午後4時30分になろうとしていた。まだ肌寒い6月の梅雨の季節の中、日が落ちるのは早いものだった。夕日は秋葉原の建物に消えようとしていた。俺と天音は何十回、何百回も通っているであろう家路についていた。歩行者天国というのは時間制である。この季節は午後1時から午後6時までがその時間帯にあたる。昨日もこの時間帯だったはずだ。そして昨日の事件はなかったかのようにいつも通りの歩行者天国であったのだ。俺と天音は歩行者天国から外れた道に出て、あと10分のところに家がある。その外れた道は歩行者天国とは一風変わって人通りが少ないのだ。他愛もない話をしながら俺は天音と足を前に進めていた。
俺の少し後ろを歩いていた天音が急に足を止めた。俺の視線は話をしていた天音をずっと捉えていた。
明楽「天音?」
天音の様子がおかしい。目がうつろになり、ぼーっとしていて立ち尽くしている。
明楽「おい、天音?…天音!」
肩を揺さぶる。すると天音は眼球を大きく開け、頭を抱えて地面に座り込む。
天音「イヤァァァァァァァァァァ!!!!いっ、いたっ、痛いィィィ!!!」
天音の異常な行動に戸惑った。天音の両肩を掴み、揺さぶる。
明楽「落ち着け!天音!聞こえてるか!?天音!」
天音は嗚咽を吐き頭を抑えてどこを向いているかわからないほど、パニック状態になっていた。
明楽「天音!!!!!!!!!!!」
大声に反応して動きが硬直した。天音そのまま俺の方へ倒れこむ。気を失ってしまったようだ。何だ今の症状は…。天音とはずっと同じ学校で、家も隣だ。今まで持病などの話は聞いたことがない。命に関わるかもしれない、病院に
??「ねぇ、その女あなたのなぁに?」
透き通った鋭い声が耳を通った。後ろを向くと少女が立っていた。俺らと同じくらい…高校生のような外見だ。缶バッチのついたニット帽を被り、白のトレーナーと赤のチェックのスカートを着た少女だ。足にはローラースケートのようなものを履いている。目撃者だ。
明楽「すみません、救急車を呼んでくれませんか。」
??「その女あなたのなぁに?」
二度同じことを言われた。俺は質問に答える。
明楽「幼馴染です。小学校から一緒の…すみません、具合が悪いようなので救急車を…。」
??「私はあなたのなぁに?」
明楽「えっ?」
俺は女性の顔を見上げた。見覚えがない。初対面のはずだ。
??「あなたは思い出さなくちゃいけない。」
意味がわからず呆気な声を自然に出そうとしても出なかった。
瞬間にその理由が眼に映る。赤い液体が俺の膝に横たわる天音の頬に溢れていた。
そして俺の意識は宙に投げ出された。