今回は2連続投稿となっております
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C.E.71 5月8日
「で、アークエンジェルはアラスカ防衛隊に移動、俺らの移動はパナマのゴタゴタが終わるまで待てってか?ふざけンな!何時まで待てっていうんだ・・・・!」
「スバル、仕方ないですよ。ザフトの準備をしている作戦"オペレーション・スピットブレイク"はNジャマー敷設や地上に置ける軍事拠点の確保、敵対する地域の宇宙港やマス・ドライバー基地施設の制圧による地球軍の押さえ込みの三つで構成され、もう一年近く前に行われた赤道封鎖作戦"オペレーション・ウロボロス"の強化策らしいですから。地球軍もオーブとの問題より、不確定要素の排除を優先したいのでしょうし」
「だからと言って、通信すらさせないだと!?舐めてンのか!」
マリューに再度あてがわれた部屋(ちなみにまたディアッカの居る部屋の正面)で珍しく怒りを露わにするスバル。
ニコルもスバルを宥めつつ、カレンダー付きの時計を見やる。
「アラスカに来て、通信を禁止され、艦内待機の命令が出てもう、今日で6日だぞ!?外の風景も見れず風の入れ替えすらない、いくら砂漠に慣れている俺でもストレス位、溜まるわ!」
憤りの収まらないスバル。ニコルも友人である彼のそんな顔は見たくないため、表情を陰らせる。(ちなみに向かい側のディアッカにはスバルの声は普通に聞こえているが、ニコルの声は彼が意識して小さくしているため聞こえていない)
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「クロガネ三佐、相当ストレスが溜まっているみたいですね」
「分からないでもないですよ、あれじゃ」
「軍上層部のあんな言い方を言われちゃ無理ないわな。むしろ通信越しに怒鳴り返さなかっただけでもすげぇ」
アークエンジェルのブリッジでも、日に日に聞こえてくる頻度の増すスバルの声は、クルー達も良く理解できていた。ノイマンやサイ、チャンドラも同じ立場、同じ言い方をされたら恐らく、と、いうか余程のマゾでもない限りはその場でブチギレても文句のない内容だったため、その時我慢したスバルの精神力にむしろ感嘆を覚えたほどだった。
しかもマードックらの計らいで彼にランスロット、裏切りの騎士の名で呼ばれるその機体は、補給のために訪れた地球軍の士官達の目に映らないよう、巧妙に隠匿されていたため未だにアークエンジェルの格納庫に完璧に整備された状態で健在。"何時(いつ)彼が機体に乗り込むか分かったものではない"と皆、ヒヤヒヤしているのだった。
(マリューらが査問会に出頭した翌日、アークエンジェルの射撃訓練所で深夜まで何もせずに椅子に座る、瞳孔が開ききったスバルの姿をチャンドラが発見。その翌日に相談を受けたマリューがオーブへ同行を予定しているニコルに、彼に着いて歩く事を独断で許可したほどだった。自身の過去未来永劫問うまでもなく一番怖かった、とはチャンドラの談)
「なあ、何時大爆発すると思う?」
「今も爆発してるだろ」
「いや、ああいうタイプの大爆発は、十中八九今よりヤバいと思う。あの人コーディネーターだし、そうなったら俺らじゃ止められねえよ、きっと」
不安を滲ませてCICの面々が話し合う。マリューもスバルの事を考えると何か手を打たなくてはと思うのだが、結局は一介の下士官たるマリューにはできることが少ないのだった。
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唐突にアラートが鳴り響き、上官のサザーランドから防衛指令を受けるアークエンジェル。艦内に第一戦闘配備が発令される。
「これよりアークエンジェルは防衛任務のため発進します!」
「そんな、キラも少佐も居ないのにどうやって」
絶望的な状況、マリューは発進指示を出すことになる。カズイの言葉に、彼女は案を出すことができない。
ドックから発進する為にアークエンジェルの固定が解かれてゆく。ドックのゲートが徐々に開かれるなか、マリューの元に通信が入る。
「ラミアス艦長、コレはまさか!?」
「クロガネ三佐・・・・!。・・・・現在、アラスカはザフトの襲撃を受けています。・・・・どうやら狙いを直前でパナマからこの、アラスカに変更したようです」
「迎撃に出るのか。地球軍の戦力は?」
「本艦を含むユーラシア連邦を中心とした部隊です」
「ユーラシア連邦の・・・・?アラスカは大西洋連邦の管轄のはずだ!そいつらはどうしたんだ!」
「大西洋連邦の部隊は全て、パナマに・・・・。通信も途絶しています」
あらゆる事を封じられ、アークエンジェルに缶詰めにされていた為に、クルー達から爆発を恐れられていたスバル・クロガネ三佐からの通信。本来なら秘匿すべきだが、マリューは彼なら何か案を考えてくれるのでは、と考え、説明する。
「本部との連絡は?」
「既に指揮系統が混乱しているらしく・・・・。先ほどから防衛線を維持、臨機応変に対応せよ、としか」
スバルの質問に、視線だけでCICに問うが、チャンドラとミリアリアは揃って首を振る。
「・・・・・はぁ・・・・。本来なら、オーブ軍に所属する俺は、参加しちゃダメなんだろうな・・・・。最悪、軍籍剥奪かな・・・?」
「三佐・・・・?」
ため息を画面越しにつくスバル。マリューは彼の考えが分からず、思わず問いかける。
「アークエンジェルが沈めば俺"達"も死んじまうんだ。ランスロットの整備は完了しているのか?」
「マードック軍曹からの報告ではスカイグラスパー1号機共々、整備は欠かしていないとは聞いていますが、まさか・・・・!?」
「そのまさか、だよラミアス艦長。オーブから積んできた装備、全て準備しておいてくれ」
スバルの久々に見せる皮肉気味の笑みに、マリューはここに来て彼の言わんとするべき事を察する。通信を切られたマリューは慌てて格納庫で待機しているであろう、マードックに通信を繋ぐ。
「艦長!?」
「三佐のランスロットの発進準備を!装備もです!」
「わ、分かった!」
「ドック、抜けます!」
「イーゲルシュテルン、バリアント、ゴットフリート全門起動!ヘルダート全門装填!ミサイル発射管、コリントス、ウォンバット装填!フレア弾とアンチビーム爆雷も装填して!付近の艦艇に通達急いで!」
マードックに連絡を入れたマリューは矢継ぎ早に指示を出す。こうしてアークエンジェルは絶望的防衛戦に突入するのだった。
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「全く・・・・英雄とか、そういうのはバルトフェルド隊長の役割だと思うんだがな・・・・!まあ、今まで溜まっていた鬱憤晴らしも兼ねさせてもらうか・・・・!」
「進路クリア、ランスロット発進どうぞ!・・・・・スバルさん、大丈夫ですよね?私たち生き残れますよね?」
機体を立ち上げ、カタパルトに接続したスバルに、通信機越しにオペレーターのミリアリアが縋るような瞳を向ける。そんな彼女にスバルは敢えて不敵な笑みを向ける。
「任せておけ。俺はザフト時代は闇夜の銀狼の異名を持つエースだったんだぞ?俺自身、見つけたいこともできたしな。必ず生き残らせてやる!だからしっかりとオペレート頼むぞ?・・・・・・・・ミリィ」
「・・・・はい!」
「ランスロット、出るぞ!その名が伊達ではないこと教えてやろうか」
涙目のミリアリアに少し親しみを込めて愛称と共に笑みを向けるスバル。その笑みに勇気づけられたのか、はっきりとした返事をしたミリアリア。犬歯を剥き出しにした笑みを浮かべると、彼のランスロットはモノアイを不気味に光らせ、発進するのだった。
とりあえず普通ならスバルの言うとおり軍籍剥奪モノですよね。(白目)
2017/4/10 階級に関する勘違いを修正