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オーブ領 オノゴロ島モルゲンレーテドック内
「あの艦、アークエンジェルとXナンバー。あの時、人命だけ救い、その後、我等の手で艦とモビルスーツは沈めた方が良かったのかも知れぬ、とかなり悩んだ。中立を掲げる我が国だが、力を持てばそれを狙われる。が、力なくば意思を押し通す事もできぬ。こればかりは難しい問題だ」
「・・・・ご心中、お察しいたします」
「さて、と・・・・・・。貴艦を沈めず、このオーブに招き入れた理由だが、ストライクの稼働データとパイロットであり、コーディネーターの少年、キラ・ヤマト。モルゲンレーテはその両面での技術協力を求めたかったからなのだ。叶うのであれば、こちらもそれなりの便宜が計れる事になろう」
「ウズミ様それは・・・!」
オノゴロ島 モルゲンレーテにあるドック内の一室でマリュー、ムウの両名はウズミと話し合いをしていた。現在の地球での情勢や、オーブの立場などで苦悩するウズミ。そんな彼だったが、難しい問題の一角たるアークエンジェル隊に便宜を図った理由も告げ、マリューはそれに驚く。
「貴官らも難しい問題であろう?出来る限り回答は早い方がありがたいが、まずは一度貴官らだけで話し合うが良い」
「ウズミ様・・・・。ご配慮、感謝します」
穏やかな表情でマリューらに告げるウズミ。マリューも、ウズミの言いたいことは分かるため、その好意をありがたいと受け入れる。
「あの、ウズミ様。その・・・・・。あのシグーとパイロットは・・・・」
「あの夜間迷彩の機体の操縦者か。無事ではあるが、念のため検査を行っているそうだ。むしろアレだけ機体は破壊されていたのにあの程度で済んだのはパイロットの技量が優れていたから、と報告を受けている。それに彼は我が国の恩人と私は見ておる。悪いようにはせんよ。今は、貴官らには申し訳ないが、貴艦の医務室に一時的に搬送されておる。準備が完了次第、ここモルゲンレーテの医務室に移送される予定だ」
立ち上がるウズミに思わずマリューが問う。ウズミはその問いに答えると、部屋を出て行くのだった。
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モルゲンレーテの一室
「以上の活躍を鑑みるに、ストライクのパイロットであるキラ・ヤマト、彼の能力は一般的コーディネーターのそれを大きく凌いでいる。推測の域でしかなく、私の専門外の事ではあるが、以前学会誌に記され、一部で議論を呼んだ、スペリオール、エボリュショナリー、エレメント、ディスディントファクターを想起、可能であればキラ・ヤマトには今後も精密かつ・・・・。はぁ、最終項目削除、記録終了」
ストライクの戦闘データを整理していたモルゲンレーテの技術主任、エリカ・シモンズ。彼女は一通りの整理が終わると、呼びに来たモルゲンレーテ社員と共にドック内を移動する。
「それで?救助したあのシグーのパイロットは?分かったことがあれば知らせてちょうだい。」
「容態は安定しています。検査を行い、秘密裏にプラントの方に問い合わせてみましたが、その・・・・」
歩きながらエリカは救助したシグーのパイロットの事を問う。報告していたモルゲンレーテ社員は、少し躊躇いを見せるが、意を決してとある書類を彼女に手渡す。
「ん?どうかした・・・・え!?これは一体・・・・!」
「プラントからは"かの人物は既に死亡認定が出されている"との回答が。それと、これが彼の検査結果です」
「間違いじゃないのね・・・・?」
「間違いありません」
資料に目を通して驚き、思わず問いかけるエリカ。社員もプラントからの回答を告げつつ頷く。
「あり得るの・・・・?こんな事が・・・・。この件、まだ他言はしていないわね?なら、この件は私からウズミ様に話しておく。特Sクラスの機密にするから、誰にも話さないでね?」
信じられない、と言わんばかりのエリカだったが、急いで指示を出しつつ、当面の事に集中するのだった。
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アークエンジェル内 医務室
アークエンジェルクルーに志願した一人、"フレイ・アルスター"は指を少し切ってしまい、思わず医務室に来てしまっていた。彼女が動きを止めた理由、それは目の前のベッドに寝かされている金髪の青年が原因である。
「・・・・・なんで・・・・・なんで、コイツ、キラに似てるのよ・・・・!」
彼女もザフトのパイロットが保護され、治療を受け、一時的にアークエンジェルに搬送されていると聞いていた。目の前に眠る少年がそのパイロットであると否が応でも気がついてしまい、その顔を見て思わず後ずさるフレイ。そしてテーブルに体がぶつかった結果、空のビンが足元に落下し、砕ける。
「!!・・・・・・ぐぅ・・・!!」
「ひ・・・!」
砕けた音に反応して意識が目が覚めるザフトのパイロット"スバル・クロムハーツ"。コーディネーターは基本的に敵だと判断しているフレイは、その様子に怯え、思わず近くにあった武器になりそうな物、則ちベッドから離れた入り口付近に置かれていた彼の荷物の一つ、拳銃を掴む。
「フレイ・・・・?って、何してるんだよ・・・!」
「サイ・・・!?離して!!コイツ敵じゃない!!なんでこんな所に居るのよぉ!!」
偶然、物音を聞きつけた青年"サイ・アーガイル"が顔を覗かせ、その場面を見て咄嗟にフレイを押さえ込む。フレイは錯乱気味になりつつも涙混じりに叫ぶ。
「離して、やれ・・・・。どの道、セーフティーが掛かっている・・・・ソレでは撃てん・・・・」
「!!バカにして・・・・!!」
「ッ、よせ、フレイ!!」
目を覚まし、痛みを堪えながらベッドに腰掛けたスバルが告げる。その言葉に激昂したフレイが、銃を滅茶苦茶に操作、更にスバルに狙いも付けずに銃口を向ける。その様子に思わずサイが彼女を抑える。
「きゃっ・・・。ッ!?」
トリガーが引かれ、狙いも付けずに放たれた弾丸はスバルの足元に着弾。フレイはその衝撃に驚いて銃を手放す。オープンボルトの銃であるため、落下した衝撃で再び弾丸が放たれる。その弾丸は動けないスバルの右肩を貫通、そこから赤い血が流れる。その様子に思わずフレイは後ずさる。
「ッ・・・・なんで・・・!」
「何事だ!」
フレイがスバルから流れる血を見て思わず後ずさる。そこに、近くで今後を話し合っていた為、騒ぎに気づいたマリュー達が駆けつける。
「・・・・アルスター二等兵、理由などは後で聞く。自室で待機していろ。アーガイル二等兵、彼女を頼む」
「あ、はい」
現場を見て即座に理解するナタル。落ちていた拳銃にセーフティーを掛けると手早くフレイとサイに指示を出す。
「艦長、私がやります」
「え?ええ・・・お願い」
「迂闊だったな。いくらモルゲンレーテが軍事工廠って言ったって、そこの社員は一般人で技術者が多い。こういうのには疎いんだろうし、アークエンジェルに搬送したって言っても、そこまでは気が回らなかったんだな」
拳銃を元あった場所に置き、スバルの治療の為近寄るナタル。ムウもどうしてこうなったのかを察し、呆れた風に肩をすくめる。
「・・・・・俺はコーディネーターで、あんたらの敵だぞ・・・・?・・・・・何故・・・・?」
「ナチュラルであろうとコーディネーターであろうと私は目の前の怪我人を見捨てるなどできん。あと水も飲め、聞きたいこともある」
ポツリとスバルが問いかける。上着を脱がせて治療するナタルは、自身に言い聞かせる様に答える。ムウとマリューは服を脱がされた故に見えた彼の肉体と、そこに散在する、腕を中心とした無数の傷痕に気がつく。そこにウズミが現れたため、ナタルは彼に水挿しを手渡す。
「・・・・。で?何が聞きたいんだ?それにオーブの獅子、ウズミ・ナラ・アスハ前代表までいらっしゃるとは、俺みたいな一介のパイロットには身に余る光栄だ」
「・・・・聞きたいことが幾つかあるが、まずは先の戦闘、我が国の艦を守っていただいた。その感謝を」
水挿しで喉を潤したスバルが皮肉気味に笑みを浮かべる。ナタル達が下がった事を確認したウズミは軽く頭を下げる。
「"前"とはいえ、代表首長だった方が俺みたいな奴に頭を下げないでくれ。あの時、貴国の艦を守ったのも本当に咄嗟だったんだ」
「・・・・そうか。だが、守ってくれたのもまた事実、だからこれだけは伝えておきたかった」
スバルの言葉に、ウズミも小さく頷く。そして手にしていた資料をナタル達に手渡すと、ムウが用意したパイプ椅子に腰掛ける。
「失礼だが、君の事を調べさせてもらった。それを踏まえて聞きたいことがある」
「私の経歴、ですよね?別に構いませんよ。長い話になりますし、かなり際どい部分もありますから、防諜対策が出来ている場所で話したいのですが」
ウズミの目を見て彼ははっきりと言葉にする。ウズミは彼の目を見て、何かを察したのか小さく頷き、立ち上がる。
「これは、貴官達も聞く権利がある、が、今日は何かと様々な事が起きた。君もまだ本調子ではないだろう。ゆえに話しは数日後にしたい。その時にはキラ・ヤマト少尉とあのじゃじゃ馬娘も呼んでくれ。」
「は!艦長、その時の護送は私が」
「その時はお願いね、ナタル」
ウズミは護衛に指示を出しつつ部屋を後にする。マリュー達も、その声音から、重要な事であると察したのか、肯くのであった。
読者の皆様にお知らせします。
機体などの設定を別途に資料集として作成する予定です。それでここからなのですが、主人公のここまでのプロフィールを本編の方に番外編みたいに入れるか悩んでいます。機体設定資料集の小説にキャラ設定も載せるべきか、ご意見をいただけませんか?
2015/9/14追記
・ウズミ様のセリフに加筆しました
・設定資料集を別作品として投稿しました
・誤字修正を行いました