今俺はいつも訓練で使っている隔離室とは違う場所にいる。
忘れもしない神機適合試験の為だけの場所で、適合失敗者を始末するための場所だ。
俺の目の前には緊張したような面持ちで2人の少年と少女が立っている。少年は明るめの黒い短髪で、少女を庇うように立っていて、背中に届く程度の長さの栗色の髪をした少女は少年の背中に隠れるようにしている。どちらも俺の半分ほどの年齢だろう。神機との適合成功率は15歳ごろから20歳あたりが一番成功率が高いと言われているから、たぶん俺の予測は間違ってないだろう。て言うか、なんかこの構図、俺が目の前の子供らを脅してるみたいで地味に心に来るんだが……
「さて、なんでここに居るかは理解してるな?」
そう聞くと、2人はこくりと首を縦に振り、少年の方が恐る恐ると言った感じに口を開く。
「……ぼ、僕達が適合出来るかもしれない神機が見つかったから、です……」
「その通りだ。で、俺はお前達が神機と適合出来るかを見届けるために呼ばれてここに居る」
俺のすぐ隣には俺の神機が格納保管されているハンガーがあって、いつでも手に取れるようになっている。適合失敗時のための保険だ。まぁ、俺やリンドウがゴッドイーターになった時に比べれば技術の進歩とか偏食因子の改良だとかで適合失敗は余程のことが起きない限り、発生しなくなった。それでも失敗する時は失敗するからこうして保険として、隊長職クラスのゴッドイーターがつけられるわけだ。
「あ、あの」
少女の方が話しかけてきた。か細くて小さな声で、思わず聞き逃しそうになった。
「なんだ?」
「おじさんはなんで、ゴッドイーターになったんですか?」
「おじさん……まぁいいや。俺がゴッドイーターになった理由? お前らと一緒だよ」
まぁ、今みたいにひとつ神機に1人じゃなくて、ひとつの神機に10人とかだったが、それは黙っておかないといけない。そう言う守秘義務が俺の世代にはある。とは言っても、長い事ゴッドイーターやってる連中は大体どんなもんかは知ってるがな。
「つらくないんですか?」
「少なくとも、目の前でなんも出来ずにツレとかがアラガミに食い殺されていくよりは、よっぽどマシとだけ言っとくよ」
て言うか、サカキ博士はまだか。出来ればさっさと来て欲しい。あんまり長い事会話とかしてると、その時が余計キツくなるから、できる事ならあまり候補者との会話だとかはしたくない。
『待たせてすまないね』
スピーカーからサカキ博士の声が聞こえてきた。やっと来やがったかキツネ顔め。
『僕はここフェンリル極東支部の支部長のペイラー榊だ。さて、それじゃあ急で悪いけど……鹿目マサヤ君、そして一ノ瀬ユイ君。これから君達の神機との適合試験を始めさせてもらうよ』
その言葉とともに床から、赤茶けた色の2つの金属で出来た『棺』が出て来た。これには神機が収められていて、適合者が見つかるまでの間、神機を眠らせておく文字通りの棺だ。
空気の抜けるような音をさせて、棺の上半分が持ち上がり、今か今かと2人を待っている。
うん、何度見てもやっぱり邪悪な魔物が口を開けてるようにしか見えないな。これ。
『まずは一ノ瀬ユイ君。君から行こうか』
スピーカーからのサカキ博士の指示に従って、ユイと呼ばれた少女が左側の棺に向かって、棺の側面のちょうど中央あたりにある半円状のスリットに右腕を差し入れる。すると、棺の上半分が降りて完全に固定する。
そして、次の瞬間。部屋いっぱいに悲鳴が響き渡る。
「ユイ……っ!」
駆け寄ろうとするマサヤの肩を掴んで止める。マサヤが抵抗するが、ゴッドイーターと普通の人間とでは圧倒的に身体能力が違うから、俺の手から逃れる事が出来ない。
とりあえず、マサヤを押さえながら神機をいつでも手に取れるようにしておく。
マサヤに睨まれるがこのために俺はここに居る。だから、こいつになんと思われようともこうするしかない。
1分ほどでユイの悲鳴は聞こえなくなり、そこから更に1分ほどが経って、ようやく棺の上半分が上がってユイが解放された。解放されたユイの右手首には見慣れた赤と黒の手枷のような腕輪が付いていた。
アラガミ化する様子もない。適合成功だ。
それを確信したところで、マサヤを解放する。俺の手から解放されたマサヤがユイに駆け寄る。すると、ユイが糸の切れた人形のように倒れ、それをマサヤが慌てて抱きとめる。
「ユイ!」
「そんな大声出さなくても大丈夫だよ」
「で、でも、お前急に倒れて……」
「ちょっと疲れただけだよ」
2人のやり取りから目を逸らして、携帯端末で医療チームに連絡を入れる。それから5分と経たずに現れた医療チームが担架にユイを乗せて連れ出していく。向かう先はもちろんメディカルルームだ。
「そんな顔しなくても、適合試験をパスすればすぐ会える」
「……あんたさっき、それ取ろうとしたよな」
たぶん本来の口調であろう少し荒い言葉遣いでそう言って来た。不満そうな顔を浮かべてだ。
「そりゃあそうだろ。俺は万が一、適合に失敗した時そいつを処理するためにここに居るんだからな。なぜ処理をするのか分からないって顔だな。まぁ、それもそうだろうよ。フェンリルは適合試験の事をきちんと伝えないからな。簡単なパッチテスト? そんなもん嘘八百だ。実態は今見た通りだ。そんでだ。適合に失敗したらそいつはアラガミ化する。だから、俺みたいなのが神機で処理をする。分かったか?」
なんか知らんが、子供相手にキレちまってるよ。
『中尉。あまりそう言う機密情報をペラペラと喋らないでくれないかな。色々と面倒だから』
「別に問題ないだろ。どっちにしろここからは適合試験をパスしてゴッドイーターになるか、失敗して肉塊になるかのどっちかでしかここからは出れないんだからよ」
『……はぁ。これが終わったら、3日間の懲罰房行きと半月の減俸それと反省文の提出をしてもらうよ』
「別に嫌とは言わねぇさ」
『さて、待たせて悪いね。それじゃあマサヤ君の適合試験を始めようか』
ユイと同じようにマサヤが右手を棺に差し入れ、棺の上半分が降りて来て、適合が始まる。
マサヤの手首が入った棺のスリット部分から黒い触手が伸びて来て、マサヤの右腕の皮膚を裂きながら這い上がって行く。神機からの侵喰だ。それを見ながら神機をハンガーから取る。
マサヤの神機からの侵喰が右肩関節あたりまで行くとそこでピタリと止まる。適合成功か失敗か微妙なところだ。俺がどうするか考えていると、マサヤが棺に頭を一度ぶつけた。その瞬間、腕の触手がしゅるしゅと棺の中へ戻って行き、棺が開き、マサヤが仰向けの大の字に倒れる。
「適合成功、だな」
神機をハンガーに戻して、倒れているマサヤのところまで行き、
「どうだ? 人間やめた感想は」
「最悪だ」
その後、マサヤもメディカルルーム行きとなり、俺はそのまま流れるように懲罰房行きとなった。
懲罰房の中で頭を冷やして、改めて考え直したが、結局なんでマサヤ相手にキレたのかわからなかった。てか、反省文が面倒くさい。
HAHAHAHAHAHA。これはヒドい(笑)
書き上げといてなんだが、これはヒドい。
さぁ、なんか新キャラ生えたぜ。
鹿目マサヤ君(16)と一ノ瀬ユイちゃん(15)この子らはどんなゴッドイーターになるんだろう。そもそも生き残れるのか……さてさて、どうなりますことやら。
にしても、今回中尉さんのキャラがなんかブレすぎな……いや、そんな細かい設定のないキャラだけど……