~甲板上~
現在、私は起動試験を続けている二人の様子を見に甲板の上に来ていた。空を見上げるとさっきと変わらずにオレンジと緑の閃光が高速で飛び交っていた。私は義眼の望遠機能を使って何をやっているのか確かめることにした。
シャルロットがハイブリッドガトリングガンを使い飛んできていたミサイルを迎撃しているのが見えた。ハイブリッドガトリングガンとは二門のガトリングを内蔵した武装であり実弾とビームで分かれているのが特徴だ。ただ反動が凄まじく並みの兵士じゃ扱いきれないくらい難しい兵器のはずなのだがシャルロットはそれを使いこなしているようだった。
迎撃したミサイルの爆炎の影からエフィが連射式アンチマテリアルライフルでシャルロットを狙撃していた。あれもあれでまず連射したら当てられない代物なのだがエフィはうまく衝撃を逃がしているようだった。その努力を少しくらい近接能力に向けたらいいのにあの少女は全ての才能と努力を狙撃に捧げていた。なので今でも近接格闘能力は初心者の一夏に完封されるくらい弱い。狙撃銃を握らせたら右に出るものはいない位には強いのにどうしてあんなに極端になってしまったのだろうか。
エフィの狙撃を数発もらってしまったシャルロットはよろめきながらも必死に立て直そうとした。ところがもう一発頭に狙撃を食らってしまった。最後の一撃でエネルギーが尽きてしまったのだろうかシャルロットはうなだれながらこちらに降りてきた。エフィもシャルロットに続くように下に降りてきた。
「うーん、やっぱりエフィさんは強いな………エフィさんの狙撃全然避けられないや」
「あはは。狙撃だけが私の取り柄ですからね。狙撃だけはまだ誰にも負けるつもりはありませんよ」
「二人ともお疲れ様」
私は最初から用意しておいたタオルとスポーツドリンクを二人に投げ渡した。
「とと、ありがとうございます。サーシャさん」
「あう、うう………ありがとうございます、サーシャさん………」
シャルロットはそれらを危なげなくキャッチしたのに対しエフィはどちらとも落としてしまっていた。こういうところでもどんくささは発動しているようだった。私はそれらを拾って手で渡した。
「相変わらずどんくさいわねエフィは」
「うぅ………」
エフィが落ち込んでしまったが特に慰めるつもりもなかった。
「ところで二人とも。今下で束博士が何か面白いことをしてるみたいよ」
「え?篠ノ乃博士は一体何をしてるんですか?」
「は、はい。私も気になります!」
シャルロットとさっきまで落ち込んでいたエフィは何か怪訝な目で言ってきた。束博士がどういう性格をしているのか分かっているので束博士の「面白い」ことというのは彼女たちにとって碌でもないことという認識になっているのだろうか。もちろん私は今下で何が起きているのかは知っているが楽しみを奪うつもりは毛頭ないので言わないことにした。
「私も束博士が何をやっているのかは知らないけど『みんなを連れてきてね☆』って言われてたから呼びに来ただけだし」
「じゃあ着替えてから行きますか」
エフィとシャルロットが着替えに艦内に行ったので私も続いて艦内に向かった。
***
シャルロットとエフィが着替え終わり先程お茶会をした部屋に入るとそこにはにやにやしている束博士といつも通りの無表情なクロエと顔を真っ赤にしている
「えっと………誰?」
「あれ?誰ですかこの綺麗な女の子は?」
シャルロットとエフィがほぼ同時に自分の疑問を口に出したとき黒髪ロングの美少女はもう耐えきれないと言わんばかりに両手で顔を覆って崩れ落ちたのに対しもう耐えきれないと言わんばかりに束博士が笑い出した。私も流石に可哀そうになってきたのでネタばらしをすることにした。
私は自分ができる精一杯の笑顔で目の前の美少女に話しかけた。
「随分可愛くなったね一夏」
「ほんと勘弁してくださいよ。これくそ恥ずかしいですし…………」
「ええ!?君一夏なの!?とっても可愛いんだけど!!」
「お、落ち着いてくださいシャルロットさん!感極まって一夏ちゃんに抱き着かないでください!」
「あんたが一番落ち着けよ!俺のことをちゃんづけで呼ばないでくれ!それとシャルはちょっと離れてくれぇ!!」
「うあはははははは!!いいね可愛いよ一夏ちゃん!!」
「うるせえよ!この駄兎!!」
リビングルーム内がとってもカオスなことになっていた。これから大事な話とシャルロットとエフィに一夏が女装をすることになった事情を話さなければならないのでとりあえずまだ冷静なクロエと一緒にこの場の鎮静化を図ることにした。
数分かけて場の鎮静化を行い、みんな落ち着いたところで私はエフィとシャルロットに事情を話した。そこからまた数分かけて説明してようやく納得してもらえた。
「さて、女装した一夏の新しい偽名について発表します」
「また唐突っすね!」
「戦場で女装するんだから偽名は必要でしょ?今回は束博士とクロエと私で考えてみた結果」
「やっぱりあんたらグルだったのかよ!!」
「だまらっしゃい。一夏の新しい偽名を発表します」
「だららららららららららららら」
「セルフドラムロール!?」
と区切ったところでクロエが律儀にドラムロールをしてくれた。やっぱりその辺りのことも束博士に仕込まれたのだろうか。まぁクロエが楽しそうなのでよしとする。
「一夏の新しい偽名は『音無 奏』に決定しました」
「それ完全にあんたの趣味じゃねえかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「いいじゃん、その辺りは私の趣味で」
「よくねえよ!ちゃんと真面目に考えろよ!」
「ちっ。注文の多いやつね」
「今舌打ちしたよな!!」
一夏が色々と言っていたが数ある候補の中でクロエが選んでくれた名前だったので私としてもそれを尊重したかったし、何より私と束博士がとても気に入ったので変更はなしのつもりだ
「別に私の趣味じゃなくてクロエが選んだ奴だから」
「あの………だめでしたか?」
「いや気にいったよありがとうクロエ」
クロエが涙目上目づかいで一夏に訴えかけた瞬間一夏は速攻で折れた。やっぱり一夏もクロエの涙には敵わなかったようだ。
「じゃあこれからいっくんにはうーちゃんとさーちゃんと一緒に女らしさという奴を学んでもらうよ!」
「………マジすか?」
「何で私まで………」
「がんばります!」
何故かは分からないが私とクロエも巻き込まれた。クロエは妙に張り切っているが私と一夏はやる気がなかった。だがエフィとシャルロットが張り切っており束博士に出入り口を封鎖されている辺りどうやら私と一夏に逃げ場はないらしい。じりじりと迫ってくるシャルロットとエフィを見て私と一夏互いに見合わせて諦念のため息を吐き、シャルロットとエフィに掴まれてズルズルと連行されていった。
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~とある一軒家にて~
「くくくく」
薄暗い部屋の中で少年がくぐもった笑い声を上げながらノートにあることを書いていた。
「この作品の主人公だった織斑一夏はもうこの世にはいない。他の連中の記憶から一夏の存在を消し去った。箒と鈴のフラグを立てた。全ては俺の計画通り」
正確にはサーシャの手によって鈴とのフラグは完全にへし折れているのだが百春は全く気付いていなかった。これからの計画書を書く手を止めいずれ来るだろう栄光の未来を思い浮かべながら言った。
「この物語の主人公は俺だ!!」
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~???~
「千秋お兄さま」
暗がりから少女が出てきて作業をしていた少年に話しかけた。
「ああ冬香か。どうした?」
「先日行った戦闘データの解析が終了しました」
「ありがとう、冬香」
「いえ。………その機体は?」
冬香は千秋が何の作業をしているのか気になって聞いてみた。千秋は笑いかけながら今行っていた作業の説明
をした。
「今やっていたのは新型ISの開発だよ。フレームだけは何とか完成したんだ」
「というとその機体が」
「ああ。冬香の新しい剣となる機体。第7世代型IS『紅玉』だよ」
「『紅玉』………」
冬香は末完成ながらも他とは違う存在感を出す赤い騎士を見つめながら思わず口に出していた。
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様々な人の思惑が交錯しながら第一幕は幕を閉じる。次の舞台は二年後のIS学園
次の話からようやく原作の話です。ここまで結構長かったですね。