インフィニット・ウィッチーズ 空駆ける自由の翼 作:天野蒼夜
先に待ち受けていたのは完全なる敗北だった。
OP2:
「Belibve」唄:玉置成美さん
ED2:
「迷々コンパスはいらない」唄:Stylips
スオムスのどこかに点在する森の中から淡い光が放たれる。
その光の正体はインフィニット・ストラトスの世界からブルーナイトの持つ次元移動能力によって箒達をストライクウィッチーズの世界に転移した時に生じた光だ。
「……ここがストライクウィッチーズという世界か。しかし、妙に不穏な空気が流れているな……」
周囲を見渡しながらラウラが冷静にこの世界の空気を感じ取る。
軍人であるが故の察知能力だ。
「空も鉛色になってて……まるで戦争でもしてるみたいな感じだね……」
「みたいなではなく実際に戦争まがいなことが起きているのだ。ネウロイによってな」
「あんた、ここに来る途中もそんなこと言ってたわね。そもそもネウロイって何なのよ?」
「ネウロイは1939年に突如出現した未確認生命体のことだ。それにはビームと
いった兵器を備え、周囲を焦土と化す力を持っている。ここはそんなネウロイ
から世界を守るために魔女という魔法力を宿した少女達が戦っている世界なの
だ」
「ということは、ここは我々の時代より一世紀前の世界ということか……」
「そんなこと今はどうでもいいですわ!まずは一夏さんと碧さんを捜すのが優先的ではなくて!?」
「そうだな、今から調べてみる」
ラウラが右腕にシュルバルツレア・レーゲンを部分展開し、それに搭載されている索敵機能で一夏と碧の所在地を捜す。
「……見つけた。二人はここから北東43kmの上空にいる。何かと交戦しているようだ」
「交戦!?じゃあここは本当に……」
「どうやらそいつの言っていることはウソではないようだな。だが急いだほうがいい。
二人を示すマーカーが徐々に消え始めている」
「つまりやられそうになってるってこと!?」
「そういうことだ」
「一刻の猶予もないとはこのことか……行くぞ皆!一夏と碧を助けるのだ!」
「了解(ですわ)!!」
箒の言葉を掛け声で皆がそれぞれの専用機を待機状態から展開状態にしてISを纏い、空へと飛翔した。
飛んで行く姿をブルーナイトは静かに見つめている。
「……恐らく、もう手遅れだろうな」
そんなことを一人呟きながら……。
―――――
零落白夜を発動した一夏とゼロが剣と剣をぶつけ合っている。
だがゼロは一夏が雪片弐型から繰り出される斬撃を全て避け、かつカウンターの如く一夏に斬撃を確実に当ててシールドエネルギーを削っている。
僕は一夏から少し離れたところから二丁のダークリパルサーの銃口にエネルギー数秒間チャージをしてビームショットをゼロめがけて撃ち放つ。
だがゼロは一夏を蹴り飛ばして後ろに下がることによってそれを回避する。
僕はそれからも追従するようにビームショットを放ち続けるが、ゼロはその全ての銃撃を回避した。
その全ての銃撃を避けると、二本のビームサーベルを両サイドの腰部分に収め、入れ替わりに二丁の黒い銃身のビームライフルを召喚して僕めがけて僕と同じようにエネルギーがチャージされた黒いビームショットを放つ。
僕はそれがビームライフルの銃口から離れたことが分かると、上空に飛んで回避する。
【ヤハリ人間トハ単純ダナ。サッキノガ囮ダトイウノニ気付カナカッタノカ?】
「何!?」
何かの気配を感じて後ろを振り返るといつの間に射出したのか、二基のビットが浮かんでおり、それがビームを撃ち放つ。
どうにか撃たれる前に気付けたので、その攻撃は目の前にイージスを展開することで防ぐことができた。
【ダガ、ソレモ囮デ、ココガ本命ダ!】
「うわぁっ!」
僕の背後に移動していたゼロが僕を黒い雪片弐型を振り下ろして斬撃を加える。
斬撃を加えると、左手に持っていたビームライフルを僕の腹部に撃ち放って後方に吹き飛ばす。
吹き飛ばされたことによってその先にいた一夏に身体をぶつけてしまう。
【コレデ最後ダ】
僕の前に移動してきたゼロが黒い雪片弐型を両手に持つ。
すると雪片弐型の刀身が黒い粒子を纏って徐々に巨大化していく。
「こいつ、まさか!?」
【オ前ノ先生ノ技ダ……烈風斬!!!】
「くっ!」
巨大な黒い刃を振り落とすゼロの前に立つ。
それから数秒後、周囲に轟々とした爆発音が響いた……。
―――――
嫌な予感を予兆し、私達はストライカーユニットのスピードを上げながら東条と織斑のいる場所へと向かって行く。
『っ!?』
数分後、ストライカーユニットのエンジンから聞こえてくる轟音を止め、やっとのこと
で碧達のところに着く。
けど、たどり着いた私達は見たものはとんでもない惨状を目撃したのはボロボロで満身創痍になっている東条と織斑の姿だった。
【「東条!!織斑!!」
「……エイラ……さん……皆……!」
「皆……来ちゃ……ダメ、だ……!」
私達に気付いて碧達がそう言うが、苦悶の声を上げていることからかなりの重傷を負っていることが分かる。
最早二人は飛んでいるのでやっとだろう。
【フフフ……ヨウヤク現レタカ、ストライクウィッチーズノ諸君】
碧をやった奴等の後ろにいたそいつが私達に気付いてそう言う。
口調からして笑っているのだろうが、いかんせん表情が読み取れない。
「貴様……!東条達に何をした!?」
二人の惨状を見てバルクホルン大尉が怒号を上げる。
【何ヲシタカダッテ?少シコイツ等ニオ灸ヲスエテヤッテイルダケダ】
「お灸……だと……?」
【ソウダ、オ灸ダ。ソイツ等ニオ灸ヲスエテヤッタンダ。ソシテ戦ッテ分カッタ。人間トハコンナニモ愚カナモノダトナ】
やれやれというジェスチャーしてそいつは嘲笑する。
「貴方は一体何者なんですか!?ネウロイなんですか!?」
【サッキソイツ等ニ名乗ッタバカリナンダガナ……。イイダロウ、貴様等ニモ我ガ名ヲ教エテヤロウ。我ガ名ハゼロ、コノ世ヲ統ベル者。オ前等ニ分カリヤスク言エバ、人語ヲ理解スルネウロイダ】
『っ!?』
その衝撃的な台詞に私達は驚きを隠せなかった。
そりゃそうだ。
人語を理解するネウロイが目の前にいると言うのだから。
「人語を理解するネウロイ!?貴方もネウロイだっていうの!?」
【アア、ソノ証拠ヲ今見セテヤル】
ゼロが両手で胸の中心を手で開ける。
その中には今まで戦ってきたネウロイの心臓部分である赤いコアが宝石のように光り輝いていた。
「……確かにネウロイのコアですね、でもあれが人語を理解するネウロイなんて……まだ信じられません……」
「安心しろ宮藤、私も同じ意見だ。たとえあれがネウロイだったとしても、人語を理解するネウロイなんて存在するわけがない」
【フゥ……コレヲ見テモマダ信ジヌカ……。マ、無理ニ信ジロトハ言ワンガナ……】
そう言って私達に呆れると、ゼロは踵を返す。
「おい待てこら!まだ話は―――!」
「今ハ我等ヨリモソイツ等ノ心配ヲシテヤッタラドウダ?ホラ、今ニモ堕チソウデハナイカ。至近距離カラ烈風斬ヲ放トイウノニ咄嗟ニシールドヲ展開シテ致命傷ヲ回避スルトハ小童ノクセニイイ反応ヲシテイタ。ソレダケハ褒メテオイテヤロウ」
「……」
ゼロから碧達に視線を戻す。
確かに奴等の言う通り、東条達は身体を左右に揺らしており、今にも崩れ落ちそうだった。
「っ!そう言って貴方は―――っ!……いない」
次にゼロのほうを見た瞬間、そこにゼロの姿はなかった。
まるで、最初からいなかったかのように……。
「……っ」
ゼロがいなくなると東条が一夏が糸が切れた人形みたいにその場に崩れ落ちた。
それと同時に東条と織斑が纏っていたISも解除され、地上の大海原めがけてまっ逆さまに落ちていく。
それを見た私、シャーリー大尉、バルクホルン大尉、ミーナ中佐は二人のところに飛んで行き、私とミーナ中佐が東条、バルクホルン大尉、シャーリー大尉は織斑の腕を抱えて捕まえる。
「東条!東条!おい!しっかりシロ!」
「織斑!返事をしろ!織斑!」
「……」
私達が何度呼びかけても碧も織斑も答えない。
ただ両目を閉じ、私達に揺られているだけだ。
「東条……まさか死んでないヨナ……?」
「……いや、二人共心臓は僅かに動いている。死んではいない。気を失っているだけだ」
「とにかく、二人を基地に運ばないと」
「……お前達は四人は二人を基地に運んでくれ。ゼロとは我々が戦う」
「美緒!本気なの!?碧君と織斑君でも太刀打ちできなかったのよ!?」
「だからといってゼロを放っておくわけにはいかない」
「あの方角からしてゼロはネウロイの巣に向かって行ったね。あそこには既に艦隊が総攻撃を始めている頃だと思うけど……」
「それマズくない!?皆殺されちゃうよ!」
「分かっている。そういうことだから皆も二人を運んだらすぐに戻ってきてくれ。いいな?」
「……了解した」
「ではな。インフィニット・ウィッチーズ!ゼロはネウロイの巣に向かった!我々も
後を追うぞ!!」
『了解!』
坂本少佐に返事をしてネウロイの巣に飛んで行こうとする皆。
「サーニャ!!!」
しかし私はすかさず後ろのほうを飛んでいるサーニャに大きな声を上げて呼び止めた。
私に呼び止められるとサーニャは進むのをやめて私のほうに振り返る。
いつになく真剣な顔……あんないつも眠そうにしているサーニャとはとても思えない。
「サーニャ、私―――」
「……エイラは東条君を避難させてあげて。私の母国は……私が守るから」
それだけ言うとサーニャは先に行くウィッチーズの後を追って行った。
いつになく凛とした表情で言ったサーニャに何も返せず、ただ飛んで行く友達の後ろ姿をただ見ている私。
「……さあ、基地に帰還しましょう。二人を運ばないと」
『……了解』
そうして、私達は満身創痍の東条と織斑を運ぶために一度基地に帰還した。
―――――
「っ!?」
一方、碧と一夏のところに向かっていた箒達だったが、ラウラが右腕に搭載されている索敵マップを見て目を見開いてISを停止させる。
「どうしたラウラ?」
「……一夏と碧の反応が消失した」
小さく言うラウラの言葉に驚愕すると同時に全員に戦慄が走った。
もしかしたら二人は既に死んでいるのではないかと……。
「そんな……私達は間に合わなかったということですの……!?」
「……一夏」
「いや、まだ死んだと決まったわけじゃない。あいつ等がやられるものか」
「箒の言う通りだ。敵から逃げてどこかに身を潜めている可能性もあるしな」
ラウラが言い終わると、東北の方角から大砲から放たれた玉が何かに激突したような爆発音が聞こえてきた。
その音を聞いて箒達が東北のほうに視線を移すとその先は大海原で、近くに空まで伸びている巨大なネウロイの巣があった。
「な、何なのあれ!?デッカい巣!?ていうかあの艦隊、あれに攻撃してんの!?」
「そうと見て間違いない。もしかしたら一夏も碧もあそこで戦線に参加してるもかもしれん」
「だったら行こうよ!多分あの先にあの人が言ってたネウロイがいるんだよ!」
「確証はないがその可能性は高い。よし、行ってみよう!」
そう決めて箒達は矛先をネウロイの巣に向けて飛んで行った。
―――――
基地に帰還し、私はベッドの前で膝立ちにしながらベッドの上で眠っている東条の寝顔を見ていた。
ミーナ中佐達は既に先に行っており、私は後から追いかけると行ってここにいるのだ。
「……」
静かに寝息を立てている東条。
一応応急処置はしたがそれでもまだ身体は万全とまでは行っていない。
「(私達が来るまでの間、ずっと織斑と二人で戦っていたんだヨナ……)」
右腕を伸ばして東条の頬を撫でる。
すべすべしてて柔らかい。
寝顔も女みたいで私が男なら惚れてしまいそうだった。
「(……いや、私はモウ)」
今までは自分の性格とサーニャのことがあって素直になれなかったけど、今ならちゃんと分かる。
……私は。
「(東条が…………好きダ)」
でもこう思っているのは私だけじゃない。
ミーナ中佐やバルクホルン大尉、シャーリー大尉だって同じことを思ってる。
でもこの好きな気持ちだけは上官の三人であっても負けたくないと思っているが、もちろんサーニャのことも好きだ。
けど、サーニャに対して思っている【好き】と東条に対して思っている【好き】は同じ言葉でもまったく意味が違う。
私は一人の女として……異性と意識した上で東条が好きなのだ。
「(だから私が東条を守ル。たとえ……それで私が死ぬことになったとしてモ)」
今回の敵は東条と織斑が束になっても歯が立たなかった強大な相手だ。
恐らく私達じゃ勝ち目はないだろう。
でも……それでも何もしないよりは全力で戦って負けたほうがずっといい。
東条と織斑が頑張ってくれたのに自分だけ何もしないのは嫌だから……。
「東条、私は行くヨ。魔女として、お前を愛する女とシテ。この世界のため
に戦ってくるヨ。でも、残念ダナ。もう顔が見らなくなるなんて。さっき占
ったけど、私の今日の運勢は最悪ナンダ。死神のカードを引いちまったカラ
ナ」
それでも私は行かなきゃならない。
世界人類のためにネウロイと戦い、救うのが魔女の使命だからだ。
私は踵を返してドアのほうに向かって歩いていく。
今皆はゼロと戦うためにネウロイの巣に向かっている。
だから私も戦うんダ……ストライクウィッチーズ―――いや、インフィニット・ウィッチーズの一員として。
「じゃあな…………碧」
ドアを開けて廊下に出て、ドアを少し開けたまま寝ている碧に言う。
もちろん碧からの返事はない。
でもそれでいい。
皆もこれが分かっていたから今まで想いを伝えなかったと思うカラ……。
「サヨウナラ」
静かに呟いてドアを閉める。
その時私の頬には一筋の涙が伝っていたが、それはすぐに床にこぼれ落ちて行った。