インフィニット・ウィッチーズ 空駆ける自由の翼   作:天野蒼夜

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501航空団最大のピンチです。

※ここでのストライクウィッチーズの基地の場所は原作と異なっています(ロマーニャ方面→× スオムス方面→○)

OP2:
「Believe」唄:玉置成美さん

ED2:
「迷々コンパスはいらない」唄:Stylips



第13話「緊急事態発生」

小鳥の囀りが心地良い爽やかな朝。

 

私はいつものように戦友であるハルトマンを起こすため、ハルトマンの自室に来ていた。

 

「ハルトマン、起床時間だぞ。早く起きろ!」

 

【シーン……】

 

ドアをノックして声をかけるも、ハルトマンからの応答はない。

 

やはりまだ寝ているようだ。

 

「ハルトマン、入るぞ」

 

そう言って断りを入れてハルトマンの部屋に入る。

 

中に入るとやはりハルトマンはベッドの上ですやすやと寝息を立てていた。

 

しかも部屋の中はいつものようにゴミ屋敷になっている始末。

 

まったく……同じカールスラント軍人としては嘆かわしい限りだ。

 

「ハルトマン!起きろ!もう朝だぞ!起きろ!」

 

「う~ん……あと40分……」

 

「そんなに待てるか!いいからさっさと起きんか!!」

 

いつまで経っても起きようとしないので、私は片手でハルトマンが被っている毛布を引っぺがす。

 

本当は両手で引っぺがしてやりたいところだが、今は片手が塞がっているのでそうもいかない。

 

「うぅん、寒い……」

 

毛布を引っぺがされたハルトマンが寒そうに両手に体を寄せる。

 

って、よく見ると下を穿いておらんではないか!

 

「ばっ、馬鹿者っ!早く下を穿かんか!」

 

私は気付いたら周りに投げ出されていた書物をハルトマンに投げつけていた。

 

もちろん、当たるわけがない。

 

「んんぅ……分かったぁ……」

 

次々と投げつけられる書物を避けながら、そう言って眠たそうな瞼を擦る。

 

それよりハルトマン、早く下を穿かんか!

 

「本当だな?では早く着替えて食堂に来い!いいな!?」

 

「うん…… それよりトゥルーデ」

 

「何だ?」

 

「それ……」

 

ハルトマンが不思議そうな目で私が腕に掛けている衣服を指差した。

 

これは昨日碧から預かった上着だ。

 

ちゃんと自分が言った通り、洗濯して手入れしてある。

 

「それ、東条の上着だよね?何でトゥルーデが持ってんの?」

 

「い、いや……それは……」

 

言えない……汗を拭いてもらい、肌に直接羽織ったことで自分から洗濯すると言い出したなんてとても言えない。

 

言えばハルトマンに弄られてしまうのは確実だからだ。

 

だから私はそれを回避するためにこのことについては【色々あってな】と言ってはぐらかした。

 

「ふ~ん……じゃあ、もう一つだけ聞いていい?」

 

ハルトマンの表情が途端に真剣になる。

 

いきなりの表情の切り替えに私の心に動揺が走り、緊張しながらも【ああ……】と言って答える。

 

「トゥルーデってさ……」

 

ハルトマンはそこで言葉を切って数秒後、次の言葉を続けた。

 

「東条のこと好きなの?」

 

「っ!?」

 

ハルトマンの言葉に私の胸の鼓動が高鳴る。

 

「な、何で分かるんだ……?」

 

「そりゃ分かるよ。伊達にトゥルーデと長くいないからね」

 

全部お見通とでも言うようにウィンクするハルトマン。

 

普段は不真面目そうな態度してるくせに、変なところで勘が鋭い奴だな。

 

「そっかそっか、トゥルーデにも春が来たのか~そっかそっか~。それじゃ、その上着を愛しの東条に返してあげないといけないね」

 

ハルトマンが愛しの、というところを強調してそんなことを言ってくる。

 

その単語を聞くと、私の顔の赤さが余計に増す。

 

「あっ、余計赤くなった。トゥルーデか~わいい~」

 

「ハ、ハルトマン!あまり私をからかうな!」

 

「はいはい、ごめんごめん。じゃあトゥルーデは早く東条を起こしに行ってあげなよ」

 

「そう言って、私を都合よく追い出そうという魂胆ではないだろうな?」

 

わざと冗談めかしてハルトマンに言ってみる。

 

ハルトマンが私の言葉に動揺して言葉がじみどろになる。

 

「い、いや、そんなこと、ないよ!トゥルーデと話してたらすっかり目が覚めちゃったし!いや、ホント!」

 

動揺するハルトマンを見ていると、思わず笑いがこみ上げてくる。

 

どうやらウソは言ってないようだし、信用しても大丈夫だろう。

 

「それじゃ、私はもう行くが、お前もちゃんと着替えて食堂に行くのだぞ?」

 

「は~い、トゥルーデも東条の寝込みを襲わないようにね~」

 

「襲うか馬鹿者!」

 

散々からかわれながらも、自分の恋を後押しされて、私はハルトマンの部屋を後にした。

 

ありがとう……ハルトマン。

 

 

―――――

 

 

「(碧の部屋はたしか……ここだったな)」

 

ハルトマンを起こしに行った後、私は碧が使っている部屋にやって来た。

 

坂本少佐に教えてもらったのが正しいならここで合っているはずだ。

 

「(まあ、ドアを叩けば分かるか……)」

 

意を決してドアにノックしようと手を伸ばす。

 

しかし……。

 

「っ!?」

 

ドアをノックしようとしたところで碧が内側からドアを開けて出てきた。

 

「あ、おはよう義姉さん」

 

「碧、いきなり開けるな!ビックリするじゃないか!」

 

「わざわざ起こしに来てくれたんだ、ありがとう。でも何でわざわざ義姉さんが?」

 

「何だもう忘れたのか?これを返しに来たんだ。言った通りちゃんと洗濯して綺麗にして来たんだぞ?」

 

昨日碧から預かっていたの上着がかけられている右腕を上げて碧に見せる。

 

「そっか、わざわざ届けに来てくれたんだ。ありがとう、義姉さん」

 

「う……うむ……大したことじゃない。それに……朝一番に会いたかったのだ、お前に」

 

「え?」

 

「何でもない。 そんなことよりも早くこれを着て一緒に食堂に行くぞ!」

 

「あ、うん」

 

そうして、碧は私から上着を受け取って着用した後、食堂に行って朝食を摂った。

 

やはりあの時上着を預かっておいて正解……だったな。

 

 

―――――

 

 

「あ……」

 

次の日の朝、宮藤さんがお米の入った袋をひっくり返して声を漏らしていた。

 

「どうしたの宮藤さん?」

 

たまたま食堂にいた僕は宮藤さんに声をかけてみる。

 

「あ、東条さん。それが……お米がなくなっちゃったんです……」

 

「どうしよう……まだどこからも補給が来てないのに……」

 

そう、ここ……第501戦闘航空団は定期的に色んな国から食料となる材料はもちろんのこと、ストライカーの整備などに使用される機材の補給が送られてくる。

 

しかしまだどこからも来ていないとなるとかなり困った事態に……。

 

「どうしたんだ三人共?そんな浮かない顔をして?何かあったのか?」

 

丁度いいタイミングで食堂を通りかかった坂本さんが僕達のところに近付いて

きて声をかけてくる。

 

「あ、坂本さん。それが……お米がなくなっちゃったらしくて……」

 

「何!?そういえば東条と織斑の参入という予想外の出来事があったからな……。人数が多くなった分予定よりも減りが激しくなったっか……」

 

「な、何かすみません……」

 

「いや、別に責めているわけではないから気にするな。でも困ったな……これはすぐにでも補給をせねば士気が……」

 

「それなら丁度必要な備品があるから。誰か買い物に行ってもらえるかしら?」

 

「買い物?(ていうかミーナさん、どこから出てきたんだ?)」

 

という僕の心のツッコミはもちろん放置され、ミーナさんは僕達を含めたメンバーをミーティングルームに集める。

 

ミーティング内容はもちろん買い物のことについてだ。

 

「というわけで、車を運転できるのはシャーリーさん、スオムスに詳しいのはエイラさんとサーニャさんなので、買い物には碧君を含めた四人で行ってもらいます」

 

どうやらミーナさんが言うにはこの基地は北欧に近いところに位置しており、つまりここから一番の近場はスオムスらしいのだ。

 

「ネウロイがいつ襲撃してくるか分からないから、あまり人員を割けなくてすまないな」

 

「別にいいヨ。買い物行くのにそんな人数いらないシ」

 

「それに、たまには基地の外に出たかったからこういう任務は大歓迎だよ!」

 

「そう言ってもらえると助かるわ。では皆さん、何かほしい物があれば言って下さい」

 

「欲しいものか……そうだな、では訓練器具はどうだ?」

 

「はいはい、そういうのじゃなくて。休養に必要なものよ」

 

「では訓練用の新しい竹刀を……」

 

こういう時でも訓練を忘れない坂本さんは立派だが、ミーナさんは呆れ顔だ。

 

たしかにこういう時ぐらい訓練以外のことを考えて欲しいものだ。

 

「もう、貴女は訓練しか頭にないの……?誰かもう少しまともなものはない?」

 

「あ、それなら私は紅茶が欲しいです。皆で飲めればいいと思って」

 

「あ、それいいわね。それなら私はラジオをお願い」

 

「ラジオならカールスラント製の立派な通信機があるじゃないか」

 

「そうじゃなくて、ここに置くラジオよ。皆でニュースとかラジオとか聴けるといいでしょ?」

 

ラジオか……僕と一夏のいたところのあるラジオはデジタルだけど、ここではまだデジタルは流用されてないのだからかなり興味あるな。

 

そういうのから僕達の知ってるラジオが開発されたんだろうし。

 

「あ、そうだ!ピアノ!ピアノはどうだ!?皆サーニャのピアノとか聴きたいダロ!?」

 

「エイラさん、売っててもさすがにピアノは持って帰れないですよ?」

 

「ちぇ~」

 

よっぽどサーニャさんのピアノが好きなのか、エイラさんはふくれっ面になる。

 

ふくれっ面になってるエイラさんって、子供っぽくて可愛いかも。

 

「じゃあ私は扶桑人形を」

 

「外国に日本の置き物なんて売ってるのか?」

 

「あるゾ。扶桑人形はスオムスでも人気だからナ」

 

外国でも人気な扶桑人形って一体……?

 

扶桑人形の人気さに感心しながらも僕は買い物リストという名目でメモ帳に買うものを鉛筆で書き記す。

 

「一夏は何かないの?」

 

「俺か?じゃあPS○を―――」

 

「この世界にS○NYはまだありません」

 

「やっぱ無理かぁ……」

 

「ペリーヌさんは何かありますか?」

 

「私は別にいりませんわ」

 

少し離れたところから僕達の話を聞いていたペリーヌさんに何が欲しいかを聞いたら素っ気無い口調で顔を逸らされた。

 

「でもせっかくですから何か―――」

 

「いらないと言っているでしょう!ふんっ!」

 

そう言って鼻を鳴らすとペリーヌさんはミーティングルームから出て行った。

 

「何だツンツンメガネの奴、何怒ってンダ?出番が全然ないからひがんでんノカ?」

 

「エイラ、本編中のメタ発言はちょっと……」

 

「ペリーヌさん、お給料や貯めてるお金を全部ガリアに寄付してるんです。ペリーヌさんの母国、ネウロイの襲撃を受けたから……」

 

そういえばここに所属してる人達は皆給料をもらってるんだったね。

 

僕と一夏は正式な軍に所属してるわけじゃないけど、坂本さんとミーナさんが二人も共に戦っているのだからと僕と一夏にも給料を支給するよう上層部に掛け合ってくれたのだ。

 

それで上層部も僕と一夏の功績に準じて、僕と一夏にも給料を支給してくれるようになったのだ。

 

初めてこれを知った時はここまで尽くしてくれる上官に拾われてよかったと思えたなぁ……。

 

「ねえ東条君、紅茶の他にお花の種を買ってきてもらえないかな?ペリーヌさんの花とか好きだから」

 

「花の種か……たしかに花とかあると基地が彩られそうだね。分かったよ。ルッキーニさんは?」

 

「お菓子!お菓子がいい!」

 

明るい笑顔で言いながらお菓子を要求するルッキーニさん。

 

さすがストライクウィッチーズ最年少、まだまだ子供だな。

 

「お菓子、と……バルクホルンさんは何か欲しいものありますか?」

 

「私か……私は特にないな……」

 

「そうだバルクホルンさん!クリスちゃんにプレゼントとかどうですか?」

 

「プレゼントか……そうだな。では……可愛い服を頼む……」

 

「服?」

 

「ああ……サイズは宮藤と同じくらいだ。センスは……お前に任せる」

 

「僕のセンス、ですか?」

 

「う……うむ……お前に選んで欲しいんだ……」

 

妹さんの服のことなのに義姉さんは顔を赤くしている。

 

自分のことじゃないのに何でだろう?義姉さんは不思議だ。

 

「分かった。じゃああとはハルトマンさんか……あ、そういえばハルトマンさんは?」

 

「まだ部屋で寝てんじゃないか?あの日と誰かに起こしてもらわないとずっと寝てるから……」

 

「ハルトマンの奴……こんな時間でもまだ寝ているのか……ちょっと起こしてくる。碧、お前もついてこい」

 

「は~い」

 

そう言って、僕達はハルトマンさんを起こすために彼女の部屋へ。

 

そこに着き、ノックをした後にドアを開けるとやはりハルトマンさんは寝ていた。

 

「ハルトマン起きろ!もう朝になっているぞ!!」

 

義姉さんに怒号を上げられ、ハルトマンさんがゴミ屋敷に埋まっているベッドの中から動き出す。

 

もう起きてるのかな?

 

「ハルトマンさん、これからスオムスまで買い物に行くんですけど、何か欲しいものとかありますか?」

 

「お菓子!!」

 

貴女の思考はルッキーニさんレベルですか……。

 

「お菓子ですね、分かりま―――」

 

「い~や、目覚まし時計だ。今こいつに必要なのは菓子よりも目覚まし時計だ!」

 

「え~!お菓子~!お菓子が欲しいよぉ~!」

 

「うるさい!これはもう決定だ!異論は認めん!というわけだ碧、ハルトマンには目覚まし時計を頼む」

 

「目覚まし時計ですね。了解しました。さて、これで全員分かな」

 

「碧~!そろそろ出るぞ~!」

 

丁度いいタイミングでシャーリーさんが僕を呼びに来た。

 

そうだな、そろそろ出ないと日が暮れちゃうもんな。

 

「は~い!今行きま~す!じゃあバルクホルンさん、行ってきますね」

 

「ああ、任務中はリベリアンの指示に従えよ?」

 

「分かっています」

 

こうして、一通り注文を聞き終えた僕はシャーリーさんの運転する車の中に

乗って基地から飛び出した。

 

基地以外のところには行ったことないから……楽しみだなぁ。

 

 

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