少し短めです。
「大徳寺先生、…いえ、セブンスターズの7番目の刺客、アムナエル」
そう、彼こそが錬金術担当教師にしてセブンスターズ最後の刺客、アムナエル
「その通りですニャ。その様子ですと、私を追ってきた経緯を思い出したようですニャ。」
「ええ、すっかりと…」
………………
…………
……
…
はじまりは、大徳寺先生、七正門の鍵を持つデュエリストであるクロノス先生、亮さん、三沢君の失踪であった
度重なる失踪者の増加で、この時期にある学園祭は延期、講義のいくつかは休講と、穏やかではない雰囲気が漂っていた
そんなある時、例の闇のカードに導かれ、元特待生寮の研究所のような部屋にたどり着いた
そこで待っていたのは、仮面を着けた男だった
「よく来たな、私の研究室にようこそ、山白 青人」
「あなたが、彼らを…?」
「彼らは類い希なる才を宿した人材であったが、私の期待には応えられなかった…」
そう言うと仮面の男は、ウジャト眼の付いた書物ーエメラルド・タブレットを取り出した
「我が名はアムナエル、セブンスターズの7番目の刺客!捕らえられた魂を返してほしくば、見事私を倒してみせよ!」
この人が…!、と思いディスクを展開すると、闇のカードとエメラルド・タブレットが共鳴した
その時、一瞬仮面が透けて大徳寺先生の顔が見えた
まさか…!と思った瞬間だった
………………
…………
……
…
そして、この空間に飛ばされたというわけだ
「でも、なぜ…」
「ふむ、順を追って説明するのニャ」
コホンと1つ咳払いをすると、真面目な顔で話し始めた
「まず、このエメラルド・タブレットと青人君のカード、これらの闇の力が共鳴してここに飛ばされた。私のこれは仮染めとはいえ闇の力を宿している。恐らく、君のそのカードも…。ここまでは、いいですニャ?」
私はコクりとうなずく
「共鳴後、私は魂の半身として、青人君は記憶をなくして、ここへと導かれた」
「魂の半身…?」
…それに、なぜ私の方だけ記憶を?
「そうなのニャ」
「どうして…」
「それは、このエメラルド・タブレットは魂を保存する力がある、そして青人君のカードには記憶を保存する力があるからだと推測できるのニャ」
「なるほど…」
…って、ん?
「なぜ、先生がそのことを…」
「知っているか、ですかニャ?」
先生はニッコリと笑った
「私は錬金術師なのニャ、錬金術は物質のみではなく人の精神をも取り込んだ学問、ゆえにあらゆるエナジーを些細ながら見分けることができるのニャ」
まぁ、半分はカンなんだけどニャー、と付け加えた
「そして、恐らく君は記憶を求めてこの学園、ひいてはこの町、いいや…」
「その通り…です、先生。僕は…、ここでは…ない世界の人間…です…」
一瞬、自分が話しているのに、どこか遠くの人が話しているような感覚に襲われた
声が震えているのがわかる…
…言ってしまった…
「ふむ、やはりそうでしたか…」
でも、先生はふーん、と何気ない会話を聞き流すように、間延びしたような感じで応えた
「よく、話してくれたのニャ」
そう言う先生の声は、優しくてどこか安心させるようだった
「いつから、気付かれていたのですか?」
少し震える声で、先生に尋ねる
「切っ掛けは、万丈目君が学園を飛び出した時、ですニャ。君の風変わりなバイクは、全国を旅した私ですら見たことがなかったのでニャ。それから君の動きを追ってみると、何やら闇の力を感じたのですニャ。」
確信したのは今ですけどニャ、と付け加える
…そうか、結構前からバレてたのか…
く、これからどうしよう…
「1人で寂しかったのニャ、辛かったですニャ、そして…よく頑張ったのニャ」
その時、先生の優しい声が聞こえた
「え…?」
「この学園に来て、初めて君に会ってから、見てきたのニャ。…私もそうだったのニャ。研究者として歩んだ人生、私も心は孤独だったのです…。」
優しく私の肩に手を置きながら、先生は続ける
「君には今、多くの仲間がいる、そして、多くの可能性がある。来た時はなかったかもしれないけど、今は君を必要としてくれる人が、場所があるのですよ。」
…必要としてくれる…
「君がもし心を許していなくとも、彼らを求めた時にはきっとそれに応えてくれるのニャ。…忘れないでほしい、すべての存在は共鳴し、繋がっているということを…」
…先生は、私に仲間に頼れ、信頼しろ…と…?
でも、急には無理だ…、頭ではわかっていても、長い間過ごした体が心が、休まらない休み方を覚えてしまっている…
試練のためにこの別世界に来ているということ、最初からここの人々との関係はないものと割り切っていたこと、学園に来て友人ができて信頼関係ができたものの心からの信頼はできなくなっていたこと、これらの過程を経て、知らぬ間に安らぎ方を忘れてしまっているのだ…
「…私に残された時間も後わずかのようだ…」
「…え?」
スッと先生が手を離す
…何だって!?
「どうやら、元の世界で私が鍵の守護者とのデュエルに敗れたようですニャ」
「鍵…?」
…そうだ…、先生はセブンスターズだったんだっけ…
「同時に人造生命体ホムンクルスである私の寿命が尽きかけているんだニャ」
「!…どういうこと…?」
「私の体はとうの昔に不治の病によって寿命を終え、現在は仮の肉体に魂を宿している状況なのニャ。…ですが、所詮は仮の肉体、長くは持たなかったのニャ…。」
…まさか…
「私は訪れる死の前に、どうしても近く訪れる災いに対抗する力を育て上げる必要があった…。そして、君は見事その期待に応えてくれた。」
…災い…
「君はこのデュエルを通して、世界の真実を知り、正しく理解してくれた。錬金術師として、教師として、これほど嬉しいことはない…。君は私の自慢ですニャ。」
「先生…」
そう言って、ニッコリと私に笑いかけた
…く…、目が熱い
でも、ここで、先生の前で、涙を見せるわけにはいかない…、笑う…、笑うんだ!
「僕の方こそ、ありがとう…ございます…!」
すると、先生は一歩下がって、優しく言った
「さらばだ、青人君」
………………
…………
……
…
セブンスターズの刺客は全員倒れた
十代君が、現実世界でアムナエルを破ったようだった
奪われていた魂はすべて戻り、鍵は封印されみんなに日常が戻ってきた
みんなに…
「大徳寺先生…」
今私は、大徳寺先生の使っていたという特待生寮の研究室にいた
今日だけではない、あれから毎日、時間があれば専門書や詰めデュエルの道具をホイールに詰め込んで通っていた
元々日中は疎食だった私は、朝から夜までいても苦にならなかったのだ
…本当はあの時に言いたかった、待ってくれ先生、もっと一緒にいてほしいと…
だって、この世界ではじめて私を、この境遇を理解してくれた方だったから…
私が本音ですべて話したのは、多分この島に、世界に来てから初めてだった
そんな一時だけのことなのに、心のどこかを失ったような…
それほどまでに、私に虚無感を与えていた
私は1人手を動かし、没頭する
研究室の中では、ただポコポコと釜が音をたてていた
………………
…………
……
…
そんなある日のことだった
ホイールで特待生寮へと向かっている最中に突然地震が起きた
ふと、遠くを見ると十代君や万丈目君を筆頭に、鍵の守護者たちが急いでいた
どうしたのだろうと思って追いかけると、七正門の鍵が開いていたのだった
………………
…………
……
…
「そのカードを貴様らに渡すわけにはいかんなぁ…」
その声とともに、巨大なタンクのような物体が降ってきた
みんなの話では、校長室から独りでに鍵が出てきて、門の方に飛んでいったらしい
「時は満ちた。これより三幻魔復活の儀式を行う」
先ほど降ってきたタンクのような機械、生命維持装置を着けたこの学園の理事長影丸が、そう言った
彼は、鍵はデュエリストとしての闘志を蔓延させるための装置にすぎず、しかるべき時が来れば自動的に開かれる仕組みになっていたようだった
すべては計画通りというわけだ
当然、そう言われて黙っている人などいなかった
「ならば、お前のその野望を打ち砕くため俺が相手をしよう!オベリスクブルーのカイザー、この丸藤亮が!」
「いや!このデュエルだけはこの一、十、百、千、万丈目サンダーが受けて立つ!」
「サンダーここは力を合わせるぞ!この盟友、第二のサンダー、慕谷 雷蔵と、」
「この俺、取巻 太陽が!」
「早まるな、サンダーたち!ここはラーイエローのトップの三沢 大地も!」
「いくぞ、大原!」
「うん、小原君!」
「影丸、貴様の野望、この神楽坂が俺のデッキで粉砕するぜ!」
「待った君たち、ここはこの僕、えっと…、このブリザードプリンス、天上院 吹雪もお相手しよう!」
「兄さん…、まぁいいわ、私もあなたと戦う!」
「明日香さまー」
「あたしたちも、一緒に戦うわ!」
みんなが一斉にディスクを構える
「バカモン!ダメに決まっとろうが!ワシを殺す気か!私の相手は遊城 十代、そして山白 青人、お前たちだ。」
…私が…?
「私の相手は、精霊の力を強く持つ遊城 十代、それから闇のカードを持ち強力なデュエルエナジーを宿す山白 青人でなければ意味がないのだ!」
…闇のカード、デュエルエナジー…
“…忘れないでほしい、すべての存在は共鳴し、繋がっているということを…”
…大徳寺先生…!
「十代君、やろう!」
「おう!三幻魔に、決着を着けるぜ!」
…!これは…『封魂石』のカードが使える…
私にとっては、これも試練なのか…!
「臆せず来たか…、脅しをかけるまでもなかったようだな…」
「僕はある人から大事なものを託された…、戦う理由はその想いだけで十分です!」
「俺も、大切な人から教わった…、その人からの教えを、学園を、仲間を守ること…、俺たちの想いを見せてやるぜ!」
互いにデュエルディスクを展開する
…すべてのものは繋がっている、…ならば仲間と呼べる彼らとともに…、この一時でも…!
「「「デュエル!」」」
24話終わりです。
現実世界ではアニメ同様十代君が、精神世界では主人公がアムナエルと戦いました。
大徳寺先生ならば、錬金術や闇のゲームに詳しいので気付くのではないかなと思い、こういった展開にしました。それでも主人公からすれば、せっかく出会えた理解者とまもなく離別することになるのですが…
今回の主人公がそうでしたが、孤独の生み出す魔力とその習慣化は恐ろしいものがあると思います。心からの信頼というのは、時代が進めば進むほど問題になるのではないかなと考えるこの頃です。
さて、次回は十代君&主人公のタッグということで、フィールド共有で行うため主人公の永続カードが足を引っ張るのではないかなという懸念があります、というか現実化しています。少々時間がかかるかもしれません。あしからず。
それでは、また。