インフィニット・ウィッチーズ 空駆ける自由の翼   作:天野蒼夜

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買い物のためにエイラの母国であるスオムスへ。そして日頃の感謝を込めて……。

OP2:
「Believe」唄:玉置成美さん

ED2:
「迷々コンパスはいらない」唄:Stylips



第14話「Gift」

シャーリーさんの乗る車に揺られること約二時間。

 

僕達は基地を離れて目的地であり、エイラさんの故郷であるスオムスの町にやって来た。

 

そこは結構人が賑わっており、活気に溢れている。

 

「ここがスオムス……エイラさんが生まれ育った故郷か……。でもちょっと寒いかも……」

 

「スオムスじゃこれぐらいでもまだ暖かいほうなんだゾ。冬になればこんなのの比じゃないカラ。お前なんて十秒で氷漬けになるかもナ」

 

「氷漬け!?スオムスってそんな極寒の地なんですか!?」

 

「エイラ、ウソを言っちゃダメよ。大丈夫よ東条君、寒いっていうのは本当だけど氷漬けになるほどじゃないから。それに服をあったかくすれば寒くなくなるから」

 

「……ああ、だからあの時」

 

僕は基地に出る前の義姉さんとのやり取りを思い出す。

 

あれは僕が車に乗ろうとしたときのことだ。

 

義姉さんが慌てて走ってきて僕に自分のコートを差し出してきて……。

 

<スオムスは寒いと聞いているからな。念のためこれを渡しておく。お古だがサイズはほぼお前と同じくらいだから着られるはずだ>

 

<いいか?さっきも言ったが、くれぐれも任務中はリベリアンの指示に従うんだぞ?知らない人について行ったらダメだぞ?絶対だからな!>

 

あの時の義姉さんの顔と来たら……まったく、心配性なんだから。

 

「エイラさん、あの丸い建物はなんですか?」

 

窓からスオムスの景色を覗いていると独特の丸いフォルムをした建物に目が行ったので隣に座っているエイラさんに聞く。

 

「ああ、あれはカ○ピ礼拝堂ダナ。この町では有名な教会ダヨ」

 

「じゃああの公園は?」

 

「シベリ○ス公園。よくお偉いさんが法論功の政治宣伝をしてるとこダナ」

 

「あそこの建物は?」

 

「キアズ○国立美術館。色んな国から集められた美術品を展示してるとこダナ」

 

僕が指差していく建物の名前をエイラさんは見ただけですらすらと答えていく。

 

すごい……さすが母国。

 

「スオムスには観光地が多くあるって言うからな。任務じゃなかったら回りたかったけど」

 

「スオムスは本当にいい国ですよ。サウナの発祥地ですし」

 

「風呂よりサウナって言うくらいだからナ。あ、大尉、ここで止めてクレ」

 

一軒のマーケットの前に着くと、エイラさんがそう言って車を止めさせる。

 

「ここでいいのか?」

 

「ああ、この店には大抵のものが揃ってるンダ。さ、とっとと買い物を済ませようゼ」

 

店に着き、僕達は車を降りて店の中に入る。

 

店の中に入るとカウンターにいる店員から【いらっしゃいませ】という声が聞こえてきた。

 

外国なのに日本語を喋れるのは小説やアニメじゃデフォルト設定だよね。

 

「で、皆から何を頼まれたんだッケ?」

 

エイラさんに聞かれたので僕はポケットから皆から頼まれたものを書き記したメモ帳を取り出して読み上げていく。

 

「えっと、宮藤さんが扶桑人形、ミーナさんがラジオ、リーネさんが紅茶、ペリーヌさんがお花の種、バルクホルンさんが妹さんにプレゼントする服、ハルトマンさんが目覚まし時計、ルッキーニさんがお菓子ですね。坂本さんと一夏には……何か適当なお土産を」

 

「じゃあその頼まれたものを探すカ。ここには大抵のものが揃ってるしナ」

 

「はい」

 

「りょ~か~い」

 

とりあえず任務を済ませるために僕達は店の中を歩き回って目的のものを探し始める。

 

大抵のものは揃っているということで、案外簡単に目的のものは見つかり、リストが消化されていく。

 

「ん?」

 

リストを消化していくと僕はあるものに目が行った。

 

「(これは……よし)」

 

それを見て僕は意を決した。

 

こういう時に給料は使わないとね。

 

 

―――――

 

 

マーケットから外に出る。

 

そしてシャーリー大尉が抱えている袋の中にはストライクウィッチーズのメンバーから頼まれた備品が入っている。

 

「さて、これで残すはバルクホルンのだけだな。エイラ、この近くに服屋とかないのか?」

 

「ああ、老舗だけどあるヨ」

 

シャーリー大尉に聞かれて私はそう答える。

 

その服屋には何度か行ったことがあるからだ。

 

「よし、じゃあ次はそこに行くか」

 

「お待たせしました」

 

私達が次の目的地を定めた頃、東条がマーケットの中から出てきた。

 

本人は先に外で待っていてくれと言ってたから待ってたけど、何をやってたんダ?

 

「東条君、マーケットの中で何をしていたの?」

 

「いえ、大したことじゃありませんよ。それより、次はバルクホルンさんに頼まれた服を買わないといけませんね」

 

「ああ、だからこれから近くの服屋に行くってことを話してたところなんだ」

 

「でも、バルクホルン大尉の妹の服のサイズは私達には分かんないゾ……」

 

「ああ、その点は心配いりません。服のサイズなら僕が知っているので」

 

「何でお前がバルクホルン大尉の妹の服のサイズ知ってんだヨ……?まさかお前って今有名な幼女溺愛者なのカ?」

 

人の趣味はそれぞれだから別にどうこう言うつもりはないが、さすがにそれは人としてどうかと思う。

 

たとえそれが東条だったとしてもだ。

 

そんなことを思う私に東条が苦笑して【違いますよ】と言って返した。

 

「僕、何故か見るだけでその人の着ている服のサイズが分かっちゃうんです。それで、バルクホルンさんが妹さんの服のサイズは宮藤さんと同じくらいと言っていたので分かったんです」

 

「見ただけで服のサイズ分かんのか……でもそれってすごいのかすごくないのかよく分かんない能力だな……」

 

「でもそんな能力どこで身に着けたの?」

 

「いや……どこで身に着けたのかは自分でも分かりませんが、それに気付いたのは中二の家庭科の授業で服を作った時です」

 

「すごい……じゃあ東条君って裁縫とかできるの?」

 

「いえ……裁縫は授業でしかやったことないです。裁縫にはあまり興味ないので」

 

「興味ないのに身に着いたなんて世も末ダナ……」

 

神様って人に不平等だな、と心の底から思う。

 

そういう能力はファッションデザイナーとか目指してる人なら絶対欲しい能力だろう

し。

 

「じゃ、そろそろ次行くか。早く済ませないと日が暮れちまうぞ」

 

「そうですね、行きましょうか」

 

そうして、私達は車に乗って目的地をマーケットから老舗の服屋にして走って行った。

 

それにしても東条の奴……マーケットで何してたんだろうナ?

 

 

―――――

 

 

マーケットからエイラの知る老舗の服屋にやって来た僕達。

 

その店はエイラが老舗というだけあってところどころの壁や天井には傷や滲みが確認できた。

 

だがエイラが言うにはこれは原形を留めることによって年代感をお客さんに味わってもらためにわざとそうしているらしい。

 

「お、これ何ていいんじゃないか?宮藤に着せても似合いそうだ」

 

シャーリーさんがハンガーに掛けられている茶色のチェックを手に取って僕に見せる。

 

「いえ、これはちょっと大人っぽすぎます。バルクホルンさんの妹さんはまだ幼いそうなのでもう少し子供っぽくてもいいと思うんです」

 

「そうか?でもお前……いやに真剣だな……どうしたんだ?」

 

「任されたからにはちゃんと似合ったものを選びたいので。あ、こんなのとか似合いそうだな」

 

ふと横に視線を向けた先に見つけた服を手に取って眺める。

 

その服はピンク色のワンピースで、胸の中心には可愛らしく赤いリボンが一つだけ付いている。

 

うん、これならきっと義姉さんも妹さんも喜んでくれるはずだ。

 

「……今の東条君、彼女に贈るプレゼントを選んでる彼氏みたい」

 

ポツリと呟かれた言葉に僕は驚く。

 

16年間生きてきてそんなこと言われたの一度もなかったからだ。

 

「僕が……彼氏?」

 

「うん、服を選んでる時の東条君、すごく真剣だし。いいものを見つけた時の顔がすごく優しいから」

 

「ああ……碧の彼女になれる女はきっと幸せだろうな……」

 

優しく笑いながら言うサーニャさんに続いてシャーリーさんも顔を赤くさせながら言ってくる。

 

僕はただ自分に課せられた任務を遂行しようとしてるだけなんだけどな……。

 

「別にこんなの普通ですよ。バルクホルンさんにはいつもお世話になっていますし。

こういう時ぐらい役に立ちたいんです」

 

「はぁ……そうなんだよなぁ……碧ってそういうのを普通のようにやるからズルいよなぁ~」

 

「え?何で僕がズルいんですか?別に僕はズルくありませんよ?」

 

「い~やズルい、お前みたいな男のことを罪な奴って言うんだよ」

 

シャーリーさんの言っている意味が一ミクロンも理解できない。

 

ただ自分のやるべきことをやっているだけなのに何だこの言われようは……。

 

「じゃあこれでメンバー全員のリストが埋まったな。でも、このまま帰るのも惜しい気がするな。よし、せっかく服屋に来てるんだ!最後に碧に似合う服を買って帰るか!」

 

「はぁ!?」

 

さっきまでからの会話の切り替えように驚く。

 

他の三人ならまだしも、何でそこで僕の服選びになるんだよ!?

 

「いや、僕はいいですよ!服なら間に合ってますし!」

 

「え~だっていつも同じ服じゃん。あたしはたまには違う服の碧も見てみたいなぁ~。女の子もので」

 

「そりゃたしかに、僕もそういう時はありますけど―――って、女の子もの!?何で女の子ものなんですか!?」

 

「だって碧、女の子みたいな顔してんだもん。背も女の子にしては低いし。絶対女の子ものの服似合うって」

 

「似合うわけないでしょ!僕は男なんですから!サーニャさんからも何か言ってあげて下さい!」

 

「……私も女の子の服着た東条君、見てみたいな……」

 

頼みの綱であるサーニャさんが(何故か)顔を赤くさせながらシャーリーさんの意見に賛同する。

 

ダメだ……女装なんてしたら僕の男としての面目が丸潰れに……。

 

「あ!僕ちょっとトイレに行きたくなっちゃったな~!というわけで失礼します!」

 

「逃がすか!このグラマラス・シャーリーから逃げられると思うなよ!!」

 

それから服屋を飛び出してシャーリーさんから逃亡し、数十分の間シャーリーさんとスオムスの町で追いかけっこをしたのは今となってはいい思い出である。

 

 

―――――

 

 

東条とシャーリー大尉が服屋から飛び出してから数十分。

 

シャーリー大尉が東条を引っ張りながら戻ってきて、現在東条はシャーリー大尉とサーニャがコーディネートした服を持って試着室の中に入っている。

 

何というか……東条に関してはご愁傷様としか言いようがないナ……。

 

「お~い碧~まだ~?」

 

「……まだです」

 

このやり取りもこれで13回目。

 

それも三分間の間に繰り広げられているのだからシャーリー大尉がかなり期待していることが分かる。

 

サーニャもそわそわしながら試着室を見てるし……何だよもう……。

 

「碧~まだ~?」

 

「……もう少し待って下さい」

 

東条の声が会を追う毎に小さくなっている。

 

よっぽど恥ずかしいんだろうな、女ものの服を強制的に着せられて。

 

「あ~もうダメだ!これ以上待てねぇ!開けるぞ碧!!」

 

「ああっ!ダメ!まだ開けないで下s―――!」

 

東条の制止の声も空しく、シャーリー大尉が閉められているカーテンを右へスライドさせる。

 

するとそこから出てきたのは同一人物とはとても思えないと言えるくらいの美少女が立っていた。

 

「もう……まだ心の準備出来てなかったのに……」

 

銀色の長い髪(これはヅラだけど)に中心に矢に射抜かれたハートマークが描かれている白い長袖のTシャツ、下は丈がどう見ても短いミニスカート。

 

シャーリー大尉もサーニャもそれを身に纏っている碧を見て、しばらく瞬きせずに見つめていた。

 

不覚ではあるが皆から少し離れたところで見ている私も東条のその姿に心を奪われてしまっていた。

 

「……お前、本当に碧……なのか……?」

 

あまりの変わりようにシャーリー大尉はマジ顔でそんなことを聞く。

 

多分この姿を他のウィッチーズのメンバーに見せてもシャーリー大尉と同じことを聞くだろう。

 

そう思わせるほどに東条の着替える前との変わりようがすごいのだ。

 

「当たり前じゃないですか……シャーリーさんとサーニャさんがこれを僕に着ろって言ったんですよ……?」

 

涙目かつ顔を耳まで真っ赤にさせながら言う東条。

 

「(やべぇ……シャレになんねぇ……素質はあると思ってたけど、メチャクチャ可愛いじゃんかよ!女装した碧!)」

 

「……東条君、可愛い」

 

東条のそんな姿を見てシャーリー大尉とサーニャも耳まで顔を赤くさせる。

 

そりゃ可愛いのは認めるけど、サーニャにあんな顔させるなんて東条の奴……!

 

でも……マジで可愛いから怒るに怒れない自分が悔しイ……。

 

「もう……二人共ひどいですよ……僕にこんな格好させて……。こんなの皆に見られたら僕、一生立ち直れません……」

 

「し、心配するな碧!嫁の貰い手がないならあたしが嫁にしてやる!お前ならいつでもウェルカムだからな!」

 

「何で嫁なんですか!?僕は男だって言ってるでしょ!もう……こんな格好にをしたこと絶対に誰にも言わないで下さいね……?」

 

「あ、ああ……分かった……あたし達の中だけに留めておくから安心しろ!」

 

「碧ちゃんの姿……しっかり私の頭に焼き付けたから……」

 

「それは今すぐ消去して下さい」

 

「嫌、だって碧ちゃん……すごく可愛いから……」

 

ああ、サーニャが……サーニャがあんなに顔を真っ赤に……。

 

チクショオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォオ!!!

 

女装した東条のバカ野郎オォオオオオオオオオオオオオオオオオオォォ!!!

 

でも可愛いから許すぞクソッタレがぁあああああああああああぁあぁああ!!!

 

「じゃ、じゃあ……そろそろ帰るか……あんま遅くなると日が暮れちまうしな……」

 

「は、はい……そうですね……カメラがなくて写真に収められないのが残念ですけど……」

 

「永久保存しようとしないで下さい!!!」

 

こうして、東条はスオムスで女装させられたという大変苦い思い出を作って私達と一緒に基地に帰って行った。

 

 

―――――

 

 

「……はぁ」

 

基地に帰って来て、僕はテラスで夕暮れの空を見ながら深い溜め息を吐く。

 

僕はこうなっている理由は十中八九、女装させられたことだ。

 

シャーリーさんとサーニャさんは女装した僕は可愛いと言っていたが、そんなこと言われても全然嬉しくない。

 

「(ただの買い物のはずがとんでもないことになってしまった……)」

 

ちなみに皆は頼まれた備品をすごく喜んで受け取ってくれた。

 

義姉さんも僕が選んだワンピースを見て妹が喜ぶと言ってくれたし。

 

坂本さんにはどこでも握力のトレーニングができるハンドグリップ、一夏には獅子を模したお面をお土産に買ってきたらすごく喜んでくれた(一夏は苦笑いしてたけど)。

 

「何だ、お前そんなところにいたのカ」

 

テラスで夕暮れの空を見ているとエイラさんが僕のところにやって来た。

 

「あ、エイラさん。どうしたんですか?」

 

「ただ外の空気を吸いに来ただけだヨ。今回は色々あったからな。お前の女装姿とかナ」

 

「それはもう言わないで下さいよ……」

 

「あははははっ、悪ぃ悪ぃ」

 

そう言って笑いながらエイラさんは僕の隣に移動して横に立って夕暮れの空を見る。

 

女装した時の僕と同じ色の長い銀髪がそよ風によって揺れる。

 

何だろう……そんなエイラさんを見てると、何か心がくすぐったい。

 

「(あ、そうだ)エイラさん」

 

エイラさんを見て僕はあることを思い出してポケットに入れていた小さな箱を取り出してエイラさんに差し出す。

 

僕にそれを差し出されるとエイラさんは目を丸くする。

 

「何だよソレ?」

 

「あのマーケットで買ったものです。エイラさんにと思って。開けてみて下さい」

 

僕にそう言われてエイラさんは箱の中を開ける。

 

するとそこから出てきたのは軽い材質で作られ、白でカラーリングされたオルゴール箱で、フタを開けると雪原の背景ををバックに今にも走り出しそうな黒い狐のフィギュアが取り付けられている。

 

「これ……私のためニ?」

 

「エイラさんにはいつも助けられていますから。何か恩を返せたらいいなと思って。

それにデザインがエイラさんのイメージに合ってましたし」

 

雪原に狐……碧は恐らく私の母国と使い魔を意識したのだろう。

 

ていうかあの店、オルゴールも売ってたんダナ。

 

「……回してみてもいいか?」

 

「ええ、どうぞ」

 

僕に断りを入れるとエイラは右横に付いている金色のネジを右手の親指と人差し指で三回回す。

 

回すと回したネジと黒狐のフィギュアが逆方向に回り出すと共に静かな音色が流れ始める。

 

「これ……よく聴いたらバラードなんだな。よかった、これを選んで」

 

「東条、これを私にプレゼントするためにマーケットに残っていたのカ?」

 

「はい……最初はタロットカードとか水晶とかも考えたんですけど、占い好きのエイラさんにそれはありきたりかなと思ってそれにしたんです。気に入ってもらえましたか?」

 

窺うように聞いてみる。

 

正直これも義姉さんの時と同じで僕のセンスで選んだのでエイラさんに喜んでもらえるかどうかは分からない。

 

でも、エイラさんはオルゴールに視線を向けたまま何も答えない。

 

「エイラさん、もしかして……気に入らなかった……ですか?」

 

「……いや、違う。嬉しいんダ。こんな贈り物、初めてだったからナ」

 

よくよくエイラさんの顔を見るとこころなしか目尻が赤い気がする。

 

もしかして泣きそうになってるのかな?

 

いや、エイラさんに限ってそれはないか。

 

「ありがとう……お前にもらったこれ、大切にするヨ」

 

夕日の光に照らされながらエイラさんが僕に笑顔を向ける。

 

目尻が赤かったけど、僕にとってはそんなのどうでもよくなるくらい綺麗な笑顔だった。

 

「はい、そうしてくれると嬉しいです。大切にして下さいね、エイラさん」

 

「ああ、大切にスル。大人になっても……婆ちゃんになっても……ずット」

 

「エイラさん……」

 

「さ、そろそろ中に入るゾ。いつまでも風に当たってると身体によくナイ」

 

「……そうですね」

 

オルゴールを両腕で抱き締めながら基地の中に入っていくエイラさんについて行くように僕も基地の中に入る。

 

喜んでくれるかどうか不安だったけど、よかった……気に入ってもらえて。

 

 

―――――

 

 

ここはヴェネツィア上空に位置するネウロイの巣。

 

そこで人の姿をしたネウロイが不適に笑い声を上げていた。

 

【ツイニ……ツイニ完成シタ。幾多ノネウロイヲ犠牲ニシテ作リ上ゲタ私ノ最高傑作ガ……】

 

巨大な紅いカプセルの中のあるモノをじっと見る人の姿をしたネウロイ。

 

紅いカプセルの中に閉じ込められているそれは黒をメインカラーに紅のラインが施され、背中には四基のビットが搭載され、両サイドの腰部には二本のビームサーベルの黒い柄部分が収納され、黒い機動ウィングが装着されたISと酷似したものが入っていた。

 

【コレサエアレバ私ノ世界征服モ夢ジャナイ。ダガ、本格的ニ動ク前ニ危険因子ヲ取リ除ク必要ガアル……】

 

彼が指しているそれは長い時の間ずっと戦っていた因縁の相手。

 

それを倒さないことには彼の世界征服は成就しない。

 

その相手は……。

 

【魔女……ソシテ東条碧ト織斑一夏トイウイレギュラー。待ッテイロ、貴様等ヲコノゼ

ロガ無ニ帰シテクレル。私ノコノ絶望ヲ運ブ翼…… NS(ネウロ・ストラトス)デナ】

 

カプセルの中にあるNSを紅い宝石のような目で静かに見つめるゼロ。

 

そしてしばらくそれを見つめていると巣の中のいたるところに様々な形状のネウロイ

が無数に出てくる。

 

ネウロイ達が出てくると、カプセルが開かれ、NSがゼロの身体に纏われる。

 

【サア、始メヨウ……我々ネウロイト魔女、ソシテイレギュラーノ最終決戦ヲナ】

 

ゼロのその言葉を掛け声にネウロイ達は巣の中から抜け出て空に進軍した。

 

ついに……この物語に終焉が訪れようとしていた……。

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