とある部隊長の独白   作:⚫︎物干竿⚫︎

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思い付いたから出荷よー(何


おかわり

はいどうも。ゴッドイーター引退したはずなのに相棒の神機担いで毎日毎日アラガミぬっ殺して回ってるリョウゴおじさんです。

 

おかしくね?ゴッドイーター引退したはずなのに、ゲンの旦那とかツバキみたいに戦技教導とかに回るでもなく、なんで一人さみしくアラガミを蹴散らして回らなきゃならないんだか………

 

まあ?アラガミ化進んだおかげで全盛期より体は自由に良く動くんだけどな。にしたって、この扱いは酷くね?訴えても敗訴しかないんだが。フェンリルは何やっても白だから(

 

それにサカキ支部長も言ったように人手不足なのは事実だ。

極東支部に所属するゴッドイーターの数は本部、アメリカ支部に次いで第3位だがアラガミの強さが他所の比では無いのが極東だ。そのアラガミの強さに追随出来るだけの強さを持ったゴッドイーターとなると思いの外少ない。

 

再起不能な負傷や侵喰値の問題から引退を余儀なくされた者が出る度に優先的に新しいゴッドイーターが極東支部に配属され、ゴッドイーターの数自体は維持しているが、少しずつ熟練のベテランよりも新米の数が増えつつあるのが現状だ。その新米達にも多少出来るヤツは居るがそんなのは一握りだ。

 

特に最近は神融種やら例のハンニバルもどき、鎧影種と名付けられた脅威的な強さを持ったアラガミも数多く増えてきた。他所じゃ破滅の象徴とすら見なされるヴァジュラだが、今の極東じゃ冗談抜きで雷を扱う特殊能力持ちの猫でしかない。

 

ちなみに神融種とは神機を取り込んだアラガミがその特性を持って適応進化した種のアラガミでこれまでは世界樹の跡地、正式に新域と命名された場所の外郭部、すなわち最終捕喰が現在進行形で行われているエリアでのみ姿が確認されていたのがいつの間にやら外の世界に進出して来やがった。

 

 

「おっと、危ねえ危ねえ」

 

真っ赤なたてがみが特徴的な犬のような姿を持った大型アラガミ、ガルムが振り下ろしてきた前脚を後ろに大きくバックステップを行なって回避する。

 

振り下ろされたガルムの極太の前脚に籠手のように備わった甲殻が開き、そこから火の粉のように見える濃密なオラクルが溢れ出してガルムが前脚を振るう。爪でめくりあげられたアスファルトの破片にオラクルが絡みつき、それが火球となって迫ってくる。

 

それを相棒の神機を捕喰形態に変形させてそのアギトで受け止める。

 

『マアマアノアジダナ』

 

「そりゃ大したオラクルの質のようで。ありゃあそこそこ長生きなヤツだな」

 

『アア、オモワズタカブリソウダ』

 

「勘弁しろよ?理性カッ飛んだお前制圧すんのしんどいんだからよ。あんまおっさんに無理させんな」

 

相棒とそんな風に会話しながらガルムの腹に潜り込み、地面を抉るようにして真下からガルムの腹に向かって斬り上げる。吸い込まれるように相棒の刃がガルムの腹を切り裂く。そして、相棒を担ぎ直してそこから逃げるのにやや遅れてガルムの前脚がそこを薙いで行った。

 

「コアの位置は分かったか?」

 

『ミギマエアシノツケネノアタリダナ』

 

「地味にめんどいとこにあんなぁ。俺ぁソーマみたく空中で捕喰するような曲芸は無理だかんな」

 

『ワラエルナ。シンタイノウリョクデイエバ、オマエノホウガウエダトイウノニ』

 

「才能に乏しい凡人スペックで悪かったな!身体能力上がっても出来ねぇもんは出来ねぇんだよ」

 

結局、こんな体になってもソーマみたいな曲芸や神薙やらリンドウとかサクラがやるような剣術でボルグカムランの甲殻を断ち斬るとかの神業は無理だった。相変わらず、バスターの刀身ならではの潰すように斬る事しか俺には出来ん。

 

怒りに燃えるガルムを前に相棒とそんなやり取りをしながらガルムが繰り出してくる火球を躱して、無駄に上がった身体能力にモノを言わせ下手な車よりも速いスピードでガルムに向かって突っ込む。ガルムがそれに合わせて迎撃に振り上げた右前脚を叩きつけるように振り下ろして来る。それに足を止めて無理矢理ブレーキをかける。とは言え、足を止めた程度で止まるはずもなく履いたブーツの裏からガリガリと凄まじい音をさせて滑りながらもなんとか止まるのと、目の前にブォン!とガルムの脚が落ちて来るのと、左手を担いだ相棒の柄に伸ばして両手で握るのと相棒が自分の判断でオラクルを刀身に集束させて溢れ出したオラクルが刃を形成するのが同時。

 

「ドンピシャアッ!!!」

 

吠えながら相棒を一気に振り下ろす。ちなみに相棒はある意味神機を超えた存在で、扱えるオラクルとかも普通の神機とは段違いでな?

 

半端な強度のアラガミじゃ、今のコイツのチャージクラッシュを食らったら、当たったとこが消し飛ぶんだわ。こんな風にな。

 

ガルムの右前脚が消し飛び、バランスを崩して倒れ伏す。そんなガルムに捕喰形態にした相棒を喰らい付かせて、

 

『ミツケタゾ。カカカ、オレヲノミコムカ。ダガクワレルノハオマエダ』

 

ガルムが一瞬びくんと体を痙攣させたかと思うとその動きを止めて、コアを失った事で結合を維持しきれなくなったオラクル細胞が自然と分解して消えて行く。

 

気が付いたら相棒の神機がクッソチートな『ぼくのかんがえたさいきょうのじんき』状態で笑える。難点はコイツは捕喰したアラガミのもんはコアもなんも食い尽くすから、アラガミ系素材が回収出来ないって事だろうか。まあ、タダ働きでも食うに困らないだけの金はあるんだが。

 

 

「さて、と………旧奥多摩エリアはコレでクリアか?」

 

『イヤ、マダコノバショノヌシガイル』

 

「奥多摩のヌシねえ………ヤマタノオロチみたいなんでも出て来るのか、あるいはツチノコか……まあどっちも蛇なんだけどな」

 

相棒を担いで更に森の奥へと進んで行く。一応端末で居場所の確認は出来てるが、大分奥の方まで来た。この奥多摩にはなかなか強いアラガミが居た。あのガルム以外にもシユウやらオウガテイルやらそれなり以上に手強いアラガミが揃っていた。

 

「奥多摩でコレって数々の伝説残る群馬エリアとかどうなるんだろうな?後北海道」

 

『サアナ、オレカラスレバウマイノガクエレバソレデイイ』

 

「流石アラガミ。本能に忠実で」

 

森の奥、不自然に開いた場所の手前で脚を止める。

俺が見る先には不気味に脈動する大樹とその周囲に絡みつくように這い回る触手のようにうごめくツタのアラガミが居た。

 

「コレまたでけえなぁ。ウロボロスとかアマテラスよりデカイアラガミとか初めて見たわ」

 

『ウマソウダナァアレ』

 

相棒がガタガタと揺れ出した。コイツがこんな反応するってことは、かなりのオラクル細胞の寄り集まったアラガミらしい。

 

「とりあえず、落ち着け?ここでお前が暴れたら喰うもんも喰えないぞ?」

 

『ワカッテルヨ』

 

相棒の揺れが収まったのを確認して、走る。開けた空間に出た瞬間、大樹に絡み付いていたツタが一気に解けて襲いかかって来る。前に年末の忘年パーティでアナグラの連中皆で見たホラー映画みたいにツタの先は牙の生え揃ったアギトになっていた。

 

まずは最初のヤツを相棒を振り下ろして押し潰し、その押し潰したツタに誘引効果のあるオラクルが充填された手投弾を投げつけて囮にする。目で見て判断する動物型アラガミには眼前で使ったところで効果はないが、目も何もない植物型アラガミには効果てき面だ。潰れた状態でもしぶとく蠢いていたツタに残りのツタが殺到する。

 

「纏めてサヨウナラ!」

 

チャージクラッシュで纏めて消し飛ばすが、本体である大樹型アラガミから新たなツタが伸びてくる。まあ、想定内だ。アラガミに常識なんて求めちゃいけないんだから、新しいツタが出てくる事くらいでいちいち驚いてられない。

 

「どう見る?」

 

『アレラヲイクラツブシテモムイミダナ』

 

「あの樹を伐採するっきゃないか。で、行けそうか?」

 

『デキナイトオモウノカ?』

 

「愚問だったな。お前はただ喰うだけだもんな」

 

襲いくるツタを躱しながら相棒とそんな会話をして、誘引フェロモンの手投弾を適当なところに放り投げてツタの注意を逸らして、大樹本体に向かって突っ込む。

 

「そう来ると思ったよ!」

 

横に跳んで、真下の地面から飛び出して来た根の一部らしきちょっとした木並みに太いトゲを躱しながら相棒を両手でしっかりと握り、ジャンプする。そして、相棒にオラクルを集中させる。

 

相棒の刀身にオラクルが集束して相棒自身の2倍に相当するような長いオラクル刃を形成した。そして、それをフルスイングで思い切り振り抜く。

 

振り抜くのと同時にオラクル刃が相棒の刀身から放出され、それが大樹に向かって放射状に広がりながら向かい、その幹を大きく斬り裂く。

 

「わかったか⁈」

 

着地と同時に凄まじい勢いで戻って来たツタから逃げながら相棒に問いかける。

 

『アア、ミツケタゾ』

 

「流石だ!愛してるぜ相棒!」

 

なんか背筋を冷たいものが舐めたような気がしたが、無視して足を止めて後ろを振り向きながら相棒を振り抜く。さっきと同じようにオラクル刃を放出してまとめてツタを消し飛ばして、一歩踏み込み地面を蹴った反動で大樹との距離を詰めて、ジャンプして塞がりつつある幹の傷に向かって相棒を突き込む。

 

『サア、オマエヲクワセロ』

 

その相棒の言葉と同時に俺に飛び掛かろうとしていたツタがやたらめたらに暴れ始めた。てか、大樹本体まで揺れてんぞおい。

 

『カカカ!スゴイナ!スゴイナァ!オレガノミコマレソウダ!』

 

「おいおい勘弁しろよ?俺とお前繋がってんだから、お前アラガミ化したら俺も一緒くたにアラガミ化すんだからな?」

 

『タリナイ!タリナイゾ!モットヨコセ!オマエヲ!オマエノゼンブヲヨコセェッ!!!』

 

あかん。完全にイってやがる。

触手でリンクしてる右腕が超痛え⁈ヤバい。コレ相棒の適合試験の時並みに痛え⁈侵喰されてるぅぅぅううう⁈

 

そんなこんなで。

 

『ウマカッタ………ヒサシブリノハライッパイダ』

 

「そりゃ何よりで、イチチ………皮膚裂けてやがる。グロい」

 

アラガミ化していない木(超貴重。苗木確保済)に背中を預けて座り込んでそんな会話をする。底無しの食欲を持つオラクル細胞の塊である相棒が腹一杯って、取り込んだオラクルがオーバーフロー起こしてんじゃねえか。

 

「ったく………一回アナグラ帰るしかねえなこりゃ」

 

『マタバラサレルノカ………』

 

「諦めろ。帰ったら俺もあのキツネ目にナニカサレるんだからノーカンだノーカン」

 

やっぱ、フェンリルって超絶ブラックだわ(確信)


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