‡‡‡‡‡
C.E.71 2月26日
「バルトフェルド隊、隊長のアンドリュー・バルトフェルドだ」
「クルーゼ隊、イザーク・ジュールです」
「同じく、ディアッカ・エルスマンです」
「宇宙から大変だったな、歓迎する」
「ありがとうございます。それと傷に関しては触れないでください」
「足つきの動きは?」
宇宙からジブラルタルに降下したクルーゼ隊の二名がバルトフェルド隊に合流する。軽い笑みを浮かべるバルトフェルドにディアッカが問いかける。
「もうじき最新の報告がくるよ」
「隊長。無人偵察機からのアークエンジェルの最新情報です」
「聞こうか」
「アークエンジェルの現在地はここから南東に180キロ。レジスタンスの基地にいます」
笑みを浮かべるバルトフェルドの元にスバルが歩み寄り、報告を行う。
「バルトフェルド隊長は既に連合のモビルスーツと交戦したと聞きましたが」
「ああ。それに私以外に、彼も実際にヤツと交戦し、戦闘を実際に見ているよ。にしても僕も、クルーゼ隊を笑えんね」
デュエルとバスターを見上げるバルトフェルドにディアッカが問う。バルトフェルドは少しだけそのモビルスーツのパイロットと出会った時を思い出しつつ、答えるのだった。
‡‡‡‡
C.E.71 2月28日 レセップスCIC
「動き出したって?」
「はっ。北北西に向かい進行中です」
「予想通り、タルバディア工場跡地に向かっていますね」
「ま、此処を突破しようと思えば僕が向こうの指揮官でもそう、動くだろうな」
イザークとディアッカがバルトフェルド隊に合流して二日、ついにアークエンジェルが動いたと報告が入る。もたらされた情報から、バルトフェルドは敵艦の艦長が優秀な戦術眼を持つと理解する。
「もうちょっと待って欲しかったが、仕方ない。コード02。ピートリーとヘンリーカーターに打電しろ。仕掛けるぞ」
‡‡‡‡‡
「ピートリー、スコーピオン隊、準備完了」
「ヘンリーカーターはどうか」
「敵に察知された様子はありません」
レセップスCICでは着々と作戦準備を完了させつつある。報告を受けるダコスタは、頷く。
一方のアークエンジェルはレジスタンスの仕掛けていた地雷原があっさりと爆破され、周囲を警戒。その上空よりアジャイルで構成されたスコーピオン隊が襲いかかる。
「上空より熱量多数。錯乱激しく数不明!一時半の方向です!」
「さらに後方に大型の熱量二!敵空母、駆逐艦かと思われます」
「対空、対艦、対モビルスーツ戦闘!迎撃開始!」
「ストライク、スカイグラスパー発進」
CICからの報告を受け、アークエンジェル側も戦闘態勢を整える。さらに前方に展開するレジスタンスも、気勢を上げて戦闘態勢をとる。
エールストライクとスカイグラスパーランチャーストライカー装備が発進。先制とばかりに上空からアジャイルが有線式ミサイルをアークエンジェルに放ち、ガトリングを放つ。
スカイグラスパーとストライクが機関砲でアジャイルを落としていると、レセップスから発進したバクゥが戦闘距離に接近する。こうしてバルトフェルド隊とアークエンジェルの最終決戦の火蓋が今、落とされたのだった。
‡‡‡‡‡
レセップス格納庫。そこに二機のモビルスーツが発進準備を整えていた。それぞれの足元にバルトフェルドとアイシャ、そしてスバルが立っている。
「バルトフェルド隊長!何故我々の配置が、レセップス艦上なのです!奴らとの戦闘経験なら我々の方が!」
「負けの経験でしょ?」
「アイシャ。・・・・まあ、言いたいことはあるが、君達の機体は砲撃戦仕様だ。高機動戦闘をするバクゥには着いて来れまい?」
合流したクルーゼ隊のイザークが、配置に意見を言いに来る。アイシャが茶化すが、バルトフェルドは彼等をレセップス艦上に配置した理由を簡潔に述べる。
「だったらヤツは!あのシグーはどうなのですか!あの機体も我々と同じ、特に私の機体と同じアサルトシュラウドを装備している!なのに何故奴は前に出れるのです!」
「あの機体をただのシグーアサルトと同じにするなよ。あれは本来ならば、我々バルトフェルド隊の一番槍を担当する機体だぞ。見かけに騙されるな」
正論すぎる内容に、イザークは思わず口ごもる。しかし納得できない部分の説明を求める。バルトフェルドもその質問は予測していたらしく、やや皮肉気味に笑いながら、スバルのバルトフェルド隊での立ち位置を教える。
「しかし・・・・!」
「イザーク、もうよせ!上官の命令だぞ。・・・・・・失礼しました」
なおも納得できなさそうなイザークをディアッカが、肩を掴んで止め、二人はその場を後にする。
「あの少年のような真似、誰にでも出きるわけではないだろうしな。スバル、準備は良いな?」
「問題ありません」
バルトフェルド、アイシャ、スバルの三名は各々の機体に乗り込み、発進体勢をとる。
「では、艦を頼むぞ。ダコスタ君。さて、バルトフェルド、ラゴゥ出る!」
「了解。続いてスバル機発進どうぞ」
「了解。スバル・クロムハーツ、シグーアサルト、発進する」
まずバルトフェルドとアイシャが搭乗するバクゥの強化発展機であるラゴゥが発進する。その性能はバクゥの強化発展機に相応しく、一気に加速してゆく。さらに続いて発進したのは漆黒のシグーだった。カスタマイズを加えた追加装甲"アサルトシュラウド"を装備し、調整を終えた特殊装備を脚部と腰部に装備。砂漠に降り立つと同時に、先のラゴゥに劣らない機動力でレセップスから離れてゆく。
「んだよありゃあ・・・・・」
「なんだ、あれは・・・・」
その重装備に似合わない加速性能に、レセップス艦上に出たイザークとディアッカは唖然とする。
「艦長、ヘンリーカーターが配置につきました」
「よし。それにしてもなんという火力だ。ピートリーの被害は!」
「機関区に被弾しましたが、なんとかダメージコントロールが間に合いました。作戦に支障はありません」
「スバル、あの戦闘機を近寄らせないでくれ!ヤツの火力はストライクに匹敵する!」
「了解した」
レセップスで指揮をとるダコスタは、二機の発進直後に僚艦のピートリーに大打撃を与えたスカイグラスパーを警戒していた。故に隊長であるバルトフェルドのラゴゥにストライクを担当してもらい、スバルのシグーアサルトにあのスカイグラスパーを担当してもらうことにした。
ラゴゥは敵の装甲に通用するビーム兵器が搭載されている。ならばいくら機動力があるとはいえ実弾オンリーのシグーアサルトには戦闘機を落としてもらう方が効率的だと判断したのである。
‡‡‡‡‡
戦局が大きく動いたのは戦闘が始まってしばらくしてからだった。
「敵艦より支援機、更に発進を確認!!」
「何!?スバルさん!!」
工場跡地に予め仕掛けられていたワイヤーで動けないアークエンジェルを助けようと、アークエンジェルに乗り込んだカガリがソードストライカーを装備したスカイグラスパー二号機を発進させ、手負いのピートリーに向かう。
「行かせるか・・・・!ちっ!バカやろう!俺まで落とす気か!!」
「わ、わりい」
即座にアークエンジェルとスカイグラスパー1号機を抑えるように戦闘を行っていたスバルが反応。スカイグラスパー二号機を追うべく機体を反転させるが、レセップス艦上からしびれを切らしたディアッカのバスターが放った対装甲散弾砲がアークエンジェルを拘束していたワイヤーを破壊し、スカイグラスパー二号機を追おうとしていたシグーアサルトの足元に着弾、思わずスバルも怒鳴ってしまう。
「面舵60!ナタル!」
「ダコスタ!回避しろ!!」
「ゴットフリート照準!てぇぇ!!!」
スバルの警告虚しく、放たれるゴットフリート。咄嗟に艦上から回避したバスターこそ当たらなかったが、同じく艦上で砲台の役割を果たしていたザウートと40cm2連装砲塔を貫く。
「こいつで!!」
発進後ピートリーの砲塔二つを対艦刀でぶった斬ったカガリ操るスカイグラスパー二号機がレセップスに接近する。アークエンジェル側からの砲撃による被害もあり、レセップスの対空性能はがた落ちしていた。
「させるか・・・・!」
砂漠に慣れていない二機の新型、バスターとデュエルを傍目に突撃を緩行しようとしたカガリ機の下から、スバルのシグーアサルトの左手に保持されたキャットゥスから放たれた榴弾(HE)がスカイグラスパーの翼付近に着弾、カガリ機は追撃を受けないように後退する。
「ダコスタ、無事か!?」
「私達は無事だ!隊長から後退命令が・・・・いや、それより隊長の援護を!」
通信状態の悪いレセップス側からダコスタの指示が出る。その切羽詰まった声から、状況の悪さを悟ったスバルは、即座にラゴゥの方に向かう。
‡‡‡‡
「バルトフェルド隊長!!」
スバルのシグーアサルトがその場に到着したとき、それはまさに隊長、アンドリュー・バルトフェルドの機体のコクピット付近に、フェイズシフトダウンを起こしたストライクのアーマーシュナイダーが突き刺さった所だった。
「・・・・スバル・・・・・・・君も・・・撤退を。・・・・・アイシャ・・・・」
「バルトフェルド隊長ぉぉぉぉ!!!!」
今までザフト入隊までの記録を得られなかったが故に真っ当な評価がされなかった自分。そんな己を真っ当に評価し、戦闘以外のイロハを教えてくれた隊長の最後の言葉は、一人の指揮官としての命令だった。しかし・・・・・
「あ、あぁぁ!!!!!」
今までバルトフェルドの命令に背いたことのない男の最初の"命令違反"はそんな最後の言葉だった。
「ぶっ殺す!!!ストライクぅぅ!!」
産まれて初めての本能任せの殺意。それに反応したのか、惚けたように座り込んでいたストライクが振り向く 。
「今ならてめぇもコレでブち殺せるンだろぉぉ!!!」
運悪く、と言うべきかムウ・ラ・フラガのスカイグラスパー1号機と戦闘していたため、射撃兵装はなし。しかし、そんな機体に唯一使われずに装備されていた武器があった。シグーの基本兵装であるMA-M4 重斬刀である。"本来"のストライクなら無傷で切り抜けられる実体剣だったが、それはフェイズシフト装甲があってこそ。
フェイズシフト装甲がなければ実弾なども通じることが分かっている為、スバルは殺意と共に"あの"ラゴゥに匹敵する加速力を見せつけながら突撃する。
「死ぃぃ!ねぇぇ!!」
「くっ・・・・」
ここまでくればストライク(つまりは茫然としていたキラ)も、シグーアサルトが本気でこちらを撃破しようとしているのが分かったのか、咄嗟にラゴゥを撃破するときに投げ捨てたシールドに飛びつき、それを掲げる。
「ちっ・・・・・」
「くぅ・・・!」
シグーアサルトもバッテリーの残りが少ないのか、掲げられたシールドに重斬刀跳ね上げられたため、咄嗟に背後に跳ぶ。
「キラ君を援護して!」
「バリアント、てぇぇ!!」
「邪魔を・・・・!」
「って、坊主とストライクは!まだ回収出来ないのか!」
キラの現状に気がついたマリューが指示を出す。放たれた副砲"バリアント"を脚部と腰部以外の追加装甲をパージして機体を軽くしたシグーアサルトが回避する。その時、スカイグラスパー1号機に乗っていたムウがブリッジに入る。
「敵のシグーと交戦中!ストライクはフェイズシフトダウンを起こしています!」
「レジスタンスは!」
「弾薬がもうないそうです!」
ムウの問いかけにミリアリアが悲鳴混じりに答える。そしてムウがスバルのシグーを見たとき、思わず唖然とする。
「イーゲルシュテルンでもなんでもいい!坊主、ヤツを近寄らせるな!」
「少佐!?」
「畜生!なんで今まで忘れてたんだ俺は!"あの"砂漠の虎相手だったんだ。ヤツも居るに決まってるじゃねえか!」
咄嗟にミリアリアの通信機をひったくり、ストライクに連絡するムウ。
「少佐、あの機体は・・・・?」
「詳しい話しは後だ、絶対にヤツを坊主に近寄らせるな!」
「分かりました。キラ君、アークエンジェルに帰投を急いで!支援する、ウォンバット、てぇぇ!!」
ムウの険しい表情にマリューも決断する。艦の各所から大気圏内用のミサイルが放たれ、ストライクが走ってアークエンジェルに向かう。
「逃がすか!!!!」
「バカな・・・・・!あのミサイル群の中を突っ切った!?」
逃げるストライク目掛けて襲いかかるスバルのシグー。襲い来るミサイル群によりダメージを完全に無視して突き進む機体に、バジルールが驚愕する。
「ヤツの進路上にミサイルを叩き込め!坊主は!」
「たった今収容しました!」
「艦急速浮上!ウォンバット、バリアント、てぇぇ!!!」
ストライクが格納庫に収容されると同時に、アークエンジェルは急速浮上、更に足止めにミサイルとリニアカノンを叩き込み、離脱してゆく。残されたのは機体各所から火花を散らせる漆黒のシグーだけであった。
こうしてアークエンジェルと砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドの決戦は、旗艦レセップスの大破を初めとしてザフト側の大敗という結果で終わるのであった。
2017 7/11 文の一部を添削