あと、ヒロイン候補の登場です。
また、スバルの隠れた経歴も判明していきます。
オリキャラもどんどん出てきます。
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C.E.71 6/30 ヤキン・ドゥーエ宙域近郊
ヤキン・ドゥーエ宙域近郊のデブリ帯に二隻の戦艦が身を隠すように停泊している。一隻はその特徴的な外観から、ZAFT軍からは"足つき"と渾名された戦艦であり、オペレーションスピットブレイクの折には味方から捨て駒にされた為に連合軍に不審を抱き離反、オーブに身を寄せた白亜の戦艦"アークエンジェル"。もう一隻はオーブが運用する戦艦であり、そのネームシップたるイズモ級の一番艦"イズモ"。
その片割れたるイズモから、一隻の大型シャトルがプラントに向けて出発する。シャトルに乗り、操縦桿を握るのはZAFT軍の服に身を包んだオーブ軍に在籍する青年"スバル・クロガネ"。その反対側に緊張した顔で座るのは父親に真意を問いただしたいと希望した青年"アスラン・ザラ"であった。
「すみません・・・・こんな事に付き合わせてしまって・・・・」
「任務の事もあるし気にするな。だが、恐らくだがお前の言葉は聞き入れられはしないだろう。それでも行くのか?」
「はい。・・・・俺は、あの人の息子ですから」
申し訳なさそうなアスランにやや皮肉気味に笑みを浮かべるスバル。シャトルにはアスランのジャスティスが載せられており、対外的にはフリーダム追撃に関しての詳しい報告と破損したジャスティスの修理のため、という名目でプラントに向かっていた。その際、既に死人扱いのスバルは、メイクや詰め物で女性に変装しており、その変装を披露した際、ディアッカやニコルが思わず二度見するレベルの完璧さであった。
「あと、俺は任務の為に調査をするから別行動になる。最悪の場合は君を見捨てる事になるからな」
「分かりました。あと、向こうからの指示で、ジャスティスは新造艦の方に搭載することになりました。先んじて送った報告のおかげ、でしょうかね」
プラントからの指示に従いシャトルを移動させるスバル。その所作は内情を知るアスランからしても、女性にしか見えなかったが、変装した理由を問いただす前にシャトルは係留場所に到着する。
「ではザラ隊長。お疲れ様です。私は指示どおり、ジャスティスを新造艦の方に運びますので」
「あ、ああ。分かった」
ややハスキーな声でスバルに促されたアスランは、意識を切り替えて迎えに来たエレカに向かうのであった。
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アスランと別れたスバルはシャトルを指示通りにZAFTが新造した高速艦に移動させていた。新造艦の名は"エターナル"と命名されており、艦長は奇跡の生還を果たしアンドリュー・バルトフェルドが任命されている。
「こちらティアナ・ルージュ。ザラ隊長の機体を搬入します。エターナル、格納庫を開いてください」
「こちらエターナル艦長のバルトフェルドだ。了解した。指示ではシャトルをそのままエターナルに積めば良いのだったかな?」
「はい。ザラ議長からはそう、指示されています。ジャスティスの修理もエターナル側で行うように、と」
エターナルに通信を入れ、バレないように慎重にバルトフェルドと通信を行うスバル。このスバルの変装時の"ティアナ・ルージュ"とは実際にZAFTに籍を置くオーブ側の工作員の一人で、スバルと背丈や声質等がよく似ているため、作戦前に上手く入れ替わったのだった。変装時にティアナ本人からもお墨付きを貰ったため、バレていないと確信する。
「では、後はお願いします、バルトフェルド艦長」
「了解だよ。部下を付けるから外まで案内してもらってくれ」
「はっ。感謝します」
エターナルの格納庫にシャトルを収め、通路に向かうスバル。そこで待っていたかつての副官"マーチン・ダコスタ"に案内されてエターナルの外に向かう。
「では任務ご苦労様でした。私はザラ隊長を迎えに行く必要がありますので、これで」
「はっ」
用意されていた二台のエレカに分かれて乗り込むスバルとダコスタ。やがて完全にダコスタのエレカと離れたスバルはそこでようやく張っていた緊張を一度解き、深く息を吐き出すのだった。
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エレカとシャトルを乗り継ぎながらスバルが向かったのは、ZAFTの兵器工廠があるマイウス市だった。工作員のティアナが持ち込んだ情報ではこのマイウス市にパトリック・ザラと意見を違えたザラ派の人物が軟禁されており、他にも穏健派が軟禁されているザラ派と接触を試みているとの情報もあったため、オーブとしても和平へのきっかけを作るためにスバルが派遣される流れとなったのだった。
「さて、情報だとこの辺りだったはずだが・・・・」
エレカをゆっくりと操りながら、不自然にならない様に周囲を見回すスバル。工作員のティアナが元々マイウス市の出身だということもあり、違和感なく移動ができていた。しかしこの時、オーブ側ですら知り得なかった速度でとある組織が既にマイウス市に軟禁されていた元ザラ派のユーリ・アマルフィとロミナ・アマルフィの両者を救出していた事をスバルが知る由もなかった。
「貴方もしかしてスバルさん・・・・?」
「っ・・・・!?」
そんなスバルに一人の人物が控えめに声を掛ける。だが、スバルからしてみたら周囲からお墨付きをもらった変装を見破った挙句、プラント側からしたら既に死人になっている筈の自分を知る人に出会った、ということに他ならない。いざとなれば銃を突きつけるつもりでエレカを停止させたスバルが振り向けば、そこには一人の赤服を身に纏った少女が、やや信じられない、という表情で立っていた。
「えと、何か事情がありそうだし、私のオフィスに来ない?それまでは貴方をティアナとして扱うから・・・・・貴方もその方がいいでしょ?」
「・・・・分かりました、シホさん」
引きつりそうな顔をなんとか抑え込むスバルのエレカに乗り込む赤服の少女、"シホ・ハーネンフース"。スバルはシホの案内のもと、彼女のオフィスに向かうのだった