とある部隊長の独白   作:⚫︎物干竿⚫︎

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なんか書けたので


昔話

怒りで沸騰しそうな思考を無理矢理抑えて神機格納庫に駆け込み、俺の神機が固定されたハンガーに飛び付くようにしながらロック解除コードを入力して、神機をハンガーから抜いてそのまま格納庫を飛び出す。

 

「こちら管森リョウゴ!準備終わったぞ!ヘリの準備は⁈」

 

『既にヘリポートにスクランブル待機してます!』

 

「3分で上がる!階段の鍵開けとけ!」

 

インカムに向けてそうがなりたてながら、廊下を走り抜けて極東支部屋上のヘリポートに繋がる階段を駆け上がる。いつもならエレベーターを使うが、エレベーターより緊急時は自分の足の方が速い。

 

宣告した通りに3分で屋上に到着。いつでも離陸出来る状態で待機しているヘリコプターに乗り込み、

 

「出してくれ!特急コースだ!」

 

「若い世代に言っても通じませんぜそれ!とりあえずオーダー了解!飛行荒れるけど振り落とされんでくださいよ!」

 

気心知れたパイロットとそんなやり取りをしながら、いささか乱暴にシートに自分をくくり付ける。

 

飛び上がったヘリがかつては存在した飛行機もかくやな高速で空を飛ぶ。

 

「あんのジャジャ馬娘。絶対首根っこ掴んで連れ帰ってブン殴る!」

 

「神薙少尉でしたっけ?噂には聞いてますよ。リンドウさんとこの新人の新型使いだとか」

 

「ああ。んで、リンドウの阿呆がヘマやらかして行方不明だから代わりに面倒見ろとさ!んで、アリサが動けねぇからってあいつの分もって出てってこのザマだよ!」

 

「ロシア支部からの鳴り物入りで来た新型使いでしたっけ?なんかあったんで?」

 

「リンドウが消えたミッションで昔の経験がフラッシュバックしてメンタル的にダメだって一緒に来た先生のドクターストップだ」

 

「そいつはまた。復帰の目処はあるんで?」

 

「だからこそ支部長からの最優先任務で助けて来いって訳だよ。貴重な新型使いだからな」

 

そんな話をしている間に目標ポイントが近づいて来た。シートに体を固定するベルトを解除して全開のサイドドアの縁を掴んで降下準備をする。

 

俺達ゴッドイーターは地上10メートルくらいの高さなら無傷で生身でも飛び降りられる。だから、回収時はともかく安全が確保出来ていない出撃時はヘリからの空挺が基本だ。

 

着地と同時に転がって落下の勢いを殺しながら起き上がると同時に走り出す。神機は肩に担いでとにかくスピード重視で半ば森に沈んでいる廃墟を駆け抜けて行く。

 

「テメェと遊んでる暇はねぇ」

 

廃墟の陰から飛び出して来たオウガテイルに対して腰のポーチからスタングレネードを取り出して地面に投げ付けて目潰しをして無視して走り抜ける。

 

「管森リョウゴ現着した。オペレーター誘導を頼む」

 

『1キロ先の公園跡地です!急いでください!』

 

「なるはやで行く!バカ娘にも死ぬ気で踏ん張れって言っとけ!」

 

言いながら携帯端末を取り出してマップを確認する。最短ルートはところどころ崩落しているが、電車の高架跡を突っ切るルートだ。迷わず、側のビルの廃墟の合間に飛び込んで壁を蹴り上がって、その屋上から高架跡に飛び移って全力で走る。

 

 

⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎

 

 

やらかした。神機を構えて包囲するように立っているアラガミ達を睨みながら呼吸を整える。

 

オウガテイルが6体に2体のコンゴウがアレは自分の獲物だと互いを牽制するように少しずつにじり寄って来る。

 

きっと、私はどこかで増長していた。自分なら大丈夫だって無自覚のうちに傲慢に。その結果がコレだ。ガミガミと小言のうるさい行方不明になったリンドウ隊長の代わりに私やコウタの面倒を見ている先任のバスター型の神機使いの「どれだけ力を、技術を身に付けたからってアラガミを軽く見るな」と言う何度も言われた言葉が脳裏を過ぎる。

 

 

「私を喰いたいって言うなら命捨てて来い!」

 

自分を奮い立たせるようにあえて強気に言い放つ。私のその言葉に痺れを切らしたようにオウガテイルが飛び出して来た。大口を開けて突っ込んで来た1体目を左に一歩ズレながら神機を横一閃に振るい、突っ込んで来る勢いに合わせて切り裂いて、振り抜きながら手首を返して神機の機関部から伸びる銃身を2体目に向けて発砲して迎撃。そして、出鼻を挫いたところに神機を叩き込む。

 

まずは2体。それを確認して身を屈めて3体目の噛みつきを躱して下からバックハンドでかちあげた神機で頭を割りながらスタングレネードを取り出して地面に叩き付けて残りを足止め。そこから一気に残りの3体のオウガテイルの間を駆け抜けながらぶった斬る。確かな手応えと共に崩れ落ちるのがわかった。

 

「っ!」

 

6体のオウガテイルを仕留めた事に安堵する暇も無くコンゴウだ。崩れ落ちながら結合崩壊して分解して行くオウガテイルに拳を叩き付けるように上から飛びかかって来た。大きく後ろに跳んでそれを躱すと、矢継ぎ早に2体目のコンゴウのラリアットが飛んで来る。それを盾でもある神機の機関部に取り付けられた装甲を開いて防ぐ。

 

無理に堪えずに後ろに跳んで足に来るダメージを減らしながら、神機の機関部から伸びるアサルトの銃身を起動させてコンゴウに鉛玉を撃ち込む。

 

変形機構を備える私とアリサの神機だけにある特殊機能だ。コウタや他のゴッドイーター達と協働していて実感していたが、やはりこの新型神機は凄い物だ。これが量産されればアラガミとの戦いももっと楽になる。

 

まあ、ここを乗り切らなきゃ見れない未来だけど。

 

「死にたくはないかな。やっぱり」

 

ゴッドイーターになるからには覚悟はしているし、実際に目の前でアラガミに食い殺される人も見た。そう言う危険と隣り合わせの仕事だとはわかっていた。だけど、どこかで自分は大丈夫だと無意識に思っていた。

 

同時にコンゴウが飛びかかって来る。迎撃に神機を振り上げて前に出ようとしたところで膝から一瞬ガクンと力が抜け、軽々と振り回していたはずの神機も重たい。それに渇きのような物を感じる。

 

ガス欠だ。けど、タイミングがおかしい。偏食因子だって朝に接種したばかりなのになんで⁈それよりもこの状態じゃ防御も何も⁈

 

 

「ちょっとばかり眩しいが我慢しろよ」

 

 

そんな言葉が聞こえたかと思ったら見慣れた円筒状の物がクルクルと回りながら落ちて来て、甲高い音と閃光が世界を埋め尽くした。

 

耳と目が元通りになった私の目に結合崩壊を起こして地面に溶けて行くコンゴウと背中を向けて立つバスター系の刀身を装備した神機を担いだロングコート姿のゴッドイーターが入って来た。

 

 

「管森、中尉………」

 

「そのまま少し休んでろジャジャ馬娘。ったく、お前はリンドウから何を学んだんだ?無理無茶をすることか?」

 

言いながら管森リョウゴ中尉が担いだ神機を肩から降ろして、一歩横にズレた。そこにコンゴウの力任せのストレートパンチが飛んで来たが空振りに終わり、中尉がそこへお返しとばかりに振り上げた神機を叩き込む。

 

「お、運が良い。コアがうなじにあったか」

 

運良くコアがあったからってそう簡単に出来るような事じゃない。確実にピンポイントでオラクル細胞の結合を破壊するだけの確かな技量が無いと出来ない一種の神技にも近しい事だ。

 

「さて、さっさと終わらせて帰るぞ。帰ったらたっぷりの説教覚悟しとけよ」

 

 

 

⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎

 

 

 

ジャジャ馬バカ娘を連れてヘリに乗り込みパイロットに「まぁまぁその辺にしときましょうや中尉」とかなんとか言われながら説教して帰って参りましたアナグラ。

 

神機格納庫に神機をぶち込んでエレベーターに乗ってロビーに向かうと、1人の年若いゴッドイーターが待っていた。そして、俺の後ろに居るジャジャ馬娘を見るなり飛び付くような勢いで近づいて来て、

 

 

「怪我とかしてないよな⁈大丈夫だよな⁈」

 

コイツは藤木コウタ。ジャジャ馬娘こと神薙ユウと同期のゴッドイーターで経験不足ではあるが筋自体は悪くないし、神薙と違って暴走しないし面倒臭がりながらも割と真面目に教練にも励んでいるので神薙とは別方向で割と期待の新人だ。

 

「大丈夫だから、ちょっと力が強いわ」

 

「ご、ゴメン!とにかくユウが無事で良かったぁ。アリサも今あんな感じだしどうなるかって」

 

そして、コウタの最大の特徴はこの思いやりだ。仲間のことでもこうやって自分のことみたいに思いやれる。アラガミが溢れ、日々の生活すら困難なこの時代でそんな優しさを持てるのはそれだけで一種の才能だ。

 

「ユウをこうして無事に連れ帰って来てくれてありがとうございました。管森中尉」

 

「支部長からの直接指令でもあったし、気にするな。けど、それはそれとして良く堪えて戻って来るのを待ってたな。そこの馬鹿だったら飛び出してたろうに」

 

「本当は行きたかったっすよ。でも、俺はユウみたいにアラガミをバッサバサと狩りまくったりとか出来ないし、脚引っ張ちゃうだろうから…」

 

「だからこそ、良くやった。お前は俺を信じたんだ。誰かを信じて待つ。それは簡単なようで難しい事だからな」

 

言って、ニット帽を被ったコウタの頭をぽんぽんと軽く叩いて、

 

「っし、とりあえず食堂で飯食うぞ。飯。どうせ野戦食くらいしか食ってないだろ神薙」

 

顔付きを見れば一目瞭然だし、ちゃんと食うもん食ってれば多少のピンチは切り抜けれるくらいにはコイツは強い。それが俺が駆け付けた時にはガス欠起こしてるとかそれくらいしかありえん。

 

「ええ、でも、医務室で検査って………」

 

「責任は俺が取るからとにかくお前は飯を食え。コウタも好きなもん食って良いぞ」

 

「マジっすか⁈」

 

 

そして、食堂で飯を食い、医務室に神薙をぶち込んでずっと待機していた医務官にさっさと連れて来いと文句を言われ、次に足を運んだのは支部長室だ。

 

 

「まずはご苦労。管森リョウゴ中尉」

 

朗らかな微笑みを浮かべながら執務机に座ったままこっちを見ている金髪の男はヨハネス・フォン・シックザール。このアナグラことフェンリル極東支部の支部長であり、アラガミ研究の第一人者でもある。

 

「全くですわ。リンドウの代わりに面倒見ろって言われてもまともに言う事も聞きゃしない」

 

「とにかくだ。君のおかげで貴重な新型神機の適合者を失わずに済んだ。約束通りに手当は弾もう」

 

「そっちは正直どうでも良い。そんな事よりも、リンドウの阿保の行方はまだ知れずなんで?アイツの事だからひょっこり生きてるに決まってる」

 

「まだ調査中だ。それにしても君もそうだが、なぜ彼が今も現在だと言い切れるのかね?」

 

「決まってますよ。そんなのアイツほど生き残る事にかけては誰の追随も許さないくらいしつこい奴は居ないからですよ。それじゃ、これで失礼します」

 

「ああ、ゆっくり休んでくれたまえ」

 

 

ちなみに確かに報酬は結構美味しかったが、飯食わせたりだと神薙連れ回した事で軽い罰則を貰い、結局手元に来たのはプラマイゼロの救援手当に落ち着いた。差額は帰って来たリンドウの阿保から絶対に取る。




ちょっとした昔話。
ちなみにこの頃はオウガテイルもコンゴウも本編時系列の時ほどは強くは無い。下位個体と上位個体くらいには強さが違う。

バスターで割って斬るのが基本スタイルのうちの中尉さん。
ん?結構時間経ってるだろうになんで中尉から昇進とかしてないかって?アラガミ討伐だので得た功績やらを今回みたいな違反行動とかでチャラにしちゃうから(と言う名の話の都合)

なんか倒したはずのオウガテイルさん復活してたので修正……
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