冬樹と美鈴はペナルティの書類を持って上司の部屋に訪れていた。重圧を放っている上司の部屋の扉を見て、冬樹はごくりと喉を鳴らしながら恐る恐るノックをした。
「失礼します。織斑冬樹一等准尉と鳳美鈴一等准尉です。ペナルティーのレポートを提出しに来ました」
「よし、はいれ」
俺と美鈴が部屋に入るとそこには凛とした大人の女性の雰囲気を持つ
「これがペナルティーのレポートです」
俺と美鈴が十夏姉にレポートを渡すとパラパラと俺たちのレポートを流し読み、読み終わった時には呆れた様子になっていた。
「よくもまぁここまでレポートを書き慣れたものだな」
「いえいえそれほどでもありません」
「いや全然誉められてないぞ美鈴」
美鈴は昔から十夏姉に憧れているのは知っていたが何か最近拗らせてきてるなと養成所を卒業してからの美鈴の言動を振り返りながら思った。憧れの十夏姉に会えて興奮しているのは分かるがもうちょっと落ち着きをもって欲しいものだ。
「それにしてもいくら一般市民のか弱い少女達を助けるためとはいえ不良十人を病院送りにしたのは少しやりすぎではないのか?」
「そ、それは流石に数が多くて手加減する余裕なかったしさ」
ちなみにその病院送りにした十人のうち六人をやったのは中国のカンフーマウンテンゴリラこと美鈴だったりする。こいつは身長と胸が小さい代わりに身体能力がずば抜けている上に本人の性格がかなり好戦的なのだ。なので彼女が喧嘩したら大抵は病院沙汰になることが多い。
「確かにお前達は正しいことをした。だがお前達はもう軍人だ。加減くらい覚えろ。これ以上問題を起こせば流石の私でも庇いきれなくなる、いいな?」
「はいすみませんでした!!」
「頑張って加減を覚えます!!」
「よろしい」
十夏姉が俺たちの返事に満足したように頷くと引き出しから旧世代の電話帳のごとく分厚い本を二冊取り出した。俺と美鈴は思わず顔を青くした。
「…………えっとそれは?」
恐る恐るといった感じで美鈴が聞くと十夏姉が不敵な笑みを浮かべた
「これは新型のISの
「ちょっと待ってくれ、こんなに分厚くなるくらい注意事項が多いんですか!?」
「当然だ。お前達も聞いたことくらいはあるだろう?第七世代のコンセプトは」
十夏姉の問いに俺はうろ覚えの知識をなんとか引っ張り出したどたどしい口調で答えた。
「ええと、確かシールドスキンを上回る防御と展開装甲を越えた機動力を持ち、戦艦級の兵装をぶんまわすことができる新世代の機体………だったかな」
「その答えでは満点はやれないがまあいいだろう。正しくはそれ一つで戦況をひっくり返すことができる超兵器、
「……俺の肩パージしませんよね?」
「多分大丈夫らしいぞ」
「全然安心出来ないんですけど」
「まぁ、今回の新型は
最後に何か聞き捨てならないようなことを聞いたような気がしたが一々追及していたらきりがないのでここはスルーをすることにした。
「それでは私たちはこれから開発者達に新型の説明をしてもらいに行くので失礼します」
「ちょっ!?おい待てって!あ、失礼しました!!」
「……相変わらずそそっかしいなお前達は」
これ以上不安になることを言われたくないのか美鈴は無理矢理会話を断ち切るように言うと俺の手を掴んで部屋から出ていった。部屋を出る時に十夏姉の溜め息混じりの呟きは俺の耳には届かなかった。
*
俺達は十夏姉に渡された分厚い
「ふむふむ、なるほどよくわかったわ」
「何がわかったんだよ?」
美鈴はある程度納得したような様子で
「えぇ、よくわかったわ……。この機体を作った奴等はただの変態だってことがね!」
電話帳の如く分厚いそれを床に叩きつけながら叫んだ美鈴。その様子はまるで怒り狂った虎の如く恐ろしかった。
「なによ!この
「お、落ち着けよ美鈴!もしかしたらちゃんとまともなものがあるかもしれないだろ!」
慌てて俺が
「ねぇ。多分これ狙撃銃の分類よねこれ」
「…………そのはずなんだけどな」
おかしい。何がおかしいって何で砲身が戦艦のものなんだということだ。確かに戦艦級の砲身だったら威力も出るし射程も長いだろう。それにこの第七世代は戦艦級の武装も扱えると書いてあった。
「だからって本当に戦艦の主砲を持ってくるか普通さぁ……」
それだけならまだよかった。第七世代の性能を引き出した武装だなと言えた。でもこのライフルの砲身の下にくっついているもの。それだけは許容できなかった。
「何でライフルの砲身の下にチェーンソーがくっついてるんだよ!」
これだった。銃剣やグレネードとかくっつければ取り回しがかなり悪そうだけど使える武装だなと胸を張って言えた。でもチェーンソーってなんだよ。よりにもよって何でチェーンソーを取り付けたんだよ。ロマン求めてるならパイルバンカーでもいいだろ。これじゃただのネタ武器じゃねえか等を開発者に小一時間程度問い詰めたくなったがどうせ録な返事が返ってこなさそうなので止めた。
「これ以上これを読むのは止めようぜ」
「異義なし」
俺達は何も見なかったことにしてマニュアル閉じた。誰だって自分の胃は大事にしたいのだ。
そんなことをしている間に無駄に分厚い金属の壁に覆われている第一ラボに到着した。俺達は十夏姉の部屋に入るとき以上の緊張感を持って部屋の扉を開けるために十夏姉に事前に渡されていたIDカードを専用の機械に差し込んだ。ガチャガチャと金属音がした後にギギギと音を鳴らして扉が開いたそこには
悲鳴と銃声が鳴り響く戦場と化していた
「「……………は?」」
俺達は訳がわからなかったがとりあえずここに棒立ちになっていては危険だと判断し大急ぎで近くの遮蔽物に隠れた。
「ちょっとどうなってんのよこれ!?」
「俺に聞くなよ!なんだ、どうなってんだよこれ!あれか?最近の研究者は自分達の職場で撃ち合いでもするのかよ!」
「いやぁー。流石の私でもそんなロックなことはたまにしかしないなぁ」
「だ、誰なの?」
「私?私はここのラボの主任の篝火ホタルだよ、よろしこ~」
「それで篝火さん今はどんな状況なんですか?」
「ええとね。第二ラボで伊邪那美の調整が終わった瞬間にね、数人の研究者が拳銃取り出して乱射し始めてね。そのあとすぐに覆面被った人達がアサルトライフルばらまきながら調整が終わってた伊邪那美を奪っていったらしいのね」
「え?ちょっと待ってください。確か伊邪那美って私が乗るはずだった機体ですよね?」
美鈴がわなわなと手を震えさせながら篝火に聞いた。
(あ、これはまずい)
幼馴染みの様子に危機感を感じた瞬間だった
「うん、そだよ」
(言ったぁぁぁぁぉぁ!!爆発寸前の美鈴にストレートに言いやがった!)
「お、落ち着けよ美鈴……美鈴?」
美鈴は湧き出る怒りを無理矢理押さえているかのように体を震わせいてたが、その震えが急に止まり満面の笑顔を浮かべながらちょうど近くに転がっていたアサルトライフルを拾い上げ、
「ぶっ殺す」
「待て待て待て待て!!」
「止めないで冬樹あいつらぶっ殺せない!」
「落ち着け美鈴!まだ状況が完全にわかってねえだろうが!」
完全に目が据わっている美鈴をどうにか羽交い締めしているのを篝火は「青春だねぇ」とニタニタと笑いながら向かって来る兵士たちの頭をヘッドショットをするというカオスな空間が生まれていた。