前回、エルファーデ型に勝利したガイアディア/大神 影人、彼の前に現れたジャスティス…果たしてレジスタンスとは一体……?
「私とともに、レジスタンスに来ていただけませんか?」
エルファーデ型を倒したガイアディアの元に現れたジャスティスと名乗る人型の異形は、ガイアディアと邂逅するなり、こう告げてきた。
「レジスタンス?……って確か“抵抗”って意味だったよな…まさか、マイシスに抵抗するってことか?」
「ご名答!もし、あなたも聖獣の力でマイシスを倒す…というのでしたら、ぜひとも私たちに協力していただけませんか?……まぁここで話すのもあれですし、場所を変えましょう…クロスディア」
ジャスティスは自身の傍にいる紫の翼竜の名を呼ぶ。するとその翼竜…クロスディアの目が光り、ガイアディアもその光に包まれる…
――――
光が収まると、そこは先程までいた教室とは異なり、とても近代的な基地のような場所だった。
「ここにマイシスはいません。ですから、人間の姿に戻っていいですよ?」
ジャスティスの声が響く。しかしガイアディア……いや、影人は困惑していた。
「な、なぁ、人間の姿に戻っていいって言われても、どうすりゃいいんだ?」
そう、ガイアディアの姿から影人の姿に戻る方法がわからないのだ。それもそのはず、影人はわけもわからず、ただ生き続けたいという願いで聖獣と契約をし、そのままエルファーデ型を倒した。元に戻る方法など知る由もない。
するとガイアディアの頭上に円の内部に正八角形の紋章のある魔法陣が現れる。それが足元に降りていくと、ガイアディアの姿から影人に戻る。
「ふぅ、戻れた…にしてもどこなんだ?ここ…」
試しに辺りを見渡す。様々な人々が動き回り、ある者はキーボードで何かを打ち込み、またある者は何かを運んでいる。
「驚きました?突然秘密基地みたいなところに連れられて」
背後からジャスティスのような声が聞こえる。しかし振り向くと、そこいたのは、
薄い紫の長髪でストレートの髪、ワイシャツの上に黒いブレザー、そして膝あたりまでの黒いスカート…まるでクールビューティーという形容が似合う女性だった。
「初めまして、アスヴェルの聖獣さん」
その女性は、影人が自分の方を向いたのを確認すると、影人に会釈をする。
「改めて…私は土星…フォネクの聖獣クロスディアの所有者、時縞エリと申します」
「えっと…大神 影人って言います…」
影人も自己紹介をする。するとエリは影人に近づきその顔をまじまじと上目で見つめる。
「え、ちょ!?」
あまりに突然、そして慣れていない異性の行動に影人は顔を赤くする。エリにとってその反応は予想外だったのか、クスッと笑う。
「こういうのは苦手なんですね…しかし名前に“神”と“影”ですか…なんだか、生まれた時から聖獣と契約することを運命付けられた感じですね」
「は、はぁ…ところで、その聖獣っていうのは何なんですか?それと、ガイアディアやあなたは地球のことをアスヴェルって言ってるのも気になるし」
「あ、そうですよね…突然言われてもですよね…よし!」
するとエリが一度胸の辺りを叩き高らかに言う。
「ということで、この私、時縞 エリが、聖獣やマイシスに関することをバッチリ説明しますよ!」
そしてエリは近くのテーブルに置いてあったタブレットを取り、その中にある映像を影人に見せる。そこには太陽系の星々が映っていた。
「これが今の太陽系です。影人さんも習ったと思いますが、この太陽系には、
水、金、地、火、木、土、天、海の惑星、そして最近準惑星に降格した冥王星、そして恒星である太陽と、特に目立つ星々が10あります。
聖獣《マイソロジー》というのは、こういった全ての星々に必ず一体は存在すると言われる生命体のことです。彼らの中には、『自分の星を守るためには他の星を破壊する』という意思があるらしく、彼らの意思により、幾度となく争いが繰り広げられていました。
これが“崩壊の神話”…別名カタストロフと呼ばれるものです」
そしてエリは映像を変える、その映像は、人間より少し大きい竜人のような怪物が、街を破壊している様子である。
「ご存知の通り、これはどこからともな現れる生命体、影無《エイム》と呼ばれるものです。そしてこれがエルファーデ型…おそらく量産機的な扱いの影無だと思われます。そして影無はある者たちの意思で動かされているんです……」
「マイシス…ですか?」
エリは静かに頷いた。
「そうです…
マイシス、彼らの目的は詳しくはわかっていません。しかし、
地球を破壊させないために人類を滅亡させる。
“崩壊の神話”を繰り返す。
という矛盾した目的を持っているんです。しかし、カタストロフが関係している以上、マイシスも聖獣を所有しているものと推測されます…
そしてさらに驚くことに、この数年間で、マイシスによって殺された人は…
宣戦布告以前の世界の人口のおよそ6分の1にあたる、十億人なんです」
「じ、十億人!?」
想像し難いほどの数に、影人はそれ以上の言葉がでなかった。
「驚くのも無理ないですよね…十億人っていうと、ピーク時のインドの総人口ぐらいですから。
国連も軍を用いて影無に抗戦しましたが、影無には手も足もでなかったそうです…………
そ、こ、で!」
エリは大げさに両手を広げる。
「立ち上がったのが私たち…
“国防省所属聖獣神話研究機関及び対マイシス武装認可組織 レジスタンス”です!」
「な、長いですね…」
影人はそのレジスタンスの肩書きの長さに唖然としていた。そしてさらにこの瞬間、影人の中でのエリのクールビューティーという印象は、崩れかけ始めていた。
「まぁまぁ、この自分でも長いだろと思う正式名称は置いといて…
レジスタンスは、この正式名称の通り、聖獣に関することを研究したり、影無が現れた時には自衛隊とともに排除にあたったりその他諸々と、多岐に渡る活動をしてるんです。今ここにはいないんですけど、私の他にあと二人、聖獣の所有者がいるんですよ?」
そしてエリは影人を指さす。
「そして影人さん、このことは、もうあなたにとっては対岸の火事ではないんです。聖獣の力を継承したということは、あなたも、いずれはマイシスかレジスタンス…はたまた全く別の第三勢力として、この戦いに参加することになるかもしれないんです」
「……戦う以外…ないんですね…」
「はい…あ、あの…差し支えがなければでいいんですけど、影人さんがガイアディアと契約した経緯を、聞かせてくれませんか?」
影人は洗いざらいすべてを話した。学校に影無が現れたこと、そして影無に囲まれた時、“生きたい”と願ったことにより聖獣と契約したことを…
話を聞いたエリは、顎に拳を置き、『うーん…』と唸りながら何かを考えていた。そして、
「わかりました、では、今の影人さんの状況をわかりやすく例えてみましょう。
まず、影人さんは沖で遭難していたとします。これが影無に囲まれた時です。そこに聖獣という名の助け船がやってきて、影人さんはそれに乗った。
しかし、その船には“世界の行く末”というとてつもない荷物が積まれていて…しかもその船を漕いでいた人が消える…
船の漕ぎ手を任されたあなたの進む先には、“破滅”と“希望”という二つの島があり、このどちらかに、この“世界の行く末”という荷物を置かなくてはいけない……これが今の状況です」
「世界の……行く末……」
これが空想物だったらどれだけ壮大な作品ができあがるだろうか…影人はそんなことを思っていた。だが、薄々影人も感じていた。
影無を一発で倒せるほどの力を持つ聖獣なら、惑星を破壊することなど容易いのではと…
「影人さん、私は、あなたがどんな道を行こうとも、責めるつもりはありません。レジスタンスなら味方同士、マイシスなら敵同士……
手に入れてしまった力に戸惑い悩むかもしれません。ですが、世界はそれを待たないかもしれないということも、知っておいてください」
影人の手を取りエリはこう言った。さらに続ける。
「でもまぁ、これも聖獣を所有した者同士の何かの縁です。味方であれ敵であれ、よろしくお願いしますね?影人さん」
「……はい!」
この時、こころなしか影人の手を、エリが強く握ったように錯覚した。
――――
「それでは、また会う時まで」
クロノディアと共に空間の裂け目へと入っていった影人を、エリは手を振りながら見送っていた。
「………いいのか?こっちに誘い込まなくて」
エリのもとに、黒いシャツに黄色いパーカー、そしてダメージジーンズを着た茶髪のボサッとした髪の男性がやってくる。
「あ、疾風さん、戻ったんですね」
「ちょっと前にな…もしアスヴェルの聖獣がマイシス側についたらどうするつもりだ?」
「その時はその時です。それに、」
エリはニッコリと笑う。
「彼はきっと私たちについてきてくれます…まぁ私の勘ですが。
さて、私は撮りだめしてた特撮を見ないといけないのでこれで……」
エリはその部屋の出口へと向かおうとする。しかし、疾風がそれを許さず、エリのYシャツの襟を掴む。
「残念だがまだ仕事が残ってるぞ…荒れた都市の再生とかがな」
「う…それは他の人には任せられませんね…」
エリはしょんぼりとしていた…
――――
影人は、星見高校の校庭にいた。人は誰ひとりとしていない。時間としては昼休みの頃だ、誰かしらは活動していてもおかしくはない…影無の襲撃により、それぞれの家に帰ったのだろう。
「さて、試しに行ってみるかね…」
―――――
高校の地下には、影無が襲撃してきた時のために、フィルターがある。そこで影人は、一人ぼっちでしゃがみ、声をあげ泣いている女性を見つけた。周囲は暗くなっている。
「京香」
「か………げと?」
泣いていた女性……京香は立ち上がり、影人の顔をまじまじと見つめた。
「嘘……だって影人はあの時影無に襲われて…」
「勝手に人を殺すな。まぁいろいろあって…それにあんなとこで死んでられないから…」
京香の顔からさらに涙がこぼれる。しかしその顔には笑みがこぼれていた。
「影人のバカ…このバカゲト!影人がいなくなったら……私……」
京香は影人を叩きながら泣きじゃくる。
「ちょ、痛い!?てかなんだバカゲトって!」
京香の行動に驚きながらも、影人は静かに笑っていた。
次回予告
偶然手にした力、その使い方によっては世界を滅ぼす…苦悩する日々、しかし世界がそれを焦らせる…
次回『偶然は必然へ』新たな神話のページを刻め…
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ということで第二話いかがでしょうか?聖獣やマイシスといった、大まかな世界観の説明となった今回。そして聖獣の力を得た影人の行方は…
次回もお楽しみに!感想お待ちしております!