機動戦士ガンダムSEED Urd   作:めーりん

14 / 29
連続投稿二つ目です


PHASE-14

‡‡‡‡‡

 

「バリアント1番、2番沈黙!艦の損害率、25%を突破しました!」

 

「イエルマーク、ヤマスラフ共に中破!対空砲沈黙!脱出する模様です」

 

「パナマ方面からの反応、一切ありません!」

 

「三佐、10時方向からミサイル15、モビルスーツが8時から6、2時から4、11時から3、来ます!」

 

防衛についたアークエンジェルと、それを助ける為に独断で参加したスバルのランスロットだったが、数の暴力には流石に抗えずにいた。特に有名になっていたアークエンジェルは、ザフト軍のモビルスーツの苛烈な波状攻撃を受けており、ランスロットのカバーがなければ既に轟沈しても不思議ではない量のモビルスーツに襲われていた。

 

「よっしゃ、まだ粘っていたな!?それにあれはランスロット!?何で・・・・って詮索は後だな!アークエンジェル!こちらフラガ!聞こえるか!応答せよ!くっそ、通信機がイカレてるのか!?」

 

その時一機の戦闘機"スピアヘッド"が被弾しつつもアークエンジェルに接近してゆく。

 

「友軍機・・・!?着艦しようとしてるのか!?んな無茶な!」

 

「三佐!こちらに友軍機接近中!カバー願います!」

 

「緊急着艦ネット用意!!整備班!どこかの大バカが一機突っ込んでこようとしてるわ!退避!」

 

アークエンジェルでもその様子が確認出来たのか、慌ただしく指示が飛び交う。ミリアリアのオペレートを受け、スバルのランスロットがムウのスピアヘッドをカバーするように両脇から突き出させたサブアームが保持する90mm対空散弾銃を連射、シグーやディン、ジンをミサイルやグゥルごと叩き落としてゆく。

 

「艦長!」

 

「フラガ少佐!?あ、アナタ一体何を!?転属は!?」

 

破壊された右舷格納庫にスピアヘッドをねじ込むように緊急着艦させたムウがブリッジに駆け込んでくる。予想だにしない人物の乱入に、マリューは目を白黒させる。

 

「そんなことどうでも良い!!今すぐアラスカから撤退だ!!」

 

「え!?」

 

ムウはかなり焦った様に指示を出す。マリューらもこの言葉には驚きを隠せない。

 

「これはトんだ作戦だぜ!守備軍は一体どんな命令受けてるんだ!?良いか!?良く聞けよ!?本部の地下に、サイクロプスが仕掛けられていた!起動すれば基地から半径10km以内は溶鉱炉に変化する規模の代物がな!」

 

 

 

「サイクロプスと言えば、エンデュミオン・クレーター防衛戦で使われたって言う噂のアレか!?」

 

ムウがまくし立てるように自分が実際に見てきた内容を知らせる。サイクロプスの名をバルトフェルドから噂程度でだが聞いたことのあるスバルも機体を操りながら会話に参加する。

 

「この戦力では防衛は不可能だ!パナマからの救援は間に合わない!やがて守備軍は全滅!ゲートは突破され、本部は施設の破棄を兼ねてサイクロプスを作動させる!それでザフト軍の地上戦力の大半を消滅させる!それが、とっくに離脱したお偉いさん方の描いた、この防衛戦のシナリオだ!俺はこの目で見てきたんだ、もぬけの殻となった司令本部をな!」

 

 

「・・・・・!!」

 

「残って戦ってるのは、ユーラシア連邦の部隊と、アークエンジェルの様にあっちの都合で切り捨てられたヤツらばかりだ!」

 

「ッ・・・・!」

 

ムウの言葉にブリッジが静まりかえる。怒りの感情を滅多に露わにしないマリューでさえ、歯を食いしばって堪えている。

 

「俺達は此処で死ねと!?そういう事ですか!」

 

「撤退したことをヤツらに悟られないように奮戦しながら、な」

 

普段は冷静な操舵を行うノイマンですらこの時ばかりは怒鳴る。それに対してムウは怒りを抑えながら妥協案を話す。

 

 

「戦争だから。私達軍人だから。・・・・だからそうやって死なないといけないんですか・・・・?」

 

 

 

「そんなわけ、あるはずないじゃないですか!ですよねスバル!」

 

ミリアリアが涙を浮かべながら茫然自失と問いかける。するとそこに、スバルのオーブ軍服を羽織ったニコルが入ってくる。唖然とするアークエンジェルクルー。

 

「そうだな。俺達は、使い捨ての機械ではない!自らの意志で、武器を持つ覚悟を決めた人間な筈だ!そうだろう!?マリュー・ラミアス艦長!」

 

「ええ!敵をおびき寄せるのが作戦であるなら、本艦はその任を果たしたと判断します!これは、アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスの独断とします!」

 

 

 

ブリッジ真正面から来る無数のミサイルと敵モビルスーツを、ブリッジ前に割り込んだランスロットが、両手のビームライフルとキャットゥス、両腕のグレネードランチャー搭載型防盾、試作型フライトユニット"ハヤブサ"のウェポンラッチに搭載されている75mmアサルトガンポッド"ツララ"の連射で粉砕したスバルが、確認するように問いかける。

 

 

マリューはそれに頷くと、シートから立ち上がり、自分に言い聞かせるように宣言する。

 

「本艦は現戦域を放棄、離脱します!僚艦に打電!"我に続け!"。準備が出来次第、機関全速!湾部の左翼を突破します!」

 

 

「見ているだけ、と言うのは僕も本意ではありません。手伝わせてください。・・・・・僕だって、死にたくはありませんから」

 

「あなた・・・・。分かりました。緊急時ですので、私の権限で許可します」

 

マリューが意を決し、矢継ぎ早に指示を出す。ニコルの手伝いの申し出に、マリューは一瞬だけ唖然とするが、直ぐに頭を切り替えて許可を出す。

 

「諦めるなよ?俺も出る。忘れた?俺は"不可能を可能にする"男なんだぜ?とはいえこの戦力差だしな、ランスロットに一度補給させてくれ!彼の助けもあれば離脱できる可能が増す!」

 

「脱出した面々の救助を!ランスロット、及びスカイグラスパー1号機の発進スタンバイが完了次第、現戦域を離脱する!」

 

 

 

「マードック軍曹!アサルトシュラウドの準備、及び機体に武器と弾薬を無理矢理でも良いから積んでくれ。フライトユニットをぶっ壊す勢いで振り回せば可能な筈だ」

 

ランスロットが一度補給の為に帰還する。こうしてアークエンジェルはアラスカ防衛戦、最後の大勝負に打って出る事になる。

 

 

‡‡‡‡‡

 

「メインゲート、突破されました!」

 

「ゲートはくれてやる!だからこっちは見逃しちゃくれねーかねぇ!」

 

「"不沈艦アークエンジェル"だからな!手柄が欲しいんだろ!?」

 

ついに複数のゾノの一斉攻撃でメインゲートハッチが破壊される。既にアークエンジェルは湾部左翼に向けて僚艦と共に離脱を開始していたが、それを阻むようにザフト軍のモビルスーツが行く手を遮り、ボスゴロフ級潜水母艦が封鎖する。

 

 

敵モビルスーツに向けて武器弾薬を満載したランスロットAS(アサルトシュラウド)が突撃し、それによって生じた隙にスカイグラスパー1号機が砲撃を叩き込む。

 

「ボスゴロフ級、ミサイル斉射!来ますよ!」

 

「回避!僚艦のカバーも!」

 

オペレートを手伝うニコルの警告。マリューが指示を出す前にノイマンが舵を切り、ミサイルをアークエンジェルの残っているイーゲルシュテルンと、戻ってきたランスロットASの75mmアサルトガンポッド"ツララ"が粉砕する。

 

「イザーク・・・・。くっ、後方よりデュエル!」

 

 

 

「こんな時に!!スカイグラスパーはそのまま撹乱を頼む!俺が担当する!」

 

レーダーに映った機影にニコルがいち早く気がつき、警告する。それにランスロットASが反応、スカイグラスパーに前方を任せてデュエルに向かう。機首を返す置き土産と言わんばかりにランチャーストライカーを装備したスカイグラスパーがアグニを放って離脱してゆく。

 

「なめるな!バスターとは違うんだよ!・・・・警告!?あれはまさか!!」

 

 

「まさかお前も参加していたとはな・・・イザーク・ジュール!」

 

アグニを回避し、アークエンジェルとスカイグラスパーを狙うイザーク。しかし下方からのアラートに反応し、ランスロットASが放つグゥルを狙ったシヴァの一撃を回避する。

 

「ルーリク、小破!ロロ、主砲及びミサイルランチャー大破!」

 

 

「10時の方向よりモビルスーツ群!」

 

「エンジンブロック被弾!推力に影響あり!」

 

「右舷ミサイルランチャー被弾!ヘルダート隔壁閉鎖!」

 

「フラガ機、ストライカーに被弾!パージを確認!」

 

「ランスロット、右肩シールドバインダー、及び左脚部追加装甲、左腕部シールドのパージを確認!さらに11時からモビルスーツ群!」

 

猛攻を受け徐々にアークエンジェルが傾いてゆく。戦闘を行う二機も、徐々に被害が出て行く。

 

そしてついにランスロット、スカイグラスパーのカバー、アークエンジェルの対空砲火を抜けたジンがアークエンジェルのブリッジに重突撃機銃を向ける。

 

 

「誰だ!?誰が今撃った!」

 

「上空より不明機1!なんだこれ・・・・速い!」

 

しかし、次の瞬間ジンのライフルが爆発する。ムウの疑問に、レーダーを見ていたニコルが驚きながら答える。

 

「こちらキラ・ヤマト。支援します!今の内に退艦を!」

 

「キラ・・・・?」

 

「嘘・・・・」

 

「キラ・・・・君・・・・?」

 

ジンの頭部と腕部を排除したモビルスーツから聞こえてくるMIA認定された筈の人物の声、それにアークエンジェルの皆が唖然とする。

 

 

「なんて火力とパワーだ・・・・新型か!?だが、どこで・・・!?」

 

 

「くっそ!何だよあれは!」

 

キラの瞳から虹彩が消え、次の瞬間、謎のモビルスーツの全武装が一斉に、連続で火を噴く。その馬鹿げた火力に、スバルもイザークを牽制しつつも唖然とする。イザークも回避行動を取りながら、その理不尽な火力に文句を言う。

 

‡‡‡‡‡

 

マリューに退艦を促したキラだったが、彼女から告げられた事実に、眉を顰める。

 

そして意を決したように彼はオープンチャンネルでその事を両軍に告げる。それに対してザフト軍の機体がオープニングチャンネルで反論すると、彼の機体"フリーダム"がビームライフルとビームサーベル、そしてシールドをザフトのモビルスーツの前で近寄ってきたスバルのランスロットASに手渡して離れるように告げ、皆を唖然とさせる。

 

 

「ナメた真似を!!!」

 

「こンの・・・・バッカ野郎が!!」

 

 

その行動に怒り狂ったイザークが機体をフリーダムに向かわせる。スバルはキラの意図を理解し、意図を組む。キラの思いを無視しようとしたイザークに苛立つと、次の瞬間、彼の両目からも虹彩が消える。

 

「イザーク!死にたいのか!」

 

「何を!?」

 

フリーダムに攻撃する直前に離れていたランスロットASが追いつく。振り向きざまにデュエルASから放たれたシヴァを紙一重で回避したスバルがデュエルの両腕をランスロットASに押さえ込ませる。

 

「敵の言葉なんぞに!!」 

 

 

「こンの・・・・・大バカ野郎が・・・!」

 

シヴァが放たれ、それを急降下して回避するランスロットAS。振り下ろされたビームサーベルを鋭角な動きで回避したスバルのランスロットASが、ビームサーベルを凪ぎ払う。

 

「ッ・・・・!?」

 

「それで言い訳が立つだろう!退け!」

 

思わず目を瞑るイザーク。しかし、ランスロットASのビームサーベルも、フリーダムが先程他の機体に行っていた様にデュエルの戦闘能力だけを奪う。グゥルと脚部、シヴァの砲身だけが斬り飛ばされ、落下した所をカバーに入った武装を失ったディンに回収される、という結果に、イザークは唖然とする。

 

 

‡‡‡‡‡‡

 

キラの行動を信じたのか、ZAFT地上軍も撤退を開始する。

 

そしてその中、それは起動した。

 

「サイクロプス、起動を確認!」

 

「機関全速!退避!」

 

サイクロプスの起動をアークエンジェルで察知。マリューの号令で、アークエンジェルは残るスラスターを後先考えずに全力噴射、動けない船をも引っ張りつつアラスカから離れる。フリーダムとランスロットASも助けられそうなザフト軍機の手を掴み、離脱する。

 

こうしてアラスカ基地は壊滅するのであった。

 

‡‡‡‡‡‡

 

 

「キラ、そっちのパイロットは?」

 

「辛うじて生きてた。そっちは?」

 

「同じく。今はニコルに手当てさせてるよ。そっちのパイロットも任せておこう。我々と共に脱出した人々は既に動きだしてるしな」

 

壊滅したアラスカから離れた無人島。そこにアークエンジェルと共に脱出した面々、逃げ遅れた少数のザフト軍兵士も集まっていた。

 

既に(すぐに移動するとはいえ)簡易のキャンプが築かれ、軍・種族関係なく、炊き出しと手当てが始まっており、二人はそれを見て、お互いに笑みを浮かべる。そこにマリュー達がやってくる。

 

‡‡‡‡‡‡

 

 

「つまり、あの機体、フリーダムは核動力だっていうのか?」

 

「はい。データをお取りしたいのであれば僕はここを離れます。奪おうとする勢力がいるのなら、敵対してでも守ります。それが、この機体を託された僕の責任です」

 

 

スバルから離れ、マリュー達と情報交換を行うキラ。その驚きの内容に絶句するアークエンジェルクルー達。しかしキラ眼差しは真っ直ぐであり、マリューはその言葉に偽りがないと理解し、その意思を尊重、クルー達に徹底させるように告げる。

 

‡‡‡‡

 

「変わったな、少年」

 

「少年って・・・・。スバル、アナタと年はさほど変わらないと思いますよ?」

 

「ん?ああ、そうだったな。・・・・あいつは俺達と違って、ヘリオポリス・・・・お前たちクルーゼ隊が強襲した結果、崩壊したあのコロニーで偶然、ストライクに乗ったそうだ。どこかフラフラしてると、最後に会ったときは思ってたんだ。少しは芯が出来始めたかな?」

 

 

「そう・・・・だったんですか・・・・」

 

キラがマリューらと情報を交換しているのを少し離れた位置から見ていたスバルが呟く。それをニコルは軽くたしなめるが、彼から伝えられた内容に少し考え込む。

 

‡‡‡‡‡‡

 

そしてアークエンジェルの艦長たるマリューにキラはこれからを問う。パナマに向かう案は真っ先に否決され、悩むアークエンジェルクルー達。原隊復帰は不可能。罪状はどう足掻いても増える。スバルの提案で彼らは脱出した人々(彼等の大多数はオーブへの亡命を希望)と共に、中立国であるオーブへ向かうことにする。自力走行ができない護衛艦も居たため、緊急措置としてアークエンジェルが牽引することになるのだった。 

 




説得シーンですが、漫画版のキラは間違いなく格好良いと思います。故に若干アレンジを加えたとはいえこのような感じになりました。

ちなみに受け取ったライフルとサーベルは"ハヤブサ"のウェポンラッチに搭載されました


そしてニコルにも更なる変化が。一度死にかけたからこそ彼らしからぬ行動をしました。

さて、次はついにオーブ防衛戦。ここでもとある人物(達)に救いの女神が手を差し伸べます。

そしてM1アストレイにもやや変化が。スバルの新たな愛機も登場。是非お楽しみに。


キラってパイロットより技術者ですよね。少なくとも私は本気でそう考えてるので、そちらにも変化を起こします。

2017/4/10 階級に関する勘違いを修正
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。