機動戦士ガンダムSEED Urd   作:めーりん

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PHASE-16

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C.E.71 6月15日 05:00

オーブ国防総省

 

「ウズミ様、地球軍との交渉は・・・・・」

 

「完全に無視されている。が、ギリギリまで交渉は続けるつもりだ。また、そなたからカガリを通じて進言があったオノゴロの住民の避難は、既に八割を完了しておる」

 

地球軍からの刻限まで残り僅かとなったオーブ。その国防総省に呼び出されたスバルは、ウズミから現状を説明される。

 

「この緊急時に際し、オーブ政府は戦時特例としてスバル・クロガネ三佐を一佐へ昇進させ、本防衛戦の総指揮を任せたいと思っている」

 

「・・・・やはり"戦神の眼"が原因、ですか」

 

「うむ。申し訳ないが、あのシステムを100%理解しているのが現状、考案者である君しか居ないという結論が出てしまってな。無論、防衛総省のオペレーターを総動員してサポートを行うつもりだ」

 

ウズミから告げられた内容に、やや驚きながらもその理由を予測していたスバルが肩を落とす。ウズミも申し訳ないと感じているのか、スバルの両肩に手を乗せる。

 

「まあ、システムの調整や補助AIの構成、オペレーターの訓練が間に合わなかった時点で覚悟は決めていましたから、気になさらないでください。・・・・・とはいえ、私が総指揮、ですか・・・・・」

 

「幸い、作戦説明まで僅かながら時間があるだろう。少し外の空気を吸ってきたまえ」

 

スバルもある程度は予想していたとはいえ、この大一番でのプレッシャーに、少し手が震えている。それを見てウズミは、彼に外の空気を吸うようすすめる。頷き、外に出て行くスバルを見送ったウズミは、国防総省に居る軍人達をブリーフィングルームに集めるよう、指示を出すのだった。

 

‡‡‡‡‡‡

 

国防総省から出たスバルは、壁に背を預けると空を見上げ、気持ちを落ち着かせようと試みていた。

 

「あ、スバル三佐」

 

「・・・・珍しいな、いつもの二人は一緒じゃないのか」

 

空を見上げていたスバルに声をかけたのは、M1アストレイのテストパイロットの一人"マユラ・ラバッツ"だった。

 

 

「ちょっと、緊張しちゃって・・・・。気分転換に散歩していたんです。アサギもジュリも、それぞれ気分転換中です。私たちはあくまでもテストパイロットでしたし・・・・・・・」

 

「中立を掲げる今のオーブで、本当の意味で実戦経験があるのは、俺やカガリ様、後はアークエンジェルだけか・・・・」

 

マユラの表情を見たスバルは、国防総省そばに設置されているベンチに彼女を誘い、話しを聞いていた。普段は明るい彼女だったが、極度の緊張からか明るさは身を潜めており、不安そうな表情を見せている。スバルはマユラの言葉からオーブの状況を理解し、考え込む

 

「(期限まであと、約三時間・・・・作戦は大丈夫の筈だが、問題は人の方か)」

 

「三佐、本当に大丈夫なんですか?私達、死なないですよね?」

 

「少なくともこの作戦で俺は、戦死者の少なくなるような作戦を考えたつもりだ。後は、作戦に参加するパイロットがちゃんと作戦を理解し、仲間と連携して行動できるか、これにかかっていると考えている」

 

マユラの不安そうな瞳をスバルは正面から見つめ返す。彼の瞳を見たマユラは、彼も不安なのだと理解する。故に彼は自身の決意などを語る。マユラはそんなスバルの瞳を驚いたように見つめる。

 

"だから信じてくれ"とだけマユラに伝えたスバルは、彼女の頭を優しく撫でると、意味ありげに近くの柱に目を一瞬向けると防衛本部に入ってゆく。

 

「後は仲間と、か・・・・・」

 

「マユラ、頑張ろ?」

 

「アサギ、ジュリ・・・・・」

 

スバルが防衛本部に入ってゆくのを見送ったマユラ。そんな彼女の方に、近くの柱に隠れていた友人"アサギ・コードウェル"と"ジュリ・ウー・ニェン"が歩み寄る。まさか二人が居るとは思わなかったマユラだったが、友人達と目を合わせると誰からでもなく笑みがこぼれる。

 

「絶対、生き抜こうね」

 

「うん」

 

「勿論よ」

 

上を見上げ、決意を固める三人。そしてしばらく空を見上げていた三人は、防衛本部で行われる作戦説明を聞くため、中に入ってゆくのだった。

 

 

‡‡‡‡‡

 

同日 06:30

 

オーブ防衛本部のブリーフィングルームに集まったオーブ士官らに、ウズミは自ら、スバルを紹介した。

 

当初は困惑していたオーブ士官達だったが、彼がこの数週間訓練を重ねてきたシュミレーター内容を考案し、今回の防衛戦に投入される"M1アストレイ"の武装構成やOSの設定に携わっていた人物だと分かると、誰もが彼を認めるような眼差しになる。そしてそれを見たウズミは、スバルに作戦概要の説明を任せるため、場所を譲るのだった。

 

「・・・・先ほどウズミ様からあったように、本作戦、"オーブ防衛戦"をもってオーブ軍一佐に任命される事になった、スバル・クロガネだ。正直、まだこの通り若い身の上、亡命者である自分には重すぎる役割だと思っている。だが、ウズミ様から期待された以上、責任をもってこの任を拝命した」

 

オーブ士官達の前で穏やかな、それでいて緊張感のある表情で語るスバル。オーブ士官達も、スバルの言葉に少々のざわめきはあれど、彼の決意を固めた眼差しを見て、彼を信用してみようと考える。

 

「状況の再確認を行う。現場、オーブオノゴロに向けて大西洋連邦の大部隊が侵攻中、これは周知の事実だろう。実を言えば、様々な事を想定し、私はカガリ様を通じてウズミ様に様々な事を進言してきた。M1の性能強化やシュミレーターの構成などはその一環だ」

 

スバルの言葉に、何名かの将兵が若い彼が見せた先見の明に驚きの表情になる。

 

「本防衛戦は非常に困難なモノになるだろう。とはいえ、物量差は策を張り巡らせばある程度はカバーできる。が、あくまで持論ではあるが、最終的にモノを言うのは現場の私を含める兵士の技量や連携等、一人一人の"力"も重要だと考えている。何故、ZAFT軍が量で勝る地球軍と渡り合えるのか?それはZAFT軍のパイロットの技量や"力"が量の不利を補っていたからだ」

 

スバルの話しを聞き、将兵の眼に活力が満ちてゆく。それを見たスバルは小さく笑みを浮かべる。

 

「地球軍はようやくMSを開発、配備し始めたところだ。ZAFT軍程洗練されたエースが数多く居るはずはないはず。ならば、我々にもまだ、チャンスはあると考えている。幸い、M1が私の提案した仕様となって配備されている事に地球軍は気づいている様子はない。故に本防衛戦はそれを活かす為に5つのフェーズで構成する」

 

スバルは自身の分析や持論で将兵達の意識が防衛戦を成功させられると希望を抱いたと考え、ようやく作戦の説明を始める。

 

「既に作戦の第1、第2フェーズは開始、完了しているが、全て説明する。第1フェーズ。これは国民の避難等になる。戦火が遠のき次第、戻ってくる予定だ。次に第2フェーズ。これは潜水艦隊による機雷敷設になる。国民を真っ先に避難させたのは防衛戦による流れ弾で非戦闘員の死傷者を出さないためだ」

 

「機雷敷設の理由は?」

 

「地球軍も、ZAFT軍で運用されている大気圏内の単独飛行が可能な量産型MSの開発に着手したらしいが、大量に配備したとは聞いていない。ならば島国のオーブに攻め込むためにとれる手段は二つ。空挺か、揚陸艇による強襲だ。空挺も行われるだろうが、確実性を見るなら揚陸艇に比重を置くだろうと見ている。本来なら機雷敷設はしたくないが、本防衛戦はオーブの理念を守るための作戦でもある。故にこの手段をとらざるを得なかった」

 

スバルの説明に、将兵の一人から質問が出る。ある程度予測していた質問だったため、淀みなく答える。その内容に、納得ができたのか質問した将兵は小さく頷き、席に座る。

 

「そしてここからが本番になる。フェーズ3ではM1の武装パターン"遠雷(えんらい)"と"水守(みなかみ)"、そして早期哨戒と先制攻撃の両用機として試作され支援戦闘機"隼(はやぶさ)"が鍵を握る。まず、水守と隼、アークエンジェル、ストライクは別働隊として、既に行動を開始している」

 

スバルの言葉にざわめくオーブ将兵。スバルがモニターを操作すると、画面が切り替わる。

 

「アークエンジェルを中心とした別働隊の狙いは敵の空挺を担う輸送機と後詰めである予備兵力、補給物資への奇襲だ。隼は輸送機を、水守は敵の輸送艦に一撃を加えて離脱。これにプレッシャーを与える」

 

モニターには敵の予測進路が表示されており、これを見て将兵は納得ができたのか頷く。

 

「続いて遠雷。これの役割もまた、敵輸送艦の撃破になる。本作戦は、敵を水上で撃破する事を目標にしているが、戦場では何が起きるかはわからない。故に各部隊は連絡を密に取り合い、何時でも行動が出来るよう、留意して欲しい。別動隊の奇襲と防衛戦をフェーズ3とする。何か質問は?」

 

「戦線の維持ができなくなった場合は?」

 

「敵の目的はマスドライバー施設"カグヤ"とモルゲンレーテ社の工廠であると言うのは自明の理。上陸され、なおかつ戦線が維持できないと防衛本部が判断した場合、"カグヤ"に集結、マスドライバーで宇宙へ離脱した後"カグヤ"とモルゲンレーテの工廠を爆破する。これはオーブ政府の決定、で良いのですよね?ウズミ様。"カグヤ"撤退、離脱をフェーズ4、地球軍が目標としている"カグヤ"並びにモルゲンレーテ工廠爆破をフェーズ5とする」

 

「うむ。オーブも、世界も奴らの好きにするわけにはいかぬ。特に連中が我らがオーブに攻めいる理由はプラントとの決戦のために地球から宇宙へ物資を送るため。そのためにマスドライバーを欲しているのだ」

 

スバルが作戦概要を聞き、表情が引き締まるオーブ将兵達。ウズミの言葉が、この防衛戦の重要性を現している。

 

「ではウズミ様、そろそろ配置につきます。完了次第、地球軍・・・・と、言うよりは大西洋連邦に、ですか?最後の会談要請をお願いします」

 

「ああ。戦わずに越したことはない。だが、戦ってでも守らねばならぬモノもある。戦いになった場合、諸君の健闘に期待する」

 

時計を見たスバルの言葉に、ウズミが真剣な顔で頷く。オーブ将兵達も、ウズミの言葉に敬礼をすると、ブリーフィングルームを出て行くのだった。




2017/4/10 階級に関する勘違いを修正
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