機動戦士ガンダムSEED Urd   作:めーりん

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PHASE-06

‡‡‡‡‡

 

C.E.71 3月5日 ジブラルタル基地

 

バルトフェルド隊壊滅後、ディアッカ・エルスマン、イザーク・ジュールの両名と共にジブラルタル基地に出向したスバルは、一人格納庫で修理を終えた愛機のフィッティングを行っていた。そんな彼の元を一人の男が訪れる。

 

「君がイザーク達と共に来てくれたパイロットか。私の名はラウ・ル・クルーゼ。クルーゼ隊の勤めている」

 

「スバル・クロムハーツ。"元"バルトフェルド隊所属のパイロットです」

 

訪れた仮面の男、クルーゼに手を止めて向き直るスバル。あの人当たりの良いバルトフェルドが嫌っている人物を見て、スバルもまた"あまり信用できない"と判断する。

 

「足つきとの戦闘でイザークやディアッカが迷惑を掛けたと聞いてね。隊長の私が謝罪に来た。バルトフェルド殿の事は本当に惜しいと思うよ」

 

「いえ。隊長も覚悟は決めていたと思いますし、彼等にしても機体特性をもっと生かした作戦を建てることが出来たのではないかと、愚考します」

 

(珍しく)クルーゼが肩を小さく落とし、謝罪する。スバルも少しだけ割り切れた部分もあるため、首を小さく振って否定する。

 

「君はこれからどうするのかね?」

 

「機体のフィッティングが完了しだい、此処ジブラルタル基地に配属になると思います」

 

「もし・・・・君さえ良ければクルーゼ隊に出向、と云うのはどうかね?君もまだ、足つきやストライク相手に割り切れていない部分があるとみえる」

 

クルーゼの言葉に、少し顔を強ばらせるスバル。クルーゼの指摘は紛れもない事実、痛い点を突かれたからである。

 

「イザークやディアッカは足つきを追いたいだろう。だが、実はオペレーション・スピットブレイクの準備で私は動けない。ゆえに君に彼等の補佐をしてほしいのだよ」

 

「・・・・・彼等が私の言うことに耳を貸すとは思えませんが」

 

「そこは私が厳命する。受けてくれないかね?少し不安なのでね。君は若くしてバルトフェルド殿に重用されていた。その事実を私はきっちりと理解しているつもりだ」

 

悩むスバルにクルーゼは言葉を重ねる。少し思案していたが、スバルはその要請を受諾するのだった。

 

‡‡‡‡‡

 

「アスラン、君に隊を任せる。カーペンタリアで母艦を受領、足つき追撃を行いたまえ」

 

「隊長・・・・」

 

「不安だろうから私から補佐を要請した。イザークやディアッカは既に彼を知っているだろう」

 

「なっ・・・・」

 

「マジかよ・・・・」

 

クルーゼの言葉と共に入室したスバル。彼の登場に、イザークやディアッカは言葉を失う。

 

「隊長、彼は・・・・」

 

「スバル・クロムハーツ殿。宇宙ではさほど有名ではないらしいが、"闇夜の銀狼"の異名を持つエースの一人だよ。君達の一期前のトップガンで先輩でもある。あまり知られていないがスエズ攻防戦で砂漠の虎ことバルトフェルド隊長が大金星を上げることができた立役者だ。その彼に補佐を私が要請した。彼の言葉に耳を傾けることを進めるよ・・・・恐らく、同じ機体条件で君達が彼と戦えば分が悪いのは君達の方だと私は考えている。私でも条件次第では厳しい部分があるだろうな」

 

クルーゼの言葉に今度はその場にいたクルーゼ隊の面々が耳を疑う。ラウ・ル・クルーゼの実力は彼らも知るところであり、そんな彼が条件次第とはいえ苦戦するかもしれない人物が目の前にいる。その事実に頭が追いつかないでいた。

 

「っ、失礼しました。この度隊長に任命された、アスラン・ザラであります」

 

「ニ、ニコル・アマルフィです!」

 

慌ててアスランとニコルが敬礼と自己紹介を行う。イザークやディアッカも、先のアークエンジェル戦でスバルの見せた腕を知っているため、敬意を持って敬礼する。

 

「彼の言葉に少しは耳を傾けるように。アスラン、君に期待する」

 

アスランの肩を軽く叩いて退出するクルーゼ。後に残されたのは納得のできないイザーク、ディアッカと緊張気味のニコル。そして唖然としたアスランと手元の端末で情報を纏めるスバルだけであった。

 

‡‡‡‡‡

 

C.E.71 3月6日

インド洋上

 

カーペンタリアに向かう為平行して飛行する二機の輸送機。それぞれにスバルのシグーアサルト、もう一機にアスランのイージスが乗せられ、各々のパイロットは輸送機内で待機していた。

 

「文字通り、化け物じみた腕だったな・・・・」

 

輸送機内の椅子に腰掛けたアスランは一人呟く。あの日クルーゼが退出した後、アスランやニコルの予測した通り、イザークやディアッカが条件を同じにしてシュミレータで対戦した結果、イザークもディアッカも完封されてしまったのだ。更にアスランやニコルを驚かせたのは、彼のシグーアサルトがフェイズシフトを搭載したデュエルアサルトシュラウドとバスターを戦場を活かして翻弄、フェイズシフトダウンを起こさせて撃破してしまった点にある。

 

「もう一機に搭乗してるスバル殿だろ?そりゃ当たり前だよ」

 

「そんなに有名なのですか?」

 

アスランの呟きを聞き取ったのか、輸送機のパイロットが話しかけてくる。思わず聞き返すアスラン。宇宙にいる時、彼の名は一切耳に入ってこなかったので、アスランの疑問ももっともであった。

 

「ああ。地球軍の新型に敗れちまったとはいえ、あのアンドリュー・バルトフェルドの懐刀とまで言われた若きエースだよ。宇宙の方には名は伝わらなかったみたいだが、バルトフェルド隊の快進撃を影から支え続けたのは彼だとまで謳われてるんだ」

 

「そうですか・・・・」

 

輸送機パイロットの言葉にアスランは彼のシュミレータでの戦闘様子を思い浮かべていた。機体特性を把握し、それらを生かした封殺戦術。かと思いきや一撃離脱に切り替えて撹乱するなど、相手に行動を読ませず、い自身はシグーアサルトの特性を最大限に活かした戦術構成等、自分達はまだまだ学ぶことが多いと理解させられる人物だった。

 

 

「(キラに似ているが、関係があるのだろうか。アイツからはそんな事聞いたことないが・・・・)」

 

「何!?了解した。こちらも準備させる」

 

「どうしたのですか!?」

 

「地球軍の戦闘機だ!あっちは既に待機してるそうだからあんたも早くモビルスーツに!いざという時は機体をパージする!」

 

思考していたアスランに輸送機のパイロットが焦ったように告げる。窓から隣を見れば、輸送機のハッチが開かれていた。

 

「ちっ、両方揃ってエンジンに被弾した!消火は可能だが機体が重たい!高度を落としてパージして我々は救援を・・・・って嘘だろ!?」

 

 

「なっ・・・・」

 

エンジンに被弾し、揺れながらも高度を落としはじめた輸送機。輸送機から滑るようにパージされたアスランが輸送機パイロットの声に反応して隣を確認すると、ディンの90mm対空散弾銃でスカイグラスパーの翼を滑空しながら撃ち抜いたシグーアサルトの姿が。

 

「聞こえるか?」

 

「あ、はい!」

 

「この先に無人島らしき島影が見えた。そこに降下する」

 

スバルの通信に頷き、重量があるはずのシグーアサルトに続くアスラン。そこで彼等は(ある意味)運命の出会い(再会)をすることになるのだった。

 

‡‡‡‡‡

 

「無事か?」

 

「掠っただけですが」

 

「・・・・っ」

 

「とりあえずアスラン、女性を押し倒したままなのはどうかと思うが」

 

「・・・・あ」

 

無人島で鉢合わせたアスラン、カガリの両名だったが隙をついてアスランがカガリを押し倒した所にスバルが合流、思わず突っ込まれて離すアスラン。

 

 

「何故此処に居る・・・・スバル・クロムハーツ」

 

「アークエンジェル戦で隊が壊滅、俺は再編成された結果、アークエンジェル追撃の任務を受けた彼らの隊に出向。その移動中にあの輸送機に被害が出て此処に降下する羽目になった。それだけだ。理解したか?」

 

アスランに両手両足を縛られたカガリが、スバルに問いかける。それに答えるスバルが空を見上げながら答える。

 

「ダメです。どのチャンネルもNジャマーの影響で拾いません」

 

「スコールが来るみたいだ。シグナル発信機、射出しておけ。今日はこの無人島の洞窟で一晩明かすことになる」

 

「地球での知識は貴方の方があります。従いますよ」

 

アスランが困ったように話しかけてくる。空を見上げていたスバルが答え、アスランは頷く。

「先に洞窟に行って火を起こしておけ」

 

「貴方は何を?」

 

「武器もないんだ。このお嬢さんの拘束を解き、少し手伝わせる」

 

「何をだよ!私に何を手伝わせる気だ!」

 

「洞窟の中に仕切りになりそうな岩壁を挟んで小部屋がある。そこに窪みがあったから簡易の風呂を作るんだ。」

 

アスランに大きめのサバイバルパックを2つ投げ渡すスバル。カガリが手足の拘束を解かれ、問いかけると、彼はなんてこともないという具合に答える。

 

「な・・・・!」

 

「海水被っただろう?洗い流さないと、せっかくの綺麗な髪が痛んじまう。アスラン、俺のシグーアサルトのコクピット内にもう一つサバイバルパックがあるからそれも運んでおいてくれ」

 

「・・・・ぅ」

 

唖然とするカガリに理由を述べるスバル。息を吐くように言われた言葉にカガリの顔がどんどん真っ赤になってゆく。

 

「お前が必要ないというなら、作らないが」

 

「・・・・・分かった。手伝う」

 

俯いたカガリにスバルが声を掛けると、長い長い沈黙の後、カガリの消え入りそうな声が聞こえるのだった。

 

‡‡‡‡‡

 

「湯加減はどうだ?多分、大丈夫だと思うが」

 

「問題ない。しかしお前、芸達者だな」

 

「私もそう思います。何故こんな技能を?それにこれだけの食料や水を用意してるのも教えていただきたい」

 

夜、スバルが見つけた海辺近くの洞窟で一夜を明かすことになった三人。スバルの指示の元、作られた簡易の風呂に入ったカガリに、岩壁越しにスバルが問いかける。問いに答えたカガリは疑問に思った事を問い、アスランも疑問に思ったのか、聞こうとする。スバルの機体、シグーアサルトのコクピット内にあったもう一つのサバイバルパック。一人で用意したとしても、量が多すぎるとアスランは感じていた。

 

「元々バルトフェルド隊が支配していた地域は砂漠が多い。そんな地域で、俺はバルトフェルド隊の一番槍を任されると同時に、斥候や偵察、他にも監視任務を受けるときがあった、それだけだ」

 

「砂漠地帯なら、まあこれだけ装備を備えるのは理解できるな」

 

スバルの答えに毛布で体を包んだカガリがやってきて頷く。

 

「あとは、性分だな。あの場所で受けた訓練が骨の髄まで染み込んじまってるんだ」

 

火にかけた小さな鍋を見つめ、かき回しながらスバルが自嘲気味に呟く。無意識の内にだろうが、スバルの隣に腰を下ろしたカガリが視線だけでアスランに"ザフトではそこまで教えるのか?"といわんばかりの視線を向けてきたので、アスランは否定の意味を込めて首を横に振る。

 

「今ばかりはNジャマーを恨むな。とはいえ、ないならないで、今よりももっと悲惨な戦いになっていただろうが」

 

「核弾頭が使われる、と?」

 

「バナディーヤの街でお前は見たはずだぞ?地上にはあんなヤツも多いし、恐らく地球軍の上層部に一定数以上存在する・・・・・躊躇いはせんだろうよ」

 

火を通したヌードルをカップに分けながら呟くスバル。カップを渡されたカガリは、そんな彼の横顔に一度見た砂漠の虎"アンドリュー・バルトフェルド"の面影を見た。

 

「血のバレンタイン・・・・この戦争のきっかけになったあの事件の影にも連中が居たらしい」

 

「な・・・・」

 

スバルの呟きにアスランも絶句する。彼の戦争の本質を見抜く目や情報の取捨等、年齢らしからぬ部分を見てしまう。

 

「中立のヘリオポリスでストライク等が造られていたのも十中八九、地球軍の圧力からだろう。なあ、あの時バナディーヤで隊長が言った問い、覚えているか?」

 

「戦争にはスポーツのような明確な終わりも制限も得点もない、ならばどのように勝ち負けを決める、どこで終わりにすればいい、だったか?」

 

スバルの言葉にカガリが思い出すように答える。彼は頷くと真正面に座るアスランに目を向ける。

 

「恐らくだがアスラン、君がザフトに入ったのも俺と違い、大切な人を失ったからだろう。だが、考えてみろ、俺達が攻撃した結果、誰かがお前みたいな気持ちを味わったのだとしたら、何時、そのループは終わる?やはり、敵であるモノを全て滅ぼした時か?・・・・・・それが恐らく、プラントと地球、ナチュラルとコーディネーターの争いの本質なんだろうさ」

 

スバルの言葉にアスランもカガリも呑まれたように黙る。スバルは中央で燃え盛る火に薪を投げ入れながら呟く。

 

「つまらん話をしたな。それ食ったらアスランはとりあえず寝ろ。宇宙から降りてすぐに移動だったらしいし、疲れが溜まってる筈だ。お前も眠っておけ、睡眠不足は女の敵だし、服もそろそろ乾いてるだろう」

 

「ですが・・・・」

 

「な・・・!」

 

スバルが空気を変えるように口を開く。アスランも、本来は敵であるはずのカガリでさえ唖然とする。特にカガリは耳まで真っ赤になっており、スバルはそれを傍目にカガリの手から空になったカップを取り上げ、ヌードルの追加を入れ、再び手渡す。

 

「お前!なんでそんなことサラッと言えるんだ!このバカ!私は敵なんだぞ!?」

 

「何を言っている・・・・俺から見たらお前は可愛らしい女性だよ。いくら敵だろうが、戦士として振る舞おうとそれは変わらん」

 

「(スバル殿は無自覚に口説いているのか・・・・・!?仮にも敵だぞ彼女は・・・・・)」

 

カップを傍らに置いたカガリが顔を真っ赤に反論する。追加してもらったヌードルを食べ終え、横になったアスランは早くも微睡みだした中、そんな事を考えるのだった。

 

‡‡‡‡

 

C.E.71 3月7日 早朝

 

あの後、十分な睡眠とれたアスランは、スバルに隊長として休むよう命令してまで火の番を変わり、朝を迎えた。とはいえ、スバルと火の番を変わってから日の出まで、アスランの体感で一時間ほど。しかもいつの間にか毛布が掛けられていたり、食器などは片付けられていたりしていた。

 

スバルの肩に寄りかかって熟睡しているカガリを見る限り、スバルは殆ど寝てなかったのだと理解し、申し訳ない気持ちになる。

 

「――――」

 

「・・・・!」

 

その時、沈黙を守っていた通信機に変化が起きる。慌ててイージスに向かうアスラン。イージスの通信機から聞こえた友人の声に喜び、返答する。

 

「無線が回復したか」

 

「はい!今、ニコルから・・・・!?何やってるんですか!」

 

「仕方ないだろう。髪の毛をがっしりと掴まれてるんだぞ」

 

イージスの足元から聞こえてきたスバルの声に、イージスのコクピットから顔を出して答えるアスラン。が、スバルの姿を見てアスランは思わずコクピットから落ちそうになった。

 

「んぅ・・・・・。・・・・。」

 

「起きたか。どうやら無線が回復したらしいぞ」

 

アスランの声で目が覚めたのか、スバルに抱きかかえていたカガリが幼子のように目を擦り、次の瞬間、顔が一気に真っ赤になる。

 

「何で私を抱きかかえてるんだよ!バカァ!降ろせぇ・・・!」

 

「お前が、俺の髪の根本付近をがっしりと掴んでるからだ。いくら恨みがあるとはいえ、寝てるときまで攻撃する必要あるのか・・・・?」

 

喚くカガリだったが、スバルに言われて初めて自分を抱えている男の髪をがっしりと掴んでいる事に気づく。呆れた様子だったが、スバルはカガリが髪を離した事でようやく彼女を降ろせた。

 

「無線が回復したらしい。海からも何か来るらしい。お前の機体がある方角だ」

 

「どちらが先に来る?」

 

説明するアスランにスバルが問う。アスランも彼が言いたいことが分かったのか、レーダーを見に再びコクピットに登る。

 

「どうやら海の方が先みたいですね。ついでに同方向から飛行するものもあります」

 

「できればこんな所で戦闘にはなりたくない。俺達の機体を森の中に隠せば空からも見つからないだろう」

 

確認したアスランがラダーで降りながら答えると、スバルは即座に決断する。

 

「私は自分の機体の所に行くよ」

「そうしておけ。お前、軍属じゃないのに何故あの艦に乗り、あれに乗ったんだ」

 

「友を守ろうとする寂しがりで優しい奴が居るからな。後、私はカガリだ!もう"お前"だなんて言うなよ!そっちは?」

 

「ア、アスランだ・・・・」

 

 

カガリが自分の機体に向かおうとする。そんな彼女に思わずスバルが問いかける。背を向けたまま答えるカガリであったが、どうしても修正させたかったのか、振り向いてスバルに詰め寄ると自分の名前を名乗る。彼女の勢いに圧されたのか、アスランも名乗る羽目に。

 

「ん。お前の名前は知っているから名乗らなくても大丈夫だぞ!・・・・・・じゃあな、スバル、アスラン」

 

満足したのか、一つ頷いたカガリは今度こそ二人から離れてゆく。そんなカガリの別れの言葉に複雑な表情になる二人であった。

 

 

ちなみに海から現れたストライクと、妙に嬉しそうな表情のカガリを森の中に機体を隠した二人が見て似通った複雑な表情になったのは偶然である。

 

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