バタバタと回転するヘリのローターの音を聞きながら外を見る。
傾いた夕陽に照らされた人類の文明の跡である廃墟はいつもの様に物悲しくも美しい。
……結果から言って、俺は死に損ねた。
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正座をして差し出した首に神薙の神機が振り下ろされる。半ば以上アラガミになってようと、まだ一太刀で死ねるはずだ。それに、万が一それで死ねなかったとしても神薙なら確実に仕留めてくれる。
思い返してみれば長いようで短い人生だった。俺がまだまだガキだった頃から考えれば、30とちょっとなんて半分も行ってればいい方だが、ゴッドイーターをやってたことを考慮すれば十分に長生きなんだろうが、短い事には変わりがない。まぁ、やりたいだけやった末の結末としちゃあ悪くはない人生だった気がしないでもない。心残りが無いと言えば嘘じゃないが……
ガギン!
「嘘!? 神機が!?」
「どうした。俺の神機がどうかしたか……って、なんだその機械なのか獣なのか良く分からねぇアラガミっぽいのは」
後ろを振り向くと、俺の神機っぽい面影がある狼っぽい四足獣型のこがたアラガミが神薙の神機に食い付いていた。まるで、俺を守るかのようにだ。
「それが急に中尉の神機がこのアラガミに……」
『カカカ、マダマダコノオトコニハキエテモラッチャアコマル』
「「喋った!?」」
『オイオイ、ドレダケオマエタチノソバニイタトオモッテイルンダ。オレタチハ、マワリニアワセテヘンカスル。ナラ、コトバダッテツカウサ』
こいつなんて事ないように言ってるが、こっちとしちゃあ十分に驚きだ。アラガミとのコミュニケーションは不可能ってのが常識だ。今のこいつのセリフはそれを根底からひっくり返すことだ。こいつの言う通りなら周囲の環境次第では、アラガミとだってコミュニケーションを取るのが可能ってなるじゃねぇか、
『マァ、ソッチノオマエガシッテルノトオレタチハチガウガナ。アレハ"アレ"ダ。ソシテ、アレトオナジノガデナイカギリオワリハコナイ』
「アレってなんだ?」
『シオトカヨバレテタヤツダ』
シオ? なんだその珍妙な名前は、て言うか神薙が知ってる?
説明はよと言う意思を込めて神薙を見ると、
「……特異点って分かりますよね」
「ああ、たしか終末捕喰のトリガーって言う特別な存在のことだろう? ジュリウスがそれだったっけか? あ、でも聖域での事件でその特異点としての何かは無くなったんじゃなかったっけか」
「はい。それでさっきそのアラガミが言ったシオって言うのは、エイジスでの事故のことは中尉も知ってますね」
「まぁ、これでも部隊長なんでな。で、エイジスでの事故。アレはあそこでなんか起きたんだろ? あそこを作るために注ぎ込んだ資材とアラガミのコアの物量で考えれば、なんらかのアラガミが発生してもおかしかない。そんでそのアラガミが暴れるかなんかして崩壊したってとこで、そのアラガミをぬっ殺すのにお前達当時の第一部隊が関わってるんだろうとは予想してたな」
「流石ですね。殆ど中尉の言っていた通りです。でも、エイジスの崩壊に繋がったアラガミは出現したのではなくて、前支部長が育成していたんです。終末捕喰を引き起こす最期のアラガミ……ノヴァを」
マジか。なんつーもんを作ってんだあの苦労人。本部とか世界のあちこちからのやっかみとか色んな苦労押し付けられて気でも狂ってたのか?
『イイヤ、タンニアレガカッテニサキヲヨソクシテ、ヒカンシテサキバシッタダケダ。マァ、サカシスギタノガヤツノフコウダナ。カカカ』
「それでですね。シオは、その前支部長がノヴァを育成していたのに合わせて出現した特異点だったんです。そして、シオが居なかったら私達は絶滅してます」
笑えねぇ。
「さて、それじゃあ脱線しに脱線した話を戻そう。結局のところお前はなんなんだ? もう神機でもないお前はアラガミでしかないわけだな?」
『トコロガドッコイ。コンナダガオレハオマエノジンキダ。ダカラ、オマエニキエテモラッチャアコマル』
「もう頭がいっぱいいっぱいなんだが」
「私も色々とゴッドイーターとして頭おかしいトチ狂った状況に出会ってきましたけど、こんなのは初めてです」
『カカカ』
「で、俺はこのままだとアラガミ化しかねんわけで首飛ばして貰いたいとこだが……」
『サセネェヨ』
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以上によって、俺はこうしてヘリに乗っているわけだ。一応、極東支部に連絡を入れたらそれはもう、あのキツネもとい支部長がやたらとハイなテンションで「速く戻って来るんだ! さぁ! ハリーハリーハリー!」とか言っていた。こりゃあ榊博士の
『ナニミテンダヨ』
ヘリに乗っているブラッド隊の面々が、俺の足元でペットの犬よろしく寛いでる神機をチラチラと見ていると、その視線を煩わしく感じた神機がそう言う。
「ん……ここ、は……」
ずっと気絶していたサクラが目を覚まし、周囲を確認するように見回して俺を見つけると、その目を一気に見開いて、
「中尉さん!? 生きて!?」
「わっ!? た、隊長急に暴れないでよぉ!?」
「ちょ、ヘリの中狭いんだから暴れんなって!?」
飛び起きると同時に動き出したサクラに巻き込まれて、サクラの介抱をしていたナナとその向かいに座っていたロミオがひっくり返る。
『ソウゾウシイナ』
「騒々しい? いつものことだろう」
帰ったら確実に色んな連中に怒られるんだろうな……特にアキラとかマギーとかうるさいだろうな。まぁ、あいつらに色々言ってる手前文句も言えんな。ただしリンドウだけは別だ。俺以上に色々とやってるあいつにだけは言われたくねぇ、なんであいつはあんなにチートでイケメンで良妻持ちなんだよ。俺なんか好かれる相手が10歳以上年下ばっかでロリコン呼ばわりしかされねぇ……
「理不尽だ」
『カカカ。セカイッテノハリフジンナンダヨ』
「まったくだ」
〜?
「いやー、調べ甲斐があったよ。完全に自律化した神機とそれの適合者!」
「左様でございますか、そうですか」
配線やらなんやらで全身がごちゃごちゃした状態で、アブないおくすりをキメたヤバイ人のようになっている榊博士に白い目を向けて、ともすれば俺以上に酷いことになっている我が神機に目を向ける。
『カカカ。カンカクガネェカラナンモワカンネェガ、ダカラトイッテゼンシンバラサレルノハナカナカ』
「おーい、そこのヤバイおっさん。俺の相棒が変なのに目覚めそうになってるんだが」
「気にしなくていい。そんなことよりも、リョウゴ君。君の体が本当に素晴らしすぎるよ! なんで9割以上確実にアラガミのはずなのに反応自体は人間なんだろうか!」
「そんなこと俺が知るか」
腕を広げて1人いい空気の中に居る榊博士はもはやアブないおくすりをキメてるなんてレベルじゃない。もっと斜め上を行く何かだ。
はてさて、これでも生き残ったことが良いと言えるのだろうか?
「あ、そうそうリョウゴ君」
「ん?」
「君、強制的にゴッドイーターとしては引退だから」
「ですよねー。ま、ここまできたら嫌とは言わねぇけどな」
「とは言っても、これまで通りに任務には赴いて貰うけどね。ゴッドイーターとしてではなくて、神機兵とかと同じ扱いになるけどね」
「それ通るのか?」
「通すよ。だって、人材はいつだって欠乏してるんだもの」
やっぱりフェンリルってブラックだわ。
超絶テキトーな最終話