空中を行くヘリの機内にて、
「皆聞いてたよね。これから、中尉さんの救出のために贖罪の街に向かうよ。おそらく新種のアラガミとの交戦になると思うけど……まぁ、大丈夫だよね」
通信を切って、ブラッドの皆とユウさんを見回す。
「俺の対話の力が有れば、どんなアラガミだって余裕だって」
「確かにロミオの血の力は強力だが、あまり過信しすぎるな」
「分かってるって」
いつものように調子に乗るロミオにリヴィがそう釘を刺す。いつもの光景だね。
「でも、実際ロミオ先輩の血の力って本当に凄いよねー。アラガミの動きを止めちゃうんだもん」
どこからかおでんパンを取り出したナナが、それを頬張りながら言う。まぁ、凄いというかチートも良いところだけどね。私の血の力の喚起って他の人に血の力を発現させたり、ブラッドアーツに目覚めさせたり出来るけど、ぶっちゃけそれだけなんだよね……
「感応種であろうと神融種だろうと任せておきなさい。サクラのおかげでブラッドアーツの修得も出来たことだしね」
持参していたポットからお茶を出して、それを優雅に飲んでいるユウさんが言う。て言うか、やっぱりユウさんっておかしいよ。複数種のブラッドアーツを修得するし、その威力もちょっと世界が違うし……これが色んなゴッドイーターからバグって言われる極東の英雄……
「隊長。贖罪の街のマップ情報が来ました」
「あ、シエルありがとう」
シエルからタブレット状の端末を受け取って、マップを開く。
贖罪の街は全体でみると異様に広い。だから、幾つかのブロックごとに区分けしていて、今回のマップは廃墟ビルも多いCブロックだった。ここのどこかに中尉さんが居て、未知のアラガミと交戦している……
「なんだあれは?」
ジュリウスが外を見ながらそう言う。それに吊られて私達も外を見る。オラクル細胞によって強化された視力で捉えたものは、倒壊したビルと、土煙の中から姿を見せる鋼色のボルグカムランのように全身を重厚な装甲に包んだハンニバルのようなアラガミだった。
「なんであのアラガミはマップに表示されないの?」
普通ならどんなアラガミであれ、オラクル細胞の反応はある筈だから必ずマップに表示される。それが無いと言うことは自身の反応を隠すステルスの力を持った新手の感応種? にしては、感応種独特の感応波も感じないし……
「先に行くわよ」
そう言って、いつの間にか神機を手にしたユウさんがヘリの昇降ハッチを開いてそこから飛び出して行く。
「私達も行きましょう」
「そうだね。皆、出るよ!」
神機を持ってヘリから跳び降りる。地面まで普通に10メートル位あるけど、ゴッドイーターの身体能力なら問題無く着地出来る。
「って、もうあんなに行ってる!?」
殆ど間は空いてない筈なのに、ユウさんはもう何十メートルも先を走っていた。
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迫る切っ先を無理矢理体をひねって躱す。絶好の反撃チャンスだが、今の体勢では神機を振るえない。てか、振るえても切れん。
着地して、間を置かずに後ろに跳ぶ。ブン! とハンニバル(?)の剣が横一閃に振るわれ、あわや真っ二つにされるところだった。
「くらいやがれ!」
スタグレのピンを抜いてハンニバル(?)に投げつける。パッと一瞬光が世界を包み込み、ハンニバル(?)の動きを止め……ない。
左腕の盾で防御していた。マジでボルグカムランかよこいつ。
装甲を開いて前に翳すと、大きく後ろに吹っ飛ばされる。いやはや亀みたいに防御すんのが精一杯とかマジ自分で自分が笑える。
装甲を畳んで前に出る。せめて一太刀くらいはぶちかましたい。そんな俺の感情を感じ取ったのかどうかは知らないが、ハンニバル(?)がかかって来いとでも言うかのように身構える。
間合いに入った瞬間、ハンニバル(?)が右手の剣を振るう。しゃがんで、それを躱してそこから前に倒れるようにしながら、地面を蹴る。そして一気に俺の間合いまで距離を詰めて、神機を振り上げてハンニバル(?)を空中に打ち上げる。そして、いつものように力を溜めて、落ちて来るハンニバル(?)に合わせてチャージクラッシュを叩き込む。
が、
チャージクラッシュのオラクルの刃をハンニバルの剣が真っ二つにする。マジでか? 濃縮した高濃度のオラクル刃を叩っ斬るってどんなレベルだよ?
体勢を整えてハンニバルが両足で着地して、お返しとばかりに突きを放って来る。速い。ただその一言に尽きる攻撃だ。装甲を開いての防御も間に合わない。
「なら、躱すだけだっての……!」
横に跳んで躱すと、ハンニバル(?)はそのまま真っ直ぐ前進し、廃墟のビルに突っ込む。それで無くとも建っているのは不思議なくらいにボロボロになっていた廃墟が音を立てて崩れ落ち、土煙を立てる。そして、瓦礫を吹き飛ばしながら真上に飛び上がったハンニバル(?)が俺の前に着地する。てか、無傷かよ。
「さーて、こりゃあ厳しいぞ? もしかしてここで俺人生幕切れか?」
汗をぬぐって、ハンニバル(?)の一挙手一投足に意識を集中させる。今のところこいつをどうにか出来る手立てが思い付かない。だから、観察だ。これまでずっとやって来たことだ。生き残るために、
ハンニバル(?)が動く。左の盾を前面に構え突っ込んで来る。シールドバッシュってとこか。大きく後ろに跳んで、突き出し切った盾を蹴って更に跳びハンニバル(?)の剣の間合いから離れて着地して、観察を続ける。
それから数分間、ハンニバル(?)が攻めて俺が守るのが続くと、ハンニバル(?)の胸部甲殻が、ノルンのデータでだけ見たことがある零號神機兵なるもんよろしくバクんと開き、そこから緋く輝く結晶体のようなものが顔を覗かせた。その瞬間、俺は反射的に神機の装甲を開いて構えていた。次の瞬間、俺は全身を焼かれるような熱に包まれながら大きく吹っ飛ばされた。
なんだ今のは?
なんとか立ち上がって、神機を見ると、装甲とバスターの刀身が半分溶けて変形していた。マジか? アマテラスの熱線とかを受けても殆ど傷付かない装甲を溶かすってどうなってんだアレ。
そして不運は重なると言うのか、ピーピーピーと言う音と共に神機と腕輪の接続が絶たれた。時間切れだ。
「ん?」
なんかハンニバル(?)の動き鈍くないか? と言うより疲れてるのか? まぁ、人のことは言えんか。やっぱり体力の衰えは否めんと言うことか……神機の方のこともあるとは言え、この好機を活かせんとは、情けない。
とりあえず、奴がへばってる今のうちに逃げないとな。神機の使えないゴッドイーターとか、ただのアラガミのエサだ。
「……そういや、お前も居ましたね……」
立てる程度に復活したヴァジュラテイルが立っていた。そう言えば、瀕死になってただけで死んでなかったなぁ……ああしくった。ハンニバル(?)ですっかり忘れてた。そりゃあ30分以上も経てば立てる程度には治るよな。
ヴァジュラテイルが口を開く。考えるまでも無く食いついて来る気だ。
「アラガミ風情が何をしてるのかしら?」
その言葉と共に、ヴァジュラテイルの頭がパァンと風船が割れるように弾け飛ぶ。
「助けに来ましたよ中尉」
「バトンタッチって言えよ」
神薙とハイタッチをして後ろに下がると、
「さぁて、あの鉄仮面どうしてやろうかしら」
未知のアラガミが相手だってのに、なんとも頼もしい後輩だよ。
「やっと追い付いた……って、中尉さん!?」
「おうサクラ」
「大丈夫なんですか!? 怪我とかは!?」
「落ち着け。ちょっと火傷しただけだ。それにお前も隊長だろ。あんまり部下の前で取り乱した姿見せんな」
「は、はい!」
「分かったなら、さっさと部下に指示出して動く」
パンと手を叩くと、サクラはブラッド隊の面々の方を見て、
「私、ジュリウス、ナナが前で真ん中にロミオとギル。シエルは後ろから支援。リヴィは念のために中尉さんの側で護衛をお願い。
……それじゃあ、行くよ!」
「「「「「「了解!」」」」」」
やれやれ、あとは見てるだけか……ままならねぇなぁ……
やられはしなかったけど、ダメージ与えられなかったと言うね。
しかも、神機のタイムリミットも来て戦えません。あとはもう見てるだけです。
たぶん極東の英雄(バグ)が次回、暴れ回る。