デュエルモンスターズ 赤の記憶を求めて   作:トパートパール

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GX編1年も残りわずかです


PIECE-30 それぞれの決断

気がつけばこの世界に来て早いもので、もうすぐ1年が経とうとしている

振り返れば、アカデミアへの入学、できたたくさんの仲間たち、そして学園を取り巻く様々な陰謀、試練をこなしながらもそれなりに充実した日々を送ってきた

 

はじめは記憶を取り戻すための経過世界程度にしか考えていなかったのだが、いつの間にか馴染んだものである

そして、それは進級試験が近づくにつれてより実感するようになってきた

そう、もう直私たちは2年に昇格するのだ

1年が終わり、また1年がはじまる。そんな年の節目、ある人は未練を断ち、ある人は決意を新たにする

万丈目君の決意を耳にしたのは、そんなことに思いを巡らせていた頃であった

あれは、アカデミアで講義が終わった後に資料室で調べものをした帰りであった。偶然、万丈目君と廊下ですれ違い、話しかけてきた

どうやら、彼も1年の節目にやり残したことがないようにと考えていたようだ

 

 

「この想いを抱えたまま、2年には進級できない。俺も、この気持ちには決着をつけたい。…そう言うわけで、お前からこいつを渡してほしい」

 

 

そう言って渡してきたのは、何やら手紙の入った封筒であった。宛名は、天上院明日香…

…どこからどう見ても、ラブレターだ…

とは言え、恋の告白は男性にとってみれば一世一代の決心に匹敵する行い…、どれ程の勇気を必要とするかは想像に難くない

世間から見れば笑い事かもしれないが、きっとそこには並々ならぬ思いが込められているのだろう

 

そう考えた私は、これを無言で受け取り、明日香さんの所属する女子寮に届けに行った

…ちなみに、女子寮に着いたらジュンコさんとももえさんが出迎えてくれたのだが、例の封筒を見ると一変してものすごい剣幕で迫ってきた。大事になる前に明日香さんが来てくれて助かったのだが、あれは一体何だったのだろうか…。特に、ジュンコさんとは2、3日顔を合わせられないような妙な気分になった

そしてその翌日、島の東側の海岸で万丈目君(と彼の師匠であるらしい恋の伝道師(?)雪吹さん)が待っていた

元々彼らの待ち合わせを知る気はもとより、行く気もなかったのだが、私が近くを通りかかると偶然に彼を発見したのだった

こちらに気付いた万丈目君は、特に動揺を示すこともなく、そこで俺の決意を見ているがいいと言っていた

やがて、明日香さんが現れ、万丈目君の想いを賭けたデュエルがはじまった

最初は雪吹さんの教えたようである、普段の彼とは異なるような戦術でデュエルをしていた。まるで、何とかして自分に想いを向けさせようとするように…、しかしどこか空回りしているようでもあった

 

 

万丈目:LP3600

フィールド:

【モンスター】

おジャマ・ナイト:

★6 ATK0

【魔法・罠】

伏せカード1枚

手札:2枚

 

 

明日香 :LP1600

フィールド:

【モンスター】

おジャマトークン:

★2 DEF1000

おジャマトークン:

★2 DEF1000

おジャマトークン:

★2 DEF1000

【魔法・罠】

伏せカード1枚

手札:5枚

 

 

「随分とまどろっこしい手を使うのね」

 

 

そんな万丈目君のデュエルにしびれを切らしてか、ついに明日香さんが怒りを露にした

 

 

「いつものあなたは、カードたちで真っ向から挑むデュエルをしていたわ。でも、今のあなたからは、それが微塵も感じられない!それがあなたの想いだと言うのなら、私にあなたの気持ちは決して伝わらないわ!」

 

 

この一言が切っ掛けとなったのか、万丈目君の必死であった目は一変、いつもの強者たる彼に戻った

 

 

「…確かに、俺らしくなかったかもな…。天上院君、君の言う通りだ。だから、俺の本気のデュエルを見てほしい!師匠!」

 

 

雪吹さんも万丈目君が何を言いたいのか理解したらしく、見守るような笑顔を向けながら頷いた

 

 

「運命は俺の、この万丈目サンダーの手で切り開く!魔法カード『手札抹殺』!互いの手札を全て捨て、その枚数分ドローする!俺は、残り1枚の手札『ドレスアップ』を墓地に送り、ドロー!」

 

 

…『ドレスアップ』か…、このデュエルを想像して組み込んだカードなのかもしれないが、彼本来のデュエルには不要のようだ…

 

 

「これは…!フ、カードが俺自身の運命を切り開けと言っているようだ…。魔法カード『運命の宝札』を発動!」

 

 

『運命の宝札』とは、サイコロを1度振り、出た目の数だけドローし、その後ドローした枚数分デッキの上から除外するカード。文字通り、手札が1枚だけの今の万丈目君にとって、運命を賭けたカードと言えるだろう

 

 

「行くぞ!ダイスロールだ!」

 

 

万丈目君の手から滑り落ちたダイスはコロコロと転がり、やがてその目を示して止まる

…出た目は…

 

 

「6だ!よって、俺は6枚ドローし、その後デッキの上から6除外!」

 

 

今までのデュエルなどなかったかのように、万丈目君の手札が回復する

 

 

「魔法カード『レベル・ブラスト』発動!こいつは、手札のモンスター1体のレベルをライフ500支払う毎に1つ下げる!1500ポイントのライフを払うことで、手札の『ハリケイン・ドラゴン』のレベルを7から4に下げ、召喚!」

 

 

万丈目:LP3600→2100

 

ハリケイン・ドラゴン:

★7→4 ATK2200

 

 

万丈目君は大きなリスクを負いながらも、巨大なファンを内蔵したようなドラゴンを繰り出す

 

 

「さらに、ドラゴン族がいることで『スタンピング・クラッシュ』を発動!フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊して、500ポイントのダメージを与える!天上院君の伏せカードを破壊だ!」

 

 

明日香:LP1600→1100

 

 

「バトルだ!『ハリケイン・ドラゴン』の効果発動!ターンの終わりまで攻撃力を半分にすることで、相手モンスター全てに攻撃ができる!行け、『おジャマトークン』全てを攻撃!」

 

 

…すごい…、相手の場のモンスターを全滅…

しかも、『おジャマトークン』を破壊した時、1体につき相手に300のダメージ…つまり、900のダメージが発生する

 

 

「うぅ…!」

 

 

明日香:LP1100→200

 

 

「そして、魔法カード『ドラゴニック・タクティクス』発動!ドラゴン族モンスターが相手モンスターを破壊した時、自分フィールドのモンスター2体を生け贄にしてデッキから新たにレベル8のドラゴンを召喚する!『ハリケイン・ドラゴン』と『おジャマ・ナイト』を生け贄に捧げる!俺に力を貸してくれ!『光と闇の竜 ライトアンドダークネス・ドラゴン』!」

 

 

光と闇の竜:

★8 ATK2800

 

 

その半身に光を、もう一方の半身に闇を宿した未だかつて見たことのないようなドラゴンが降臨する

…この気迫…、これがこのデュエルにおける彼の想いの象徴なのだろうか…

 

 

「『ドラゴニック・タクティクス』は発動後、自分のバトルフェイズを終了させる。よって、このターンでの追撃はできない。俺はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

 

万丈目:LP2100

フィールド:

【モンスター】

光と闇の竜:

★8 ATK2800

【魔法・罠】

伏せカード3枚

手札:0枚

 

 

「さすがね、万丈目君。いつものあなたらしい気迫を感じるわ。でも、まだまだこれからよ!私のターン!」

 

 

普段通りの万丈目君のデュエルに明日香さんも少し笑顔になる。しかし、彼女の手札もこれで6枚…。まだ油断はできない

 

 

「魔法カード『大嵐』を発動!フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊するわ!」

「無駄だ、天上院君。『光と闇の竜』がいる限り、その攻撃力と守備力を500下げることで、発動した効果は全て無効となる!」

 

 

光と闇の竜:

ATK2800→2300

DEF2400→1900

 

 

万丈目君のフィールドの伏せカードを一掃しようとするも、『光と闇の竜』によって防がれる

…これは実に厄介な状況だ…。『光と闇の竜』が存在する状況でカードの効果を使いたい場合、効果を4回使った時の守備力400まで下げるか、バトルによって破壊するかのどちらかの手法を取る必要がある。(わざと囮のカードを発動しつつ速攻魔法などで除去する方法もあるが…)

デッキによっては後者の戦術を取ることが可能だと思われるが、明日香さんのデッキは低攻撃力のモンスターを使いつつ融合や儀式の魔法によって強力モンスターで決着をつけるデッキ…。厳しいものがある…

しかし、明日香さんは『ハリケーン』、『サイクロン』、『祝福の教会―リチューアル・チャーチ』と、次々に魔法を繰り出して『光と闇の竜』の攻撃力を800(守備力を400)まで下げることに成功した

そして、『強欲な壺』と『貪欲な壺』で合計4枚のカードをドローして戦術を立て直する

 

 

「儀式魔法『機械天使の儀式』を発動!レベルの合計が6になるように手札からレベル6の『サイバー・プリマ』を墓地に送り、レベル6の儀式モンスター『サイバー・エンジェル―弁天―』を儀式召喚!」

 

 

サイバー・エンジェル―弁天―:

★6 ATK1800

 

 

扇子を携えた女性型のモンスターが姿を現す

…『バーストレディ』に少し似ている気がする

 

 

「さらに、装備魔法『リチュアル・ウェポン』を『弁天』に装備!その効果により、攻撃力を1500ポイントアップ!」

 

 

サイバー・エンジェル―弁天―:

★6 ATK1800→3300

 

 

「『サイバー・エンジェル―弁天―』で『光と闇の竜』を攻撃!」

 

 

迫り来る攻撃に、万丈目君はやってくれるな…と呟くと、これを予期していたかのように『清水の弊害』を発動する

 

 

「天上院君、君なら『光と闇の竜』の効果を突破してくると思っていた。速攻魔法『清水の弊害』は、対象モンスターの攻撃力と守備力を元に戻す!」

 

 

光と闇の竜:

ATK800→2800

 

万丈目:LP2100→1600

 

 

それでも攻撃力3300は予想外のようで、2800では歯が立たないようだが、それを彼が気にした様子はなかった

 

 

「この状態の『光と闇』を倒すとはな…。だが、俺とてそれを予期していなかったわけじゃない!この瞬間、『光と闇』のさらなる効果を発動!このカードが破壊された時、自分フィールドのカードを全て破壊する!そして、俺の伏せカードの1枚は『黒いペンダント』。こいつが墓地に送られた時、君は500ポイントのダメージを受けて敗北する。俺の勝ちだ、天上院君!」

 

 

…すごい、万丈目君は相手の二手、三手を想定しながら、その全てに対して手を打っている…

そう考えていると、明日香さんもフフと笑っていた

 

 

「見事ね、万丈目君。でも、その効果が発動する前に『弁天』の効果が発動しているわ。『弁天』は相手モンスターを破壊した時、その元々の守備力分のダメージを与えるのよ」

 

 

『光と闇の竜』の守備力は2400…、と言うことは…

 

 

万丈目:LP1600→0

 

 

膝をつく万丈目君とそこへ近づく明日香さん…

 

 

「万丈目君、私」

「言うな、天上院君。俺はデュエルに敗れた。今の俺には君を愛する資格はない。だが、俺が強くなったと認められる時が来たら、またここでデュエルを受けてほしい」

 

 

その堂々とした態度に、明日香さんは一言「ええ」と微笑みながら返した

こうして、1人の男の小さな、しかし大きな決意は幕を閉じたのであった

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

そんな1人の男の決意から少し経ち、進級試験が近付いた時期に、もう1人、決断を迫られている人がいた

 

 

「やったな隼人、インダストリアル・イリュージョン社に推薦だって?明日の進級試験がんばれよ!」

 

 

そう、なんと、レッド寮の隼人さんがインダストリアル・イリュージョン社のコンクールで優勝し、彼の描いたデザインがカード化されたらしい。そして、そのインダストリアル・イリュージョン社の会長であるペガサス氏が、アカデミアが推薦するのであればスカウトしたいと言ってきたのである。

もちろん、十代君をはじめとする私たちは、彼に訪れた機会を大変めでたく思ったものである。彼を慕う大原君は絶賛していたくらいだ

 

しかし、隼人さん本人は言い知れないプレッシャーに苛まれていた。実は、隼人さんは去年留年し、今年には何とか進級を決めなければならないようだった。それでも彼は、デュエルが好き、カードに関わっていきたいと事あるごとにもらし、そんな様子から私たちにもその気持ちは十分伝わってきていた。何より、(十代君たち曰く)毎日日が昇るまでデッキを組んでいることがそれを証明している

そして今、隼人さんの夢に近づく機会が訪れようとしている。隼人さんのデュエルを続ける情熱が、根気が、そして努力が彼をここに結びつけたのだ

アカデミア側はこの事に対しては前向きであるものの、クロノス先生が待ったをかけた。先生が言うには、やはり隼人さんの留年の件が気になるところであり、推薦がほしくば進級試験で自分を納得させてみろとのことであった

…なるほど、先生らしく厳しいやり方だ

クロノス先生は、顔はもとより自分の教育方針においては手を抜かない厳格な方だ。そして、その一途な性格から時おり頑固者になることもある。私も、デュエルの時はカードや戦術についての違いで衝突し、口論になったことも何度かあった。そして、その度に『サイバーポッド』や『ニュードリュア』などの下級モンスターで、先生の上級モンスターを葬っていたのは今となっては懐かしい思い出である。しかし、その反面、わからないところはトコトンまで粘って教えてくれたり、壁を1つ乗り越えた生徒がいると普段は強面なその顔に笑顔を見せて一緒に喜んでくれたりと、とても子ども想いの先生でもあった

今回のことは、そんな2つの側面を持った不器用な教師なりの結論であった

 

 

「これより、シニョール前田の進級試験デュエルを開始するノーネ!」

「よろしくお願いします!」

 

 

 

当日、ついに始まった進級試験

隼人さんの後ろには、いつもの仲間が揃っている

デュエルの戦局は、序盤から『古代の機械巨人』を召喚したクロノス先生に傾いていた。その高い攻撃力と貫通能力をいかんなく発揮し、隼人さんを追い詰めていく

対する隼人さんも負けてはいない。序盤を下級モンスターたちで耐えながら『ビッグ・コアラ』を特殊召喚し、『野生解放』と『キャトルミューティレーション』のコンボで『古代』モンスターを一掃した

この流れにクロノス先生は一瞬顔を綻ばせるも、すぐさま2体目の『機械巨人』を召喚して反撃に出た

 

 

隼人:LP800

フィールド:

【モンスター】

なし

【魔法・罠】

伏せカード1枚

手札:3枚

 

 

クロノス :LP1500

フィールド:

【モンスター】

古代の機械巨人:

★8 ATK3000

【魔法・罠】

伏せカード1枚

手札:0枚

 

 

デュエルは隼人さんにとって、圧倒的に不利。しかし、彼の目は力強く、勝負を諦めたものではなかった

そんな隼人さんに対する仲間たちからの応援も、勢いを失うことはなかった。なぜならば、皆彼の気持ちを、思いの強さを知っていたから…

 

 

「この一年間、みんなに教わったことがあるんだな。それは、どんなデュエルでも楽しいってことなんだな…。こんな楽しいデュエルができるだけでも、デュエルをやめなくて良かったんだな!」

 

 

そう言う隼人さんの表情は輝いていた

反撃の始まりは、隼人さんがデザインした魔法カード『エアーズロック・サンライズ』だった。復活させた『ビッグ・コアラ』と『デス・カンガルー』を融合し、エースモンスター『マスター・オブ・OZ』を召喚、さらに『エアーズロック・サンライズ』の援護を受けて『機械巨人』を弱体化させることに成功した

 

 

「俺はもう、迷わないんだな!これが、俺の1年間の集大成なんだな!行け、『マスター・オブ・OZ』!《エアァーズ・ロッキーー》!」

 

 

マスター・オブ・OZ:

ATK4200

古代の機械巨人:

ATK2600

 

 

力一杯に叫ぶ隼人さんの声を受けて『古代の機械巨人』に攻撃を繰り出す

…これが通れば…!

 

 

「…素晴らしいノーネ。できれば、このまま…」

 

 

対するクロノス先生は、生徒の成長を喜ぶような優しい顔をしていた。しかし、目を閉じて開眼すると、何かを決意したような教師の目になっていた

 

 

「速攻魔法『リミッター解除』発動!」

 

 

『リミッター解除』は機械族の攻撃力を2倍にするカード

 

 

古代の機械巨人:

ATK2600→5200

 

 

「くっ!届かなかったんだな…、でも諦めたくないんだな!罠カードオープン!『掠める弾丸』!このカードはダメージ計算時にモンスター同士のバトルを行う代わりに、バトルするモンスター同士が互いのプレイヤーにダイレクトアタックするんだな!」

 

 

隼人:LP800

 

クロノス:LP1500

 

 

…互いのライフは、お互いの攻撃モンスターの攻撃力を下回っている

 

 

「自分の限界は自分で決めたくないんだな!壁は、掠ってでも乗り越えてやるんだな!これが、俺の覚悟なんだな!行け、『マスター・オブ・OZ』!チェストオォォ!!」

 

 

隼人:LP800→0

 

クロノス:LP1500→0

 

 

2体のモンスターの攻撃は『機械巨人』のクロスカウンターをすり抜けて、互いのプレイヤーに直撃する

…すごい、これが隼人さんの夢をつかみたいという気持ちなんだ…、それでも…

そう思いながらデュエルフィールドを見ていると、デュエルディスクを収めたクロノス先生が隼人さんに近づいてきた

 

 

「シニョール前田、あなたは私には勝てなかったノーネ」

 

 

厳しい表情でそう述べた後、今度は優しげな表情を浮かべた

 

 

「しかし、デュエルの内容は、あなた自身の覚悟が伝わってくる良いものだったノーネ。全く、ムチャをするノーネ…。これからは、インダストリアル・イリュージョン社でしっかりやるノーネ。」

 

 

つまりこれは、隼人さんのインダストリアル・イリュージョン社への推薦を決定したことを意味していた

これを受けて、私たちは大いに喜んだ。クロノス先生の「たまには、連絡をするノーネ」との言葉を後に、様々な称賛を受けていた。中でも、隼人さんを慕っていた大原君は涙ながらにお礼を述べた後、「今度はお前の番なんだな。お前と一緒に仕事ができる日を、楽しみにしているんだな!」と力強い激励を送っていた

こうして、1人の先輩は、卒業より1足早く夢に向かって飛び立っていった

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

このようにして思い起こしてみると、様々な人の覚悟や決意が目に浮かぶ。しかし、今日は今日でそれに勝るとも劣らないデュエルを目撃した。そう、卒業生と在校生のそれぞれの代表同士のデュエル…

少し暗くなった空を照らす灯台の灯りを見つめながら、今日の事を振り返る

“パーフェクトだぜ、カイザー”

“フ、残念だが、俺も未だパーフェクトにはたどり着けていない。いや、パーフェクトは己自身の限界を示す数値でしかないのだ。十代、お前は、まやかしの完成を求めるな!お前は、いや、俺たちはもっと高みを目指せる!そのことを、忘れるな!”

 

 

E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン:

ATK20900

サイバー・エンド・ドラゴン:

ATK36900

 

 

“いくぜ、カイザー!”

“来い、十代!”

 

 

十代:LP100→0

 

亮:LP550→0

 

 

断片的に脳裏に浮かぶ、今日のデュエル。それは、在校生と卒業生とが全校生徒へと送る卒業模範デュエルであり、十代君と亮さんとの死闘を越えた熱いデュエル…。

その時、背後からこちらに向かう足音が聞こえてきた

…思い返す必要もないようだ…

 

 

 

「すまない、待たせたな」

 

 

声の主、そして卒業生代表として模範デュエルを行った亮さんがそこにいた

 

 

「いえ、僕もこれまでのことを振り返っていましたから」

 

 

そう言うと、私は腰掛けていたDホイールから立ち上がって、ホイールのボタンを押す

 

 

「モーメント・アウト」

 

 

ホイールのディスクを外して右腕に装着する

…思えば、亮さんとの出会も、このDホイールだったんだっけ…。あの時は決着が着かないで終わってしまった。形こそ引き分けだったけど、実質的にはカードを見誤った私の負け…

 

その時の悔しさは今でも忘れてはいない。そして、あの時の熱い気持ちも…

あの時から約1年、私を取り巻く状況も私自身も大きく変わったと思う

 

 

 

「1年前、お前は俺にこの場所でデュエルを挑んできた。そして、お前が完璧と称されていた俺のデュエルを打ち破った時、それまでの俺自身の考えが愚かであったと気付かされた」

 

 

 

…打ち破ったか…

 

 

 

「いいえ、あれは打ち破ってなどいません。ただ、負けず嫌いだっただけです」

 

 

 

実際にそうだ。あれは、私自身の自滅にすぎない

 

 

 

「フ、確かにそうかもしれんな。しかし、あのデュエルは当然のように勝ち続けていた俺に、考えるきっかけを与えてくれた。おかげで、パーフェクトという幻想から正気を取り戻すことができた。感謝している」

 

 

 

 

予期しなかった言葉に、どう返せばいいのか迷っていると、亮さんはさらに続けてきた

 

 

 

「俺はあのデュエルによって衝撃を受けた。お前も、そうではないのか?」

 

 

 

…私?…私は…、ただ熱くなって、悔しくて…。そうかあの時はただ…

 

 

 

「俺たちはデュエルを通して、絶えず成長を続けている。今この瞬間もな」

 

 

 

…そうだ。私はデュエルのことを…。デュエルは好きだ。その気持ちに偽りはない。

でも、デュエルのことは手段であると割り切っていたんだ…。ちょうど、この間までこの世界を、ただ記憶を取り戻すためだけの世界だと位置づけていたように…

あの時、意図せずとも気付いていたんだ…

 

 

 

「…」

 

 

 

お互いに少し笑えてくる

 

 

 

「だが、そのこととデュエルの勝敗は別だ。借りはしっかりと返す主義でな。俺は、こう見えて負けず嫌いなんだ」

 

「知っていますよ。僕も、未練を残したまま、終わらせたくはありません」

 

「ならば、お互い決着をつけるしかないようだな」

 

「望むところです」

 

 

 

デュエルディスクの起動音が響く

 

 

 

「このデュエル、本気でいくぞ!」

「ええ、こちらこそ!」

「「デュエル!」」




第30話終わりです。
今回は様々な人の決断を主人公視点の回想で見てきました。アニメと少し時系列が変わっているので、内容が変化している部分もあります。
その1つ目が、吹雪さん主導のラブ・デュエル回です。変更点としては、七星門の鍵が関わらないこと、万丈目君の性格やカードが漫画よりであることです。アニメではギャグ回として扱われていましたが、男の一大決心ともいえる告白イベントをギャグで終わらせるのはもったいないと思い、万丈目君をかっこよく、決意が伝わるようにと改変した結果こうなりました。後悔はしていないです。
2つ目は、隼人君のインダストリアル・イリュージョン社への旅立ち回です。アニメで見ると、彼自身の決意がよく伝わってきます。その士気に押され、想いを届かせたいと考えた結果こうなりました。掠ってギリギリでも届かせたいという気持ちが伝わればと思います。

さて、GX1年も大詰めです。次回は、本小説9話のリベンジマッチです。彼らは、デュエルでどのような結末を描くのか

それでは、また
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