始まりのプロローグ
2150年現在、急速に発達した宇宙開発によって宇宙に進出した人類と度重なる戦争によって汚染された大地に住み着く人類とで大規模な戦争が勃発していた。その戦争の引き金は宇宙コロニーからの使者が式典の最中に何者かに射殺されたからだと教官から教えられたが実際のところは起きるべくして起きたのだと俺は思っている。何故なら、地球の人々は昔から宇宙の人々を差別していたし、宇宙の人々は地球の人々を見下していたので両国の関係は昔から冷えきっていたのだ。憎みあっていたのだ。関係の修繕のしようがなかった。だが、その両国の関係を何とかして改善したいという人間が現れた。それが前述の宇宙コロニーからの使者なのだが、俺はこれが仕組まれていたものだと思っている。当然だ。なぜなら地球側はともかく宇宙側には地球に戦争をふっかけたい理由があるのだがこの考察は割愛させていただく。このことを書いていると本当に長くなるからだ。
そしてこの戦争の主戦力はインフィニット・ストラトスと呼ばれるパワードスーツだ。約百五十年前に篠ノ乃束博士によって作られた。現在稼働している
「ふぅー、やっと終わったぁー」
俺は背伸びをしながらペナルティで出されたレポートを保存し印刷ボタンをクリックした。誰だってこんな面倒くさい課題を好き好んでやりたくないものなのだ。
とそこで突然俺の部屋の扉が開いた。
「冬樹終わったー?」
「美鈴………幼なじみでもノック位しろよ」
「女の子じゃあるまいし別にいいじゃない」とのたまいながら俺のベッドに腰かけたのは幼なじみの鳳美鈴だった。
「ていうかお前はレポート終わったのかよ?」
「当然もう終わってるわ」
ヒラヒラとペナルティのレポート三枚をひらひらと俺の前に見せていた。
「………早くね?」
「まぁね」
フフンと得意気な顔をしているが、つまりレポートを書く位教官からペナルティーのレポートを書かされているということなので自慢できることではないと俺は指摘したくなったがここはグッと抑えた。俺はどこか子どもっぽいこいつとは違って大人なのだ。
「不良の安い挑発に簡単に乗る人が大人というのね~。私始めて知ったわ」
「俺の心読むなよ」
「あんたの考えてることなんて簡単に読めるわよ単純だし」
「うぐっ」
確かに俺は単純だと我が姉から口うるさく言われているが、そんなに分かりやすいものなのだろうか?
「そんな下らないことよりレポート終わったんなら早く出そうよ。新型のIS早く受領したいしね」
美鈴がそう言ってきたのでそれもそうだなと思い、今印刷が終わったレポート用紙を掴んで俺たちの上司の元に向かった。
* *
スペースコロニーの発着口に一つの輸送機が入ってきた。輸送機からは灰色の髪をした中学生位の少女に銀髪の女性と金髪の女性が連れ添う形で降り立った。
「全く博士は早く新型を見たいからといって私たちに高速輸送機で迎えに行けって言うなんて。」
金髪の女性がやれやれと呆れた様子だったが銀髪の女性がジト目で金髪の女性を睨むようにして言った。
「博士は"おとなのれでぃ~"の全裸を見るより新型のISフレームを見た方が興奮するようなISキチだから馬鹿にしないで」
「いやなんか随分生々しい例え方なんだけど。それとサーシャの方が博士のこと馬鹿にしてるし」
「私語は慎みなさいサーシャ・エーデルバイン大尉、クリス・ルクレール大尉」
「「申し訳ありません、ヴィクトリア・クロニクル大佐」」
サーシャとクリスは直立してヴィクトリアに謝罪したがヴィクトリアはくすりと笑いながら「冗談ですよ」と二人に告げ「それに」と続け
「博士が超弩級の変態なのは周知の事実じゃないですか」
「うわぉ、いつも以上に辛辣ですね~。ってあれ?もしかしてサーシャが言ってた博士に裸を見られた"おとなのれでぃ~"ってもしかしてヴィ……」
「口を慎みなさい。今年の給料半分にしますよ」
「イエッサー!!やっぱり気のせいでありました!!」
「よろしい」
情けない程に態度を変えて自故保身に走った同僚と敬愛する博士に裸を見られた上に博士がほぼ同時に到着した新型のジュネレーターの設計図に興奮して何のリアクションも出されないという二重の屈辱を味あわされたという上官のやり取りを冷たい目で見ながら、サーシャはなんでこう自分の身の回りには変人が多いのかと嘆いていたがサーシャのことをよく知っている人が見ていたらこう言っただろう。「お前にだけは言われたくない」と
その後も上司に関する愚痴を言いあいながらジープに乗り、目的地である軍事区画に向かった。
「しっかし地球連邦はなかなか大胆なことをしますよねぇ~。中立地域のコロニーに軍の最高機密である
「戦況が戦況なだけに結構余裕ないみたいですよ。上の人たちも」
「あぁ………。頼みの綱の
「禍津火に適合できない理由が分からなかったから博士結構落ち込んでたし」
禍津火は今から二か月前に
「でもさ大佐~。その新型の操縦者まだ養成所から出たばっかりなんだっけ?大丈夫なの?」
「はい。一応腕はいいみたいです。素行に多少問題があるみたいですけど」
「多少やんちゃな方が操縦者に向いてると思うな~」
とそのときだった。目的地である軍事区画から大きな爆発音と共に大きな炎が吹き荒れているのが遠くからでも見えた。
クリスは顔を強張らせながらポツリと呟いた。
「ねぇ、あの爆発が起きた場所ってさ新型が開発されてる場所の近くじゃなかったっけ?」
「ただの事故………というわけではなさそうですねあの様子では」
「だとしたら
と結論づけると共にクリスとサーシャはシートベルトを外して車の扉を開いた。ヴィクトリアは通信機を起動させながら二人に告げた。
「二人とも、早急に軍事区画に向かい新型とデータ、操縦者の保護を最優先に。敵は最低一人出来れば指揮官辺りを生け捕りにしてください。聞きたいことがあるので」
「「了解」」
その瞬間二人は車から飛び降りたと同時に『不知火』を展開しスラスターを全開にして軍事区画に急行した。ヴィクトリアはそれを確認しながら通信機で今起こっていることの把握をしながら軍事区画の指令室に急いだ。
『不知火』
第六世代中期に開発された機体。展開装甲を搭載しないことで継戦能力を向上させた。さらに新開発された試作マルチスラスターによって一定の機動力を確保しているものも展開装甲搭載機と比べると若干運動性に欠ける。しかしその分武装を多く積み込めるようになっているため火力の面は上回っている。この不知火をもとに後継機となる陽炎が製造された。