IS~透明だった少女は何を思う~   作:はにゅー

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過去のサーシャを指すときは『私』にしてみました。今回はいつもよりも重い話です


第23話

 それから幾つもの場面が流れた。昔の私が家族と一緒に誕生日パーティーを開いている場面。何処かに出掛けている場面。みんなで食事をしている場面。多分これが家族との日常なのだろう。そして場面が切り替わるときは決まって白いノイズが視界を覆っていくという形式だった。それと途中で気づいたのだがある程度は歩き回れるみたいだった。昔の私がいるところを中心にして半径百メートルくらいが自由に歩ける距離で、その範囲を越えようとしたとき白いノイズに包まれて初期地点に戻される仕組みらしい。誕生日パーティーの場面の時カレンダーを調べようとしたが、カレンダーの日にちがぼやけていて読めなくなっていた。ケーキには『五歳の誕生日おめでとう』とロシア語で書かれていたため私はロシア生まれで当時五歳だったということがわかった。そしてまた次の場面に移るノイズが視界を覆ったのだが今回のノイズは白ではなく赤だった。その事に不吉なものを感じながら場面が移っていった。

 

 次に映し出された場面はどうやらクリスマスのようだった。しかし部屋の中は薄暗く、クリスマスだとわかったのは部屋に飾られていたクリスマスツリーで判断した。と廊下の方が何か騒がしくなっており、なんだろうと思い廊下を覗きこんだ。そこには血まみれで倒れている男性と白いコートに身を包んだ兵士が四人立っていた。その内の1人の兵士が持っていた銃から煙が立ち上っていることから恐らくこの兵士が殺したのだろう。外に行ってみると昔の私とアーニャと(恐らく)母が同じ格好をした兵士にトラックに積み込まれているところだった。

 

 そして今度は灰色のノイズに包まれ新しい場面へと移っていった。

 そこは備え付けの椅子とテーブル以外何もない殺風景な白い部屋だった。その部屋に白衣を着た女性と首輪と手錠をした私が座っていた。女性はニコニコと笑顔を浮かべながら警戒してる『私』に言った。

 

 「あなたが私達の言うことを従順に聞いて尚且つ結果を出せばあなたの家族には手を出さないであげる」

 「…………本当?私が頑張ればお母さんとアーニャには手を出さない?」

 「ええ、約束するわ」

 

 嘘だなと私は思った。こういう奴は平気で人を欺くことを私は知っていた。だがこの幼い私はこの研究者の言葉を信じきっているようだった。そしてまたノイズが走る。

 

 

 今度の場面は訓練をしている場面だった。見ている限りそれは彼女達にとって地獄のように辛い訓練内容のようだった。

 さらに場面が切り替わった。どうやらここは手術室のようだ。手術室の中を観察して、出ている機材などから行われている手術は強化手術であることが分かった。ここで初めて『私』が強化手術が行われたらしい。

 

 「本当に録でもないわね………」

 

 だが、まだ私が記憶を失った理由が分からない。まだ先なのだろうかと思っていたら、久しぶりに白いノイズが私の視界を覆った。

 

 視界が晴れたらそこには『私』と茶髪の少女がいた。

 

 「私はサーシャ。あなたは?」

 「私はカノン。よろしくサーシャ」

 

 と両者共に笑顔で握手をしていた。私は意外だなと思いながらその光景を見ていた。この場面はおそらくあの辛い訓練や手術が行われた後だろう。なのにまだ笑顔を見せられるなんて思わなかった。しかも見せかけではない本心からの笑顔だ。どうやらあの二人は精神的に強かったらしい。その後も『クリス』や『リエラ』が『私』とアーニャとカノンと一緒に談笑していた。

 

(クリスとリエラはこの時点で出会ってたのね)

 

クリスとリエラは私が未来で所属していた部隊の同僚だ。同じ研究所から助け出されたというのは聞いていたが、こんなに早く出会っているとは思わなかった。それからの場面を見ていると『私』とカノンはどうやら親友といえる関係らしい。カノンとの自己紹介の後の場面ではほぼ必ずと言っていいほど彼女が近くにいたしとても仲が良さそうだった。

しばらく白と灰色のノイズが続いていた時だった。また次の場面へと移る時視界が"黒い"ノイズで覆われた。いままでなかった色に不吉なものを感じていたら段々と視界が晴れて行った。

 

そこは先程から『私』が訓練していた演習室だった。その演習室にナイフを持たされた『私』とカノンがいた。この時点で私の頭に"これ"を見てはいけないという警鐘が鳴った。

 

「何でカノンちゃんと殺しあわなきゃいけないんですか!?」

 

『私』が泣き叫びながら言った。

 

『これは殺しに慣れるための訓練だ。どんな相手だろうと殺せるためのな』

「だからって!親友のカノンちゃんを殺せるわけないでしょう!?」

『君が殺さないのは勝手だがその場合は君の母親がどうなるかわかっているね?』

「!?この卑怯者!!!」

 

『私』が外にいる研究者に抗議をしていた時、カノンはゆっくりとナイフを構えて大粒の涙を流しながら言った。

 

「………サーシャちゃん、ごめんね」

「カノンちゃん!?どうして………」

「私にはね………もうお母さんしかいないのお母さんを守るためだったら私はなんだってやる」

 

カノンは必死に感情を殺しながら『私』にナイフで切りかかってきた。

 

「やめ!?やめてよ!!カノンちゃん!!!」

「いやだ!!もう家族を失うのは嫌だ!!だから死んでよ………死んでよ!!!」

 

『私』が必死にナイフを避け続けていると

 

『サーシャちゃん、何をしてるの?早く目の前の敵を殺さないと君の妹とお母さんがどうなっても知らないよ?』

「!?」

 

ずっと逃げ続けていた『私』に研究者達は脅しをかけてきた。『私』は一気に冷静さを失った様子でカノンに切りかかった。カノンが『私』の攻撃を受け止めた時その勢いを殺さずにスライディングをしてカノンの足を蹴った。カノンは顔をしかめただけで倒れずに右足を上げそのまま『私』の腹にかかと落としを放った。『私』はそれを横っ飛びに無理やり飛んでバランスを崩したのかそのまま転がって行った。カノンは立ち上がろうとしていた『私』に走った勢いを乗せて蹴り飛ばした。また『私』は転がっていき壁にぶつかっていた。

 

「これで、終わり!!」

 

カノンはナイフを逆手に持ち『私』に振り下ろしたがぎりぎりで『私』がカノンの腹部にナイフを刺した。カノンのナイフは『私』の肩に深く刺さったが『私』はそれを気にせず何度も何度も執拗にカノンにナイフを突き立てた。数分が経ち『私』が我に返ったのかナイフを振り下ろすのを止めた。最初はきょとんと真っ赤に濡れた自分の右手を見つめていたが次第に現実を思い出したのか体が震えだしナイフを落とした。

「ち、ちが!私こんなつもりじゃ………」

 

『私』がカノンの体に触れた時、気づいたのだろう。

 

 

もうカノンは助からないということに

 

 

 

「あ、あ、あああああああああああああああああああ!!!!」

 

『私』が半狂乱したように泣き叫んでいた。その目からは光が消え失せていた。研究者達は愉快なショーを見たかのように笑っていた。

とそこでいきなり意識が遠くなりはじめた。

 

 

 

未だ鳴りやまぬ少女の慟哭とそんな道化をあざ笑う嘲笑がいつまでも耳に残り続けた。




今回でサーシャの記憶旅行はひとまず終了です。続きはまたいつかやります
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