艦隊これくしょん Mercenary Fleet   作:Colonel.大佐

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#12 「沖ノ島沖攻略作戦②」

 艦娘母艦くにさきのウェルドックには、多くの艦娘が集結していた。

 その一角に、傭兵艦隊の艦娘たちが集められていた。

 先に空輸した艤装を嵌め、最終的な装備の調整を行い、調整が済んだ者は小休止しながら出撃に備えている。

「不知火、装備はどう?」

 遅れて艤装の準備に入った叢雲は、先に準備を済ませていた不知火に尋ねる。

「まあまあです。新型の装備もそれなりに使えます」

 そう言うと不知火は連装砲を叢雲へ見せびらかすように構えて見せた。

 不知火が持っているのは新型の10cm連装高角砲だった。今まで使用していた12.7cm連装砲に比べて口径は小さくなったが、変わりに対空性能が向上し、前の砲と同等の対艦攻撃にも使えるという、駆逐艦娘にとってはこの上なく心強い装備だった。他には魚雷も通常魚雷から酸素魚雷へと換装されている。

 作戦決定から今日までの間、提督が資源を投資して明石が開発した新装備や、これまた提督のコネと資源で他の艦隊から融通を聞かせて引っ張ってきた新装備だった。短い期間ではあったが、使い慣れるように演習も何回か行ったため、不知火を筆頭に大半の駆逐艦娘は使用できるようになっていた。

 

 不知火の隣では、隼鷹と龍驤が艦載機の整備を行っている。とは言っても彼女たちは軽空母でも異例の式神――紙型の艦載機を実体化して攻撃するタイプ――の艦載機使いである。飛行機型に切り取られたそれには、紫電改二、天山、流星と言った文字が躍っていた。

「なあ、ホントにうちらで作戦成功できるんかいな」

 龍驤は整備を終えた艦載機の式神を懐に入れながら呟く。

「さあー、提督の作戦が上手くいけば楽勝かもしんないけど。どうだろうねえー」

 隼鷹は、同じく整備の終えた艦載機を満足げに眺めながら返した。

「ま、新型艦載機が使えるたけでマシだよね」

「そりゃまあ、そうやけど」

 龍驤も隼鷹の言葉に同意した。

 今まで彼女たちが使っていたのは旧式の艦載機ばかりだった。99式艦爆、97式艦攻、果ては96式艦戦というロートルにも程がある装備で隼鷹は戦い、龍驤に至っては拾われた時には艦載機を全部失ってしまっていた。今までローテーションや分割で装備を使っていたが、今回の作戦を契機に提督が大胆にも新型の艦載機を融通してくれたのだった。

 2人はそれをあっさりと受領したものの、この装備の開発に提督が資源を大量につぎ込んだのは明白だった。それほどまでに気合が入っていると同時に、2人を艦隊の空母戦力として重視してくれているという事実が、2人を喜ばせていた。片方はリストラされて艦隊を追い出された軽空母、もう片方に至っては殺すつもりで自殺同然の任務に就かされた身である。

「本気出すのは疲れるけど、給料分以上の仕事ぐらいはたまにはやんないとなー」

「せやな、ウチもそう思うわ」

 2人は顔を見合わせると、緊張を飛ばすように笑った。

 

 軽空母2人の隣では、戦艦と巡洋艦が主砲の整備を終えた所だった。

 戦艦は、艦娘たちの中でも最強の火力を有している。駆逐艦の主砲が豆鉄砲に思えるほどの砲撃で、深海棲艦を粉みじんに撃破する……元来の大艦巨砲主義をそのまま体言する戦艦は、どの鎮守府でも主戦力として重宝されている。霧島も例外ではなかった。

 霧島の隣で調整が終了した20.3cm砲を艤装へ装着した摩耶は、霧島の主砲を眺めながら感嘆の声を漏らした。

「すげぇなあ……姐さんの主砲、さっすが戦艦」

「ま、これぐらいの火力がないと戦艦とは言えないわ」

 少し誇らしげな顔を浮かべている霧島を見て、摩耶は少しだけ複雑な表情を浮かべた。

「いいっすよねえ……戦艦って。戦艦にもなれる艦娘適正があったのに、重巡になっちまったし……」

「摩耶。重巡には重巡の使い道や良さがあるのよ。それに燃費も弾薬もいっぱい消費するわ、期待を背負って出撃して戦果なしの重圧って凄いのよ」

「そうそう。いざとなったら航空巡洋艦になるのも手だよ」

 割って入るように、最上が摩耶に茶々を入れた。

「うう……うちの艦は飛行甲板は積めねーんだよ」

 摩耶はまた複雑な表情へと戻ってしまった。

 最上はこの間に航空巡洋艦としての改装も受けていた。今では主砲2基に合わせ、瑞雲も搭載している。

 飛行甲板を撫でながら満足気な顔を浮かべる最上だったが、すぐに顔色は硬い物に変わっていった。

「でも、本当にこれぐらいの改装で大丈夫なのかな……だって沖ノ島沖って結構な難所だって聞いてるし」

「しかも全力出撃だぜ。最悪、沈没とか……」

「駄目」

 2人を叱るように、霧島は声を上げた。

「この艦隊の火力を担っているのは私たちだけよ。だからこそ、深海棲艦を率先して倒して他の艦を守るのが、私たちの役目。駆逐艦は装甲も薄いし、常に最前線で戦うから尚更よ。上の艦娘が弱音を吐いていたら、他の子たちの士気にも関わります」

「す、すんません姐さん」

 摩耶は謝る。霧島はこほん、と咳払いをした。

「ま、私はちょっと気分がいいわ、久々に骨のある戦いが出来そうね。データ取りもバッチリよ!」

「やっぱり霧島さん武闘派だよね……」

 最上は笑いながら呟いた。摩耶も同感だった。

 

 やがて、艦娘たちが待機するウェルドックに提督がやってきた。

 提督の姿を見た艦娘たちは、雑談や小休止を切り上げて提督の元へと集合した。

「そろそろ時間だ、出撃に入る」

 提督が声を上げる。全員が聞き入っている。

「その前にもう一度作戦のおさらいだ……叢雲」

 提督の言葉に、待機していた叢雲が前に出る。取り出された海図を受け取ると、それを広げて全員に説明を始めた。

「攻撃部隊を2手に分かれさせる。叢雲を旗艦とする快速の水雷部隊、次いで霧島を旗艦とする打撃部隊だ。龍驤、隼鷹はそれぞれ護衛として随伴しろ、制空権確保と、可能であれば敵艦攻撃を行え」

 龍驤と隼鷹は頷く。敵の航空戦力も確認されているこの海域では、2人が艦隊護衛の要となる。

 次いで、提督は編成表も合わせて広げる。艦隊は2つの部隊に分かれていた。

 まず、叢雲率いる水雷部隊だ。叢雲を旗艦に、不知火、弥生、暁、梨、そして隼鷹。次いで打撃部隊は、霧島を旗艦として摩耶、最上、川内、龍驤の5隻で編成されていた。

「羅針盤が狂うため、今回はこのような編成にした。もちろん、片方が深部に到達し、もう片方が到達できないという場合は作戦の成否に関わる。つまり攻撃部隊は必ず洋上で合流しろ。この編成で道中、羅針盤に惑われる事は無くなるだろうし最深部手前までなら確実に羅針盤は誘導してくれる。海域の最深部手前まで来たら、もう羅針盤はアテにするな」

 艦娘たちは真剣に提督の話を聞き続ける。

「深部まで到達できる叢雲旗艦の水雷部隊にビーコンを搭載させる。最深部突入前に水雷部隊は待機、打撃部隊はビーコンを頼りに水雷部隊と合流。それから深部への突入を図る。幸いにも道中で出会う敵の大半は他の艦隊が片付けた、しかし、以前として重巡、軽巡、駆逐艦のエリート級が散発的な回航を続けている。くれぐれも油断はするな、深追いは禁物とする。敵に打撃を与えたら速やかに海域から離れろ」

 提督の顔はいつになく真剣だった。海図と編成図をたたむと、再び叢雲へと手渡した。

「もし道中で大破した艦が出た場合は、その時点で作戦は中止とする。だが帰艦しても司令部の連中は喜ばないだろう、どうせ再出撃の命令が出る。俺たちが磨り潰されて死ぬか、深海棲艦がくたばるか、それか司令部が艦隊を下げる命令を出すまで戦いは続くと思え。もっとも、その前には作戦が終わっているだろう」

 提督の言葉に全員が表情を重くさせるが、提督は口元を微かに吊り上げて笑った。

「まあ、堅苦しい話はここまでだ。作戦が成功し全員無事ならどんちゃん騒ぎでもやろう。寿司なり焼肉なり何でも奢ってやる、成功の際は3日間の休暇も司令部へとりつけた。何なら俺を破産させるまで飲み食いしてもいいんだぞ?」

 提督の言葉に、艦娘たちはどっと笑った。一部はあからさまにやる気を出しているようだ。

 まあまあ緊張がほぐれた所で、ウェルドックにブザーの音が鳴り響き、発艦のアナウンスが流れた。

「よし、これでブリーフィングを終了する。全艦、出撃しろ!」

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