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アークエンジェルがモルゲンレーテ社のドックに入港して七日後
C.E.71 4月1日
モルゲンレーテ社のドック内の中で防諜対策が取られた部屋を、と言うことで急遽修理中のアークエンジェルの作戦会議室に人々が集まった。キラ・ヤマト、カガリ・ユラ・アスハも呼ばれ、思わず顔を見合わせる。
「バジルール中尉、入ります」
「あ・・・・」
「お前・・・・!」
そこにナタルがザフトの赤服に着替えたスバルを連れて入る。念のため手錠がされたスバルを見て、キラとカガリが腰を浮かせる。
「父上、これは・・・!」
「座れカガリ。バジルール中尉、彼の手錠を解いてくれ。彼も暴れる気はないだろう」
「しかし!・・・・いえ、分かりました」
憤りを隠せないカガリを一瞥したウズミはナタルに頼む。ナタルは一度反論しかけるが、ウズミの瞳を見てからスバルの手錠を外す。
「まずは今一度、我が国の艦を守っていただき、感謝する。貴官の言う通り、防諜対策はここなら出来ているだろう。話してくれるかな」
「防諜対策は信じてもらえないでしょうが、私も保証します」
ウズミが改めて感謝の意を告げる。続いて言われた内容に、艦長のマリューも同意する。ウズミの対面に腰掛けたスバルは、皆がこちらを見たのを確認してから口を開く。
「大方俺・・・・いえ、私に関しては知っているのでしょうし、アスハ前代表がこのような事を尋ねた理由も、まあ、想像出来ています。・・・・おそらく、というよりは十中八九、でしょうね。プラント本国では既に私はMIAと見なされている筈です。・・・・・私には親族も、ザフトに入隊するまでの経歴も一切ありませんから」
「な・・・!」
「そんな・・・!」
落ち着いた表情でスバルが語り出す。その内容に思わずキラとカガリが腰を浮かせる。
「やはり、か・・・・。噂では聞いていたがまさか、真実だったとはな」
「どういう事ですか?アスハ代表」
両手を組んで、信じたくなかった、と言わんばかりに顔を俯かせるウズミ。疑問に思ったナタルが問いかける。
「彼は第一世代のコーディネーターなのだろう。あまり知られてはおらぬが、第一世代のコーディネート技術は完璧ではない。極々稀に、親の望んだコーディネート内容と、誤差程度だが結果が異なる場合がある、と聞いている」
「それは僕も噂では聞いたことがありますが、それが一体・・・・」
ウズミが第一世代のコーディネーターについて語る。キラも、自身がコーディネーターであるがために聞いたことがある噂を肯定する。が、それが彼とどう関わっているかが結びつけられない。
「ウズミ様、ここからは私が。・・・・・本来"コーディネーター"と言うのは、ナチュラルと違い、あらかじめ強靭な肉体と優れた頭脳、それぞれ才能を持つ者を指すの。容姿などはあくまでその副産物とされているわ。でも、それを理解できない・・・・いえ、違うわね。コーディネート技術を過信している人々が一定数以上居るのもまた、事実なの。コーディネーターの定義をナチュラルも、コーディネーター達本人の中にも間違えて認識している人が居るのよ」
モルゲンレーテの技術主任、エリカ・シモンズが補足を入れる。マリュー達もその内容は初耳だったのか、驚いた表情を見せる。
「だからこそ、容姿が望んだモノではない。思っていたほど才能が見受けられない、等の理由でコーディネートを依頼した親がその子供を"なかったこと"にしようとするケースが稀に存在するのよ。容姿のコーディネートはあくまで技術的な副産物に過ぎない。メインたる才能に関しても、適切な環境や訓練、学習等がなければ十全にそれを発揮できないのにね」
「まさか・・・・」
俯きながら続けるエリカ。ここに来てマリュー達も彼がどういう存在なのかを理解し、思わずスバルの方を向く。
「私は、恐らくこの"目"が、原因で親から捨てられたコーディネーター。故にザフトに入隊したとしても、上層部からしたら何時居なくなっても文句を言われたり、悲しむ人の居ない、そのような扱いなのですよ」
「・・・・そんな・・・。そんな理由なのか・・・・?」
医務室から移動する前に入れたカラーコンタクトを外し、久々に他者に自分本来の瞳、則ち右目はキラ・ヤマトと同じアメジスト。左目はカガリ・ユラ・アスハと同じ琥珀色という、オッドアイを皆に見せる。
「こりゃ珍しい。・・・・オッドアイってやつか。俺、初めて見たぜ」
「艦長、ナチュラルがオッドアイになる確率はかなり低いとされています。見たところ彼は視力に異常はないみたいなので遺伝的理由だと思われます。流石にコーディネーターでオッドアイがどのように扱われているかはわかりませんが」
スバルのオッドアイを見てムウは感嘆し、ナタルはその希少性に気がつく。カガリとキラはその瞳に魅入っており、エリカも驚きの表情を見せている。
「なんていうか、アレだな。髪の色とか顔立ちもあるから坊主か嬢ちゃんの血縁者、あるいは兄貴って言われても信じられるぜ」
「あの、ムウさん。僕に兄弟は居ませんから」
「私だってそうだ!大体、こいつ何歳なんだよ!」
「現在は17歳だ。生年月日はC.E.54年3月7日。今はC.E.71年4月1日だから間違いはないはずだが」
「ちなみに細胞などから見ても大体、それ位の年齢だと結果は出ているわ。で、本題はこの細胞のDNAデータにあるの」
ムウが思った事を呟き、それにキラとカガリが反論する。スバルの言葉にエリカが補足を入れ、一転して真面目な表情になる。
「どういう事ですか?エリカ主任」
「・・・・大変、失礼ながら、キラ・ヤマト少尉のDNAデータを参照させていただきました。顔も似通ってらしたので、念の為、と云う形でしたが」
エリカにナタルが若干非難的な眼差しを送る。エリカは申し訳なさそうに、持ってきていた紙を皆に見えるように差し出す。
「結論から述べます。キラ・ヤマト少尉と、スバル・クロムハーツさんは、何らかの、血縁関係・・・・いわば兄弟関係になります。これは数百回に登る精査の結果です」
「え・・・・?」
「マジかよ・・・・!」
「な・・・・!?」
「なんだって・・・・・!」
エリカの噛みしめるような結果報告。それにその場に居た面々は愕然とし、スバルとキラの顔を見比べる。
「確かに顔つき、声が似ていたりや片方の瞳の色が同じですけど、そんな・・・・・!」
「つまり坊主共は知らず知らずの内に、冗談でもなく兄弟で殺し合いをしてたって事になるのか・・・・!?くそっ・・・・!!なんだよソレ・・・・!」
「僕と・・・・スバルさんが・・・・・きょう、だい・・・・?」
「・・・・」
マリューが信じられないと資料、スバル、キラを順番に見やり、ムウがやりきれないと下を向く。キラは茫然とスバルの顔を見やる。スバルはその瞳を資料に向け、考え込むようにしている。
「スバル君。君は本当に、何も知らないのかね?」
「ええ。それは命を懸けて肯定できます、アスハ前代表。プラント本国にも私の血縁者は居ませんでしたし、ましてや兄弟が居るなど聞いたことがありませんでした。私がこの17年間、調べた結果知り得たのは、この首筋に刻まれていた私の生年月日らしき数字と、検査で分かった血液型、そして生まれたときから首に下げていたというドックタグに刻まれていた"スバル"という名前だけになります」
ウズミの問いかけに、真剣な表情で答えるスバル。彼が振り向きながらその長髪を持ち上げて見せれば、確かに首筋に小さく文字列が刻まれていた。
「髪を延ばしているのはそれを隠すためかね」
「ええ。バルトフェルド隊長からこの刻まれていたモノは他人に知られない方が良いはずだ、と言われまして。コレを知るのは今、ここにいる方々と、亡くなったバルトフェルド隊長、アイシャさんだけです。バルトフェルド隊の副官、ダコスタさんにも話したことはありません」
ウズミの問いかけに頷くスバル。バルトフェルドの名が出たとき、キラの表情が一瞬だけ強張ったのをカガリは気がついた。
「ふぅ・・・・・。さて、君はこれからどうする?プラント本国は君の予想通り、と言うべきかMIAだと判断しているみたいだが・・・・」
「・・・・・・」
「スバル・・・・・お前・・・・・」
ウズミの言葉にスバルは俯く。カガリはそんな彼の内情をなんとなく、理解できた。
「もし君が良ければ、だが・・・・オーブに亡命する、というのも一つの手だ。その場合、少なくとも私はそれを支援するつもりでいる。・・・・無論、善意だけではなく、軍に協力をしてほしい、という頼みがある。君に関しての情報は色々と集めさせて貰ったのでな」
「わ、私もその時は協力するぞ!」
俯くスバルに、穏やかな表情でウズミは告げる。その内容に、思わずカガリも同意する。ウズミは娘の変化に少しだけ笑みを浮かべ、スバルを見つめる。
「よろしいのですか・・・・?私は、厄介事にしかなりませんよ・・・・?」
「アークエンジェルを受け入れている時点でリスクは負っている、気にする必要はないし、先程述べたように純粋な善意だけではない。それにプラント本国では既にMIA認定されているのだ。君の新しい経歴を用意するのも、そう苦労しないだろう。答えは・・・・そうだな、娘に告げてくれ。私はこれで失礼するよ」
震える声でスバルが問う。ウズミは再び穏やかな笑みを浮かべるとエリカを伴って部屋を後にする。マリューやムウ、ナタルもキラを促して部屋を後にするのだった。
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C.E.71 4月14日
オーブ領 モルゲンレーテドック内
「アークエンジェルは明日、出航します。貴方は・・・・亡命をすることにしたのね」
「ああ。今まで敵対していた俺が言うのもアレだが、貴艦の無事の航海、祈っている。とは言ったものの、当日は俺もギリギリまで護衛に付くつもりだから本当の意味での別れはしばらく後になるが」
「・・・・・例の部隊。貴方が出向していたという部隊の事?」
「まあな。303、イージスのパイロットに関してはそれなりに理解しているつもりだからな。恐らく何らかのアクションがあるはずだ。・・・・俺ごときが何ができる、と思うだろうが、あるいは・・・・と思ってな。幸い、モルゲンレーテで開発中の機体のバックパックの試作型、それはストライクのエールストライカーをベースにしているらしいし、回収された俺のシグーアサルトを改造した今の機体なら長時間のホバリングが可能になった。出力はあるからアラスカの防衛圏ギリギリからでもオーブには戻れる。緊急時に連絡を入れれば、マーシャル諸島までオーブ艦隊が迎えが来ることも可能だしな」
ドックに繋留、修理が進むアークエンジェルを眼下にマリューとスバルが会話する。スバルはモルゲンレーテの作業服を身に纏っており、マリューの問いかけに穏やかな笑みで答える。
マリューらアークエンジェルの護衛を買って出た(無論亡命し、オーブ国民となった彼はその後アスハ代表と話し合った。その際様々な提案などを行った結果、色々と便宜を図られた上に許可を密かに貰った)彼にマリューは問いかける。少し寂しげになった彼にマリューは彼が本当に優しい人物だと理解する。
「結構、義理堅いのね」
「今じゃ俺もオーブ国民で、モルゲンレーテの技術者兼オーブ軍の三佐、って事になってしまっているんだ。それにこっちが本音だがね、せっかく直したのにまた壊されちゃ意味がない」
笑いながらマリューが茶化せばスバルもまた、笑いながら答える。
「キサカ一佐も言っていたが、地球、ザフト両軍ともに慌ただしくなっている。ザフトでもスピットブレイクと呼ばれるデカい作戦が準備中らしいしな」
「良いの?そんな重要っぽい情報を話しちゃって。私は地球軍の士官よ?」
「構わんさ。今の俺は、オーブ軍の"スバル・クロガネ"三佐だからな。"スバル・クロムハーツ"じゃない」
「随分な屁理屈ね、それは」
スバルの言葉に、楽しそうにマリューは笑う。結局オーブに亡命を果たした彼は、その日の内にあれよあれよという間に経歴などが決定され、更に様々な提案などを行った結果、異例のオーブ軍の三佐に任命されていた。
(ちなみに名前は辞典と三日ほど睨めっこしていたカガリが命名)
「俺から言わせてもらえば、あのトールって子も、キラ・ヤマトの事にも少し不安がある。キラ君も俺と違って志願兵なのだろう?一応、MS隊の指揮官としての経験がある俺になら軍が違ってもやれることは多い筈だ」
「感謝します、クロガネ三佐」
アークエンジェルを見ながら告げるスバル。マリューはそんな彼の気遣いに感謝しつつ、彼の数少ない弱点を突く。
「勘弁してくれ・・・・三佐ってのそうだが、名前にはまだ慣れてないんだ。スバルと呼んでくれ」
「ふふっ。分かったわ。・・・・カガリさんの事もウズミ様に頼まれたのでしょう?」
「ウズミ様もこの戦争の根本を理解してらっしゃる・・・・地球軍の士官であるマリューさんに言うべき事じゃないんだろうがね」
笑みを浮かべるマリューだったが、ここ最近のカガリの様子から何かを感じ取っていたのか、問いかける。スバルもまた、難しい表情でその問いかけに答える。
「当日はオーブ軍が偽装のために領海線まで護衛艦群が出る。カガリ嬢は行かないが、俺は本当の意味でギリギリまで護衛するさ」
「ありがとう。・・・・・・良いのね?」
「構わんさ。亡命を決めたとき、既に覚悟は出来ているし、プラントでは既に死んだ身だ」
当日の動きを伝えるスバル。マリューはそんな彼の心情を察し、本当にありがたいと感じて礼を述べる。スバルは手を振り、その場を後にするのだった。
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C.E.71 4月15日
「オーブ軍護衛艦隊旗艦から入電。"我、これより帰投せり。貴艦の健闘を祈る"。"クロガネ三佐、後を任せる。無事の帰投を祈る"。以上です」
「"エスコートを感謝する"と返信を」
「"了解した"と伝えてくれ」
「了解しました」
オーブ領 オノゴロ島を発進したアークエンジェル。偽装の為にエスコートしていたオーブ艦隊が離れてゆく。アークエンジェルは推力を増し、一路アラスカを目指すのだった。
2017/4/10 階級に関する勘違いを修正