機動戦士ガンダムSEED Urd   作:めーりん

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今回はアニメで散々な目に合わされた彼の救済です。


PHASE-10

‡‡‡‡‡

 

C.E.71 4月15日オーブ近海

 

「レーダーに反応!数3・・・・いや4!!」

 

「機種特定。イージス、バスター、ブリッツ、デュエル!」

 

「潜んでいた・・・!?網を張られていたのか!」

 

「対潜、対モビルスーツ戦用意!逃げ切れれば良いわ。クロガネ三佐が立ててくれた作戦通り、逃げ切れればいい!」

 

オーブ領海を抜けてすぐ、それを察知したザラ隊が発進、アークエンジェルを待ち構える。ブリッジでは即座に戦闘態勢が取られ、ECM強度が上げられ、スモーク・ディスチャージャーが投射、煙幕が展開される。

 

「進路クリア。スカイグラスパー、ケーニヒ機発進どうぞ!・・・・気をつけてね」

 

フラガのスカイグラスパー1号機と、志願したトール・ケーニヒのスカイグラスパーが発進する。キラのストライクも、煙幕に紛れて甲板上で補助動力を受けたランチャーストライカーを構える。

 

「煙幕!?しかも支援機が二機!?」

 

「姑息な真似を!」

 

「よし、上等だ!坊主の支援、任せる!」

 

「は、はい!こちらスカイグラスパー、ケーニヒ。ストライク、クロガネ三佐、聞こえますか!?敵の座標と射撃データを送ります!」

 

「了解」

 

「了解した」

 

煙幕と投射されたスモーク・ディスチャージャーを突き抜けて発進した二機のスカイグラスパー(フラガ機が先行し、ケーニヒ機が続く)にデュエルASがビームライフルを連射する。フラガ機を狙ったその流れ弾をトールも危ういながらも回避、ストライクとスバルのとある機体に情報を送信する。

 

それを受けてランチャーストライクが320mm高インパルス砲"アグニ"でザラ隊の4機を狙撃する。

 

「進路クリア。ランスロット発進、どうぞ!」

 

「っ・・・・!」

 

「ッ、ストライクぅぅぅぅ!!!!」

 

「こっから先には・・・・イザーク!下だ!」

 

 

補助動力ケーブルを引き抜いたランチャーストライクが、突撃を開始する。アグニを回避したイザークが、激昂しつつビームライフルを構えるが、ディアッカが警告を発する。

 

「ストライクに固執しすぎだ、イザーク・ジュール」

 

「な・・・・シグーだと!?しま・・・!?」

 

「イザー・・・・ぐあ!?」

 

「イザーク!ディアッカ!」

 

「アレに誰が乗っているんだ!?」

 

スモーク・ディスチャージャーと煙幕に紛れて発進したもう一機の機体。皮肉混じりに"ランスロット"と通称を付けられたそれに乗る、オーブ軍三佐"スバル・クロガネ"は皮肉気味に笑みを浮かべつつ背面飛行させている新たな愛機(と、言っても急拵えの魔改造機)の左手のビームライフルを二連射、デュエルとバスターのグゥルのブースターを撃ち抜き、グゥルのバランスが崩れたバスターに、タイミングを合わせるように突っ込んできたランチャーストライクが蹴りを叩き込み反動で反転、ついでにデュエルASを蹴落としつつアークエンジェルに戻ってゆく。突如現れたその機体に、ニコルもアスランも驚くしかない。

 

 

「アスラン、ストライクが・・・・」

 

「空中で喚装だと・・・・!?それに通信・・・・!?」

 

フラガ機の支援を受けたストライクはエールストライカーを装備、その様子にニコルとアスランは再び驚かされる。さらにイージスに"味方からの"通信が入る。怪訝そうにそれを受けるアスラン

 

「久しいな。アスラン、ニコル。イザークもディアッカも相変わらずそうで、ある意味安心したぞ」

 

「な・・・・!」

 

「その声は・・・・!」

 

「まさか・・・・!生きていたんですか!?」

 

「スバル・クロムハーツ・・・・・!」

 

通信機から聞こえてくる(仕方のない結果とはいえ)皮肉気味の声。その声にザラ隊の面々はそれぞれが反応を示す。

 

「貴様!何故足つきと共にいる!裏切ったのか!」

 

「スバル、無事だったんですね!?」

 

「ああ。ご覧の有様だが、ピンピンしているさ。それにしてもイザーク、裏切ったとは酷いな。やむを得ず、とはいえMIA認定を行ったお前たちが、プラントに最終的には報告したんだろう?なら最初に裏切ったのはそちらだろうに。・・・・・捜索すらしなかったお前達に裏切り者扱いされる謂われはないぞ」

 

海面に叩きつけられ、一度母艦に帰還したイザークが怒鳴る。ニコルは彼が生きていた事を純粋に喜んでいたが、スバルの言葉に表情を暗くする。

 

 

「貴様らの知る"スバル・クロムハーツ"は死んだ。ここにいるのは"スバル・クロガネ"だ!!」

 

宣言と共に左手のビームライフルを構えるランスロット。ニコルやアスランは、苦虫を噛みしめたような表情で応戦するしかなかった。

 

‡‡‡‡‡‡

 

「ニコル、落とされたくなければ引け!・・・・・俺もお前やアスランは落としたくない。俺の目的はお前たちを落とすことではなく、アークエンジェルをアラスカまで送り届ける事、お前たちを殺す事じゃない」

 

「そんな・・・・!スバル・・・・!」

 

大きく事態が動いたのは浅瀬に戦場が移行した時だった。スバルの言葉にかなり動揺し、牽制にすらなっていないビームライフルを放つニコルのブリッツに急速接近したランスロットが、右手に持ったビームサーベルでブリッツのトリケロスを有する右腕を下から切り上げるように肩から斬り落とし、左手のライフルでグゥルを破壊。バランスを崩し、落下するブリッツの左手を掴んで近くの孤島に下ろす。

 

その間に更に戦況は大きく動く。イージスもグゥルを失い同じ孤島に降下、ソードストライカーに喚装したストライクと交戦していたのである。

 

 

「スバル!離してください!このままではアスランが!」

 

 

 

「武装を失ったお前に何が出来る!囮になって死ぬ気か!?」

 

 

 

フェイズシフトダウンをしたイージスを見てミラージュ・コロイドを起動するブリッツ。しかしその姿が完全に周囲に溶け込む前にスバルのランスロットがブリッツの左腕のグレイプニールを掴んで引き止める。

 

 

 

「でも!それでも僕は!!」

 

 

 

「ッ・・・・・ニコル!!」

 

 

 

対艦刀"シュベルトゲベール"を構えるストライクを見て、左腕のグレイプニールをパージ、ランサーダートを掴んで走るブリッツに、スバルは思わず歯噛みし、ランスロットの左手に、キャットゥスを構えさせる。

 

 

「アスラン!」

 

「ニコル・・・!」

 

「くっ・・・・!キラ!脚部を狙え!」

 

「ッ・・・・!」

 

接近してランサーダートを突き出すブリッツに反応し、咄嗟にストライクに回避行動をとらせながらシュベルトゲベールを凪ぎ払うように振るわせてしまうキラ。アスランは目を見開く。

 

「え・・・?うわぁぁぁぁ!?」

 

「ニコルぅぅぅぅ!!!」

 

「な・・・・!。ニコル!?」

 

「ストライクぅぅぅぅ!!!」

 

「キラ、引くぞ!深追いする必要はない!」

 

 

足元から下半身にかけて爆発が発生し、さらにシュベルトゲベールによって下半身と上半身が泣き別れになるブリッツ。ニコルの悲鳴と共に、途切れる通信。母艦から再発進して追いついたディアッカの驚いた声とイザークの憤る声。イージスの周囲にキャットゥスを牽制射しつつブリッツの上半身を抱え、離脱するスバルのランスロットと続くストライク。

 

イザークやディアッカが敵討ち、とばかりに武器を構えるが、ランスロットとアークエンジェルからスモーク・ディスチャージャーが放たれ、アスラン達は二機とブリッツの上半身を見失うのだった。

 

‡‡‡‡‡

 

アークエンジェルに帰還するストライクとランスロット。二機のスカイグラスパーも帰還する。

 

 

「坊主・・・・」

 

「アイツは俺達と違って元は民間人だ・・・・・・・ほっといてやれ。それにあの四機のパイロット、スバルの知人だったそうだしな。今回、坊主は知り合いの友人と戦う羽目になったんだ・・・・。仕方なかったとはいえ、キラはスバルの知人を既に二人も殺しちまってるんだぞ!」

 

「あ・・・・・」

 

機体から降りてきたキラを出迎えたマードック達。しかしキラは彼ら一人が思わず言った"今まで散々やってきたのに"という言葉に憤る。ムウがマードック達を窘めるとキラを追いかける。申し訳なさそうにマードック達は格納庫の片隅に目をやる。そこには上半身"だけ"のブリッツと、そこに向かうスバルの姿があった。

 

「俺達は次に備えよう。まだ油断は出来ねえんだ!作業急げよ!」

 

マードックが声を張り上げて整備士達を散らせる。そして彼はスバルに近寄る。

 

 

 

「その、三佐・・・・アイツらもそんなつもりで・・・・って三佐、何やってるんで!?」

 

申し訳なさそうに話しかけるマードック。顔を上げたマードックの前でスバルはブリッツの上半身に取り付き、なにやら操作を行う。

 

「軍曹、今すぐストレッチャーと医務室に連絡を。・・・・早く!」

 

「はい!?ぅえ・・・・直ちに!」

 

開かれたコクピットを覗き込んでいたスバルがマードックに指示を出す。その切羽詰まった有無を言わせない声音に、マードックも思わず大慌てでその指示に従う。

 

「ニコル・・・・・」

 

先程と異なり、ややホッとしたスバルの声音。開かれたコクピットには額から血を流し、気絶してこそ居るが、ブリッツのパイロット"ニコル・アマルフィ"がいた。

 

‡‡‡‡‡

 

「つまり、貴方は彼を助けてほしい、と?」

 

「無理を言っているのは分かっている。だが彼は俺の友人で怪我もしている。今現在、アークエンジェルに彼を友人といえるのは俺しか居ないんだ。頼む」

 

「私は反対です艦長!あの機体は我が軍から奪取された物、怪我をしているとはいえ、パイロットはザフトの人間です!我々の敵なのですよ!?」

 

ブリッジ通信を繋いだスバル。マリューも複雑な表情で副官のナタルの言葉を聞く。

 

「ナタル、その持論だと、スバル三佐も敵だった、ということになるわよ?今、彼はオーブ軍の士官だけど、元々はザフトの軍人。私たちが撃破したバルトフェルド隊の生き残りだわ。それにオーブに入港する直前の戦いでも、彼の機体は我々を攻撃していたのよ?」

 

「それは・・・・・!」

 

マリューの言葉に、自分がどれほど危険な考えで物事を口にしていたか気づき、慌てるナタル。気まずそうにモニターを見るが、スバルは表情一つ動かさずにいた。

 

「軍人としては、まあ、当然の反応だろうな。俺みたいな甘い考えの方がむしろ異端だろう。ラミアス艦長、こちらの要請の件、どうしても無理か?」

 

「・・・・先程のバジルール中尉の失言もあります。許可しますが、こちらで選んだ見張りなどは、付けさせていただきますよ?」

 

「構わない。艦長の寛大な判断に感謝する」

 

スバルの言葉にマリューは妥協案と共にスバルの頼みを了承する。スバルが通信を切ると、ナタルが更に申し訳なさそうにする。 

「申し訳ありません艦長。この罰は・・・・」

 

「彼の言うとおり軍人としてはアナタが正しいのでしょうね。でももう少し臨機応変に、なおかつ冷静に物事を判断して言葉にしなさい、ナタル。彼の好意もあります。今回は不問にします」

 

ため息混じりに告げるマリュー。ナタルもかなり反省した様子で敬礼し、その場を後にするのだった。

 

‡‡‡‡‡

 

アークエンジェル医務室内

 

「・・・・・う・・・ここ・・・・・は・・・・・・」

 

アークエンジェルの医務室。そこのベッドでニコル・アマルフィは意識を取り戻した。

 

「目が覚めたか、ニコル」

 

 

「スバル・・・・っつぅ・・・・」

 

「肋骨二カ所にヒビが入っている、無理をするな。俺も咄嗟の行動だったとは言え、キャットゥスとグレネードの衝撃まで、フェイズシフトは防げない。さらにシュベルトゲベールの一撃もあったんだ。この程度の怪我、さらに五体満足なのが奇跡だよ」

 

備え付けの椅子に腰掛け、リンゴの皮を剥いていたスバルが声をかける。それにより意識が完全に覚醒したニコルが思わず上半身を起こすが、痛みに呻く。起き上がる手助けをしたスバルが、優しく彼に体のことを教える。

 

「その、一体何が・・・・それに、キャットゥス?グレネード・・・・?」

 

「気がつかなかったのか?」

 

「あの時はただ、アスランを助けたくて必死でしたから」

 

スバルの顔を見ながらニコルが問う。彼の言葉に苦笑しながら答えざるを得ないニコル。

 

「お前の機体"ブリッツ"のミラージュ・コロイドシステムは展開中、フェイズシフトは張れない。そして解除と同時にフェイズシフトを展開する。そしてフェイズシフトは先程言ったとおり"衝撃"までは防げないし、一定の攻撃までは防げない、ここまでは良いな?」

 

「はい」

 

「ストライクの交戦データ等からフェイズシフトはコクピット周りから展開されると気がついてな、お前の機体がミラージュ・コロイドを解除したと同時に左手のキャットゥス一発と腰部マルチランチャーのグレネード、それに両腕のグレネードランチャー搭載型防盾のグレネード・・・・・・これら全てを一斉にブリッツの足元と機体背面に叩き込み、ブリッツをその衝撃で僅かに浮かばせてシュベルトゲベールの一撃がコクピットの下を通過するようにしたのさ。とはいえ、理論上はブリッツが浮くと分かっていても、実際には一か八かの"賭け"だったがね」

 

 

「無茶苦茶ですね・・・・・」

 

スバルがあの時行った一連の行動と、その行動にポカンとするニコル。まさかあの僅かな時間でそれだけの事をやるとは思わなかったのである。

 

「アークエンジェルの艦長に頼んで俺がこの艦を離れるまで、監視付きだが、ここに居れるようにした。俺が離れるときに共にオーブに向かうことになる。そこからどうするかは、お前次第だ」

 

「スバル・・・・・」

 

「その時、お前が決めたことなら、それを俺は尊重し、出来る限り力になる。プラント本国に帰還するもよし、俺と同じくオーブに亡命するもよし。・・・・・決めるのはお前だ。意図せずだが、オーブでのコネもある程度持てたからな」

 

スバルの言葉に唖然とするニコル。やむを得ず、とはいえ攻撃していた自分の為にここまでしてくれるとは思わなかったのだ。

 

「何故・・・・」

 

「一緒に居た期間は短かったが、それでもお前は俺に気遣ってくれた。その恩返しだよ。

 

「どこへ・・・・?」

 

「機体だ。この艦は現在地球軍本部のあるアラスカに向かっている。俺の機体、ランスロットの航続距離の理論限界点まで後僅かだが・・・・アスラン達とは恐らく、もう一度戦うことになるだろう。だが、俺の受けた任務は"アークエンジェルと共にアラスカ方面に向かい、ランスロットの航続距離ギリギリまで護衛すること"だからな、それに備えるまでだ」

 

医務室を出ようとするスバル。思わずニコルが問いかけるが、スバルはそれだけ伝えるとその場を去ってゆくのだった。

 




と、云うことでニコル生存です。

仕方ないじゃないか、SEEDだけじゃなくてDESTINYになっても回想で何度もニコルが斬られるの、見てられなかったんだから!

‡‡‡‡‡

あ、ちなみに機体への衝撃云々はキラが地上でデュエルとか蹴っ飛ばした時にデュエルが盛大に吹き飛ばされているのを見て考えた独自考察になります。

実際、ジンの重斬刀の一撃でふらついていたりしたので、"理論上"は可能だと思うのですよね。

対艦用に用いられていたキャットゥスとグレネードランチャー二種からのグレネードの同時着弾による衝撃なら浮かせることは可能なはず・・・・・まあ、ある意味ご都合主義だと鼻で笑ってください。

2017/4/10 階級に関する勘違いを修正
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