秋葉原ドーターズ   作:waguna

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Case.2 秋葉原ドーター事件?

重い足で帰り、夕食を済ませ、入浴をし、俺は自分の部屋に真っ直ぐ向かいベッドに身を投げた。殺人現場なんて人生の中でも見るか見れないかだ。だが、やはり今思ってもあれは不可解な点が多すぎるのだ。

 

なぜ、あの人ごみであそこまでの犯行ができたのか。

 

女の顔の縫合、約20cmの牛刀包丁を胴体貫通。幸い、あの後二次被害は出なかった。ということは狙いはあの女だけだったということになる。しかも思いつきであそこまでできるはずがない。これは事前に計画されていた犯行だと言える。俺はもう頭痛どころではなくなってしまった。俺はすぐノートパソコンを開いた。早速ニュースの動画や被害者の詳細が書いてある。内容は以下のとおりであった。

 

『今日16時前後、東京、秋葉原の歩行者天国にて女性が刺殺されました。被害者は〇〇市在住の笹倉 綾さん(ささくら あや)、25歳。秋葉原のキャバクラでの通勤時間と重なった模様です。通報があり、ただちに救急車が駆け付けましたが搬送先の病院で死亡が確認されました。警察は殺人事件として操作を進めています。尚、近隣の住宅のみなさま、歩行者天国利用者様は十分警戒するよう心掛けてください。犯人は今も逃走中とのことです。』

 

まぁテレビで放映するにしたら安易な表現になるだろう。やはり顔の縫合や、考えられる意図については表現できないはずである。だがしかし、最近のネットはこんなところじゃ終わらない。秋葉原歩行者天国とキーを打つとすぐに表示される。すると全ての検索結果に該当するワードが出てきた。

 

「ドーター秋葉原に現る」

 

ドーター?なんだそれは。調べてみるとそれはDoll(人形)の姿をした人間のことを呼称しているらしい。なんでも犯行に使われるのは銃だったりナイフだったり様々だが被害者はまるで人形のように針と糸、ボタンと綿で縫合されるのだ。今迄の被害者数計16人。全てに当てはまる。ドーターは人を見て殺すのだ。そう綴られている。俺は今日すごいものを目の当たりにしたのかもしれない。こんなことが起きていたなんて…。

 

すると、携帯のバイブが鳴った。天音からの着信だ。興奮で忘れていた頭痛がまた戻ってきた。

天音「明楽?ねえねえニュースみた?すごいことになっちゃったね! 私友達から聞いたんだけどドーターって奴の犯行らしいよ!」

明楽「はいはい、もうとっくに調べたよ。」

天音「さすが明楽!じゃあこれは知ってる?ドーターの手口。」

明楽「は?何それ手口って。」

天音「なんかさ、相手の心の闇っていうのを引きずり出すんだって。嫌なことを思い出させるの。それで錯乱させて殺しちゃうんだって!ちなみに、今日殺されたあの女の人は15歳の時に妊娠して男に逃げられて、産んですぐに孤児院に預けたらしいよ。挙句にキャバで働いてたんでしょ?闇ありすぎだよね〜。」

明楽「何が闇だよ…。心理的なものかよ。」

天音「だってー!陽向が言ってたんだよ?明日3人でそれについてはなそーよ!」

明楽「なんでそんなに元気なんだよ…。」

天音「通常運転ですよー。それじゃあまた明日ね!」

 

天音は昔からそうだ。自分でペースを作って猪突猛進とも言えるほど真っ直ぐに突き進んでいく。自分から何もしない俺からしたら有難い話なのかもしれないのだが。とりあえず、明日の学校はまた五月蝿いことになりそうだ。時計に目をやると時間はすでに22時になっていた。俺は静かに目を閉じた。

 

 

 

そして、次の日の学校は秋葉原のドーター事件について騒がれていた。目撃者がいたり、ニュースなどで知ったりした奴が多数いたようだ。天音はというと登下校は一緒なのだが、クラスが離れているためあまり顔を合わせる機会はない。だが、昼食の時間になると中庭に連れ出しにわざわざクラスに顔を出してくるのだ。

 

天音「あ、明楽遅いよー!先に食べちゃおうかと思ってたとこ!」

明楽「遅いったって、まだ陽向が来てないじゃないか。どこに行ったんだ?」

天音「今日は遅刻したから、購買で買い弁だって。もうすぐ来ると思うけど…。」

陽向「わりー、わりー!遅くなった!」

遠くからする声に振り向くと、爽やかな好青年が息を切らして近づいてくるのが見えた。

こいつは、綿谷 陽向(わたや はるた)。バスケ部のエースで、もう1人の俺の幼なじみである。

 

陽向「でも昨日天音の話聞いてびびったよ、あの現場にいたんだって?超グロかったんだろ、俺無理だわ…。」

明楽「飯中に話す話題じゃねぇだろ…。おい、食いながら話すな。」

天音「そうなの。すごい緊迫してた。ちょうど私と明楽が帰り道の歩行者天国のところを歩いてたら、何人かが対応してたの。」

陽向「歩行者天国かー。あそこで殺人あっても人ごみに紛れて見えないし、犯行後もすぐ紛れて隠れられるしな。絶好の場所だったんだろうな…めっちゃこえーよ。」

天音「今日も帰りあそこ通るんだよね。てか、通らなくちゃ帰れないし。怖いけど明楽がいるから大丈夫だよね、多分!」

明楽「買い被らないでくれ…。やられるならお前だけにしてほしいんだが。」

天音「ちょっとひどーい!明楽の馬鹿!」

陽向「はは!違いねぇな!」

天音「陽向まで!もう、二人ともきらいー!」

不思議だ。昨日の事件の残酷さを目の当たりにしたというのに、友達の前だと笑い話にもなる。俺の秋葉原ドーター事件に関する興味は薄れてゆき、もう過去の出来事として後々思い出すことがあるかわからないような印象で忘れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……はずだったのだ。

 

 

 

 

 

 

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