~潜水艦『シュレティンガーのウサギ号』艦内~
未来から来た私とエフィが篠ノ乃束博士に抱いていた尊敬の念が壊れ、少し呆然としていた時に篠ノ乃束博士は「さあ、早く船の中に入ってきなよー!」と言い、先程出てきたハッチに戻って行った。私達も潜水艦の甲板に着陸し、ISを解除してこの潜水艦の入り口であろうハッチに入った。
潜水艦の中は作った本人があのような性格なのできっとまともじゃないのだろうと思っていたが、実際は至極まともだった。
「セイソウチュウ、セイソウチュウ」
機械の音声が後ろから聞こえてきたので振り返ってみたら、ドラム缶のようなフォルムにうさ耳を付けた珍妙な機械が(恐らく)清掃していた。
………訂正。やっぱり艦内もまともじゃなかった。
私は通り過ぎて行ったうさ耳ドラム缶を疲れた目で見送った。そのとき、すぐ横の扉が開き中から出てきた篠ノ乃束博士が仰々しく手を広げ、満面の笑みで言った。
「ようこそ!私の新しい拠点『シュレティンガーのウサギ号』へ!」
………ネーミングセンスもまともじゃなかった。私は頼りなさげに笑う命の恩人かつマッドサイエンティストが脳裏に浮かんだ。
(あのキチガイ集団の中でもまともそうに見えたあの人でも研究・開発になると気が狂ったようなことを考案してたなぁ。それでいて使用者の安全第一でお人好しで………)
私は束博士の破天荒すぎる紹介でふと未来で所属していた部隊に思いをはせていた時に隣にいた一夏が苦笑しながら変わらないですね、束さんは」と話しかけていた。
「うん!私はいつだって変わらないよ!変える気もないしね。それにしてもいっくんは結構変わったよね。前よりもたくましくなったし、明るくなった。やっぱりあいつから離れたからかな?」
「まぁ、結果的にそうなんでしょうね。俺も百春と千冬姉から離れていろいろと分かったことがあるし」
「うんうん。それにしてもサーにゃんがいっくんを引き取るとは思わなかったよ」
「……………サーにゃんは止めてください束博士」
久しぶりに聞いた不愉快なあだ名に私は少し顔をしかめながら、駄目もとで止めるように頼んでみた。
「う~んかわいいと思うんだけどなぁ。ねえねぇそう思わない?エーフィー、シャルルン?」
「私もそう思うんですけどサーシャさんそのあだ名結構嫌っているので」
「エーフィーってポケモ〇にいましたよね…………」
シャルロットは束博士の意見に同意していた。その横でエフィは自分のあだ名がポケモ〇の名前と一緒であることに複雑そうな顔をしていた。
「うーん、本人が嫌がっちゃうなら仕方ないね。じゃあさーちゃんでどうかな?」
「さーちゃんなら一向にかまいません」
それならよかった、と束博士がくるりと反転し、先程出てきた部屋に戻っていき部屋の中にあった円卓テーブルの近くにあった椅子に座り、私達を手招きした。そのテーブルにはお菓子やティーポッドが置かれていた。私達も部屋の中に入り各々席に座った。
「じゃあ、お茶会を始めよう!」
束博士がにこやかにそう宣言した。私はクッキーとチョコをほうばりながら、ここに来るまでに抱いていた疑問を束博士にぶつけてみることにした。
「ところで束博士。今回のお茶会に私達を招いた理由を聞いてもいいですか?」
「うん、いいよ。私が君たちをここに招いたのはね、ある仕事を依頼したいからだよ」
とそこで一瞬束博士が私を見たような気がしたが、すぐに視線を外したので私の気のせいだったようだ。
「報酬はもちろんはずむし、支援だってするよ。弾薬代も負担する。これでどうかな?」
私はこの依頼は何かあるのではないかと真っ先に思った。なぜなら、あまりにもおいしい話だからだ。だけどこの依頼を断るという選択肢はもとより私の中にはなかった。束博士なら陽炎を直せると思うし、今回の件で束博士とつながりができるといった利点があまりにも大きい。それに束博士なら私の失われた記憶を取り戻せるのではと思ったのだ。私は隣にいたエフィに秘匿通信でこの依頼についてどう思うか聞いてみることにした。
『エフィ、この依頼どう思う?』
『かなり怪しいですけど受けない訳にはいかないでしょう。束博士とのつながりができるのなら無茶でもやったほうがいいと私は思います』
『ふむ、そのとおりね』
私はエフィとの秘匿通信を切り、束博士に向き合った
「分かりました。この依頼お受けしましょう」
「さーちゃんなら受けてくれると思ったよ!」
「なら3つお願いがあります」
「うん、何かな?」
「1つはエフィが破損させたISを修理してくれること。2つ目はこれからも可能ならば私達の支援をしてくれること、最後は私の記憶についてのことです」
「ん?最初の2つは分かるけど最後のはなにかな?」
束博士は不思議そうな顔をしながら私に問いかけた。
「私の記憶はある時期を境に消えてしまっています。私はその記憶がどういった記憶なのかを知りたい」
私は真剣な眼差しで言った。束博士はふむ、と考え込み考えが纏まったのか顔を上げた。
「うん、いいよ!全部引き受けてあげる!ただし君が私の依頼を成功させたらだけどね」
「!ありがとうございます。」
束博士は近くにあった棚からタブレットを取り出して私に見せてきた。
「これは………研究所の見取り図ですか?」
「よくわかったね!私の依頼はツマラナイ研究をしている研究所をつぶしてほしいんだ」
「…………この研究所で行われているのは人体実験ですか?」
そのとき束博士は本当にびっくりしたような表情を浮かべた。だが直ぐにその表情を満面の笑みで覆った。
「本当にすごいね!さーちゃんは!その通りここで行われているのは人体実験だよ。ここをすぐにでも襲撃してつぶしてほしいんだ」
「なるほど、それでその研究所がある場所は何処にあるんですか?」
「研究所がある場所はね………」
そこで束博士はもったいぶるようにためた後に目的の場所を言った。
「第二回モンド・グロッソがあったドイツの軍事基地近くだよ!」
予想に反して普通のお茶会でしたね。途中から一夏とシャルが黙り込んでいたのはサーシャが記憶喪失だってことを初めて知って驚いていたからです。それと束が最初からサーシャ達をあだ名で呼んでいたのは今までの戦闘全てを見ていたからです。