インフィニット・ウィッチーズ 空駆ける自由の翼   作:天野蒼夜

16 / 20
始まったゼロとの戦い。しかしその機体、NSはとんでもないスペック
を兼ね備えていた。

OP2:
「Belibve」唄:玉置成美さん

ED2:
「迷々コンパスはいらない」唄:Stylips



第16話「絶望を運ぶ翼」

ストライクウィッチーズの世界でネウロイとの総力戦が繰り広げられているのと変わり、ここはインフィニット・ストラトスの世界にあるIS学園の内部にある司令室。

 

そこでは今でも碧と一夏の捜索のために各国から碧と一夏の所在が探られていたが、二週間ほど経った今でも一つの手がかりも得られないままだった。

 

だが、それは当然のことだ。

 

二人はこの世界には今存在していないのだから。

 

「日本、イギリス、中国、フランス、ドイツ……五国の総力を上げても手がかり一つ手に入らないなんて……」

 

「まさか二人共……誘拐犯に殺されたんじゃ―――」

 

「ちょっとセシリア!縁起でもないこと言うんじゃないわよ!あいつ等が誘拐犯程度にやられるタマじゃないってことはあんただって知ってるでしょ!」

 

「いや……何らかの方法でISの起動を無効化されているなら分からんぞ。ISを取り除けば、あいつ等も我々もただの人間なのだからな」

 

「一夏ぁ……やだよ……死んだらやだよぉ……!」

 

シャルロットに至ってはあまりに絶望的な状況に顔を両手を隠し、その場に伏せて涙を流している。

 

シャルロットにとって一夏は自分の居場所をくれた恩人なのだ。

 

「デュノア、泣いてる場合ではないぞ。今我々がすべきことは一夏と東条の所在を見つけ出し、無事助け出すことだ。涙は嬉し涙のためにとっておけ」

 

「……でも」

 

「同じことを思っているのはお前だけじゃない。ここにいる全員がそうだ」

 

「千冬さんの言う通りだ。今は泣くよりも二人を見つけ出す。そうだろう?」

 

「……うん、ごめんね皆」

 

二人に励まされてシャルロットは涙を指で拭いて立ち上がる。

 

「さて、問題は二人がいつからいなくなったかだ。皆、二人を最後に見たのはいつだ?」

 

「私はいなくなる朝に二人が出かけるのを見かけました」

 

「私はその前の夜に一夏さんに会うために部屋に行きましたわ」

 

「あたしも同じです」

 

「僕はいなくなる二日前の放課後に一緒に特訓をしてた以来見てません」

 

「私はいなくなった日の朝に押しかけた時以来です」

 

一部の答えに千冬は呆れ顔をする。

 

こいつ等はまだそんなことをしているのかと……。

 

だが、今はそれについて説教をしている暇はない。

 

「なるほど……では一番考えられるケースは何者かに誘拐され、どこかに監禁されていることだな。きっと我々に探られないように何らかの工作をしているのだろう」

 

「我々の国に悟られないほど高い技術を持った犯罪組織、とかですか?」

 

「考えられないことだが、その可能性が一番高い。我々も捜査には全力を尽くすが、お前達専用機持ちもいつも以上に捜査に力を入れろ。いいな?」

 

千冬の言葉に皆は【了解】と言おうとするが、その言葉を言おうとしたところで後ろから【そんなの無駄だ】という青年の声が聞こえてきた。

 

驚きながら声がした後ろのほうに振り返ると、そこにはブルーナイトが入り口の前に立っていた。

 

それに驚いたのは千冬だ。

 

何故ならその男性は声をかけるまで自分に気配を感じさせることなくそこにいたからだ。

 

「何者だ貴様!?どうやってここに入ってきた!?」

 

「このIS学園には侵入者一人通さない厳重なセキュリティが施されているはずですわ。それをどうやって!?」

 

「あれがセキュリティか?あんなの、俺に言われりゃないも当然だ」

 

「……あのセキュリティをブザーも鳴らせずにここまで来るのは相当の使い手、貴様……まさか一夏と東条をさらった犯罪組織の一人か?」

 

「……そうだと言ったら?」

 

「っ!」

 

意味深に言い放たれたブルーナイトの言葉に反応し、箒が右半分の腕に紅椿を部分展開して雨月を握る。

 

これにはまた千冬は驚く。

 

「おい!こんなところでISを展開するな!」

 

「大丈夫です千冬さん、すぐに終わらせますから。はぁああああああああっ!」

 

雨月を片手に持ちながらブルーナイトに急接近して雨月を振り下ろす。

 

だが、ブルーナイトはその攻撃を避けることはせず、その刀身を人差し指と中指で受け止める。

 

そんな人間技とは思えない光景に千冬だけじゃなく、ここにいる全員が驚愕する。

 

何故なら普通生身でISの武装を受け止めるなんてほぼ不可能に近いからだ。

 

それをたった二本の指でやられたのなら尚更だ。

 

「くっ……!抜けない……!?」

 

「血気盛んなお嬢さんだ。いや……紅椿の操縦者篠ノ之箒さん」

 

「何故私の名を知っている!?」

 

「知ってるのはお前だけじゃないぜ。ブルーティアーズの操縦者にしてイギリスの代表候補生のセシリア・オルコット、甲龍の操縦者にして中国の代表候補生の凰鈴音、ラファール・リヴァイヴカスタムⅡの操縦者にしてデュノア社御曹司兼フランスの代表候補生のシャルロット・デュノア、シュバルツェア・レーゲンの操縦者にしてドイツ軍黒兎隊の隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒ、そして……織斑一夏の姉にして最強と名高い織斑千冬……いや、ブリュンヒルデと呼んだほうがいいか?」

 

「私達代表候補生だけでなく織斑先生のことまで……貴方一体何者ですの!?」

 

「俺か?見て分からないか?アニメや小説でよくいる謎キャラだよ」

 

「ふざけたことを言うな!教官のその二つ名を知っているのは一部の人間だけだ!それを何故お前が知っている!?」

 

「色々質問の多い奴だな。せっかくお前達の捜してる仲間について情報を持ってきたっていうのに」

 

「いきなり現れた奴のことなど信用できるか!それより早く放せ!」

 

「言われなくても放してやるよ。ほら」

 

右腕を前に押し出して人差し指と中指を刀身から放す。

 

そのはずみで箒は後ろへと下げられる。

 

「一つだけ聞きたいことがある。お前が一夏と東条をさらったというのは本当なのか?」

 

「ああ、その解釈は間違ってない。現にそうしたのは俺だからな」

 

「何でわざわざそんなことしたのよ!?何が目的なわけ!?」

 

「世界を救うためだ」

 

『は?』

 

ブルーナイトから放たれた言葉に箒達は頭上に疑問符を浮かべる。

 

あまりに壮大すぎるからだ。

 

「ああ、こいつあれね。今流行りの中二病ってやつね。病院行ったほうがいいわよ」

 

「信じる信じないは勝手だ。だが、俺は微塵もウソは言ってないぜ。現に別世界は世界大戦級の戦争が起こっているからな」

 

「別世界?貴方何を仰っていますの?」

 

「言葉通りの意味だ。こことはまた別の世界では異形な生命体の侵略を受けている。お前達が捜してる一夏も碧をその世界を救い、英雄になるために戦っているのさ」

 

「英雄だと?」

 

「そうだ英雄だ。これからの時代、英雄の力が必要になる時がやってくる。二人はそのための試練の真っ最中というわけだ」

 

「ええい!お前の言っていることはメチャクチャすぎて理解できん!お前が誘拐したんじゃないのか!?」

 

「いいや違う、全ては二人が英雄になるためだ。もしその世界を救うことができたら二人はお前達の元に返してやる。だが、それは今では無理だろうな」

 

「どういうこと?」

 

「二人は今強大な敵と戦っている。お前達の戦った福音とは比べ物にならないくらいのな。だが、奴等は諦めずにそいつと戦っている……と聞いたらお前達はどうする?」

 

ブルーナイトの話を聞いて皆は考える。

 

彼の言っていることは現実味がなさすぎる。

 

碧と一夏がこことは別の世界を守るために強大な敵と戦うなんてことは。

 

だが、悔しくはあるがそれなら今までどんなに捜索しても見つからないのはおろか、情報を得られなかった理由の辻褄が合う。

 

そう考えた皆はブルーナイトにこんなことを聞いてみた。

 

「本当に、本当に碧と一夏はそこにいるんだな?」

 

「ああ、本当だ」

 

「その世界が救われれば本当に碧と一夏を返してくれるんだな?」

 

「約束しよう」

 

「……皆、私は二人を助けに行く」

 

二つの質問をした後、いきなりそんなことを言い出す箒に皆は驚愕する。

 

「箒さん!助けに行くと言ってもどうやって!?タイムマシンもありませんのよ!?」

 

「そうよ箒!いくらISでも次元を渡る機能まで付いてないわよ!?」

 

「それでも二人は私にとって大事仲間だ。仲間のピンチを聞いてふせっているわけにはいかない。だから、私をその世界に連れて行け!」

 

「それなら僕も行く!やっぱり助けたいもん!」

 

「嫁のピンチを救うのは夫の務め……私も同行しよう」

 

「シャルロット、ラウラまでこんなバカげた話を信じるっての!?」

 

「そうですわ!第一どうやってその別世界に行くって言うのですか!?」

 

「俺には次元を渡る力がある。その力を使えば別世界に転送することが可能だ」

 

あっさり言い放たれた言葉に信じられなかったセシリアと鈴が口をあんぐりとさせる。

 

既に何らかの感覚が麻痺しそうなくらいだ。

 

「セシリアと鈴は残っていていいぞ。我々だけでも十分だ」

 

「誰も行かないなんて言っていませんわ!それに、敵がどういったものなのか分からない以上、皆さんだけで行くのは危険です!」

 

「そうよ!あたし達だって二人のことが心配なんだから!あたし達も行くわよ!」

 

「待て、危険すぎる。そんな未知の世界に行くなど……」

 

「先生、これは弟さんを救うために必要なことなんですよ。それに彼女達が来ればそれだけ弟さんの生存率が多くなります。ここは彼女達を信用してやって下さい」

 

「行かせて下さい!我々は行かなくてはならないのです!」

 

「……だが」

 

「絶対一夏と碧を連れて戻ってきます!お願いします!」

 

シャルロットに続いて皆が一斉に千冬に頭を深々と下げる。

 

五人のその姿を見ると、千冬は深い溜め息を吐く。

 

「ここまで言うと聞かない馬鹿者共だな……。しかたない、行くがいい。だが、絶対に二人を連れて帰って来い」

 

『はい!』

 

「時間がない。手遅れになる前に行くぞ。ついてこい」

 

そう言うと、箒達はブルーナイトに連れられて司令室を出て行った。

 

出て行く姿を千冬は静かに見つめる。

 

「頼んだぞ……若き候補生達。二人を助けてやってくれ」

 

厳格な顔を保ったままそんなことを千冬が言っていたのを皆はもちろん知る由もないのであった。

 

 

―――――

 

 

両サイドの腰部に収納されている二本のカリバーンを片手に一本ずつ持って振るい、ゼロに斬撃を加える。

 

が……その攻撃を見切っているのか、全て避けられている。

 

【無駄ダ。貴様達ノ行動パターンハ戦闘データヲ手ニ入レルト共ニ調ベ尽クシテイル】

 

「はぁああああああああああああああああああっ!!!」

 

僕の斬撃を受け止めているゼロの背後から一夏が両手に持った雪片弐型でゼロに斬りかかる。

 

だがゼロはそれをギリギリまで引き寄せたところで横に移動する。

 

その結果……。

 

「くっ……!」

 

一夏のその斬撃は僕に当てられた。

 

だがどうにか一夏の斬撃は目の前にイージスを展開することによってダメージを受けるのを防ぐことができた。

 

ギリギリまで引き寄せていたのは一夏に僕を攻撃させるためだったのか……。

 

【ギリギリマデ寄セタツモリデアッタガ……防イダカ……】

 

「悪い碧!大丈夫か!?」

 

「ああ、大丈夫。心配ないよ。それにしてもゼロの奴、僕達の動きを完全に読んでる……隙がない」

 

「ああ……並大抵の攻撃は避けられるか防がれちまう……」

 

【貴様達ノ戦イブリハ見セテモラッタ。オカゲデ戦闘パターンモ予測デキルヨウニナッタノダ】

 

言い終わると、背中に搭載されている四基の紅いビットが機動ウィングから離脱して飛んでくる。

 

四方から紅いビームを放たれるオールレンジ攻撃を僕達は軌道を見ながら避ける。

 

しかし……。

 

【避ケルコトデ私ノコトヲ忘レテイルゾ!】

 

「何!?ぐっ……!」

 

ビットから放たれるオールレンジ攻撃を避けていると移動していたゼロが背後から一夏に黒い雪片弐型を振り下して斬撃を加える。

 

斬撃を加えられた一夏は後ろに飛ばされた共に左側と背後にいた二基のビットからビームを当てられる。

 

「ビットを操作しながら攻撃を実行!?バカな!ビットを操作するには高い集中力が

必要で、それ故にほかの攻撃は実行できないはずだ!それがどうして!?」

 

【ソレハ操ルノガ人間ダッタ場合ダロウ。私ハネウロイダ。故ニコウイッタコトモ可能ナノダ】

 

「くそっ……マジかよ……反則くせぇ……!」

 

【勝負ハ勝テバイイ。故ニ過程ナド……ドウデモヨイノダ!!】

 

黒い雪片弐型を引っ込め、入れ替わりに両サイドの腰部に収納されているビームサーベルの紅い柄部分を取り出して紅いビーム刃を出現させる。

 

ビーム刃を出現させると柄尻部分を連結させ、薙刀の形にして突撃する。

 

ゼロが突撃してくると僕もカリバーンの柄尻部分を連結させて薙刀の形にしてゼロに向かい、薙刀で剣劇を始める。

 

しかしゼロの斬撃回数がこちらよりも早く正確だ。

 

【人間ノ反応速度ナドコンナモノヨ。ソレガ人類ノ限界ナノダ!】

 

「グハッ!」

 

薙刀状態にしたカリバーンを弾かれ、その一瞬の隙を突いてゼロが目にも止まらない斬撃を僕に加え、最後に右足で蹴り飛ばす。

 

そのコンボによってフリーダムのシールドエネルギーが一気に半分以下にまで下がる。

 

【所詮人間ナドコノヨウナモノダ。イクラハイスペックナ機体ヲ所持シテイテモ、使ウノガ人間デアル故ニ限界ノ壁ニブツカル】

 

「お前は違うって言うのかよ!」

 

【ネウロイハ人間以上ニハナイ高イ処理速度ガアル。ソノ処理速度ガISノ力ヲ限界以上ニ引キ出シ、進化サセル。ツマリISハ人間ガ使ウヨリモネウロイガ使ッタホウガ真価ヲ発揮スルコトガデキルトイウコトダ】

 

「ふざけんな!!お前等ネウロイにISなんて使わせたらこの世界は終わりだ!」

 

【終ワラセルノデハナイ。ゼロカラリセットサセルダケダ。ソシテコノ世界カラ我々ニトッテノ危険因子ヲ排除シ、ネウロイガ統一スル世界ニ変エル。モチロン、ソノ世界ヲ統ベルノハ私ダ】

 

ネウロイにとっての危険因子……それは間違いなく僕と一夏、そして長い間戦ってきた魔女のことだ。

 

つまり……ネウロイは世界を征服するということは世界から魔女を排除するという意味なのだ。

 

「そんなことさせてたまるか!お前が支配する世界なんて!」

 

【我々ネウロイニトッテ魔女モ貴様等モ邪魔ナノダ。魔法力ヲ持タナイ人間モ私ノ支配スル世界ニナッタラ死ヌホドコキ使ッテヤル。人間モソウシタホウガ幸セダロウ】

 

「何が幸せなもんか!ネウロイにこき使われるなんて不幸以外の何ものでもないだろうが!!」

 

【理解デキナイトハヤハリ人間ハ愚カダナ。ナラバココデ貴様等ニ絶望ヲ見セテヤロウ。零落白夜】

 

「零落白夜!?」

 

一夏が驚くのも束の間、ゼロの全身が紅い粒子によって包まれ、ビームサーベルの刀身が伸びる。

 

あの感じ……間違いない。

 

あれはまさしく白式のワン・オフ・アビリティー……零落白夜だ。

 

「ウソだろ……あいつ零落白夜まで使えるのかよ……!?」

 

【サア、恐怖シロ人間。ソシテ絶望ノ声ヲ聞カセロ】

 

「一夏!いくらあっちが零落白夜でも所詮はコピー!君の零落白夜を見せてやるんだ!」

 

「おう!零落白夜、発動!」

 

その掛け声で一夏が金色の粒子を纏って零落白夜を発動する。

 

零落白夜が発動されると雪片弐型の刀身が伸びる。

 

「お前に見せてやるぜ。本物の零落白夜ってやつをよ!」

 

【……フフ】

 

一夏の言葉にゼロは笑った気がするが、僕達はそんなの気にしている暇もなくゼロに突撃して行った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。