
ーー1次移行開始します。
その声がしたのと同時にシャルが再び白い光に包まれ、光が消えた時シャルのISに変化があった。1つはカラーリングがオレンジになったこと。もう1つは大きな翼のような物が新しく追加されたことだった。恐らくはブースターなのだろう。
「一夏、行こう!」
「おう!」
その言葉と同時にブースターに火を灯し、新人達は初めての戦場の空に飛び上がった。
テロリストのISはすぐそばまで接近していた。
「シャル!俺が先行するから援護は任せた」
「うん、任せてよ!」
俺は大型プラズマブレードを展開し、シャルはビームマシンガンを2丁展開して突出していた1機に攻撃を始めた。相手が慌てて回避している隙を見計らってシャルはスラスターを全力で吹かせて接近した。
「うそ!?こいつはやっ!?」
「落ちろぉぉぉぉぉ!」
相手がこっちにアサルトライフルを向けた瞬間に俺はアサルトライフルを両断し、脚部のビームブレイドを展開し、相手を切りつけた。
「きゃぁぁぁ!こいつ何て性能なの!?」
「タリサ!くそ、こいつよくも………ちぃ!」
「君の相手は私だよ!」
相棒が傷つけられたことに激昂したテロリストの相方が俺にアサルトカノンを向けるがすぐさまシャルがビームマシンガンを掃射した。相手は一時攻撃を中断し回避行動を取った。
「逃がすか!」
俺は2機目のISに向かってビームブーメランを投げた。だが、相手も場数を踏んでいるのかこっちのビームブーメランをぎりぎりで回避しアサルトカノンでビームブーメランを破壊した。シャルは加速しながら1機目のグラナーダにビームマシンガンを撃ったがほとんど回避され、逆にアサルトカノンで反撃を受けた。
「くっ!強い……。でも!」
シャルは
「ちっ!面倒な」
2機目のグラナーダは
ミサイルを回避しながらアサルトライフルでミサイルを撃ち落とそうとするが、そこに大きな隙が生まれた。
「これで!落ちろ!」
俺は
「ミリア、避けてぇ!!!」
「もうおせえ!!」
相手が振り返ったと同時にプラズマブレードの出力を最大まで引き上げて腕に取り付けられているサブブースターで
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!私の、私の腕がぁぁぁぁぁ!!!」
「馬鹿!ミリア足を止めないで!!」
「え?」
切られた衝撃で足を止めた瞬間、ミリアに落とし損ねた残りのホーミングミサイルが襲い掛かった。凄まじい爆発音と爆炎が生じ、煙の中から黒焦げになったグラナーダが町に墜落して行った。
「ミリア!?くそ、ミリアをよくも!!」
タリサが両腕にアサルトカノンを装備し俺に向かって乱射し始めた。
だが、ミリアはこの時怒りに我を忘れてあることを失念していた。敵はもう1機いたことに。
「背中がら空きだよ!」
「なぁ!?」
この決定的な隙を見逃さず、シャルはタリサのすぐ背後まで接近し、
「ちく………しょう」
相手のシールドエネルギーを削りつくし、体をパイルバンカーで貫かれてタリサもまた墜落して行った。
「終わった………のか?」
「一夏、これで終わったんだよね?」
「あぁ、そう……だな」
初めての実戦で凄まじい疲労感に襲われながらもこれ以上の殺戮を止めることが出来たと2人は素直にそのことを喜んでいた。
SIDE OUT
「はぁ、はぁくそ!どうして私がこんな目に………」
港につながる暗い路地裏を片腕を無くした女が足を引きずるように歩いていた。この女は先のサーシャの殺戮を運よく腕一本失うことで逃れられていた。
「話が違うぞ………IS学園と代表生と代表候補以外にあんな化け物がいるなんて………」
「うん、それは僕にとっても計算外だったんだよ」
「!?」
いきなり声がしたので振り返るとそこには今回のテロの協力者が薄い笑みを浮かべながら立っていた。
「おい、旦那!話が違うじゃないか!?あんたたちがそういう奴を引き受ける約束だろ!」
「だからそこが僕の計算外だったんだよ。まさか傭兵達がこの国に居たなんてね。それにIS学園と代表達が予想以上に手強くてね。そっちに回せる戦力の余裕がなかったんだよ」
「くそ、ふざけるなぁ!!!」
女が残った片手で青年に向かって拳銃を向ける。
「そのせいで私の仲間がみんな死んだんだ!!お前らの不手際のせいでな!!」
「おいおい。お前らが死んだ理由をこっちに押し付けないでくれるかな。」
やれやれと青年が首を振った。そんな青年の様子に女はさらに激怒した。だが青年はまるで気にしていない風に話をつづけた。
「でもま。君たちのおかげで助かったよ。おかげで現状のこの国の戦力をこっちの被害を最低限にして知ることができたよ。感謝してるよ哀れな道化師さん」
「何だ…………貴様、何をいってr」
「つまりあなたは用済みってことよ。おばさん」
後ろからいきなり少女の声がし、慌てて後ろに銃を向けようとした時にはもう女の首は胴体と離れていた。女は訳も分からないまま命を落とした。
「"千秋"お兄様。申し訳ありません」
「いいんだよ"冬香"。僕はこうして無事なんだから」
「はい。ところでどうでしたか?」
「うん。予想外な点はあったけど、大体の戦力は把握した。それに懐かしいものも見れたしね」
「あぁ、あの"人形"ですか。千秋兄さまは物好きですね」
「あれはなかなか珍しいケースだからね。っと、時間が迫ってきている。行こうか冬香」
「はい、千秋兄さま」
青年と少女はそのまま闇の中に姿を消していった。
初織斑千秋登場!いやぁやっと出せましたよこの人。なかなか登場させづらかったので今回の話で登場できてよかったです。それとこの作品の一夏とシャルは普通に人を殺せます。そして今回が初めての殺人ではなかったから特に動揺もしませんでした