オーバーロード二次「+α」   作:千野 敏行

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 今回、下半分がおまけです。女性向けブラウザゲームネタですのでご注意ください。とはいえ、女性向けとは言い難い何かになっています。円周率とか洋菓子の一つとか麻雀で使うアレとかを表す言葉が乱発されます。


七話

 思っていた通り腹を下したアッバルはカルネ村に留まり、昼過ぎに薬草採集を終えて戻って来たアインズらに拾われ再び旅の空の下を進むことになった。現在アッバルの片手にはでんでん太鼓がデンデン鳴っている。中毒になりそうなほど楽しい。

 コンクリートのそれとは違う、どこに小石やデコボコのあるか分らない道――躓きそうになる度ナーベラルに支えられ、最終的にハムスケの背中に乗ることになった。アッバルを支えるためにナーベラルも乗り、ハムスターに乗る小人二人のような図が出来上がる。

 

 肉の上に乗りながら、ゆらゆらと揺られ進むが、村を出て四時間ほどしたところで今日の旅を止めることになった。既に時刻は五時近い、そろそろ今日の拠点を作らねばならなかった。

 

「明日の夕方にはエ・ランテルへ帰れそうであるな!」

「そうだな。やはり森の賢王をモモンさんが配下に加えたのが大きいよな――ナーベちゃん、乗り心地どうだった?」

「黙れ下等生物(ツリガネムシ)、私に話しかけるな」

 

 軽口を交わしながら仮設の竃やらなんやらを用意していく。今晩の食事はカルネ村にてエンリらが用意してくれたという柔らかめのパンと、やはり豆類のスープだ。

 漆黒の剣から離れ、アッバルがスープを器ごと口に突っ込んでズコーとやっている間に、アインズは先ずユリと、次にアルベドと〈伝言〉を繋いでいた――ちなみに魔法を使うために兜を外して頭蓋骨を晒しているが、頭にタオルを被っているので向こうからは顔も何も見えないだろう、きっと。

 

「……ナーベ」

「はっ」

「彼らが寝静まったら、私はナザリックへ一時帰還する。お前はこちらに留まり、私が戻るまでアッバルさんを守れ」

「はっ。理由を聞いても宜しいでしょうか」

「不確定なことゆえ、まだ話すことは出来ない」

「畏まりました」

 

 カポリと再び兜を被りつつそう言うアインズの真剣な様子に、アッバルはアインズに〈伝言〉を繋ぐ。アインズはこの鎧姿になると自分から〈伝言〉を繋ぐことは出来ないため、アッバルから常時繋ぎっぱなしにしているのだ。

 

『なんだか大変なことが起きてそうですが、大丈夫ですか?』

『大丈夫、だと良いんですけどね。シャルティアが敵対したって報告を受けたんですけど、根拠とかはさっぱりなので聞きに帰ろうと思ってます』

『シャルティアって確か守護者NPCの一人ですよね? NPCが敵対ですか……そんなことあるんですね』

『普通はないんですけど、異世界に転移しちゃいましたからね。そういうバグが出てるのかもしれません』

『私の見た限り、守護者がアインズさんを裏切るとかそんなことするようには見えませんでしたよ。きっと何か理由があるんですよ』

『そう、ですかね』

 

 しょんぼりと凹んだ様子のアインズを慰めつつ、アッバルはシャルティアを思い出す。……はっきり言おう。テアトルムでの挨拶時は声だけしか聞いていないため、執務室に現れて挨拶をしていった少しの間しかアッバルはシャルティアの顔を見ていない。ぼんやりとした記憶の中の姿――ゴスロリの、銀髪でどこかおかしい郭言葉の……。

 

『ああ、シャルティアって偽乳さんですか!』

「ぶぅっ」

 

 肺もないのに咳き込むアインズの膝の上、アッバルはそうだったそうだったと笑顔を浮かべる。何度も会ったアルベドやデミウルゴス、一度見たら忘れないだろうコキュートスはまだしも、アウラやマーレはどちらがどちらか区別がついていない。そんなアッバルだ、思い出せただけマシなのだが、その喩えが酷い。

 ナーベラルが目を剥きながらもすぐさまハンカチを取り出しアインズへ渡したが、元々唾液がないので拭う必要はない。兜をずらし恰好だけ拭ってハンカチをナーベラルに返すと、アインズは膝に座る八本足の蛇を見下ろす。

 

「アッバルさん」

「はい、すみませんでした」

「ご理解頂けているようで幸いです。これからはしないように気を付けてください」

「はい」

 

 アッバルとてわざとではなかったのだが、わざとか否かはこの場合関係ない。人間誰しもうっかりがあるゆえ、絶対に口を滑らせないことは無理だ。滑ってしまった時はきちんと誠心誠意謝ることが重要、本意ではなかったと示さなければならない。アッバルは口から器を吐き出し、心を込めて謝罪した。鷹揚に頷くアインズにほうっと安堵のため息を吐く。

 

 空の器をナーベラルに差し出せば、涎まみれのそれをナーベラルは嫌がる風もなく受け取り布巾で拭い始める。まさに嫁の鏡、もし男だったならナーベラルのようなキリリとした美人で良妻賢母な女性と結婚したいと思っただろう。ルクルットと女の好みが被っており、アッバルは余計に彼へ親近感を覚えている。声が出せたならルクレットの「ナーベさん良い女だよなぁ」発言に激しく頷きながら「分る」と連呼していたはずだ。

 だがアッバルは女であり、少しばかり一般女性とは違った嗜好を持っているとはいえ一応は異性愛者だ。女性を口説いたり堕としたりするのはゲームの中だけで十分、クールな美女がト○顔を晒すCGを見ては「アヘ(自主規制)最高だぜ」なんて思っていても実行に移さないだけの理性と常識がある。ちなみにアッバルは無理やり系も好きだ、二次元に限ってだが。

 

 今晩もまた寝ず番をアインズがもぎ取り、漆黒の剣らが寝入って三十分ほど時間を置いてからナザリックへ一時帰還していった。それに手を振って見送り、寝て起きれば朝である。眠ってしまえば数時間など一瞬のこと、揺すられて目覚めれば、柔らかいナーベ(おむね)に包まれた爽やかな朝だ。アッバルには元から胸などない。

 

『おはようございます』

『おはようございます、アッバルさん。よく眠れましたか?』

『やー、グーシュラーフェン(よくねむれました)

『ドイツ語は止めましょう』

『ウィ』

『フランス語も止めましょう』

 

 ちょっと遊びとして絡んでみただけだったのだが止められた。アッバルは首を傾げ、アインズはドイツ人やフランス人に嫌な目に遭わされたことでもあるのだろうか、と考える。次からはこう言った絡みは止めた方が良かろうと一人頷き、〈伝言〉でも「分りました」と伝える。

 

『で、どうでした?』

『原因はだいたい予想できた感じですね。実を言うとシャルティアの問題をさっさと片付けてしまいたいんですが、そうなるとこの仕事を途中で放棄する形になってしまうので……モモンの信頼が始めて早々にマイナスになってしまうんですよね。本当に後ろ髪を引かれるんですが……』

『こちらを立てればあちらが立たず、と言うことですか』

『その通りです……なんで面倒が重なるかなぁ』

『お疲れさま、おじーちゃん。肩揉んであげようか?』

『あのね、せめてお父さんにしてくれないかな? 涙が出そうだから』

 

 肩を竦めるアインズの鎧をペタペタと叩き、アッバルはアインズを労わる。だが『アニメで見たような可愛い孫娘』の真似は不評のようだ。仕方が無い、パパと娘ごっこでアインズの気持ちが楽になるならば、いくらでも付き合おうではないか。漆黒の剣やンフィーレアからは既に父娘と見られているようだし、パパに甘える娘の真似くらい問題ないだろう。

 

『パッパァ~、わたしぃ、新しいバッグと~指輪と~口紅が欲しいな~』

 

 金属製の腕に自らの腕を絡め、ぶら下がる様にして体を揺らす。アインズが頭を抱えた。

 

『不健全で一時的な親子関係ですよね!? それ、血の繋がりとか市役所に提出する書類とか関係ない親子ですよね!?』

『な、何をおっしゃるやら、わたし、サッパリ分りません』

 

 顔をあらぬ方へ背けながらそう答えるが、そのポーズはつまりアインズの言葉を肯定しているということだ。口笛でも吹かんばかりの様子のアッバルの頭に、だが、アインズの手がポンと乗る。

 

『……有難うございます、アッバルさん』

『からかったのに礼を言われましても。――ちょっとハムって来ます』

 

 アッバルはアインズの手から逃れ、美味しそうな匂いの元に駆け寄る。栄養価だけは高いらしいハムを引き千切る様にして食べるンフィーレアらの横、栄養価も味も良さそうなハムに抱きつき、その柔らかい癖に頑丈な毛並みに頬ずりする。流石は森の賢王と呼ばれるだけはある、皮を剥いでコートにしたら丈夫で暖かいそれが出来るだろう。

 

「な、なんだか姫からブルッとするのが来たでござるよ?」

「気のせいです」

 

 アッバルのすぐ後ろに控えるナーベラルの一刀両断に、哀れ、ハムスケはしょんぼりと項垂れる。ハムスケが実はハ(ムスメ)であることに臭いで気付いているアッバルだが、既にアインズがハムスケと名付けたのだ、異論はない。どうせその名で呼ばれるのは自分ではない。

 

 竃に砂をかけるなど片づけを終え、再びハムスケに跨りエ・ランテルへの道程を進み始めた一行。だが出立して三時間、アインズからの威圧が周囲を圧倒していてみな言葉少なだ。やはりシャルティアのことで焦っているのだろう。とはいえども傍迷惑極まりないことに違いない、アッバルも流石に耐えきれず口を開いた。

 

『アインズさん、落ちついてください』

『落ちついています』

『いえ、今のアインズさんは「燃え盛る程に冷静」とか言っている状態です』

 

 アインズは気になる少女のデートを尾行した戦場ボケ少年ではない、もう三十を過ぎた大人なのだから落ち付かねば。馬上ならぬハム上のため手が届かず、仕方なしに腰に刺したペーパーローリング棒でバシバシとアインズの肩やら背中やらを突く。今日からこのペーパーローリング棒は、伸びるカメレオン棒ではなく伸びるツッコミ棒だ。

 

『今するべきは、護衛の仕事を全うしてさっさとナザリックにとんぼ返りすることです。今のアインズさんは心ここにあらずですよ』

 

 アインズの威圧に圧され、馬の足並みも心なしか速い。馬が恐慌状態にならないのはンフィーレアの技能の高さだろうか。

 契約時に拘束時間を六日間と、行って帰るのに必要な四日より二日ほど多めに見積もられていた――と漆黒の剣とンフィーレアの話から聞いている。それが今はまだ四日目で夕方にはエ・ランテルに着くと言うのだ、丸々六日拘束されなくて良かったではないか。

 

『……そうですね、少し焦り過ぎていたようです』

『そう言う時もあります。アインズさんがシャルティアを大事に思っているからこそ焦るんだと思いますよ』

『そう言って頂けると嬉しいですね。NPCは本当に……みな、皆で悩んで作った我が子ですので』

 

 アッバルはそれに「素敵ですね」と返しながら、守護者をはじめとするNPC全員が全員アインズや彼の仲間であるギルメンの子供だとすると、嫁のバラエティが濃すぎるな、と空気を読まない感想を抱いた。サキュバスで小悪魔だというアルベドと最上位悪魔のデミウルゴスの母親は悪魔で、区別がついていないがアウラとマーレの二人は同じダークエルフから。シャルティアは吸血鬼、コキュートスは……どんな母親から生まれたのだろう。やはり虫の見た目なのだろうが、どこをどうすれば子供が生まれるのか気になるところである。

 ……恐怖公については考えない方が良かろう。

 

 ――圧迫感が薄れたらしく雑談を始めた漆黒の剣らと共にエ・ランテルに到着したのは、その日の十六時頃のことだった。

 

 

 

 

 

 

―以下おまけ。本編には全く関係ありません。千野が遊びすぎた代物、これのせいで本編の書き方が頭から抜けてしまい、画面の前で阿呆顔を晒すことになった原因。

 

『スター・システム+α~刀剣を脱がすゲームにうちの蛇突っ込んでみた(酷い風評被害)~』

 

 

 

 アッバルは本日付でこの本丸の主、審神者となった。審神者名がゲームで使っていたハンドルネームそのもののため、醤油顔の日本人に呼びかけるには少し抵抗を感じる名前だ。担当の役人が「あ、ゲームのHN、アッバルなの? ならそれで良いでしょ、呼ばれ慣れてるだろうし」と入力してしまった。ちなみに改名はできない。解せぬ、誠に解せぬ。

 

 アッバルは本丸に入るや、見事な庭や屋敷を探検する間もなく初めてのお仕事を任された。初期刀の顕現である。管狐だとかいう隈取りフェイスな狐の先導に従い鍛刀部屋へ入り、初期刀として選んだ山姥切国広を呼び起こす。

 

「山姥切国広だ。……なんだその目は。写しというのが気になると?」

「いや、まだ私何も言ってないから」

 

 ジャギ様か貴様、なまってないけど。開幕早々これでは円滑な人間関係など結べなかろうに、山姥切国広は絶望的なコミュ障なのだろう。親近感を覚えちゃうぜ。そうだな、とりあえずは思ったことを口に出す癖は治した方がよろしい。

 

「写しだろうがなんだろうが、ぶっちゃけね、切れれば問題ないのよ、私には。貴方は切れ味が良さそうだと思ったから私は貴方を選んだの。おわかり?」

 

 初期刀として選べる、蜂須賀虎徹、加州清光、陸奥守吉行、歌仙兼定、そして山姥切国広(順不同)。名前の中に「切る」と入っているのは山姥切国広だけである。それも切り捨てた相手が山姥である、山姥キラーKUNIHIROの名前は良く切れるイメージが浮かんだ。この刀ならば、歴史修正主義者とやらも豆腐の短冊切りのようにサクサク切ってくれることだろう。同じ刃物だし包丁の扱いも上手かろう、料理が楽しみだ。――刀剣に全く興味のなかったアッバルにはその程度の判断基準しかない。

 そんなことを知る由もなく、山姥切国広は頬を染めつつ「そうか……」と呟いた。まるで乙女だ。

 

「審神者様、では出陣いたしましょう!」

「うん、頑張れー」

 

 はたして、山姥切国広は半裸になって帰って来た。刀剣男士というものは怪我をする度に積極的に脱げていくスタイル、これが女性型であればイヤーンバカァンな感じになっていただろう。女士の登場はいつだろうか。

 

「ちょっと、ねえ。こんのすけ」

「分っております。鍛刀いたしましょう。山姥切国広様の仲間を増やすのです」

 

 違う。いや、違わないが、違う。

 怪我をした山姥切国広を手入れという名前の魔法を施したのち、鍛刀部屋へ移る。資材を全て50でという指示のもと、鍛刀の妖精さんに資材を渡せば20:00の表示。これもまた手入れ札という魔法のお札で「パイパイパトレーヌ♪」と待ち時間をなくし――現れたのは目の下に隈を蓄えていそうな青い髪の少年である。こんなにパイパイ(おにゃのこ)を求めていたのに、裏切り者め。

 

「僕は……小夜左文字。あなたは……誰かに復讐を望むのか……?」

 

 目下、アッバルが復讐すべく望んでいる相手は政府である。そして女士を生み出さない鍛刀の妖精さんだろうか。別の名前を付けさせろ、おむねを出せと。だがそんなことを他人に、それも出会ったばかりの者に言うわけもない。

 

「今のところ復讐の予定はないね。それにこの山姥切や君には歴史修正主義者と戦ってもらわなきゃいけないからね、復讐するとしてもきっと君を使うことはないかな」

「そうか……」

 

 小夜左文字はふにゃりと微笑んだ。小夜が復讐に利用され続けてきた短刀だなどと知るわけもないアッバルは、何が小夜のつぼだったのか分からず首を傾げる。

 しっかりとした意思を持った、自らの二本の足でしっかりと立つ主。小夜は嬉しかったのだ……この主の下でならば、復讐など考えずにただ本業(たたかい)のことだけ考えていられるだろう。小夜左文字のピュアな心はいつか、アッバルの(おっ)πに固まった考えを切り裂いてくれるはずだ。きっと。もしかしたら。

 

 デレ期に突入した二人……二振り? を従え、お次は刀装なるものを作るとこんのすけに言われ神棚へ。正座をし、ブッダンサラナンガッチャーミとか三法でも唱えれば良いのかと思いつつアッバルがこんのすけを見下ろせば、なんと刀装を作るのは刀剣男士の仕事であるという。ここにアッバルがいる必要はあるのか。

 切りんぐマシーンたる山姥切ではなく目付きのヤバいちびっこに任せてみれば、歩兵上、騎兵上、歩兵並。これが良いものなのか悪いものなのか審神者業初心者なアッバルに判断がつくはずもない。とりあえず誉めておいた。

 

「この刀装は刀剣男士の皆様を守る盾であり、力を底上げするブースターでもあります。折らないためにも必ず刀装を着けて差し上げて下さい」

「上がったり下がったり忙しい語尾だね」

「はい?」

「ううん、なんでもない」

 

 頭の中で「あがってんのーさがってんのー♪」と流れたことは、あえて口に出すようなことでもあるまい。

 

「じゃあ小夜はこの歩兵上、山姥切国広は騎兵上に歩兵並を着けて、またいってらっしゃーい」

 

 さきほど山姥切国広が身ぐるみを剥がれ、とてもセクシーになった曰く付きの戦場へ二振りを送り出す。……五分とせず、相手を消滅させて帰ってきた。テンションが上がると舞うという、誉れ桜なるファンタジー効果を頭上でヒラヒラさせる山姥切国広は、そのイケメンフェイスもありとても眩しい。アッバルは目を細めた。宝塚みたい。いや、桜咲く国(広)ならNewOSKだ。さくらさくら~♪

 

「なんだ……?」

「ん、山姥切国広は凄いなと思って」

 

 ここまで花が似合う美形など、アッバルは初めて見た。桜以外ならユリや鈴蘭が似合いそうだ、清楚っぽいから。

 

「そ、そうか……」

 

 山姥切国広は赤く染まった頬を隠すように布を手繰り、顔を覆う。乙女かな。――一句詠めそうだ。布手繰り 顔覆いたる 山姥切。字数が合っていないうえ季語が無い。やり直し。

 

「こんのすけ」

「はい審神者様、心得ておりますとも! 次の鍛刀ですね!」

 

 違う。あれ、いや、違わないか?

 

「今回からは審神者様がお好きな配合で鍛刀することが可能ですので、そうですね、全て350などは如何でしょう!」

「分かった」

 

表示は2:30、「パイパイポ○ポイプワプワプー」と手伝い札を放れば現れたのはきっちりとカソックで身を固めた青年だった。純和風本丸にカトリックのクリスチャンとはこれ如何に。しかしそれよりも重要なのは胸部装甲と股間の棒のあるなしだ、今回もやはり女体では(おっぱいが)ない。ここはシスター服の美少女が出るべきであったというのに……!

 

「へし切り長谷部、と言います。主命とあらば、なんでもこなしますよ」

「そうか。なら頼りにさせてもらうよ」

「はっ!」

 

 なんでもこなすと言ったのだ、そのうち女装もこなしてもらおう。似合うかどうかが問題なのではない、気持ちが大事なのだ。アッバルのために恥ずかしがりつつも女装してくれるその心が大事なのだ……。パワハラ本丸待ったなし。

 鷹揚に頷くアッバルに跪き、へし切り長谷部は嬉しそうに笑んだ。その笑顔が曇る日は近い。

 新たな仲間:ISDNはせべちゃんの刀装を小夜に頼めば、嬉しそうに玉鋼やらをコネコネ……歩兵上と騎兵上だ。またいってらっしゃいと三振りを追い出したはずが、すぐに帰宅した。今度は小夜の頭上に桜が舞っている。三振りとも無傷だ。

 

「みんなよく切れる刀でとても嬉しいよ」

「そう……」

「主のため、次こそは誉れを持ち帰ってみせます!」

「あんたのために強くなる」

 

 ぶっちゃけむさ苦しいので、次はもっと時間のかかるところに行かせよう、そう決めた。しかしそうなると三振りだけでは不安だ。

 

「六振りで一部隊だというし、もう少し鍛刀してみようか」

 

 満たせ満たせごっこをしながら鍛刀すれば発言と雰囲気がエロい鬼太郎と大太刀持ったショタ、眼帯にスーツ着用の厨二っぽい青年が現れた。にっかり青江、蛍丸、燭台切光忠である。ギョロ目の青髭でなくて本当に良かった。

 ――さて、山姥切にへし切り、燭台切と、名前からして「何かを切りました」と言わんばかりのこの布陣。とりあえず切れれば良いというアッバルの考えが反映されたのだろうか。予想通り名前に「切」が付く燭台切光忠は料理が上手いそうな。我が本丸の食事事情に死角無し。

 山姥退治に使われ、怪物を切った山姥切。復讐のために人の血を浴びた小夜左文字。坊主を棚ごと圧し切ってやったぜ、というへし切り長谷部。幽霊を切ったというにっかり青江。刃零れしたものの蛍の力で復活、またザクザク切れるぜという伝説持ちの蛍丸。ムカつく小姓を切ったらついでに燭台も真二つになった燭台切光忠。……きっと次に来る刀剣は三十六人切りの歌仙だ。ちなみに女性関係のことではない。

 

「ねえこんのすけ、刀剣に女の子はいるの?」

「おりますよ? ですが女士は『しんけん!』、男士は『とうらぶ』となっております」

「明確な住み分けきっつぃわ……」

 

 むさ苦しい刀剣男士らを見ながらアッバルは微笑む。そうとも、飽きたら退職すればいいんだ。そして今度は「しんけん!」に移ろう。

 だってここにはおっぱいが足りない。申し訳ないが、アッバルはBLではなくNLやGL派なのだ。ふええ、百合尊いよぉ……。




 おまけは続きません。ネタを入れたいだけの人生でした。

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