嘘だ!嘘だと言ってくれぇ!
日付変更線超えちゃったよ!責任とってよ!2/2じゃダメなんだよォォォォ!
読み込みが遅いのが悪い!タイムラグが悪い!遅筆の作者が悪い!
という訳で今日は2/1だ。 イ イ ネ ?
海軍基t・・・じゃなかった、この隊の拠点は全国各地に存在する。
横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊、トラッk・・・え、それは違う? 鯖? 何を言っているのか分からないが、ともかく有名な基地は各地にある。
しかし、実際の基地の数はもっと多い。そりゃそうだ。この国は数え切れない程の島により構成され、守るべき沿岸の長さは世界で六番目である。(排他的経済水域も世界六位なのであるが……これの制定は80年代、これの元となる200カイリ漁業専管水域の制定は70年代後半なので、まだ存在しない)こんな広範囲を数個の基地だけでカバーできるはずがないし、そもそも極端に戦力や物資を一地点に集中するのはリスク管理的にも危険だ。
というわけで、この国が世界に誇る海上交通路護衛の鬼、ヘリ搭載護衛艦「はるな」はとある港町に入港していた。ここは基地としては小さい方で、海上保安庁の巡視艇以外の常駐艦艇はいない。隊にとってみれば純粋な補給基地だ。
護衛艦は母港で鑑賞するためのものではない。しかし海を走らせれば燃料を消費するし、母港で鑑賞していても乗組員の食料は消費される。
もちろん「はるな」に積み込まれた燃料・食料の量はある程度の期間、単艦行動することも想定している。それはいつ『有事』という事態が訪れるか分からない――――知っての通り、ソ連
ついでに燃料はバラストとしての役割も兼ねており、ちょいちょいとマメな給油が必要なのだ。
それならついでに、乗員たちの命の洗濯も。補給で寄港すれば上陸許可が下りることも多い。
案外乗員の為の寄港なのかもしれない。
日もすっかり暮れた港。外泊許可が下りているわけではないので、乗員たちはゾロゾロと埠頭へ向かう。目指す先には仕事場でかつ家である「はるな」が待っている。
「おい、海曹」
と、突然背後から声をかけられた海曹。なにごとかと振り返ると、そこには人影が。
「一尉殿、どうかされましたか?」
海曹は迷うことなく人影の名を口にする。
既に日没より数時間。街灯程度の弱々しい光では、暗闇にどっぷり漬かった桟橋に立つのが誰かは分からないはずだったが……護衛艦「はるな」の乗組員は400人ほど。ましてや幹部自衛官は数十人である。水兵たちのまとめ役となり、そして上官からの命令を直接受ける立場にある彼が一通りの幹部を把握していないはずがなく、声だけで誰かを判断したのである。
「これ、『例のもの』だ」
その声と共に何かが差し出される。海曹はそれを受け取り……それがなにかを理解した。
「間に合いましたか」
「ギリギリだったがな」
そう交わした二人は、そのままゆっくりと埠頭の先の
「はるな」はその灰色の装甲を小さな灯りに照らされ、その暗闇に輪郭だけを浮かび上がらせていた。
「え? はるな……なにか悪いことをしてしまったのでしょうか……?」
さて、それから数十時間後。護衛艦「はるな」の士官室。変わった姿見の少女がいた。
あ、いやもちろん、少女が護衛艦に乗っている時点でもうおかしいのだが、それを差し引いても異常なのである。
上半身は白で下半身は緋色。遠目に見ると巫女服とも言える装束。だがしかし、その実際はミニスカートといういかにも挑戦的なスタイル。僅かに覗く健康的な肌と、それに映えるツヤのある黒髪。
加えて、身長は100ほどという小柄さ。こんな小さな子供が護衛艦にいるなんて……なんというか。うん。「はるな」艦長が
しかし彼女は艦長の妄想ではなく、確かにそこにいた。なんせ会話を交わしているのである。彼女の目の前に立っている士官は、やや困ったように笑みを浮かべた。
「いや、はるにゃさんは何も悪いことしてないですよ?」
その少女……護衛艦「はるな」の魂が具現化した存在である彼女は、しかしその言葉だけでは納得してくれなかったようだ。
「そ、そうなんですか?」
はるにゃは不安げにそう返す。
「ええ、別にそういうことじゃないですよ?」
「一尉さんがそう言うなら……」
こんなやり取りが行われているのは護衛艦という組織の中枢たる士官室。背後には尉官から佐官まで、揃いも揃って二人のやり取りを眺めている。
「ええ、ですから今日は、食堂の方で夕御飯を、ですね……」
まあ何をしているのかといえば、はるにゃをどうにかして「食堂」に誘導したいのである。「食堂」と「士官室」は異なる場所だ。「士官室」はその名の通り士官、つまり幹部が詰める場所。常に彼らの仕事場であるし、食事もここで振舞われる。
それに対して「食堂」とは何か? 「食堂」とは食事の場所だ。誰向けの食事かと言えば、下士官や海士向けの食事の場所だ。
とはいえ護衛艦「はるな」の下士官、海士は300人をゆうに超える。300人も収容するスペースなどあるわけがない。いや、そもそも全長150mちょいの「はるな」に400人近くが収まっている時点ですごいことなのだ。ここにミサイル、砲弾、三機のヘリコプターを積むのである。スペースが空いているわけがない。
なので食堂は狭い。精々数十人が入れる程度だ。ひっきりなしに下士官、海士を入れ替え、三食かろうじて回している感じだ。
「で、でも……其方の方に行ってもきっとはるな、お邪魔になりますよね……?」
そうなのだ。
さっきも言ったとおり、余裕のある士官室とは様子が違う。艦を動かす水兵たちが、ひっきりなしに食事をする。そのためだけの場所だ。つまりずっと誰かしらがかわりばんこに詰めているわけで、忙しい場所だ。はるにゃが邪魔になってしまうのではと不安になるのも当然である。
「い、や……多分邪魔にはならないと思いますよ?」
ところがそう言う一尉の様子もやや戸惑い気味である。
「そう……なのでしょうか?」
まあ、はるにゃの困惑も当然だ。いつもはるにゃは士官室で食事を摂っていたし、士官室では誰がはるにゃの隣に座るか、すなわち「なるにゃ利権」の取り合いが起きることもままあるのである。
それがいきなり海士たちと飯を食って来い、である。
もちろんはるにゃはこの護衛艦の魂に等しい存在。乗員との食事なら誰とでもOKだろう。
しかし普通に考えてみよう。毎日食を共にしていた人から、いきなり別々の場所で食べようと言われる。これでは突き放されたように感じるのは当然だ。
「あ、あの一尉さん……」
「な、なんですか? はるにゃさん?」
何かを聞こうとするはるにゃ。何を聞かれるのかと身構える一尉。背後からの視線が一尉に突き刺さり、彼は余計に身を硬くした。
「(一尉……しくじるなよ)」
「(くれぐれも勘付かれるなよ……)」
「(バカ野郎、もっと自然体だ!)」
「(
……完全な野次馬が混じっているような気がしないでもないが、とにかく士官室に詰める幹部たちは一尉とはるにゃのやり取りを見守っている。
「その……」
「……」
はるにゃは何かを言おうと下向きの視線を左右に動かす、一尉も唾を飲み込む。
「いえ……何でもないです。はるな、ご飯食べてきますね」
はるにゃはそれだけ言うと、くるりと回れ右。士官室から出て行く。
彼女が廊下に消えると名残惜しそうに装束がはらりと揺れ、そしてそれも壁に遮られて見えなくなってしまった。
「……」
「おいおい、なんて顔してんだ?」
黙ったまま入口を見るだけの一尉に、後ろから船務長が声をかけた。
「え? あぁ、いえいえ……」
「上の空だな……ま、純真な幼子を騙すのは辛いよな」
子持ちだからよく分かるよ。と船務長。その言葉で一尉は帰ってくる。
「へ? 船務長、お子さんいるんです?」
「あれ、言ってなかったっけ……?」
二人の間に微妙な空気が流れる。
しかしそれも束の間。思い出したように一尉は口を開く。
「あ、そうだ。砲雷長を呼びに行かないと」
「おぉそうだ、早くあいつをひえいの抑え役から開放してやらないとな」
そうして二人も士官室の外へと向かう。外の甲板では砲雷長が、一刻も早く艦内に突入しようとしているひえいを抑えているのだ。
……ひえいには悪いが、彼女が乱入すればサプライズも何もなくなってしまう。もう少しだけ我慢してもらおう。
ひとまず舞台は整い、幹部たちは満足げに様子見へと向かう。
歌にも言われるように、護衛艦は城だ。海の上を往く黒鉄の城だ。つまりは要塞なわけで、内部の構造は複雑になっている。
とはいえ住めばなんとやら。慣れればどうということはないし、ましてやはるにゃはこの艦の化身。迷うはずがない。とことこ歩けば、頭の猫耳もあわせて揺れる。
「皆さん、どうしちゃったんでしょう……?」
寂しい蛍光灯の下、はるなはポツリと呟いた。
一尉はなんでも無いと言ったが、はるにゃだって戦艦時代を含めて三十年以上生きている。一尉が何か隠しているのには気づいている。
なにか悪いことをしてしまったのだろうか。そう記憶を辿ってみるが……最近は何時も通りだったはず……思えば二週間ほど前、司令がはるなに「尻尾は生えないのか?」と言われたことがあったっけ。それを「生えません!」と強めに拒絶してしまったことを思い出したはるにゃは、もしやそれが……と顔を不安色にするけれど、しかし考えれば解決するわけではない。
そうこう考えを巡らすうちに、はるにゃは食堂にたどり着いた。
所狭しと机、それに付随する椅子が並べられたこの部屋。
と、はるにゃは首を傾げる。
そりゃそうだ。なんせ彼女を待ち受けるかのように、曹海士たちが入口から入ったはるにゃを取り囲んでいたのだから。
「……?」
はるにゃはどうしたことかと周りを見る。数十人しか収容できないにも関わらず300人以上の三食を支えるこの部屋。回転が重視されるこの部屋なら、自身に注視するほど時間的余裕はないはずなのだが……。
しかし次の瞬間、はるにゃの猫耳は驚きでピンと張られることになる。
「総員構え!」
そんな掛け声を発したのは最年長の曹士であった。この場にいる全員が瞬時に空気を変える。
あまりに唐突なその号令に、はるにゃは左右を見回すばかりである。
続く言葉は……
護衛艦「はるな」
その言葉と共に、はるにゃを包囲下に収める海士たちに何かが配られる。それはミニサイズの信号旗。
満艦飾。
それは停泊中の軍艦がお祝いのため、艦全体を旗で飾り付けることである。昔は万国旗が用いられたが、現在では信号旗が用いられる。建国記念日や、かの御方の誕生日、他国の港に停泊する際には相手国の祝日などにも合わせる形で行う。
「さっ、はるにゃちゃん。手を広げて」
「えっ、こう……ですか?」
「そうそう」
はるにゃは困惑しつつ、ある結論にたどり着いていた。なんで皆の様子が変だったのかに気づいたのだ。
今日は二月の一日。曜日は金曜だから金曜カレー。しかし休日ではないし、ましてや祝日でもない。
でも、とっても大切な日だ。
「(皆さん……覚えててくれたんですね)」
そう。今日は護衛艦「はるな」の進水日。「はるな」の歴史が始まった日だ。
はるにゃはされるがままに飾りつけされてゆく。誰かがどこからか電飾を取り出し、信号旗と一緒に取り付けてゆく。電飾は夜間に灯されるものなのだが、まあ細かいことは気にしない。猫耳をマスト代わりにされて、ちょっとくすぐったい。
「ん? ちょっとズレてるぞ」
「しっかりやれよ~、我らが護衛艦なんだからなぁ~」
護衛艦はるにゃに飾り付けられるのは手製の信号旗。小さな旗はそれぞれ製作者が違うようで、雑だったりやけに丁寧だったりする。
「(これが司令ので、これが艦長……一尉さんが作ってくれたのはこれですね……)」
不思議な話だけれども、はるにゃにはどの旗が誰の手で作られたのかが見るだけで分かった。信号旗には幹部たちの心が込められている……なるほど、幹部たちも祝ってくれているわけだ。
「(はるにゃ……感激です!)」
ちょっとうるっとしてしまったはるにゃ。それに反射してきらきら輝く。
こんな大勢にお祝いされるなんて初めてだったはるにゃ。この気持ちを伝えようと言葉を探す。
ドォン!
と、轟音。舞う土煙。なぜ土煙?
「?!」
何事かと振り返ると、そこにははるにゃと同じ装束の少女が。
「お姉さま! クロネコひえいの宅急便ですっ!」
「ひ、ひえい?」
はるな型護衛艦二番艦の「ひえい」。その化身であるひえい。現在艤装作業中の彼女は、しょっちゅう「はるな」に遊びに来るのだが……。
「気合! 入れて! お祝いします!」
やっと言えましたー、さっきまでずぅぅぅっと砲雷長に足止めされてたんですよぉ! とひえい。
「ひえいまで……ありがとうございます」
「という訳ですね、お姉さま! お祝いの品をお持ちしたんです!」
ぱたぱたと腕を振るい、目を輝かせるひえい。
「お祝いの品、ですか?」
一体何だろうか。
「おいおい……これはなんだよ」
後ろから聞こえたのは船務長の声。廊下にいるようだ。
はるにゃや海士たちが通路に顔を出すと、通路は……埋まっていた。何によって?
「はい! 総監が下さったお酒、ですっ!」
「……」
「……」
「……ジュルリ」
「……」
一同、唖然である。酒樽で封鎖された通路。太陽の笑顔を放つひえい。驚きとか呆れとか、そういう次元にない船務長の表情。舌なめずりする砲雷長。
沈黙を破るように、一尉がおずおずと切り出した。
「……ひえい、この隊はアメリカ仕様だから……酒類の持ち込みは禁止なんだけど……」
「ヒエッ?!」
知っての通り、米海軍に持ち込んでいいアルコールは医務室の消毒液のみである。確かにこの隊には帝国海軍の多くが受け継がれているが、そういったルールはアメリカ式だ。
「で、でもでも! 総監は『大丈夫だ。問題ない』って!」
慌てて反論するひえい。数十年先取りしたネタに頭を抱える船務長。とりあえず酒を飲もうとする砲雷長。
「……こりゃあ、総監殿にいっぱい食わされたな」
そして、この場における最高責任者が現れた。
「あ、艦長、いつの間に」
「私もいるぞ」
「司令!」
司令と艦長はやれやれといった様子で互いに目配せ。そして次の言葉を放つ。
「ともかく、持ち込まれてしまったものはしょうがない。どうやって持ち込んだのか知らないが、港で降ろせば必ずバレる……そうなりゃ連帯責任だ」
私の言ってる意味、分かるな? 司令は目を細め、口角を釣り上げた。
艦長が言葉を繋ぐ。
「総員、
砲雷長が待ってましたと笑い、それに合わせて海士達も盛り上がる。曹士はやれやれと言いつつも隠しきれずに笑みをこぼし、通路に押しかけた幹部たちにも伝染する。
はるにゃも笑った。
皆が祝ってくれる。みんなの笑顔がここにある。ひとつの空気が艦に生まれて、そして広がってゆく。
そんな護衛艦「はるな」、その歴史の新しいページが今日始まった。
「そうか……よかった」
ところ変わってこの国の首都を護る海の街。首都近辺の海域の防備を司る地方総監は、満足げにひえいの報告を聞いていた。
「良くないですよ! 総監のせいで、危うく私が懲罰されるところだったんですからね!」
「でも楽しかっただろう?」
そう言ってやると、口を尖らせていたひえいの攻撃も大人しくなる。
「そりゃまあ……楽しかったです」
なら良かったよ。そう呟いた総監は、自身の執務室に置かれた金剛型戦艦の模型に目をやった。
自分が榛名の担当だった頃も、進水日には小さなお祝いを開いた。姉妹すら揃わないお祝いだったが、それでも楽しかった。
「今回のお祝いは艦の全員でやれた、か……良かった」
でも、きっとこれが最後だ。
艦の魂が見えるのは本来極僅か。そして艦のトップである艦長や幹部は入れ替わりが激しい。だからいずれは彼らも皆異動してしまうし、そうすれば艦ぐるみでお祝いすることは出来ない。
だから奮発してまでドデカイ贈り物を押し付けてやったのだ。楽しんでくれなきゃ困るというもの。
総監は小さな杯を持ち上げる。
そして、小さく強く呟いた。
「はるな、進水日おめでとう」
はるな「もうすぐ節分ですね!」
一尉「うん?」
砲雷長「そういやそうだ」
司令「鬼役は誰がやるんだ?」
艦長「えっ」