機動戦士ガンダムSEED Urd   作:めーりん

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かなり難産な場面が続くので投稿が遅れております


PHASE-26

††††

C.E.71 7月12日 コロニー"メンデル"

 

"禁断の聖地"とも呼ばれていたコロニー"メンデル"にて、終戦後を見据えて情報収集を行っていたオーブやプラントからの離反亡命組、クライン派だったが、そのメンデルに連合軍が迫りつつある事にいち早く気付いていた。また、コロニー反対側からはプラントの快速艦であるナスカ級が迫っていた。

 

「現状は?」

 

「連合軍の方はアークエンジェルタイプが1、アガメムノン級が2。アガメムノン級の内一隻はユーラシアの所属です」

 

「ナスカ級に関しても解析が終わりました。予想通りクルーゼ隊の母艦"ヴェサリウス"を確認。また、残りの2隻も解析が完了。艦名はホイジンガー、ヘルダーリン。どちらもクルーゼ隊に新しく配備されたナスカ級です」

 

「クルーゼ隊はエターナルの追跡で来たのは分かるけれど、何故連合の部隊はこのメンデル来たのかしら。それに大西洋とユーラシアの関係は悪化していたはずよね?」

 

「恐らく、力関係では上である大西洋が圧力を掛けたんだろうさ。この宙域に来たのは何か理由があるはずだろうけどな、俺にはさっぱりだ」

 

オーブ軍のイズモ級一番艦"イズモ"のブリッジに、代表首長の義娘である少女"カガリ・ユラ・アスハ"と共にオーブ軍一佐"スバル・クロガネ"が入るなり問いかける。CICオペレーターが正面に宙域図を表示しながら答えるが、その内容を通信越しに聞いていたイズモの隣で出航準備をしていたアークエンジェルの艦長"マリュー・ラミアス"が疑問に思う。その疑問に対する考えを、アークエンジェルの待機所で準備をしていた"ムウ・ラ・フラガ"が肩をすくめながら吐き捨てるも、連合の部隊については予想もつかないとばかりにため息を吐く。

 

「まっすぐ来るなら到着はヴェサリウスの方が僅かに早い、か・・・・」

 

「とはいえ二面作戦は避けたいわね」

 

「ならば連合の部隊が来る方面に少数の71式機雷を散布、ダミーを複数展開。デブリを盾にした射撃戦で時間を稼ぐ方針を取ろう。幸いにしてあの宙域はデブリが多い。損害を抑えたい連合は二の足を踏むだろうし、試製二号機とフリーダム、直掩機にジャスティスを配置すればM1の狙撃能力をさらに活かせる。後は遠雷を装備したストライクも居れば足止めはできるだろうさ。敵艦も狙えば良いだろうし」

 

宙域図を見てカガリがボヤく。快速艦であるナスカ級を率いるクルーゼ隊がいる事を鑑みてマリューも苦い顔をするが、スバルが何という事もないと言わんばかりに作戦を提案する。先のオーブ防衛戦の際も、連合軍は素人目に見ても損害を嫌っているとしか思えない作戦をとっていた。これは連合(というかは最大勢力である大西洋連邦)の最終目標がプラントの破壊、ひいてはコーディネーターの殲滅である以上、それ以外の戦いで戦力を失う事をひどく嫌っている為である、と判断できる為であった。

 

「ヴェサリウスの方は俺とシホ、ムーンウルブス、ディアッカで充分行ける。少数で多数の敵とヤるのは慣れているからな。ああ、ディアッカにはナスカ級の脚を狙ってもらいたい。エターナルがティアナ二尉とデュランダル博士を回収したら、連合の部隊を突破して現宙域を離脱する。最悪連合にクルーゼ隊の相手を押し付ければいい」

 

「容赦ねー・・・・」

 

ヴェサリウスを自ら担当する事を告げ、ブリッジから出て行くスバル。その冷酷なまでの声音を聞いて、通信越しにムウが思わず口にする。ムーンウルブスと呼ばれるスバルのかつての部下達の戦術を聞いていただけに、カガリは思わずZAFTの兵士達に同情するのだった。

 

†††††

 

イズモとアークエンジェルがメンデルのドックから発進し、隊列を組むと連合を迎撃する態勢を整える。エターナルはメンデルで情報のサルベージを行なっているデュランダル博士を待つ為、ドックで待機する。

 

「スバル君とこうしてまた一緒に戦えるのは、素直に嬉しいものだね。ミハイル機出るぞ」

 

「確かに。元所属していた陣営が相手とはいえ、容赦は無しだ。分かっているな?姫ちゃん」

 

「分かってるわよ!後、姫ちゃん言うな!アカネ機出るわ!」

 

「このやり取りも随分と久しぶりだねぇ。ヘルベルト、マーズ行くよ!」

 

「あいよ」

 

「積もる話は生き抜いてから、ってな!」

 

そんな待機中のエターナルから、次々と独自のカスタマイズがなされたゲイツが発進する。その機体が前もってイズモから発進していたスバルの試製一号機(高機動戦装備)、ディアッカのバスター、シホの専用ゲイツに合流する。

 

「今回はフネの脚を潰すことに集中する。別に撃破する必要はない。対艦戦が可能なディアッカ、ミーシャ、姫がキーマンだ」

 

「ではヴェサリウスは私と姫で脚を潰します。ディアッカ君は離れた位置にいるヘルダーリン、ホイジンガーをお願いします。ヒルダ達が君の直掩を担当しますので、安心してください。バスターの火力なら、二隻の脚を手早く潰すのは容易でしょう」

 

「了解。・・・・・感謝する」

 

スバルが手早く方針を告げる。それを受けてミハイルが担当を割り振って行くと、その気配りにディアッカが小さく感謝する。

 

「ヴェサリウスは妙に迂回する軌道をとっているな・・・。下手したら連合との戦域に入っちまいそうだ」

 

「あるいはそれが狙いかもな。クルーゼの狙いがわからん以上、あらゆる可能性を考えておく必要があるぜ」

 

二手に分かれたナスカ級の予測針路を見て、ヘルベルトが顔をしかめる。マーズが眉をひそめながらも注意を促すと、見えない"何か"を見据えようとナスカ級がいる方面を睨みつける。

 

「後は臨機応変に、ってヤツだ。ディアッカはナスカ級の脚を潰したらエターナルと合流、そのまま直掩に付いてくれ。エターナルがティアナとデュランダル博士を回収したら現宙域を突破する。ヒルダ、言うまでもないだろうが、機を逃すなよ?」

 

「了解だ」

 

「任せておきな」

 

「この軌道・・・・。やはりヴェサリウスは連合軍側に接近してるわね」

 

スバルが気持ちを切り替えるように指示を出す。それにディアッカが答え、ヒルダが了承すると、明らかに陽動するように停止しているナスカ級二隻を狙撃可能な位置に、ディアッカのバスターを先導するようにデブリ帯の中を移動して行く。それを見送りながらもシホが嫌な雰囲気を隠そうもせずにボヤく。

 

「あるいは何か別の狙いがあるのかもな・・・・。ミーシャ、姫、少しばかり予定変更だ。最初にヴェサリウスのスラスターではなく主砲とVLS、レールガンを狙撃して欲しい。シホはミーシャと姫の直掩に」

 

「クルーゼの狙いを見極めるため、ですね?了解です」

 

「了解」

 

「JOSH-Aでも何かしていたらしいし、見極めは必要だな」

 

シホのボヤきを聞いて作戦に修正を加えるスバル。ミハイルも気味の悪さを感じるのか素直に頷くと、アカネとシホのゲイツと共に狙撃ポイントにデブリ帯の中を縫うように移動を開始する。ヴェサリウスの頭上から強襲できるように移動を開始したスバルに続きながら、リコも不気味さを感じ取っていた。

 

††††

 

"彼女"の声が戦場に響いたのは、スバルとリコがヴェサリウスに強襲をかける準備が整い、スバルとリコの機体が強襲の為に加速を開始した瞬間だった。ヴェサリウスから射出された脱出用のランチに戦域に居る全員が眉をひそめる中、"彼女"は必至に言葉を紡ぐ。

 

「私、戦争を終わらせる"鍵"を持っているわ!だから、助けて!」

 

「この声はアルスター二等兵か・・・・!?キラ!こちらの方が近い!彼女の救助には俺が向かう!クルーゼが出てきたら、奴を抑えてくれ!リコ、バックアップ!」

 

「分かってる!」

 

「っ・・・・!分かった・・・!」

 

「エターナルも脱出準備が完了、これより連合の艦隊を突破し、アメノミハシラに帰還する!M1隊に連絡!こちらでダミーを爆破します。ですがその前に敵MSの一時的な排除を!みんな、ここが勝負所よ!」

 

戦場に響いた全域通信の声の正体にいち早く気がついたスバルが、真っ先に行動を起こす。キラへ指示を出しながらもフレイ・アルスターが乗るランチを回収するべく、近場のデブリを蹴り飛ばして機体の軌道を急激に変更しつつ、最大出力で宇宙を駆ける。連合の部隊に砲撃をしていたキラも、苦虫を噛み潰したような声音ながら了承すると、デブリ帯を縫うようにヴェサリウスに向けて移動を開始する。

 

一方でアークエンジェル側もエターナルからの連絡を受け、行動を開始する。イズモからの指揮で前衛を担当していたアストレイ隊が陣形を手早く変更し、マリューの指示でダミーバルーンの起爆準備が整えられ、M1隊の動きに対応できずに動きが鈍ったストライクダガーを、遠雷を装備したアストレイが敢えて脚部やスラスターを狙撃する事で、足手纏いとなる機体を作り出して行く。

 

こうしてL4宙域にあるメンデルでの突発的な戦闘は大きな動きを見せるのであった


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