とある部隊長の独白   作:⚫︎物干竿⚫︎

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復帰②

 

のしのしと歩く、オウガテイルとヴァジュラテイルは互いが互いをフォローしあえる位置取りをしていて、なかなかに攻め難い。

 

分断を考えずに突っ込めば、一太刀を叩き込むのも容易だが、一太刀やった後にフルボッコされるのは見え見えだ。全く、こう言う時、銃型、特にスナイパーなら遠距離から1匹ずつ仕留めるってのが出来るんだろうが、剣型じゃあそれは無理ってもんだ。

 

てか、制限時間的にもあんまりモタモタしてられない。今も腕輪に追加されたカウンターの数字がどんどんと減っていく。

 

 

「っし。行くか」

 

潜んでいた廃墟から出て、走りながら携帯端末を取り出して作戦エリアのマップを見る。そこには、俺のアイコンと纏まって動く3つの赤いアイコンが表示されている。

 

そして、今俺は赤いアイコン。あのヴァジュラテイル達が移動する先であろう半ば倒壊した立体駐車場を目指して走る。

立体駐車場に到着したところで、もう一度端末でアラガミの位置を確認すると、アラガミのアイコンがひとつ群れから外れていて、残りの2つが向かって来ている。

 

何も考えなら、ここはこの分かれた方に向かうべきなんだろうが……俺の直感は行くべきでないと告げている。もう言ったと思うが、オウガテイルをはじめとした小型種は本能的に群れようとする。それはオウガテイルの上位種であるヴァジュラテイルも変わらない。だから、こうして群れから離れるってのは、何がしかが起きたと考えるべきだ。

 

 

……ゴゴゴ。

 

 

「どっかで廃墟が崩れたか?」

 

オペレーターに状況を聞くべきなんだろうが、残念ながらサポートのオペレーターはこのミッションには付いていない。元がオウガテイル3体の討伐と言う内容だったし、それに復帰したてとは言え、俺も古参の1人だ。だから問題ないだろうということで、オペレーターのサポート無しになった。

 

ゴッドイーターも人員不足だが、同じようにオペレーターも人員不足なのである。

 

 

「あ?」

 

マップに表示された1匹だけになっていたアイコンが消えた。それはつまり、そのアラガミがくたばったってことだが、誰がやった? 乱入してきたアラガミが居るならマップに表示されるはずだし、俺の他にもゴッドイーターが居るなら、それも同じように表示されるはずだ。

 

…………。

 

 

「極東支部。聞こえるか?」

 

『は、はい。こちら極東支部です』

 

若干、パニック気味な感じのする返事で、返答が返ってきた。声の感じからして、新人のウララか。

 

「緊急事態だ。至急、回収のヘリを寄越してくれサビ落としがどうとか言ってる場合じゃねぇ」

 

『分かりました。すぐに手配しますので、戦域から離脱してください』

 

「了解。出来るだけ急いで頼むぜ」

 

通信を切って、立体駐車場から出るとそこでオウガテイルに遭遇した。そして、嫌な予感が当たったらしい。頭部の甲殻が割れていたり、最大の特徴の尻尾が半ばから無くなっていたりと素人目に見てもボロボロも死に体と言える姿だ。おまけに俺の姿を認識しているにも関わらず、無視して走り去って行く。まるで何かから逃げているようだ。

 

ここで問題になるのは、何から逃げているのかと言うことだ。

 

奴らにとって、ゴッドイーターは脅威のはずだ。が、それを無視するほど一心不乱に逃げると言うことは、俺達ゴッドイーターを相手にする気にもならない程の脅威があると言うことになる。

 

じゃあ、奴らがゴッドイーターをも無視して逃げるほどの脅威と言えばなんだ?

 

 

ずるずると何かを引きずる音が聞こえる。それもこっちに近づいて来る。つまりはそう言うことだ。

 

 

「……新種のアラガミだよな」

 

 

廃墟の陰から、一体の龍とも人とも取れる姿のアラガミが左手に瀕死状態のヴァジュラテイルを手に現れた。

 

この特徴と合致するアラガミは俺の知識にはハンニバル種しかない。が、俺の知るハンニバルとは大きく異なる。

 

「いつからハンニバルはボルグカムランみたいな重装アラガミになったんだ?」

 

全身を鈍く鋼色に輝く装甲質の甲殻に包み、左腕の下腕部分の籠手状の甲殻は大きく肥大化し、盾のようになっており、右腕に至っては肘から先が神機のロング系の刀身のようになっている。なんだこいつは、

 

 

「ガァァァァアアアアアアアアア!!!」

 

ハンニバル(?)が吠え、左手に引きずったヴァジュラテイルを投げつけて来る。それを神機で払いのけると、目の前に陽の光を反射して輝くハンニバル(?)の右腕の切っ先があった。

 

 

●●●●●●●●●

 

 

神機を預けて、エレベーターに乗ってロビーに向かう。

 

 

「なんだかんだで、上手く行ってますね。少しは隊長代行らしくなりましたか」

 

隣のマギーだそう言う。

俺とマギーの後ろでは、マサヤとユイが疲れ切った顔で互いが互いを支えるようにして立っている。

 

ちょっと前までは、俺とマギーもあんなだったんだよなぁ……そりゃあ隊長もトレーニング厳しくするよなぁ。

 

「お前も副隊長って言われても、やってけそうだよな」

 

「あなたは色々と頼りないですからねぇ、色々と必死ですよ。後ろの2人にも目を配らないといけませんし」

 

「言外に俺がそこらへん出来てねぇみたいに言うなよ。まぁ、出来てねぇけどさ……本当、隊長すげぇわ。俺達にも目を配って指揮やっても、あれだけの働きが出来んだからよ」

 

データベースで見た隊長の個人戦績はホント凄かった。4桁を余裕で突破するほど大量の小型種、4桁近い数の中型、3桁近い大型……これだけの数のアラガミを狩ってるゴッドイーターはそこまで多くない。

 

これだけ出来るってのにあの人は「俺は凡人だよ。常に必死でやってるだけだ」としか言わない。そりゃあ、リンドウ大尉とかと比較されちゃあそう思うのもしょうがねぇのかもしれねぇけど……

 

「てか、いつになったら隊長じゃ復帰出来んだろうな。やっぱり、隊長代行とかキツすぎる」

 

「そうですね。そろそろ、復帰してもいい頃合いだと思うんですけど」

 

ガコンとエレベーターが止まり、自動でドアが開く。

後ろの2人に声をかけてロビーに出ると、何やら騒々しい。なんか起きたのか?

 

 

「応答してください! リョウゴさん!」

 

「偏食場の異常は認められません! 一体、どうなってるんだ!?」

 

 

ミッションカウンターから聞こえてくる声に俺達は自然と走り出していた。疲れ切っていたマサヤとユイもそれが無かったかのように走っている。そして、カウンターに辿り着き、

 

 

「おい! さっきのはどう言う事だ!?」

 

俺はオペレーターを怒鳴りつけていた。2人居るオペレーターの片方、女の方が少しビビってるがどうでもいい。そんな事よりも……!

 

「少し落ち着きなさい」

 

マギーにビンタされた。そして、マギーは俺の胸ぐらを掴んで、

 

「ここでオペレーターに怒鳴ってもしょうがないでしょう。それよりも冷静に少しでも話を聞くんです。それで? 隊長がどうしたんですか?」

 

後半はオペレーターに向かって、マギーがそう言う。

オペレーターが答えようとしたところで、別の声が聞こえてきた。

 

「中尉の神機の封印は、今日解除されたんだよ。それで、彼は現場訓練としてミッションに向かい、今こうなっている……そうだね?」

 

サカキ支部長がやって来て、階段をタンタンと降りて来ながらそう言う。

 

「はい。回収のヘリの要請の後からこんな状態に……」

 

「リョウゴ君は何か言っていたかい?」

 

「少し焦った様子で、緊急事態だ、とそう言っていました」

 

「彼が緊急事態とそう言ったんだね? 中尉の現在位置は?」

 

「おそらくはまだ贖罪の街かと思われますが、正確にどこに居るかまでは分かりません。腕輪も神機もともに探知出来ておらず……」

 

「現在出撃しているゴッドイーターで、向かえそうな隊はあるかい?」

 

「はい。帰投中のブラッド隊と、ブラッドアーツ修得のために同行している神薙大尉が丁度、今近くに」

 

「それは僥倖だ。至急、向かうよう伝えてくれるかい? 一刻を争うからね」

 

「待ってください! 俺達も……「それは出来ない」なぜですか!?」

 

一刻を争うって支部長も言ったじゃねぇかよ!

 

「彼が緊急事態だと言ったんだ。この極東で10年以上をゴッドイーターとして生き抜いて来たある意味、私よりもこの極東を知っている菅森リョウゴと言う男がね。だからこそ君達を行かせる事は出来ない」

 

「でも……!」

 

「あまりこういう事は言いたくはないんだが、今の君達では恐らく無駄死にする事になる。それを彼を許さないし認めない。君達もよく知っているだろう?」

 

 

俺はただ拳を握って、血が出そうなくらいに下唇を噛み締めるしか出来なかった。悔しい。俺の、俺達の力じゃあ、俺達の隊長を他人に任せる事しか出来ねぇんだ……それがたまらなく悔しい。





さぁ、ようやく(まぁ、たったの2話くらいの間だが)の復帰かと思ったらまさかの敵登場で御座いぃー。
新種なハンニバル系のオリアラガミ。いやー本当大変なのと出会っちまったもんだ。鈍った腕とか勘を取り戻すための実戦訓練的な軽い気持ちで出て来たらこの有様。ひゃっはー。ホントに極東地域は地獄だぜぇー。

ちなみに現在の中尉さんだと余裕で負けれます。このオリアラガミ。
さぁ、ブラッドの皆と極東の英雄は間に合うのか……
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