インフィニット・ウィッチーズ 空駆ける自由の翼   作:天野蒼夜

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ネウロイとの戦闘後、基地にお偉いさんがやって来た。その人は最近活躍している碧と一夏にお礼を言いに来たという。

OP:
「STRAIGHT JET」唄:栗林みな実さん

ED:
「DREAMIN'」唄:東京パフォーマンスドール




第10話「新しい恋」

一方、ここはインフィニット・ストラトスの世界。

 

そこでは碧と一夏が出かけたきり帰ってこないという事態が起きていた。

 

これにはIS学園が騒いでいるが、その中でも特に騒いでいる面子がいた。

 

「どこへ行ったのだ一夏と碧の奴、出かけたきり帰ってこないではないか!」

 

黒い長髪を白いリボンでポニーテールにしている武士のような雰囲気を纏っている少女は篠ノ之箒。

 

一夏のファースト幼馴染で、専用機【紅椿】を操るIS適正者だ。

 

「何人か目撃情報があるとは聞きましたけど、誰かを追ったっきり見ていないと言いますし……どうしたんでしょうか?」

 

お嬢様口調で喋り、ロールがかった長い金髪に碧眼をしている少女はセシリア・オルコット。

 

オルコット家のご子息兼イギリスの代表候補生で、専用機【ブルー・ティアーズ】を操るIS適正者だ。

 

「もしかしてその追った奴に誘拐されたんじゃ!?」

 

小柄な体型に茶色の長い髪を黄緑色のリボンでツインテールにしている少女は鈴こと凰鈴音。

 

中国の代表候補生で、専用機【甲龍】を操るIS適正者だ。

 

「いや、もしそうならISでどうにかできるはずだよ。碧もいたんだし」

 

長い金髪を白いリボンで束ね、セシリアと同じ碧眼をしているのはシャルロット・デュノア。

 

IS企業の中でもトップクラスのシェアを誇るデュノア社の出身でフランスの代表候補生であり、ラファール・リヴァイブを改造した専用機【ラファール・リヴァイブカスタムⅡ】を操るIS適正者だ。

 

「ラウラ!ドイツ軍であいつ等の場所を特定できないの!?」

 

「……ダメだ。我が黒兎隊も総力を決して情報を集めているが、有力な情報は得られていない」

 

小柄な体型に銀髪の長い髪に眼帯をしている少女が通信端末を右手に持ちながら眉間にシワを寄せている。

 

彼女はラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

ドイツの代表候補生で、黒兎隊もといシュヴァルツェ・ハーゼの隊長を務め、専用機【シュヴァルツェア・レーゲン】を操るIS適正者だ。

 

皆いつまでも帰ってこない一夏と碧のことを心配し、わざわざ学校を休んで町の周辺をあちこち捜し回っているのだ。

 

現在一夏の姉である織斑千冬もあらゆる手段を使って捜し回っているが、その力を使っても有力な情報は得られていないという。

 

それはそうだ……碧も一夏も【この世界には】いないのだから。

 

「一夏の奴……まさか本当に誘拐されたのではないだろうな……?モンドグロッソの時のように……」

 

暗い表情で箒が言う通り一夏は千冬のモンドグロッソ決勝戦の日に謎の組織に誘拐されたことがある。

 

その事件によって千冬は絶対優勝だと思われていたモンドグロッソを放棄して一夏を助けに来たのだ。

 

結果はもちろん、千冬の不戦敗。

 

それから千冬は一夏が誘拐された場所の情報を提供してくれたドイツ軍に借りを返すため、一年間ドイツ軍で教官をしていた。

 

そこでラウラは千冬と出会い、出来損ないのレッテルを貼られた自分を再起させてくれたことによって尊敬するようになったのだ。

 

「だ、大丈夫だよ箒!一夏も碧も絶対見つかるよ!それに仮に誘拐されていたとしても二人ならどうにかできるよ!二人共福音の暴走を止めた原因だよ?」

 

重い空気になっているのを少しでも和らげようとシャルロットは明るい声で言うが、それでもこの重い空気は変わらなかった。

 

シャルロットもそれが分かったのか、【ごめん……】と言って謝った。

 

「とにかく、今は嘆いている場合ではないこうなれば全国を虱潰しに捜すぞ。我々にはISがあるからな。皆一夏か碧を見つけたら連絡を取り合おう」

 

「有力な情報がない以上、今はそれしかありませんわね……。一夏さん、私を心配させた罪、見つけたらたっぷり思い知らせて差し上げますわ」

 

「そうだな、一夏も碧も見つけたらみっちりしごいでやらないとな。捜索を続けよう。二人に危険が及ぶ前に!」

 

「了解(ですわ)!」

 

そうして、少女達はそれぞれの専用機を展開して各地に散って行った。

 

どんなに捜しても無駄であることを知らずに……。

 

 

――――

 

 

「一夏!ネウロイがそっち行ったよ!」

 

とある昼下がりの大空の上で僕はチャネルで一夏に指示を出す。

 

指示を出された一夏は【任せろ!】と言って右手に持った雪片弐型で自分のほうにやって来た小型ネウロイ達を斬り裂く。

 

対して僕も小型のネウロイをビームライフルのダークリパルサーの銃口からビームを連射して撃ち抜いていく。

 

「これだけ倒してもまだコアが見つからないなんて……坂本さん、まだコア見つけられてないのかな……?」

 

今僕達が戦っているのは大量の小型ネウロイの軍勢。

 

そして坂本さんが言うにはそのどれか一体にコアがあるのだという。

 

だからそれを今坂本さんが魔眼で探しているのだが、まだ見つかっていない。

 

「っ!」

 

五体の小型ネウロイが坂本さんに標準を定めた。

 

マズい!今近くには誰にもいない!それに皆目の前にネウロイの殲滅に

忙しくて行けそうもない。

 

周囲を状況を見て僕が一番坂本さんと近い位置にいたので即座に機動ウィングを加速させて坂本さんのところに向かう。

 

だが小型ネウロイ達はそれよりも早く坂本さんにビームを発射してきた。

 

「くっ……!」

 

坂本さんはこの攻撃に対し、魔眼で見るのを一旦やめ、横に移動して避ける。

 

ギリギリか……危ないところだった。

 

僕は坂本さんが避けるのを見ると二丁のダークリパルサーの銃口にエネルギーをチャージし、その二丁から直線状に二つのビーム砲を放つ。

 

ネウロイ達はそれが当たるとたちまちに消滅し、それに伴って他のネウロイ達も消滅した。

 

どうやら僕が倒した小型ネウロイの中にコアを持った本体がいたようだ。

 

だが、今はそんなことどうでもいい。

 

「大丈夫ですか、坂本さん?」

 

「少しドジを踏んだだけだ、心配ない。それより東条も織斑も大分ネウロイとの戦いに慣れてきたな」

 

【嬉しい限りだ】と言って坂本さんは豪快に笑う。

 

よかった、見た感じ坂本さんに外傷はないみたいだ。

 

「でも今回のネウロイは中々特殊でしたね。思っていた以上に手こずりました」

 

「ネウロイにもいろいろな形のものが存在するとこの前話しただろ。中にはああいうタイプも多く存在するんだ」

 

一夏の言葉に対して義姉さんがそう言って答える。

 

今回は坂本さんの魔眼がないともっと手こずってたな、多分。

 

「では基地に帰還するぞ。今日は来客がくる予定だからな」

 

「来客?」

 

「お前と織斑に関係することだ。さあ、帰るぞ」

 

こうして、ネウロイを殲滅した僕達は基地に帰還するために来た道を飛んで行った。

 

 

――――

 

 

基地に帰ると、僕と一夏はミーナさんに出迎えられて執務室に連れられてその中に入る。

 

入るとそこには白をメインカラーにした軍服と帽子を被り、胸のところには様々な勲章をつけたおじさんが待っていた。

 

「ミーナさん、この人は……?」

 

「杉田淳三郎大佐、戦艦大和の艦長よ。もちろん貴方達のことは話して理解されているわ」

 

「君達が異世界から来たという少年達か。君達の活躍はミーナ中佐から全て聞いている。なんでも元の世界に戻るために戦っているとか」

 

「はい、たしかにそれはあります。でも、この世界に住んでいる人達を救いたいというのもあります」

 

「俺も碧と同じです。あんな奴等に好き勝手にさせられませんから」

 

「はっはっは!ミーナ中佐が言っていた通りだ。二人共実に真っ直ぐな目をしている。ウチの艦隊に欲しいくらいだ」

 

「それは大変恐縮でございます。しかし我々は当然のことをしているだけですから」

 

「でも、どうして艦長さんがわざわざここに?」

 

「貴方達の活躍によって多くの艦隊がネウロイから救われた。大佐は皆を代表してお礼を言いに来たのよ」

 

ミーナさんより階級の高い人がわざわざお礼を……こんな体験滅多にできないぞ。

 

「君達は今この世界において英雄になりえる存在になっている。つまりそれだけ期待している者も大勢いるということだ。もちろん私も含めてだ」

 

「皆様の期待には応えるつもりです。それでこの世界が救えるのなら。英雄は言いすぎだと思いますが……」

 

「いや、お前達はそれだけ多くのネウロイを撃墜している。本来ならば二人共中尉もしくは大尉クラスの階級が与えられるべきなのだからな」

 

「生憎階級というものに興味がないのです。僕達はネウロイが殲滅させられればそれでいいんです」

 

「あくまでネウロイを殲滅するために戦う……そういうことか?」

 

「はい、それはここにいる皆がそうだと思われますが?」

 

「ふっ、たしかにそうだな。まだ若いというのに肝が据わっている」

 

「それほどでもありませんよ」

 

「ミーナ中佐、彼等は実に素晴らしい少年達です。ぜひ我が隊のお手本にしたいくらいです」

 

「それは光栄です。その言葉を糧に彼等もますます精進することでしょう。そうよね?二人共」

 

「はい、大佐の激励を胸にこれからも精進していきます」

 

「俺もです。俺達にはそうしないといけない理由がありますから」

 

「うむ、君達のこれからの活躍を陰ながら期待しているよ。では、これにして失敬」

 

「大佐、出口までお送り致します」

 

「ああ、ありがとう」

 

笑顔でお礼を言う杉田大佐を連れて坂本さんは執務室を出て行った。

 

杉田大佐が出て行くと、一夏ははぁ~……と大きく息を吐いた。

 

「緊張したぁ……まさかお偉いさんが来てるなんて思わなかったもんな……」

 

「一夏は僕の言葉にほとんど相槌を打ってただけじゃないか。対応は僕に丸投げして……」

 

「まあまあ、細かいこと気にするなよ。お偉いさんに褒められたんだからさ」

 

「私も少々驚いたけど、杉田大佐は信用できる人だから貴方達のことを話したの。ごめんなさいね」

 

「いいですよ、どうせ僕達のことは全世界に知れ渡ってるみたいですから」

 

「でも何かはがゆいな……あっちでもそれなりに俺達って有名だったけど、ここはそれと同じくらいじゃないか?」

 

「この世界にない開発技術のものを使っているんだ。注目されるのは当然のことだよ」

 

「この調子で行けば貴方達は本当に英雄になってしまうかもしれないわね。私としては嬉しい限りだわ」

 

そういえばあの人……僕達をこの世界に飛ばしてから全然姿を見せないな。

 

今頃どこで何をやっているのだろうか……?ま、どうでもいいか。

 

僕達がこの世界を救えば自然と現れるかもしれないし。

 

ていうかあの人には一夏の財布を盗られたままだしね。

 

「二人共、今日もご苦労様。今日のところは休んでしっかり英気を養ってちょうだいね」

 

「そうですね、さっきの戦いで結構動いたのでお風呂に入りたいですね。碧は?」

 

「僕はいいよ。一夏先に入ってきたら?」

 

「お、そうか?じゃあお言葉に甘えて」

 

「それではミーナさん、失礼致します」

 

「ええ」

 

そう言って僕はミーナさんに一礼してから執務室から出て行った。

 

ミーナさんのいつもの笑顔に見送られながら。

 

 

――――

 

 

「……」

 

二人を笑顔で見送り、私は執務室の奥にある椅子に座り、組んだ両手を顔の前にやる。

 

やはり私の予想は当たっていた。

 

二人が活躍すればそれだけ他の軍隊から注目されることに。

 

「(そしていつか二人はここだけに留まらず、誰もが二人の圧倒的戦力を欲しがるでしょうね。何を考えているか分からない軍隊までも……けど)」

 

そんな奴等に二人をやるわけにはいかない。

 

独占欲が強いと言うつもりはないが、何より二人をただの便利な道具あるいは兵器としか見ないような奴等に二人を明け渡したくないのだ。

 

「(二人はあんなにいい子何だもの……。そんな子達を平気にさせるわけにはいかない……)」

 

あの子達には人間であって欲しい。

 

人の心、優しい心を持った強い人間に。

 

それがあの子達にとって一番いいことなのだから……。

 

「(私ったら、よっぽどストレスが溜まっていたのね。そういえば私がこうやって肩を叩くと東条君はマッサージしてくれたっけ)」

 

右拳で左肩を叩きながら思い出す。

 

仕事の後に私の後ろで肩を叩いてくれる東条君の姿を……。

 

<ミーナさん、力加減はこれぐらいでいいですか?>

 

<ええ、ありがとう。とても気持ちいいわ。東条君ってマッサージ上手なのね>

 

<お祖母ちゃんやお祖父ちゃんによくしてあげてたのでそれが染み付いちゃっただけですよ。でもミーナさん相当こってますね……かなりストレスが溜まっているように思えます>

 

当然だ。

 

ここの隊長に任命されてから執務だけじゃなく、上層部と喧嘩すること

が多くあるのだから。

 

自分の今の地位には誇りを持っているが、喧嘩だけは勘弁して欲しい。

 

<ミーナさん、あまり一人でストレスを溜め込まないで下さいね。貴女に何かれば皆が心配しますから>

 

優しい子だ。

 

私のことをここまで心配してくれるなんて……。

 

いっそのこと息子に欲しいくらいだ。

 

「(本当に優しい子……でも、それ故に怖い……あの子が、私達の代わりにストレスを溜め込んじゃうかもしれないことが)」

 

あの子はきっと自分のことよりも相手のことを最優先させるタイプだ。

 

そういう子はたくさんの人達を引き寄せやすい。

 

もしかしたら誰かはもう東条君のことを異性として意識し始めているのかもしれない。

 

当初の私だったらそれを許さなかっただろうが、今では宮藤さんの言っていた男性との関わり合いと信頼関係を改め、そういう規制は大幅に見直した。

 

「(それに……)」

 

自分もあまり人のことを言えた義理じゃない。

 

これも東条君の人を引き寄せる力のせいなのかもしれない。

 

「(ごめんなさいクルト……私はもう……新しい恋を、見つけてしまったのかもしれないわ……)」

 

だが、さっきも言ったようにそれは私だけじゃないだろう。

 

その証拠に最近シャーリーとトゥルーデの東条君に対する態度が今まで

明らかに変わっているからだ。

 

「(次東条君に会ったら、下の名前で呼んでみようかしら。うふふっ)」

 

柔らかく微笑んで私はそんなことを密かに考えていた。

 

 

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