インフィニット・ウィッチーズ 空駆ける自由の翼 作:天野蒼夜
ルウェポンが登場する。
OP2:
「Believe」唄:玉置成美
ED2:
「迷々コンパスはいらない」唄:Stylips
ここはオラーシャ上空にあるネウロイの巣の中。
そこで人の姿をしたネウロイが巨大な紅いカプセルの中をじっと見ている。
【……ヤハリ、マダデータガ足リナイ。ヤハリ異世界ノモノヲコピースルノハ簡単ナモノデハナイナ……】
この紅いカプセルの中に閉じ込められているのは人の姿をしたネウロイが
密かに製作しているものだ。
どういうものなのかはまだ分からないが……。
【コレデハマダ実戦使用ニハ程遠イ。モットデータヲ集ナクテハ……トイウコトデ、今回ノネウロイハコレダ】
人の姿をしたネウロイが母艦のようなネウロイに視線を向ける。
【コレヲ完成サセルニハ奴等ノ戦闘データガ必要不可欠ダ。アトハ分カルナ?ヨシ、行ケ】
人の姿をしたネウロイがそう言うと、母艦のようなネウロイはネウロイの巣から抜け出て行った。
母艦のようなネウロイが飛んで行くと、人の姿をしたネウロイは視線を戻す。
【コイツガ完成スレバ我等ネウロイガ世界ヲ征服スル祈願二近付くコトガデキル……。異世界ノ者ナド……恐レハシナイ】
それを人の姿をしたネウロイは独り言のように言った。
ーーーーー
【ブーン!ブーン!ブーン!】
ネウロイの出現を聞きつけて僕は自分の部屋からミーティングルームに駆け出す。
ミーティングルームに着くとそこには既に皆集まっており、いつもの和やかな雰囲気ではなく、戦闘前の空気を部屋中に漂わせていた。
「よし、これで全員揃ったな。ではこれよりブリーフィングを始める」
「現在ネウロイはファラウェイランド方面に飛行しているわ。しかも今回は母艦タイプだそうよ」
「それはどういったタイプのネウロイなんですか?」
「一体のネウロイが更に何体ものネウロイを生産するタイプだ。つまり、それだけ戦闘が長引く可能性があるということだ」
坂本さんの説明に一夏は【うへぇ……】と引き顔になる。
なるほど、そういうタイプもあるのか。
「今回は多勢に無勢なので臨みたいと思います。ではストライクウィッチーズ、出撃!」
「了解!」
こうしてブリーフィングを終えた後、僕達は格納庫に向かって出撃した。
ーーーーー
【碧!小さいのがそっち行ったぞ!撃ち落とせ!】
「了解!」
皆より早く出撃した僕は通信越しで一夏が指示されて五体の小型ネウロイから発射される紅いビームを全て避けた後、一丁ずつ持ったダークリパルサーからビーム砲を連射し、コアを撃ち抜いて消滅させる。
「っ!」
前方から放ってくる三体の小型ネウロイの紅いビームを僕は右へ、左へと回避する。
「このっ!」
僕が放たれるビームを全て避けると、その三体の小型ネウロイに一夏が近付き、が雪片弐型で斬り裂いて撃ち落とした。
しかしこうやっていても一向に敵の数が減らない。
「(これも……)」
僕はチラリとそれに目をやる。
それは母艦のような形をしており、その下にはポッカリと穴が開いている。
そこからは親亀が卵を産卵するかの如く、小型ネウロイが大量生産されているのだ。
「(あれを落とさないといけないっていうのは、分かっているけど……)」
こんなに馬鹿げた数の小型ネウロイに阻まれたのでは、傷付けることはおろか近付くこともできない。
「(けど、コイツ等を何とかしないと……この先の人達が……)」
後ろのほうに視線を向ける。
その先にはミーナさんの言うファラウェイランドがあるらしい。
もしここで僕達がやられてしまえばそこに住んでいる人達に被害が及んでしまう。
だからせめて坂本さん達が来るまで僕達がコイツ等の侵攻を阻止しなければならないんだ。
たとえここが俺達にとって異世界でも、その人達も生きているということに変わりはないのだから……。
「(やっぱり突破口を開くには……あれしかないか……。体力使うからあまり使いたくないけど……出し惜しみしてる暇はなさそうだしね)一夏!」
【何だ?】
心の中で決心して僕は一夏に通信越しに声をかける。
「しばらくの間、敵を僕に近付けないようにしてくれないかな?あの母艦ネウロイ に……あれをぶつける!」
【あれってまさか……福音を撃ち抜いたあれのことか!?】
「うん、そうだよ」
フリーダムに搭載されているダークリパルサーから放たれるビームには三つのタイプがある。
一つは威力は低めだが連射性に富んだラピットショット、二つ目は一定量のエネルギーをチャージすることによってラピットショットより大きい威力のビーム砲を放てるビームショット、そして三つ目はエネルギーを最大までチャージし、極太のビーム砲を放つEXツインバーナーだ。
EXツインバーナーは最大までチャージすることによって絶大な威力を誇るものだが、二つほど問題があり、一つはチャージするのに100秒間の時間を労すること、二つ目はチャージして溜まるまでの間、完全に無防備になってしまうことだ。
しかし今回はそのリスクを負いでもしないと勝つことはできない。
だからこそのEXツインバーナーなのだ。
【EXツインバーナーはそのあまりの威力に千冬姉からも使用が禁じられたもの。それをここで使う気なのか?】
「そうでもしないとこの戦況を変えられない。どんなリスクを冒してでも僕達はここを守らなきゃいけない。そうでしょ?」
「その通りだ東条!それでこそストライクウィッチーズ準隊員だ!」
聞き覚えのある声が横から聞こえてきた。
声がしたほうに視線を向けるとそこには……。
「坂本さん!」
「東条、遅れてすまない。ここからは我々も戦線に参加する!」
声がしたほうに振り返ると、そこには坂本さんを始め、ストライクウィッチーズのメンバー全員が来ていた。
「丁度いいタイミングで来てくれました!皆さんにはやってもらいたいことがあるんです!」
「やってもらいたいこと?」
僕の言葉に義姉さんが首を傾げる。
「坂本さんが言っていた通りあの母艦ネウロイが小型ネウロイの発生源になっているんです。しかし、敵が多すぎて傷付けることはおろか近付くこともできないんです!だから……」
二丁のダークリパルサーを構える。
「だから皆さんには僕がエネルギーをチャージしきるまでの間、ネウロイを僕に近付けないようにして欲しいんです。そうすれば母艦ネウロイも消滅すると同時に小型ネウロイも消滅すると思うので」
「それってどのくらいかかるの?」
「100秒だよ。チャージできたら皆さんにお知らせするので、そうなったら皆さんは一夏と一緒にできるだけ遠くに避難して下さい。巻き込まれたら……怪我だけじゃ済まなくなるかもしれませんから……」
低い声音で皆に言い放つ。
何故ならEXツインバーナーは巨大戦艦を一発で消し飛ばせるほど威力が高いからだ。
それ故に僕はこの技を福音戦以外では使ったことがないのだ。
「……了解した、ようは我々がそのチャージが完了する寸前までお前の援護をすればいいんだな?」
「はい」
「了解した、それでは部隊を編成しよう。私、宮藤、リーネ、ペリーヌ、ハルトマンが織斑の援護、残りのメンバーで東条の護衛の二部隊とする。それでは、散開!」
「了解!」
坂本さんの掛け声と共に僕達の共同戦線がスタートした。
ーーーーー
「はあっ!やぁっ!てやあぁあああああああああっ!」
襲い掛かってくる小型ネウロイを雪片弐型を振るって撃ち落していく。
「ええっと、これで何体目だ!?ああもう途中まで数えられてたのに!忘れちまった!」
サイドから攻めてくる紅いビームが俺にめがけて放たれる。
「くっ……!」
俺はそれを右へと、左へと避け、雪羅から荷電粒子砲を放ってそれを放った小型ネウロイを撃ち落とす。
今までは少々不慣れで命中率がよくなかったが、リーネに鍛えられたおかげで少しはマシに撃てるようになったのだ。
「っ!?」
しかし、それに気を取られていて後ろの小型ネウロイに気付かなかった。
しまった!あれは囮だったのか!
「烈風斬!」
俺がそれを撃墜しようと身を構えようとした瞬間、小型ネウロイの横から突風が吹き荒び、さっきまで俺の後ろにいた小型ネウロイは消滅した。
「ありがとうございます坂本さん!助かりました!」
「礼はいい!今は戦いに集中するんだ!」
「は、はい!」
坂本さんに言われてで慌てて返事をする。
それにしてもさっきの技……結構カッコよかったな……。
刀一本であんな突風を起こせるなんて……。
「(そういえば俺も坂本さんと同じ剣だよな……だったら俺も頑張ればあれが使えるようになるんじゃ……よし)」
試しにやってみるために俺は群れの中に突入している坂本さんを見据える。
「烈風斬!」
刀を両手に構え、坂本さんが刀から作り出される突風を目の前の小型ネウロイにぶつける。
なるほど……ああいう感じでやるのか……だったら俺も!
坂本さんがやったように雪片弐型を両手に構えて両目を閉じて精神を研ぎ澄ます。
視界は完全に閉じているので、今の俺には銃の射撃音、ビームの発射音、そしてその中には僅かに風の音も聞こえてくる。
「(精神だ……精神を研ぎ澄ませるんだ……)」
そう……鋭利な刀のように……鋭く研ぎ澄ませるんだ……!
………………。
…………。
……。
……見えた!
ゆっくりと目を開ける。
周りの風景がこころなしかゆっくりに見える。
【ビーッ!ビーッ!ビーッ!】
放たれるビームを軽やかなステップするように避ける。
見える……ビームの軌道……敵の動きが……見える!
「(よしっ!ここだっ!)いっけえぇええええぇえええええ!!」
雪片弐型を両手に持ったまま前進してそれを思いっ切り振りかぶった。
するとさっきの坂本さんが発生させたのと同じくらいの大きさの突風が発生し、ビームを掻き消してそのまま数体の小型ネウロイに直撃して消滅した。
「(よし!成功だ!)」
俺は自らの挑戦に成功した喜びを表現するように小さくガッツポーズをした。
【皆さん!あと十秒でチャージが完了します!急いで避難を!】
通信越しに碧が俺達に知らせる。
ナイスタイミングだ。
「どうやら終わったようだな。皆!さっきの碧の通信を聞いたな!すぐにここを離れるぞ!」
「了解!」
坂本さんに言われて皆が退避を始める。
俺もそれに続くように退避する。
まさか……こんな形でまたあれを見られることになろうとは正直思わなかったけどな。
そんなことを思いながら俺は坂本さん達と共にその場から離脱した。
ーーーーー
【チャージ……91%……92%……93%……】
フリーダムに搭載されているナビゲーターがチャージの過程を知らせてくる。
今まで僕を護衛してくれていた義姉さん達も既に僕の合図と
同時に避難している。
【94%……95%……96%……】
「(よし……あともう少しだ……!)」
【97%……98%……99%……】
こうしてチャージしていると福音戦との戦いを思い出す。
たしかあの時は一夏達が援護してくれたっけ。
「(ま……あの後……千冬さんに大目玉食らったんだけどね……。それであれ以来……”EXツインバーナー”を使うの禁止されたんだっけ……)」
【100%!EXツインバーナー、チャージ完了!】
おっと、そんなこと思い出してる内にこっちの準備が整ったようだな……。
「ターゲット……ロックオン……!」
照準にしっかりと狙いを改めて母艦ネウロイに定めてトリガーに人差し指を添える。
「……発射!」
呟いたのと同時に二丁のダークリパルサーの銃口から極太のビーム砲が放たれる。
全てを無に帰す黄色い巨大な閃光が空を斬り裂きながら、母艦ネウロイに向かって直進していく。
やがてそれは母艦ネウロイに直撃して突貫工事の如く貫き、パァァアアアン!という母艦ネウロイは軽快な効果音を立てて消滅した。
それと連動して空を支配していた小型ネウロイも消滅した。
「……ネウロイ、完全消滅を確認。任務完了です」
頭部に黒い猫の耳の他にアンテナのようなもの(本人が言うには魔導針というらしい)を生やしたサーニャさんが両目を閉じて告げる。
遠くのものを感知できるサーニャさんが言うなら間違いないだろう。
「やったな碧!久し振りに見たが、すげえ威力だったぜ!さすが碧のリーサルウェポン!」
皆と一緒に僕のところに駆け寄ってきた一夏がそう言って僕に右の親指を立てて
サムズアップする。
僕もそれに答えるように右の親指を立ててサムズアップする。
「碧!」
そんなことをしていると、シャーリーさんが矢の如き速さで飛びついてきた。
ていうかつよく抱き付かれているためすごく苦しい。
しかも背中には何やら柔らかいものが当たっているような気も……。
「シャーリーさん、ちょっと苦しいです……」
「いや~どんなのか見てたけど、すごい威力だったな!あんなデカいネウロイを一撃で仕留めるなんて驚いたよ!」
「ああ、たしかにあれはとてつもないものだった。まさかまだあれほどの兵器を隠し持っていたとはな。それよりリベリアン、お前はいつまで碧に抱き付いているつもりだ!」
【さっさと離れろ!】と言って義姉さんがシャーリーさんを僕から引き剥がす。
「何だよ、抱き付くくらいいいじゃんかよ~」
「いいわけないだろ!よもやこんなところで……」
「何だ~?カールスラントの堅物はこういうことで恥ずかしがるのか~?ピュアだね~」
「お前の羞恥心に境界線がないだけだろう卑猥ウサギ!」
「誰が卑猥ウサギだ!この堅物犬!」
「何を~!」
「やるか~!?」
『ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……!』
二人が僕を挟んで目から火花を散らせている。
二人の仲が悪いということは知っていたが、まさかここまでとは……。
「はいはい二人共、碧君を挟んで喧嘩しないの」
「そうだゾ。東条が困ってるじゃナイカ」
僕を挟んで喧嘩するシャーリーさんと義姉さんにミーナさんとエイラさんがそう言って助け舟を出す。
二人もそれを聞いて渋々ではあるが、いがみ合うのをやめてくれた。
「それではこれより基地に帰還します。今回は大手だったけど、皆よくやってくれたわ。特に碧君は今回も高い戦果を上げてくれましたね」
「いえ……これは僕の力じゃなくてISの力なので。そんな大したことは……」
「謙遜は時に嫌味になりましてよ?」
「いえ……別にそんなつもりで言ったわけじゃ……」
「だが戦果を上げたのは事実だ。これはじきに勲章が贈られるかもな」
「そうだね、この戦いで結構倒してるっぽいからそろそろ撃墜を称える勲章をもらってもおかしくないかもね~」
「それってすごいことなんですか?」
「ああ、我々にとってはとても名誉あることだ。その者の偉業を示すものだからな」
「へぇ~……そうなんですか」
「そうだ」
「うふふっ、まるっきり興味なしってところね。二人らしいわ。でも名誉あることに変わりないから。授与されたら受け取っておきなさい」
「はい……」
「では、基地に帰還します」
そう言ってミーナさんは話をまとめ、僕達は基地へと帰還した。
【……ウィーン】
だが、碧達のいた数km先に小型のカメラのようなものが浮かんでいたことを彼等は気付かなかった。
そのカメラは碧達が見えなくなるとどこかに向かって飛んで行った。