聖獣の力について知った影人、果たして彼はどうするのか…それではどうぞ!
「…………ハァ…………」
帰宅の路、影人はため息をついていた。ようやく休息ができるというのもあるが…
(まさか、世界の命運を左右するほどの力を秘めてるなんて…)
偶然手にした、聖獣の力に困惑していた。ただ『あの場で死にたくない』という思いから手にした、世界の行く末を左右する力に…
「影人?どうかしたの?」
共に歩く京香が尋ねてくる。
「え!?…いや…ただ、疲れちゃってさ…」
「そっか…それもそうだよね。ねぇ、少し休んだら、聞かせて?影人がどうやってあの状況から脱出できたか」
影人は困った表情をする。いきなり『惑星の守り神』とか『世界の行く末』などと言っても、信じてもらえるわけがない。そう思っているのだ。
「あぁっと…それには諸々の事情があって…」
「そ、そうなんだ…無理に話させるのもあれだよね…」
それを最後にどこか重苦しい空気がただよっていた。
「ね、ねぇ影人、せっかく無事だったんだしさ、どこか寄っていかない?」
その空気をどうにかしようと京香が影人に語りかける。
「?……あ、あぁ、そうだな!」
影人も慌ててそれに応答した。
(……やっぱ京香には話せないな…聖獣のこと…)
――――――
真っ暗な闇の中、人型の異形たちが集まっていた。その周りには多数の影無がいる。
「おいエイロス!一体何時まで影無どもに任せているつもりだ!いい加減レジスタンスどもの聖獣と戦わせろ!」
その中で、赤い異形は黒き異形……エイロスに向かって怒鳴り散らしていた。
「まったく…うるさいよグレア、エイロスにはエイロスの考えがあるんだからさ」
激昴する赤い異形:グレアを青い異形が呆れた様子で諭す。
「アクアリエ、やつらは人間の味方をしているんだぞ?ならやつらを始末した方が、人間の殲滅という我々の計画も進むというものじゃないのか?」
「でも、その後の“崩壊の神話”には、少なくともカナンの聖獣となりうるベゼルとエンドロフの聖獣、そしてより多くの聖獣が必要なんだ。無下に聖獣を倒してくのもね…」
「確かに、アクアリエの言う通りです。今はまだ我々が出るタイミングではないんです、このままを維持しましょう」
「そのせいで人間は影無に似たものを開発したんじゃないのか!」
エイロスと青い異形…アクアリエの態度に怒りの収まらないグレアは、近くにいたエルファーデ型の影無を殴る。その拳には炎が纏われていて、その炎によってエルファーデ型は燃え尽きて消滅した。
「これはこれで面白いじゃないですか。カナンの聖獣が覚醒の兆しを見せるまでしばし待っていてください。勝手な行動は許しませんよ?」
エイロスは諭すように言う。しかしその瞳の奥には、底知れぬ物があるようにも見えた。
「………あいよ」
イラつきを見せながらグレアは退室する。アクアリエは笑いながらそれを見送ると、エイロスに顔を向ける。
「まぁグレアの気持ちもわからなくはないけどね…なんせ下手したら自分の星もアスヴェルの猿に侵略されかねないから…」
「そうですね…これ以上、人間の好きにさせていれば、争いは消えず、その火種は他の星にまで及ぶ……それは許されないことですから…」
―――――――――
翌朝のこと……
ピピピ、ピピピ
「……ん?もう朝か…」
いつものように目覚まし時計を止めて影人は背伸びをした。影人は気だるそうに立ち上がると、鏡の前に立った。
「……本当に、聖獣になったのかな……」
そして自分の姿を確認するが、背格好に変化は全くなかった。昨日のことは夢じゃないのか、そう思っていた。
「……まぁ気にしてても始まらないか」
考えるのは後にしようと思い、影人はドアノブに手をかける。すると……
『お前か?アスヴェルの聖獣に選ばれたという大神影人は』
「!?誰…なんだ?」
突然、女のような、男のような声が聞こえた。ハッとした影人は辺りを見渡す。しかし、そこにいるのは影人のみで、他には誰もいない。
「あんたは誰だ…なんで、俺のことを?」
『今のお前に知る必要はない。ただ我はお前に問いたいのだ、なぜアスヴェルの聖獣の力を得た?』
「それは…」
答えに戸惑った影人は、ガイアディアと契約をする時に呟いた言葉を思い出す。
《あんたの力を使えばまだ生きられるって言うんだったら、力を貸してくれ!》
「生きたかった…ただそれだけだと思う。あんな絶望的な状況、滅多に無いからな」
『ふん、それだけの理由か…まぁそれもそれで面白いな…だが…』
その声は、興味を示すような声、しかし蔑むように変わり、続ける。
『それだけの理由で、世界の行く末を決める戦いに足を踏み入れることになるとは……お前も縋る神を間違えたな』
「それって…聖獣としての戦い…ってことか?」
その声は『あぁ』と呟き続ける。
『ならこれからのことを聞こう。大神影人、お前はこれからどうしたい?』
「それは……」
影人は言葉に詰まった。何せ“偶然”に、そして“突然”手にした力。それをどう使うか、彼にはそれがわからないのだ。
「いきなり言われたってわからないんだ…突然世界を自由にできるような力を手に入れて…それをどうするかなんて…」
『確かにそうだな…だが大神影人、お前に1つ言っておく。お前は“偶然”聖獣になったかもしれない。しかし、そうなったからにはもう戦うのは“必然”なんだ』
「必然…………どうしても戦わないといけない…のか…」
困惑する影人を他所にその声は続ける。
『ならお前は世界を支配したい…とは考えないのか?』
「それは違う!力があるからって支配をするのは違う!」
支配ということには断固とした様子で拒否する。さらに問答は続く。
『大神影人、お前は聖獣と契約する時に“生きたい”と願ったそうだが…はたしてそれはお前だけか?』
「!?」
影人はハッとした。
生きたいと願うのは自分だけではない。その声の言わんとしていることがわかった時、影人の頭の中に、懐かしく、悲しい声が響いた。
――私ももう少し長く生きて、影人が大人になった姿、見たかったな…でも、もうダメみたい…だから、お母さんたちの分も生きて?――
「母さん………」
気がつくと、影人の目からは、涙が浮かんでいた。
「そうだ…生きたいのは俺だけじゃない…母さんも…影無に殺された人みんなが……そう願っていたんだ…」
生きていたいと願っているのは自分だけではない。影人がそれに気づくと、声はこれまでとは違い優しく影人に問う。
『ならばやることは決まったな?』
「あぁ…」
そして影人はその声がするほうを向き……確固たる決意の表情で答えた。
「俺は…人々を守る……生きたいと願う人々のその願いのために!」
『ほぉ。自分なりの答えを見つけたようだな…なら、そんなお前に一つ言葉を送ろう』
そして一呼吸置いてその声は呟いた。
『QuelI->{EXiV[zep]->{ethes}}』
「へ?ク、クェイルバ……なんだ?」
影人にはその言葉がどこの言葉なのか、そしてどんな意味なのかわからなかった。尋ねても、その声が再び聞こえることは無かった。あの声の正体、そして、その声が最後に言った言葉について、影人は思考を巡らす。
「か〜げと!そろそろ起きなよ!」
しかし、扉の先の京香の呼びかけで、影人は現実へと戻される。
「うん、わかった」
―――――――
「影人、夕べは、よく眠れた?」
この日は休日、影人はバイトへ、京香も何やら用事があるらしく、共に出かけることになった。
「なんとかな……そういう京香は?」
「私?私はぐっすり眠れたよ。だって、影人がこうして無事に帰ってきたから、安心しちゃって」
クスッと笑いながら答える京香に、恥ずかしくなったのか、影人は京香から目を背ける。ふと空を見ると、空に、鳥とも飛行機とも違う何かを見つけた。
それは人の形をした物で、二つのバーニアで空を飛行していた。すると間もなく、
《緊急警報、この周辺で影無出現との予想あり、付近の住民の皆さんは、急ぎ、地下シェルターへ避難してください。繰り返します…》
ブザー音と共に警報が鳴り響く。辺りを見渡すと、人々がざわつき、四方八方に逃げ惑っていた。
――――――――
警報を流したのは、レジスタンスだった。司令室と思わしき場所の巨大なモニターには、赤い点で、影無の出現予想地が表示されていた。
「エリさん、MS部隊も、付近に到着したそうです」
女性のオペレーターの1人が、モニターに向かって立っているエリに、自分のパソコンのモニターを見ながら言う。
「わかりました、通信を繋いでください」
「はい、わかりました」
頷くと、オペレーターはキーボードを操作して、巨大なモニターに映像を映す。映された映像は、コクピットの中であり、そこには赤髪の青年が映っていた。
「コウキさん、どうですか?機体とあなたの調子は」
『はい、アルバも俺も良好です。他のみんなも大丈夫ですよ』
画面の向こうの青年は、笑顔でエリに語りかける。しかし、すぐに表情を変え、真剣な顔で問いかける。
『ところでエリさん、昨日の星見高校の影無は、エリさんたちが倒したのか?』
「いいえ、新しい聖獣です。もしかしたら、今日会えるかも知れませんね」
『ははっ、時を操る聖獣は未来予知もできるのか、心強いな!』
皮肉混じりに言う青年に、エリは笑顔で答える。
「フフ、まぁ当たるかどうかは五分五分ですけどね」
――――――――
「また影無!?あぁ〜、最近ついてないね…私たち」
警報が響く中、京香がうだるように言う。影人はそれに『だな…』頷くと、京香の両肩を掴んだ。
「…京香、先に逃げてて」
京香は、驚き目を見開き、影人の肩をつかみ返す。
「はぁ!?な、何言ってるのよ影人…」
影人は、京香に微笑み返し答える。
「死ぬつもりは無いよ、俺は生きる。そしてみんなもだ…俺が影無を止めてくる」
「そんなの自衛隊の人たちに任せればいいじゃない…なんで影人が行かなくちゃいけないの?それに、影人に本当に影無と戦う力があるの?」
少し涙混じりで尋ねる京香。影人はその問いに静かに頷いた。
「あぁ、京香には言ってなかったけど、昨日助かったのも、それのおかげなんだ…」
「影人……」
京香は静かに、そしてまじまじと影人を見つめる。その瞳は、とても影人を心配していた。それを察したのか、影人の掴む手が強くなる。
「心配症だな…京香は。………わかった、帰るとき好きなデザート買ってくるからさ」
すると京香はポカンとした表情をして、そして俯いて、細々と呟いた。
「……クレープ……天宮駅のとこのクレープ…約束だからね」
「わかった。じゃあ、お願いできるか?京香」
京香は顔を上げ、影人の顔をまじまじと見て、
「嘘ついたら晩御飯抜きだからね!」
と叫んで、近くの地下フィルターへと避難を始めた。
それと時を同じくして、影人の近くに2m近い大きさのロボットが降り立った。
灰色がかった緑の体に、腰にある二つのブースター、角のついた顔。そして右手には折りたたまみ式のスナイパーライフル、左手には巨大なシールド。これが【GSDF-MS P001 アルバ】である。
「おーい、そこの君ー、早く避難しないと危ないよー!あと30秒くらいで影無がくるよ!」
アルバから聞こえたのは快活な女性の声である。さらにその近くに2体のアルバが降り立つ。それぞれ武装は異なり、深い緑色の盾を持ったアルバには、マシンガンを装備していて、もう一体は、両肩に龍のマークがあり、さらに両肩にバズーカを装備しており、手には先程のアルバと同じマシンガン、腰には日本刀を担いでいた。
「死にたいのか?そこの……って来たぞ!」
後に降りてきたうちの一体のアルバが空を見て叫ぶ。すると、雲しかなかった青空に、突然機械の青い竜人が十数体現れる。影無 エレファーデ型である。
「そこの少年君、早く逃げて!」
女性の声のアルバが影人に呼びかけながら影無に向かって、スナイパーライフルを折りたたむと出てくる銃口から銃弾を放つ。
しかし影人は…
「いえ、俺は逃げません。俺も…戦います!」
影人は、強い眼差しで答えた。
「え?」
「おい、どういうことだよあいつ!」
3体のアルバが疑念を抱く。しかし影人は構わず、瞳を閉じ……
(頼む…俺に力を貸してくれ、みんなを守るために…力を貸せ、ガイアディア)
聖獣を呼ぶ文言を叫んだ。
「チェンジ!」
影人が叫ぶと、影人は、“自身の影”に包まれ、黒い球体になる。そしてそれがひび割れると、真っ白の、騎士のような2m超のロボット……いや、生命体が現れた。
聖獣ガイアディアが再びその姿を表した。
―――――
影人の意識と肉体は、そのままニルヴェスタと呼ばれる空間に転送される。しかし、昨日とは違うことがあった。ニルヴェスタに転送された時、無数の文字列が並んでいた。そして、影人の真正面に現れた文字が、勝手に読まれたのだ。
《 ahih=wa-fen-du chena-uia; 》
さらに、影人の脳内には、その言葉をイントロにして、音楽が流れ始める。東洋なメロディーでアップテンポな曲ではあるが、自然と、影人の心は落ち着いていく。
影人は、自然とその意味を理解した。手には武器を持っている感覚がある。その言葉を実行するための力がある。
「あぁ、行こうぜガイアディア…影無を倒して、《世界を正す》ために!」
影人がニルヴェスタの中で叫ぶと、呼応するようにガイアディアの赤い瞳が光った。
―――――――
「おい…あれって…」
「あの少年君が…昨日の影無を倒した聖獣ってことですか?」
先程影人に問いかけたアルバ、そして緑色のシールドのアルバが困惑している。
「かもしれないな…みんな、あの聖獣を援護するぞ!」
両肩にバズーカを装備しているアルバは動ぜず、現れた聖獣の援護をするように残りの2体に伝えた。
「了解!」
2体のアルバも了承し、影無に銃を放つ。
「そこの聖獣君、援護するよ!」
「俺達は遠距離から攻撃する。街を壊さない程度に暴れてこい!」
「ありがとうございます…はい!」
ガイアディアは飛び立ち、空中の影無の殲滅を始めた。
空中から影無たちは自身の掌にある砲門からビームを放つ。建物に被害が出ないように、ガイアディアは剣で切り裂いたり左手の盾で防いだりして、ビームを阻止している。
そして、左手にもつランスに付いている引き金を弾くと、ランスの先に陣が現れ、そこからいくつか光弾が放たれた。素早い弾丸は真っ直ぐに2体の影無の身体を貫き、その身体を消滅させた。
「俺達のコンビネーションを見せるぞ、ユイナ、ショウマ!」
「わかりました、コウキ先輩!行きますよショウマさん!」
「了解!」
一方、アルバたちは地上におりた影無たちを対処していた。両肩にバズーカを持ったアルバが日本刀を取り出し影無に切りかかる。残りの2体のアルバが銃撃で影無の動きを止め、残りの一体が影無の首を目掛けて剣を突き立てる。影無が貫かれた首からは火花が出て、ゆっくりと消滅する。
「そこだ!」
そしてガイアディアは接近して影無を縦一文字に切り裂き次々と倒していく。影無も、掌からビームサーベルを形成し対抗しようとするが、その前に切り裂かれ、何の抵抗もできずに消滅する。
一体ずつじゃ対処できないと知ったのか、残りの数体が、四方からガイアディアに攻め立てる。しかしガイアディアは臆することなく、盾に剣を擦らせる。
すると剣に光が集まり、金色の光を帯びていく。
「いくぜ…【エクリプス・グレイズ】!」
横薙ぎするように剣を振るうと、その軌跡通りに光が走り、それが衝撃波となって影無を切り裂いていく。上下に真っ二つにされた影無はそのまま消滅していった。
「すげぇ…あんなに簡単に倒したのかよ…」
地上の影無を殲滅したアルバたちが空を見上げると、そこには太陽を背に、明るく輝く純白のガイアディアの姿があった。その姿は、“聖獣”の名に相応しく、何物にも負けずに神々しく輝いていた。
―――――
「君は、レジスタンスの1人なのかい?」
両肩にバズーカを持つアルバが、ガイアディアから戻った影人に問う。しかし影人は首を横に振る。
「いや、まだレジスタンスのメンバーになったわけではないんです。聖獣と契約したのも昨日が初めてだし……」
そして、ふと影人が腕時計を見ると、まもなくバイト先に行くための電車が出る時間となるところだった。
「やば!じゃあバイトあるので、俺はこれで失礼します!」
そして影人はドタドタと走っていった。その姿をアルバたちは呆然と見ていた。
「まさかあんな子が聖獣なんてね…」
「でも、悪いやつじゃなさそうだな。それに、あいつ面白そうだな!」
「……かもしれないな」
アルバのパイロットたちは口々にこう呟き、日の登り始めた空へと飛び立っていった。
次回予告
力を手に入れ新たな1歩を踏み出し始めた影人、けれども、彼の生活に変わりはない。彼は、美しき城で今日も輝く少女たちに憩いを与える
次回、美しき城、輝ける少女《シンデレラ》
日常が、影に染まりゆく前に
いかがでしょうか3話。さて、次回はついに346のアイドルたちが登場!ドタバタ(?)な日常をお届けします!
次回もお楽しみに!感想お待ちしてます!そして申し訳ありませんでした、金色の嵐の感想返信は明日から行います!