インフィニット・ウィッチーズ 空駆ける自由の翼 作:天野蒼夜
OP2:
「Believe」唄:玉置成美
ED2:
「迷々コンパスはいらない」唄:Stylips
母艦ネウロイとの戦闘を終え、僕達は基地に帰還してミーティングルーム笑顔のミーナさんの話を聞いていた。
「皆、よくやってくれたわ。皆が尽力してくれたおかげでファラウェイランドに住む人達の被害は最小限で済んだわ」
ファラウェイランドが救われたことをミーナさんがそう言って僕達を褒める。
「ありがとうございます。今日も皆さんのお役に立てたようで何よりです」
「碧のEXツインバーナーには久しぶりに驚かされましたけどね」
「それにエネルギーを最大までチャージできたのは皆さんが援護してくれたおかげです。皆で得た勝利ですよ」
僕達の言葉にミーナさんはいつもの笑顔を保ちながら【謙遜しなくていいのに】と言って返した。
だって皆の援護がなかったEXツインバーナーなんていうリスクの高いものなんて使えなかったしな。
「それじゃあ、皆、今日は任務で疲れてるでしょうから、今日はゆっくり休んでちょうだい。それじゃあ、解散」
ミーナさんがそう言って話をまとめると、皆がそれぞれミーティングルームから出て行く。
「織斑」
そんな中坂本さんが一夏に声をかけてきた。
「はい、何でしょうか?坂本さん?」
「少しな。東条、少し織斑と二人で話がしたいのだが、構わないか?」
「はい、それは構いませんけど……」
「すまないな」
「じゃあ一夏、僕は部屋に戻ってるから」
「ああ、また後でな」
一夏にそう言って僕は皆に流れるようにミーティングルームから出て行った。
それにしても、坂本さん……一夏に何の用で話しかけたんだろう?
―――――
「それで坂本さん、俺に話ってなんですか?」
ストライクウィッチーズのメンバーと碧がミーティングルームからいなくなったところ
で、俺は坂本さんにそう言って話を切り出した。
「うむ。織斑、お前今回の任務の時、あの技を使っていただろう?」
「あの技……といいますと?」
「決まっているだろう?烈風斬のことだ」
ああ、見よう見まねでやったあれか……。
でも、あれがどうかしたのだろうか?
「その烈風斬がどうかしたんですか?」
「お前は私の十八番である烈風斬を見ただけで物にしていただろう?それも私の烈風斬と同等の威力で……」
「あれは見よう見まねでやってみただけで……全然まぐれですよ」
「いや……あれが見よう見まねだとしても出来すぎている……。お前、相当剣の才能があると見た……」
「ええ、まあ……小さい頃から剣の稽古を姉からやらされていたので……」
「そうか……ならばその姉は相当な武人なのだな。お前をここまで鍛え上げたのだからな」
「いえ、たしかに姉に鍛えれたというのもありますが、坂本さんのご指導がいいからもありますよ。烈風斬ができたのもその結果です」
「はっはっは!そう言ってもらえると指導した甲斐があるというものだ!その調子で
これからも精進するといい」
「言われなくても精進させて頂きますよ。俺も強くなりたいですから」
「そうだな、お前が強くなってくれればこの戦いも早く終わらせられるしな。なら
私も精一杯お前をしごいてやる!覚悟しておけよ!はっはっはっはっは!」
「は……はい……」
何か烈風斬やったことで坂本さんに変なスイッチが入ってしまったような気がする……。
明日から更にキツい特訓させられるのかな……?
「(……はぁ)」
そんなことを予感して、俺は心の中で溜め息を吐いた。
悪い宮藤……リーネ。
―――――
「91……92……93……94……95……」
トレーニングルームの近くを通りかかると、その中から聞き覚えのある声がカウントをしていた。
かすかにではあるが息遣いも聞こえてくる。
「96……97……98……99……100!ふう……」
うん、間違いない。
こんな夕暮れ時にトレーニングをする人なんてこの基地の中で一人しかいない。
「義姉さん」
「ん?」
トレーニングルームの中に入って後ろから声をかけると、バルクホルンさんが僕の声に気付いて振り返る。
体勢的にどうやら腕立て伏せをしていたようだ。
「あ、ごめん。お邪魔だった?」
「いや、そんなことはないぞ。 たった今切り上げようと思っていたところだ」
言いながら、義姉さんが腕立て伏せの体勢から立ち上がる。
「っ!」
義姉さんが立ち上がって僕のほうに向き直った瞬間、僕は反射的に顔を逸らす。
「ん?どうした?顔を逸らしたりなんてして」
義姉さんが首を傾げる。
どうやら自分が今どういう状態になっているのか分かっていないようだ。
「その、義姉さん……上着を羽織ってくれないかな?」
「何でだ?」
「いや、その……汗でシャツが肌にひっついてるせいで、その……下着が……」
「下着?」
僕に言われて義姉さんは自分の上半身を見る。
見たことによって自分の今の醜態が分かったのか、義姉さん【ひゃっ!】という大変女の子らしい声を出してと胸元を隠した。
「み、見たのか?」
「…………見た」
ウソを言ってもバレると思うので正直に答える。
だがこれは不可抗力だ。
決して見ようとしてみたわけじゃない。
「……そうか、見たのか……ならばお前に罰を与えないといけないな……」
ハルトマンさんから聞いたけど、バルクホルンさんの罰ってミーナさんに次ぐ厳しさらしいな……。
でも不可抗力とはいえ、女の人のあれを見てしまったのだから。
「あの……罰というのは……?」
「……これだ」
義姉さんが僕に一枚の白いタオルを差し出してくる。
「これ……タオルだよね?これの何が罰なの?」
「その……い、今私はトレーニングをして汗をかいている」
「うん、かいてるね。それが?」
「む……察しの悪い奴だな。お前には姉を労う心はないのか?」
「いや、だって……ちゃんと言ってくれないと分かんないよ……」
「だから……その……」
義姉さんがガラにもなく顔を赤くしてもじもじしている。
あの厳格なイメージのバルクホルンがだ。
「これで……私の身体を拭けと……言っているのだ……」
「はっ?」
ようやく言葉の意味を理解して僕の顔が上気する。
それはそうだ。
異性の身体を拭けと言われたのだから。
「義姉さん……それ……本気……?」
「当然だ、お前は私に汗を掻いたままの状態で上着を羽織れというのか?ちゃんと拭かないと風邪を引いてしまうだろう」
「そ……それはそうだけど……」
「それなら早くしてくれ。汗が肌に纏わりついて気持ち悪いんだ」
「……拒否権は?」
「ない、これは罰なのだから……」
「……分かった」
なくなく義姉さんの頼みを引き受け、僕は義姉さんタオルを受け取る。
「そ、それじゃあ……そこに腰掛けて」
「ああ……」
僕に言われるままに義姉さん近くに設置されている椅子に腰を下ろす。
僕も近くにあった椅子をこちらのほうに持ってきて義姉さんの後ろに腰を下ろす。
僕が腰を下ろしたのを確認すると義姉さんは汗まみれのシャツを脱いで僕に
生まれたままの背中を見せる。
その背中はいつも鍛えられているとは思えないほど細くて華奢だった。
「そ、それじゃあ……行くよ?」
「ああ……よろしく頼む……」
お互い緊張してしまっているせいか、声が上擦ってしまう。
僕も異性の背中にドキドキしながらも義姉さんの背中を拭き始めた。
でもこうしてると小さい頃お父さんの背中を流したことを思い出すな……。
義姉さんで思い出すのも変だとは思うけど。
「……はい、終わったよ。その、背中だけでいいよね?」
背中の汗を全て拭き取って声をかける。
だが僕がそう言った時、義姉さんはとんでもないことを言い出した。
「いや……ついでだから、前のほうもお願いできるか?」
「はっ!?」
義姉さんの爆弾発言に脳がオーバーヒートしそうになる。
これはさすがの僕も抵抗しないわけにはいかない。
「い、いやっ!それはさすがに……!僕、一応男だし……!」
「……ダメか?」
やめて!そんな雨の中捨てられた子犬のような目で見ないで!
そんな目されて断ったらちょっと罪悪感というものが……。
「…………分かったよ」
義姉さんの子犬のような目に負けて僕はしかたなく折れる。
「じゃあ……頼む……」
義姉さんが頷くのを確認すると、僕はタオルを持っている右腕を義姉さんの脇に通して後ろから前を拭きにかかる。
「……」
まずはお腹の辺り。
そこは思ってたよりも硬くなく、すべすべしてて柔らかかった。
「ね、義姉さん……変な声出さないでよ……」
「出してなどいない……くすぐったいのだ……」
「……じゃあ、次は上のほうを拭くよ?」
「……ああ」
義姉さんにそう言って僕は右腕を徐々に上のほうに移動させて拭いていく。
今の僕は無心だ。
無心で義姉さんの身体を拭いているのだ。
そうでもしないと義姉さんを色々意識してしかたなくなるからだ。
「……ん?」
無心で義姉さんの身体を拭いているとさっきまでとは違った柔らかい感触がタオル越しに感じた。
「(何だこれ……?柔らかい……)」
確かめるようにそこに力を加えると、それは抗うことなく沈み込み、形を歪める。
「あっ、んっ……おいこら……変なところ触るなぁ……」
こんな感触男にはない。
これはもしかして……義姉さんの…………胸?
「ああっ!ごめん!変なところ触っちゃって……」
少女のような声で鳴いている義姉さんの声で自分が義姉さんの胸に触っていることに気付き、僕は慌ててそこから手を離す。
かくいう義姉さんは粋が若干ではあるが荒くなっている。
「い、いや……こちらこそすまない。私は大丈夫だから……続けてくれ」
「う、うん……」
今度こそ僕は無心で義姉さんの前を吹き始める。
もちろん極力胸は触らないようにだ。
「……よし、今度こそ拭き終わりましたよ、義姉さん……」
ようやく前を吹き終わり、僕は右手を義姉さんの身体から放す。
何かもう……終わった。
何が終わったかというと精神的にだ。
「はぁ……はぁ……はぁ……そうか、ありがとう。手間を掛けさせたな……」
「いや……でもごめんね、その……不可抗力とはいえ、胸を触っちゃって……」
「いや、わざとじゃないのは分かっているから。謝る必要はない……それにしても、汗が引いたせいか、少し寒くなってきたな……」
未だに上半身裸でいるせいか、義姉さんは両手に身を寄せた。
だから僕は今自分が着ている上着を義姉さんの黙って頭を被せた。
義姉さんは僕がこんなことするとは思わなかったのか、驚きの表情を浮かばせてこちらのほうを見てきた。
顔を赤くして。
「碧……?」
「女の人が身体を冷やすのはよくありませんから、僕がバルクホルンさんの上着を持ってくるまでそれを羽織ってて下さい。たしか上着はタオルと一緒に掛けてありましたよね?」
「ああ……すまない……」
僕は義姉さんのお礼の言葉を背に受けると上着を取りに行くために椅子から立ち上がって移動する。
数歩歩くとハンガーにかけられている義姉さんがいつも着ている上着と思われる物を見つけ、それを持って義姉さんの元に戻る。
「義姉さん、義姉さんの上着ってこれだったよね?」
そうだと思われる物を本人に見せながら聞く。
「ああ……これに間違いない。ありがとう」
恥ずかしがりながらも僕から自分の上着を受け取った。
それと同時に俺の上着も受け取る。
今まで肌に直接羽織られていたせいか、仄(ほの)かに女の子特有の甘い匂いがした。
「……」
「……ああ」
何かを言ったわけではなかったが、目が【あっちを向いていろ】と言っていた気がしたので、僕はすぐさま後ろを向く。
「……」
「……」
二人きりのトレーニングルームに静寂の時が流れる。
しかし、かといって効果音がないわけではなく、すぐ後ろで服を着る際の衣擦れ音が聞こえてくる。
その効果音が僕の心臓の鼓動を更に早くしている気がした。
「……いいぞ」
義姉さんにそう言われで僕は後ろを向いていた身体をバルクホルンさんのほうに向ける。
向き直るとさっきまでのスポーティーなシャツ一枚から、さっき手渡したドイツ空軍
の飛行兵用ブラウスをモデルにしたと思われる緑の上着を着ていた。
義姉さんがいつも着ている服装だ。
「……すまないな、色々手間を掛けさせてしまって……」
「いや、そんな大した手間じゃなかったから大丈夫だよ……」
「ああ……そう言ってくれると……助かる…… それと……」
「それと?」
「その上着……直接羽織ってしまったから……その……汗臭くなってるかもしれないから……えっと……」
言いにくそうに言葉を濁す義姉さん。
別にさっき汗を拭いたから特にこの上着から汗の匂いはしない。
寧ろいい匂いがするくらいだ。
「別に大丈夫だよ。これくらいなら気にならないし」
「お前が気にしなくても私が気にするんだ!それともお前……私の匂いのついたその上着を……そのまま着るというのか……?」
恥ずかしそうにもじもじさせながらそんなことを言う。
言われてみれば女の子の匂いのついた服をそのまま着るというのは女の子としては避けたいのだろう。
僕は別に気にしないんだけどな。
「じゃあ……どうしたら―――」
「私が預かろう!」
「えっ?今何と?」
「私が預かると言ったんだ!」
ハッキリとした口調で言う。
ただ、いまいち義姉さんの意図が掴む(つか)めなかったので、僕はそう言う理由を聞いてみた。
すると義姉からの答えはこうだった。
「い、いやっ!別に、他意はないのだぞ?ただ、女の匂いのついたままじゃ、お前が着づらいかと思って……その……ちゃんと洗濯をして返そう とだな……」
言えば言うほど、義姉さんの顔が赤く染まっていく。
でもどうして上着を預けて、洗濯するだけでそんなに顔を赤くするのだろう?
しかしせっかく義姉さんがこう言ってくれてるんだから、その好意を無駄にするのも悪いと思う、だから……。
「分かった、じゃあお願いしようかな」
義姉さんの好意を無駄にしないようにと、僕はそう言って上着を義姉さんに手渡す。
義姉さんは手渡すとすぐにそれを受け取った。
「ああっ!任せてくれ!今日洗濯して、明日必ず返しに行くからな!」
「分かった、じゃあもう僕はもう行くね」
言いながら、クルリと踵を返す。
「ん?私に何か用があって来たんじゃないのか?」
「いや、たまたま近くを通りかかっただけだから。部屋に帰る途中だったんだ」
「……そうか」
「そうだよ、じゃあまたね」
「あ、ああ……」
今度こそクルリと踵を返してトレーニングルームを後にする。
義姉さんに見送られながら。
―――――
「……」
碧が去った後も、バルクホルンの顔はまだ赤いままだった。
「(まったく、何を赤くなっているんだ、私は……)」
自分の今の表情に嘆息しながら再び椅子に座り込む。
ギシッ、という骨が軋むような効果音がトレーニングルームに鈍く響き渡る。
「(ダメだ……まだ……胸の鼓動が収まらない……)」
思いながら、左胸を抑える。
力を入れてみると、案の定、心臓の鼓動がうるさいくらいに鼓動を打っていた。
「(やはり、あの時……胸を摑まれたせいだろうか……)」
前のほうを拭いてもらった時、不意に胸を摑まれたあの時、碧には言わなかったが、胸を触られたのもそうだが、それと同時に心臓のほうも鷲摑みにされてしまったのだ。
自分がそうなっている原因は既に分かっている。
これはかなり前から自覚していたことだったからだ。
「(やっぱり私は、あいつが好きなのだな……可愛い弟としても、異性としても……)」
しかし現状碧に好意を寄せているのは自分だけじゃない。
確認されている中では喧嘩仲間のシャーリー、同胞のミーナも同じように
碧に好意の種がある。
エイラにもそういうフシはたまにあるが、まだ明確なことは分かっていない。
しかしこの気持ちだけは他の二人にも負けたくはない。
いくら同じ敵と戦っている仲間でもこればかりは譲れないからだ。
「……碧の上着、いい匂いだな」
そう言ってバルクホルンは手渡された碧の上着に自分の顔を埋めた。