インフィニット・ウィッチーズ 空駆ける自由の翼 作:天野蒼夜
OP2:
「Belibve」唄:玉置成美さん
ED2:
「迷々コンパスはいらない」唄:Stylips
碧に別れを告げ、私は格納庫に向かう。
そこには既にストライカーユニットを履いたミーナ中佐達が待っていた。
「……もういいの?」
凛とした顔をしながら静かな口調で私に聞いてくるミーナ中佐。
もしかしたらあの話を聞かれていたのだろうが、そんなの私にはどうでもよかった。
「ああ、話はしてキタ。もう思い残すことは何もないヨ」
「……そう、では行きましょう。こうしてる間にも美緒達はゼロと交戦してるわ」
「……ああ」
「エイラ、今日はいつになく真剣だな。普段は訓練に消極的なお前でもこういう状況になると真剣になるんだな」
「私はいつだって真剣ダヨ。あまり表に出さないダケ」
「エイラはどこか掴めないからな~。オープンの私と違って」
「お前の不真面目さは誰もが認知してるから安心しろ」
「何だよその言い方は!?」
「そのままの意味だ」
バルクホルン大尉はそう言って憎まれ口を叩くが顔は笑っていた。
遠回しにそれがお前らしいと言っているのだろう。
シャーリー大尉もそれが分かっているのか、顔が笑っていた。
「では、出撃します。勝てる確率は0に等しいけど……最後まであがくわよ!」
『了解!!!』
そうして、私もストライカーユニットを履き、カタパルトから鉛色の空の中に入って行った。
―――――
一方、ここはネウロイの巣。
そこの海上は今まで艦隊がネウロイの巣に砲撃を仕掛けていたが、ゼロによってほぼ全ての艦隊が鉄屑になっていた。
碧と一夏を基地に運び出したエイラ達も後に坂本達と合流し、その惨状を見つめている。
「何てことだ……!あれだけいた艦隊を一瞬で撃破するなんて……!」
「……ひどい」
海上の惨状を見て、ウィッチーズメンバーはそれぞれ欝なリアクションを取っている。
あの艦隊の中には自分達が世話になった人達が大勢いたからだ。
【コイツ等ガ我ガ城ニ攻撃ヲ仕掛ケタノガイケナイノダ。余計コトヲシナケレバ命ヲ落トサズニスンダモノヲ。人間ハツクヅク愚カナ生キ物ダ】
「貴方……自分が何をしたか分かっていますの!?人を殺したんですよ!?」
ペリーヌが怒りをぶつけるようにゼロに言い放つが、ゼロはまったく動じていない。
ゼロにとって人間というのは愚者か都合のいい道具としか考えていないからだ。
【自分ガ何ヲシタカダッテ?コレハヤッテイルコトヲ十分ニ認識シタ上デノ犯行ナノダガ?】
「あの中には私達がお世話になった人が大勢いたんだ……。それを平気で殺すなんて……普段は温厚なエーリカ・ハルトマンもここらが我慢の限界だよ!」
【ソレナラバカカッテクルガイイ。ドウセ魔女ハ全テ滅ボスンダ。ココデ殺シテモアトデ殺シテモ同ジコトダ。ダガ】
ネウロイの巣から11体の影が飛んできてゼロの前までやってくる。
その11の影が出現し、自分達の目の前にやって来ると、全員が驚愕の表情を浮かべる。
何故ならそこに現れたネウロイは自分達と姿が酷似しているからだ。
「あれは……魔女ネウロイ……?でも、あのネウロイは殺されたはず……」
【アンナ出来損ナイト一緒ニサレテハ困ル。コイツ等ハフリーダムト白式ノ戦闘データヲ取ルツイデニ保険デ取ッテオイタ貴様等ストライクウィッチーズノ戦闘データヲ元ニ作リ出シタ私ノ忠実ナル下僕ダ。部隊名ヲツケルトスルナラネウロイニチナンデネウロウィッチーズトイッタトコロカ】
自分の姿にそっくりなネウロイを見て、複雑な心境を見せる。
何故なら自分達の知っている魔女ネウロイはとても友好的だったからだ。
【ネウロウィッチーズ、王ガ命令スル。ストライクウィッチーズヲ殲滅セヨ】
ゼロの指示でネウロウィッチーズがストライクウィッチーズの元に飛んで行く。
「コピーなんかに負けるわけには行かないわ。ストライクウィッチーズ!各一体ずつ、これに対処せよ!」
『了解!!』
ミーナの指示でそれぞれ一人一体ずつ魔女ネウロイの元に向かい、戦闘を始める。
「よし!当たった!ってぇ!それ私の治癒魔法~!」
宮藤は自分の固有魔法の治癒魔法を魔女ネウロイ(宮藤ネウロイ)に使われ……。
「烈風斬!!!……っく、威力は互角といったところか……!」
坂本は坂本ネウロイと烈風斬をぶつけ合い……。
「くっ……!自分そっくりのネウロイと戦うなんて滅多にできない経験ね……!」
ミーナは空間把握能力でミーナネウロイの動きを読みながら苦笑し……。
「発射からリロードまでの時間が短い……しかも私よりも正確だ……」
リーネは自分の得意な狙撃が自分以上の精度で見せつけられたことに絶望し……。
「……こいつ、私のレイピアを軽々とかわしてる……!?腹正しいですわね!」
ペリーヌは自分のレイピアを軽々と避けられる上にトネールも真似された
ことに腹立ち……。
「くそっ……人の真似ばかりしおって……!それでも私のコピーか!?」
バルクホルンは自分の怪力と二丁機関銃を真似するトゥルーデネウロイにそんな叱責を浴びせる。
コピーなのだからオリジナルの真似をするのは当然である。
「この~!真似すんなよ鬱陶しいな~!」
ハルトマンは固有魔法を利用し、回転することによって周囲に竜巻を発生させるが、エーリカネウロイに同じようなことをされて威力を相殺され……。
「速すぎて狙いが定まらない……!でも、さすがあたしのコピーだな!」
シャーリーはあろうことか自分のコピーが忠実に再現されていることに感心し……。
「も~!何で当たんないの~!?」
ルッキーニは撃ち放った銃弾が当たらずにストレスを溜め……。
「……」
サーニャはサーニャネウロイに冷徹な表情をしながら黙ってフリーガーハマーを連射して冷戦を繰り広げ……。
そしてエイラは……。
「自分の固有魔法を使われるのがここまで厄介だったナンテ……!」
自分と同じように未来予知の魔法を使われ、互いに銃撃をかわし続けていた。
魔女がそれぞれ自分のコピーと戦っているところをゼロはウィッチーズとは少し離れたところで眺めている。
【クックック、魔法力に限界ノアル貴様等ガ無限ニ近イ魔法力ヲ持ツコピーニドコマデ対応デキルカナ?】
魔法力に限りがあるストライクウィッチーズと無限に近い魔法力を持つネウロウィッチーズならネウロウィッチーズのほうが断然有利だ。
たとえスペックが同じでも有限の魔法力と無限の魔法力では差がありすぎるからだ。
【少シハイスペックニ作リスギタカ……コレデハ私ノ出番ガナイ。コノ間ニ他ノ魔女達ヲ片付ケニ―――】
「お前がこの事態を起こしている張本人か?」
ゼロの言葉を遮るように横から凛とした声が聞こえてくる。
ゼロはその声を聞いて横に視線を向けるとそこには専用ISを纏った箒達がいた。
【何ダ貴様等ハ?】
「我々はここに仲間を捜しに来た者だ。いや、今はそんなことよりこの状況は何だ!?何故艦隊が沈んでいる!?」
【知リタイカ?ソレナラ教エテヤル。コノ破壊サレタ艦隊ハ私ガヤッタ。ソシテ、今奴等ガ戦ッテイルネウロイモヲ作ッタノモナ】
「ネウロイだと……?まさか、あの飛んでる黒い奴のことか?」
ラウラの言葉で他の四人もウィッチーズのところに視線を向ける。
するとそこにはそれぞれの魔女ネウロイと戦闘を繰り広げているストライクウィッチーズがいた。
「あの人達は何ですの……?足にユニットみたいなものを着けて飛んでいますが……」
「もしかして……あの人達があの男の人が言ってた、魔女?」
「それは分からないがあの者達が何かを守るために戦っていることだけは分かる。ならば」
ラウラが右肩に装着されているレールカノンを両腕で押さえ、銃口をゼロに向ける。
【何ノツモリダ?】
「貴様が何者か知らない。だが、この惨状とお前の言葉で今我々がすべきことが分かった。それは貴様を倒し、この戦いを終わらせることだ」
【貴様等ノ纏ッテイルソレハISダナ?ツマリ貴様等モ私ガウチノメシタ奴等ト同ジ世界カラ来タ住人トイウワケダナ】
「私がうちのめした?あたし達と同じ住人?っ!まさかそいつ等って!?」
【ゴ明察、貴様等ガ捜シニ来タデアロウ奴等ハ私ガウチノメシタ。ダガ安心シロ、死ンデハイナイ。マダ、ノ段階ダケドナ】
ゼロが言い終わると、つんざくような音と共に青い閃光が発射され、それを銃撃を右腕で弾く。
ゼロが弾いた銃弾を発射したのはスターライトMkⅢを持ったセシリアで、彼女同様鬼のような形相で武装を出してゼロを睨んでいた。
彼女達はゼロの言葉で碧と一夏がひどい目に遭わされたことの怒りを沸騰させたのだ。
「貴様と戦う理由がもう一つできた」
「貴方はこの惨状を起こしただけでなく、私達の友人である一夏さんと碧さんを傷付けた」
「あんたを倒すなんて生温いことはしないわ。バラバラにしてスクラップにしてあげるわ!」
「こんなに怒りを覚えたことないよ……僕は君を、絶対に許さない!!!」
「お前を斬り伏せる。覚悟しろ!バケモノめ!」
【イイダロウ、出番ガナクテ退屈シテイタトコロダ。遊ンデヤルヨ、小娘共】
「皆、こいつはどう見ても人間じゃない。容赦するな!」
「言われずともそのつもりだ。行くぞ!!」
【ソコマデ死ニ急グカ……ナラバオ望ミ通リ死ヲクレテヤロウ】
ゼロのその言葉を掛け声に箒達はそれぞれの武装を持ちながらゼロに挑んで行った。
箒達がゼロに挑んで行く様子を一部のウィッチーズのメンバーが目撃していた。
「何だ?東条達と似たような機械を纏った少女達がゼロと戦っているぞ!」
「それぞれが違った動きをしてる……すっげぇ!」
「美緒、もしかして彼女達は碧君が言ってた仲間なんじゃ……?いえ、きっとそうよ!あのISがその証拠よ!」
「そうと見て間違いないようだな。ならばゼロは彼女達に任せて、我々は魔女ネウロイを倒すぞ!」
「ええ!」
「了解!」
そうして、ウィッチーズはゼロを箒達に一任し、自分達は目の前にいるネウ
ロウィッチーズに再び戦いを挑んで行った。
―――――
青空……そして地面に色とりどりな花が咲いている僕と一夏は立っている。
「どこなんだここは……?たしか僕達はあの時ゼロと戦って……それで気を失って……」
そうだ、僕達はゼロと戦って負けたのだ。
フリーダムと白式の戦闘データを元に作り出されたあのISの紛い物に。
「じゃあ、俺達死んだのか?ここは天国か何かか?」
「いや、君達は死んでないよ。ただ夢の中にいるだけ」
「誰だ!?」
男性の声がして一夏が声を上げて周囲を見渡す。
しばらくそうしていると、僕と一夏の目の前に茶髪のストレートヘアー、上半身を白のTシャツの上に白と空色をメインカラーにしたジャケット、両手には黒のフィンガーレスグローブ、下には空色のズボンを穿いた男性がゆっくりとこちらのほうに歩いてきた。
「貴方は……?」
「僕かい?僕はこの話限定に出てくる使い捨ての神様だよ」
爽やかな笑顔を向けながら堂々とメタ発言をしている神様。
笑顔を保ったまま言っているのでギャグで言っているのか真面目に言っているのか判別できない。
「その神様がどうして俺達の夢の中に現れるんだ?」
「そりゃもちろん。君達の現実世界の現状を理解させるためだよ。ほら、これを見てみるといい」
神様が人差し指を立てた左腕で西の方角を指すと、そこに注目するよう促す。
僕と一夏は言われるままにそこに視線を向けるとモニターが浮かんでおり、そこに魔女と酷似したネウロイと戦っているストライクウィッチーズの皆とゼロと戦っている箒達が映し出されていた。
「何で箒達がこっちに来てんだよ!?ていうかどうやって来たんだあいつ等!?」
「彼女達が君達のことを心配して追いかけてきたんだよ。でもこれはマズイね、魔女達はほとんど魔法力を使い果たしてるし、ISを纏っている彼女達もだんだんゼロの動きについて来れなくなってる」
だんだんとネウロイとゼロに押され始めている皆を見ながら冷静に呟く神様。
箒達がどうやってここに来たのかは気になるけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
僕達も早く行って箒達やストライクウィッチーズの皆を助けないと!
でも……。
「ゼロは強い。僕達二人でも全然歯が立たなかった……今の僕達が行っても勝てるかどうか……」
「碧!何弱気になってんだよ!?だからって皆を見殺しになんてできないだろ!」
「いいや、彼の言ってることは正しい。今の君達じゃ到底ゼロには勝てない。何せあれは君達のISの力を君達以上に引き出しているからね」
そうだ……その結果僕達はゼロに負けた。
でもこのままじゃ皆ネウロイとゼロに負けて世界は完全に支配されてしまう。
そんなことになれば魔法力を持たない人間は一生死ぬまでゼロの奴隷として生きていかなくてはならない。
絶対にあっちゃならないんだ……そんなこと。
「チクショウ!どうにかできねぇのかよ!?このままじゃ皆が殺されちまう!」
「……一つだけ、ゼロに勝てる方法がある」
「何だって?」
「それって何なんですか?」
「簡単なことだ。君達があの世界の英雄になるために来たんだろ?だったら君達がその英雄の力を手にすればいいだけだ」
「英雄の力……?」
「そう、英雄。君達はあの男によってストライクウィッチーズの世界に飛ばされた。そして、君達はその世界で戦ってきたことによって僅かだった英雄の資質を開花させた。違うかい?」
そんなこと言われても英雄というものがどういったものか分かっていない僕達に開花したかどうかなんて分かるわけない。
だから僕達はそんな質問をしてきた神様に対して【分からない】と言って答えた。
「分からない、か……随分と興味深い答えだね」
「正直に言っただけです。けど、僕達がやるべきことは分かります。それは今戦っている仲間を助けることです。勝てないかもしれない。でも、このまま何もできないままでいるのは嫌なんです!」
「助けたい、か……。けど、君達にもう一度戦場に戻る覚悟があるのかい?」
「覚悟とかなんて大層なことを言うつもりなんてない。俺達はただ、仲間を助けたいだけだ!」
「強情な人だ……だが、君達みたいに自分の思ったことをそのまま喋る人間は初めてだ。けど、現実は厳しい。強情や真っ直ぐな思いだけじゃ何かを成すことなどできやしない」
神様が後ろ手を組みながら僕達のほうにゆっくり歩いてくる。
そして僕達の目の前まで歩いてくると組んでいた両手を解いて僕達に差し出す。
そうする神様の右手には白、青、黒をメインカラーにしたブレスレット、左手には水色と白をメインカラーにしたガントレットが手の平に置かれていた。
「……これは?」
「これは可能性だ、君達が脅威を振り払える可能性のね。まだ戦場に舞い戻る勇気があるならこれを取るといい」
爽やかな笑顔と変わり、真剣な表情を作る神様。
僕達はそれに誘われるように手を差し伸べ、僕は白、青、黒をメインカラーにしたブレスレット、一夏は水色と白をメインカラーにしたガントレットを手に取る。
そのブレスレットとガントレットはどこか不思議な雰囲気を纏っており、宝石のようにキラキラ輝いているように見えた。
僕達はその装飾から放たれる輝きをしばらく眺めていると、空間が激しい揺れを起こしながら歪み始める。
「何だ!?何が起きてるんだ!?」
「どうやら夢が終わったみたいだね。これから君たちはここから現実へと引き戻される。戦争が起きているあの世界にね」
「何だこれ!?何か身体が地面に吸い込まれてくぞ!?」
一夏が言った通り、空間が歪み始めると共に僕達の身体が下半身から徐々に黒い空間に吸い込まれ始めているのだ。
ていうかこれ……2話でも似たようなことなかった!?
「その力が世界の希望となるか絶望になるかは君達次第だ。ま、せいぜい頑張ってみな、英雄の卵達」
神様の一番最初に向けた爽やかな笑顔と共に放たれた言葉を最後に僕達は歪み続けている空間の中、黒い空間の中に引きずられて行った。
―――――
「っ!」
目を覚ますとそこはストライクウィッチーズの基地内にある僕の部屋だった。
僕はそこのベッドの上で眠っていたのだ。
横に視線を向けるとそこには一夏が椅子に座っていた。
僕が起きるのを待ってたのだろう。
「やっと起きたな。いつまでも起きないからひやっとしたぜ。ま、そういう俺もさっき起きたんだけどな」
「……じゃあ、僕達がさっき夢は」
「いや……夢じゃないっぽいぜ。その証拠にほら、起きたら手にこんなのが握られてたんだ」
一夏がズボンの右ポケットから何かを取り出し、手の平に乗せて僕に見せる。
それは一夏が夢の中で神様から受け取った青と白のガントレットだった。
まさかと思い僕は右手を見ると案の定、あの時神様から受け取った青、白、黒をメインカラーにしたブレスレッドが握られていた。
「どうして夢の中にあったものがここにあるんだ……?」
「そんなの俺が聞きたいよ。でも、俺達の今の機体はゼロとの戦いで壊れちまったし。今はあいつを信じて使うしかないだろ。可能性ってやつをな」
左手首に視線を向けると待機状態になっているフリーダムには亀裂ができており、とても展開できる状態ではない。
一夏の白式のほうにも視線を向けてみると、それも同じ状態になっていた。
僕はそれを確認し、右手首に神様からもらったブレスレットを装着する。
僕が装着するのを見ると一夏も同じように神様からもらったガントレットを右手首に装着する。
僕は右手首にブレスレットを装着すると上半身を起こしてベッドから抜け出す。
抜け出すと近くの棚に置かれている上着を手に取ってTシャツの上に羽織る。
綺麗に畳まれていたのはここまで運んでくれたストライクウィッチーズの誰かが畳んで行ってくれたからだろう。
「じゃ……行くか」
「ああ、行こう。皆を助けに」
お互いそう言い合って部屋を抜け出した。
外に出ると出入り口のドアの横にブルーナイトが両腕を組みながら壁にもたれていた。
その姿を見て一番に反応したのは一夏だった。
「てめぇはあの時の!何でここにいるんだよ!?」
「……今のお前が俺にわめいている暇があるのか?」
一瞥せずに呟く。
「何……?」
「お前達はそんなことよりもやるべきことがあるはずだ。今はそれを全うするべきじゃないのか?」
言いながらブルーナイトが壁に預けていた背中を放して僕達のほうに視線を向ける。
相変わらずフードで顔が隠れているため、表情は読み取れないがきっと冷静な顔つきになっているのだろう。
「それにしても、お前達はそんな傷だらけの状態で戦場に出るつもりなのか?」
ブルーナイトに言われて思い出したが、僕達は今身体のいたるところに包帯が巻かれており、応急処置されている状態だった。
応急処置とはその場しのぎなので完全に傷が癒えたとは言えない状態のことだ。
でも、今の僕達にそんなことを気にしている暇はない。
こうしてる間にも仲間達がピンチなのだから……。
「俺達は今そんなの気にしてる暇ないんだよ。皆を助けに行かないと!」
「急ぐのは分かるがそんな状態じゃISをまともに動かすことはできないだろう。ちょっとした傷でも、開けば命取りになる可能性だってあるんだぜ」
そう言うと、ブルーナイトは右手に青白い光を具現化させて僕達に当てる。
それに当てられるとさっきまで僅かに感じていた傷の痛みが綺麗さっぱりなくなった。
まさかと思いTシャツをはだけてみると、やはり傷口は完全に塞がれていた。
まるで最初から傷などなかったかのように……。
「傷がなくなって……何だか……元気が出てくるような……。お前、俺達に何をしたんだ!?」
「感じている通りお前達の傷と疲労を完全に回復させた。それで万全な状態でおニューのISを使えるだろう?」
「どうしてそれを貴方が知ってるんですか!?」
「そんなの今はどうでもいいだろ。ほら、早く行かないと皆殺されちまうぜ」
「……」
「ほら、早く行けよ。お前には守りたいものがあるんだろ?」
「……ああ」
「……行こう、一夏。皆が待ってる」
「……そうだな」
そう言うと、一夏と僕は右手首に装着されているガントレットとブレスレットを輝かせて鉛色の空に飛び上がった。
二人が新たなISを纏って飛んで行くのをブルーナイトはじっと見上げていた。
「自由の翼と守る剣……と言ったところだな、あれは」
二人の新たなISを見て、ブルーナイトはそれを独り言のように呟いた。