機動戦士ガンダムSEED Urd   作:めーりん

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PHASE-19

‡‡‡‡‡‡

 

大西洋連邦の艦隊がスモークを展開しつつ急速に後退してゆく。元からデータ等の鹵穫とサルベージを防ぐため、重要データの回収とダミーへの切り替え、さらにはモルゲンレーテ本社内にはマスドライバー施設"カグヤ"から起爆操作が可能な爆薬の設置をオーブ政府は完了させていた事に、大西洋連邦の指揮官たちは気づくことはなかった。

 

更にオーブ国防本部は大西洋連邦が撤退した報を受け、とある決断を下す。オーブ攻防戦は大西洋連邦の思惑を裏切るように最終段階に移行することになる。

 

‡‡‡‡‡

 

C.E.71 6月17日 オーブマスドライバー施設"カグヤ"

 

「爆薬の設置、ならびにタイマーの設定は完了しました。また、モルゲンレーテ本社の基盤にも仕掛けてきたので、データのサルベージも防げると思われます」

 

「クサナギの発進シークエンスは最終段階。アークエンジェルも準備完了です」

 

カグヤの管制室にて軍服に着替えたスバルと、カガリの護衛役のキサカがウズミにそれぞれ報告する。ウズミも暫く目を閉じていたが、意を決したのか、決意を固めた声で指示を発する。

 

「現時刻をもって我らはオーブを離脱する!この連綿と続く戦いの連鎖を断ち切るため、我等は行動に移す!」

 

「「はっ!」」

 

ウズミの号令に将兵が応え、行動を開始する。

 

‡‡‡‡

 

オーブの主力艦"イズモ級"の追加ブースターを取り付けたアークエンジェルがマスドライバー施設"カグヤ"によって加速され、宇宙に飛び出して行く。再びオーブを攻めようと陣形を整えていた大西洋連邦の考えを裏切るように、イズモ級の艦橋部分と船首カタパルトパーツなどが打ち上げられてゆく。

 

唖然とする大西洋連邦の指揮官達だったが、オーブのモルゲンレーテ本社から爆発を観測したとの報告が入ったことで、我に帰る。しかし、そんな彼らを嘲笑うかのようにマスドライバー施設"カグヤ"が崩壊してゆく。こうして大西洋連邦の狙いは何一つ叶うことなく、ただいたずらに戦力を消費するだけで終わるのだった。

 

‡‡‡‡‡‡

 

地球軌道上に三隻の特徴的な戦艦が寄り添うように停止している。

 

一隻は白亜の戦艦。ZAFT側からはその見た目から"足つき"とあだ名された元地球連合・大西洋連邦所属の特装艦"アークエンジェル"。ZAFTが行った作戦"オペレーション・スピットブレイク"の際に味方であるはずの連合軍に捨て駒にされたことから軍に疑問を抱き離反した艦である。

 

残りの二艦は同系統の戦艦である。オーブ軍の宇宙戦艦であるイズモ級二番艦"クサナギ"と三番艦"アマテラス"であり、アマテラスには大西洋連邦との戦闘から逃れ、脱出した多数の人々も乗り込んでいる。

 

そんな三隻の内、アークエンジェルの一室にて会議が行われていた。クサナギに搭乗している前代表のウズミも、通信により参加している。

 

「さて、なんとか脱出しましたが、これからどうするか、ですね」

 

「ひとまずオーブの宇宙ステーション"アメノミハシラ"に向かいたい。サハク家には色々と言われるであろうが、民の事を優先したい」

 

アークエンジェル艦長のマリュー・ラミアスが疲れがにじんだ声音で話を切り出す。そんなマリューに返したのは前代表のウズミだった。

 

「しかしお父様、サハク家を信用しても良いのでしょうか。彼らは大西洋連邦と関係が強いと見られています。向かったが最後、オーブのためと銘打って売り渡されるのでは?」

 

「その危険はあるだろう。だが、大西洋連邦と関わっていると考えられるからこそ、彼らは頼りになる可能性がある」

 

訳あってアークエンジェルに乗り込んでいるカガリが懸念を述べる。だが、ウズミはだからこそ頼りになる可能性があると告げる。

 

「大西洋連邦に近しいのはオーブを守るためだった、と考えれば、サハク家は大西洋連邦に裏切られたようなもの。交渉の余地はあると思います」

 

「確かに。ならば、ひとまずアメノミハシラに向かいましょう。」

 

スバルが考えを述べる。マリューも納得できたのか、ウズミが頷いているのを確認すると、行動を開始するのだった

 

‡‡‡‡‡

 

C.E.71 6/27

 

地球の衛星軌道からやや外れた位置に存在するオーブの軍事用宇宙ステーション"アメノミハシラ"にアークエンジェル、クサナギ、アマテラスの三隻が入港する。

 

「意外にすんなりと入港許可が出ましたね」

 

「確かに。もっと混乱するかと思っていたぜ」

 

アークエンジェルのブリッジで、艦長のマリューが拍子抜け、と言う感じに息を吐き出す。ムウも肩の力を抜くと辺りを見回す。

 

「オーブ本土の方は真っ先に脱出していた下位院から選出された人達が降伏したらしいし、どうなるんでしょうね」

 

「分かりません。ですが、サハク家は軍事の家系であり、当主の方は優れた政治家だって噂を聞いたことがあります」

 

指定されたドックにアークエンジェルが固定されたことで、肩の力を抜けたノイマンが疲れたようにぼやく。とある人物の監視を任されたキラが通信越しに自分の知ることを話す。そこにクサナギのウズミから、一度アメノミハシラの会議室に集まってほしい。と連絡が入る。マリューらは顔を見合わせるとカガリに先導され、会議室に向かうのだった。

 

‡‡‡‡

 

アメノミハシラ会議室

 

「久しいな、ウズミ」

 

「お互い様、だろう、ミナ・サハク」

 

会議室でウズミやマリュー達を出迎えたのは、感情が稀薄な護衛を背後に立たせたアメノミハシラ指導者"ロンド・ミナ・サハク"であった。しかしマリュー達はミナ・サハクが妙に憔悴しているように見え、思わず顔を見合わせる。

 

「しかしミナ・サハクよ、やけに憔悴しているように見えるがどうした?私としては嫌味のひとつでも言われると思っていたのだが」

 

「なに、我々姉弟がやってきた事は全て無駄だった、と気づかされてな。まさか大西洋の無能共に利用されていた事に気づけなかった、それにショックを受けていたのだ」

 

やや疑問を浮かべるウズミを見ながら軽く笑みを浮かべるミナ。そこでウズミは彼女の弟"ロンド・ギナ・サハク"の姿が見えないことに気付く。

 

「ところで、弟はどうした?」

 

「オーブ本土に大西洋連邦が攻めてきた、との報を受けた5日前にアメノミハシラを出ていった。少し、これからの事で意見を違えてな」

 

ウズミの問いに、少し寂しそうな表情を見せるミナ。そこに格納庫でアークエンジェルやクサナギから回収したデータを纏めていたスバルがやってくる。

 

「失礼します。頼まれていたデータの方が纏まりましたので、報告を。また、その他作業も一先ずは完了しました」

 

「うむ。・・・・・・しかし随分時間がかかったようだが?」

 

「シモンズ主任から頼まれていたデータも纏めていましたので」

 

テーブルの上に数枚のディスクを取り出すスバル。ウズミも彼に頼りすぎている現状に頭を抱えつつも、ミナにスバルを紹介することにする。

 

「ミナ・サハク、改めて紹介しておく。彼がオーブ防衛を指揮したスバル・クロガネ一佐だ。モルゲンレーテに籍をおく技術者でもある」

 

「そうか、彼が…」

 

「スバル・クロガネ一佐であります。まだ若輩の身ではありますが、一佐を拝命しております」

 

ウズミから紹介されたスバルが言葉を紡ぐ。ミナもスバルを見て何かを考え込む。

 

「ウズミ。彼がアストレイの改修案を出した技術者だな?」

 

「そうだが、何かあるのか?」

 

「何、アメノミハシラに委託して来たパーツなどの確認を頼みたい。それともう一つ、我が弟の行方を捜して欲しいのだ。」

 

ミナからの申し出にウズミは少し考え込む。そんなウズミを見たミナは単刀直入に理由を話すことにする。

 

「我が弟は世界を統べるのはサハク家である、という最初期の思想に意固地なまでに取り憑かれているのだ。・・・・私もそうだったのだがな、あの大西洋連邦の侵攻時に貴様ら政府が真っ先に国民を中立国や対立していたはずの私達の元に脱出させたのを見て考えを改めたのだよ」

 

ミナの言葉に目を見開くウズミ。ミナもやや苦笑しつつもウズミに目を見やる。

 

「それならば私には反対する理由はない。だが、彼を指名する理由はなんだ?」

 

「彼が使用する試製一号機。アレの素体がプロトアストレイであるならば、必ずギナは破壊する為に動く。大事な局面で横槍を入れさせたくないならば早い段階でギナを排除するしかないのだ。・・・・もう、ギナの精神は狂ってしまっているからな」

 

ウズミの問いに、どこか悲しげにミナは答える。

 

「試製一号機の宇宙での調整、ならびにアメノミハシラに委託していたシステムのチェックなどもしなくてはなりません。その際に探索などもできれば良いのではないでしょうか。また、暫定的にニコルが起動してしまった試製二号機の件もあります」

 

「オーブに暫定的な亡命を希望していたニコル・アマルフィの件は私がプラント側に確認を済ませてある。プラント側では既に戦死扱いとなっているようだ」

 

スバルが手元の端末に、必要とするチェック項目を出力する。それを確認しながら、ミナ・サハクは現状知りうる情報を話すために手元に端末を引き寄せる。

 

「とりあえず、我が知りうる限りの情報をまずは開示しよう。その間に試製一号機の試験準備を済ませておくとしよう。プラント側の者共も連れてくるが良い。其奴らにとっても捨て置けぬ情報もいくつかあるのでな」

 

ミナ・サハクの言葉を受け、スバルが部屋を出て行くのだった

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