影人と京香がレジスタンスに加入して数日たったある日の346カフェ。
「ねぇ影人、幽霊見たことある?」
「ん?幽霊?」
影人が受付をしていると、凛に声をかけられた。同じテーブルには、黒髪のストレートで、左側に少し纏めた髪の少女、島村卯月と、茶髪がかったショートヘアの、本田未央も同席していた。
「いや、見たことはないけど…もしかして、次の仕事がそんな感じの?」
「ううん、そうじゃ…ないんだけど…」
「かげっち、あの星見高校の隣の天文台、呪われてるよ!」
「の、呪われてる?」
未央が影人に叫ぶ。影人はキョトンとした様子である。
「えっと…実は…」
すると震えた様子で、卯月が語り出す…
―――――――――
side卯月
えっと…この間、凛ちゃんと未央ちゃんと一緒に、天望市で旅番組のロケをしてたんです。そして、星見高校の隣の天文台での収録が終わると、凛ちゃんがジー…ってどこかを見てたから、声をかけてみたんです。そしたら…
「ねぇ卯月、あそこに人いない?」
そう言いながら凛ちゃんは指を指したんですけど、そこには誰もいなかったんです。何だったんだろうって私たちが首をかしげてると、そこに…ふぅ…っていう感じで、1人の女の子が出てきたんです。
「うわぁ!?し、しまむー、しぶりん、誰か出てきた!しかもなんかふわぁって!?」
「どうしましょう凛ちゃん!!幽霊ですよ、幽霊!」
「お、落ち着いてよ未央、卯月!」
未央ちゃんと私は、びっくりして凛ちゃんにしがみついちゃいました…そんな時…
「あ、あの!シマムラ ウヅキさんに、ホンダ ミオさんに、シブヤ リンさん…ですよね?」
その女の子が私たちに…話しかけて来たんです…
「……え?」
「え?」
――――――――――
「そのあと、体が震えて…気が付いたらスタッフさんたちと一緒に逃げちゃいました…」
「うぅ、あの時のこと思い出しただけで寒気が……でも、なんであの娘は私たちのことを知ってたんだろ?」
「しまむー、しぶりん…もしかしたら私たち幽霊にも名前知られてるのかも!」
「なら結構有名なんですね、みなさん…にしてもあの天文台に幽霊だなんて…」
影人は疑問を持ちながらも、どこか興味を示していた。
――――――――――
「って話を凛たちから聞いたんだけどさ…」
「隣の天文台に…」
「幽霊……」
翌日、早速影人は京香と智樹にこの話をしてみた。
「へぇ、そんな噂は聞いたこともないぜ?」
「私も…てか、私たちの中で情報通の智樹が知らないならそうよね…ね、ねぇ影人…」
すると京香は、不安そうな目で影人を見つめる。対する影人は少しキョトンとした様子であった。
「ま、まさか……行くわけじゃないでしょうね……その幽霊を見に…」
「あぁ…行くよ、だって気になるじゃんか。なぁ?智樹」
「もちろん!こういう心霊現象は面白いからな!しかも凛たちの名前知ってるのも気になるし」
盛り上がっている二人を見て、京香は呆れた様子だった。なぜこんなに心霊現象で盛り上がれるのか…そんな気持ちになっていた。
「わ、私は行かないわよ?そんな幽霊だなんて…取り憑かれても知らないわよ?」
だが、そんな京香の心配を他所に、心霊現象が好きな2人の話は続いていく。
「なぁ、その幽霊ってどんな感じなんだ?ホルターガイストとかか?」
「いや、卯月さんの話によると、女の子の幽霊らしいんだけど…」
“女の子”その言葉を聞いた瞬間、京香の耳が一瞬ピクリと動いた…そして…
「やっぱ私も行くわ」
「「………え?」」
京香は即座に考えを改めた。
「え、でも取り憑かれるとかなんとかは…」
「いいのよそんなことは!」
「でもお前お化け怖いんじゃ」
「いいの!そんなの気にしてる場合じゃないわ!じゃあ、今日の夜行きましょ、ね!」
「「は、はぁ……」」
鬼迫溢れる京香の反論に、影人と智樹は了承するしかなく、さらに京香がリーダーのような感じになっていた。
―――――――――
日が暮れて暗くなりはじめたころ、影人、京香、智樹の3人は天文台の近くにいた。星見高校の生徒は、申請すれば、こうして簡単に入ることができるのだ。
「な、なぁ、本当にいいのか?京香、帰ってもいいんだよ?」
「大丈夫、影人の心配には及ばないわ」
「でもよ京香、お前、女の子の幽霊って聞いた途端行く気になっ」
「!?う、うるさい!!」
「あだっ!?」
智樹に指摘された途端、京香は顔を赤くして智樹を叩く。
「こ、こんなこと気にしてないでさっさと行くわよ!」
「あちょ、待ってよ京香!!」
「いてて…何もはたくことは…っておい二人とも待ってくれって!!」
ずかずかと京香は巨大な望遠鏡のある部屋へと向かっていく。影人と智樹もその後を追う。
「影人、ここなのよね?卯月さんが言ってたのは」
「うん、ここでいいはずだけど…」
影人と京香がキョロキョロと周りを確認しながら歩く。一方智樹は…
「おーい幽霊さーん、出ておいでー」
そんなに大きくない声で幽霊に呼びかけながら歩いていた。それに呆れた様子で影人たちは見る。
「はぁ…そんなので出るわけないだろ智……っ!?」
突然、影人の背中に妙な寒気が走った。
「ん?どうしたんだ影人…って…!?お、おい…か、影人…」
智樹は影人の後ろの方を指差しながら震えている。京香も何やら震えてあわあわしている様子だった。
「ん?後ろ……?」
指摘されて影人が振り向いていると…
「ばあ…」
「うわぁぁ!?」
そこには赤く短い髪の、どこの学校かはわからない制服に身を包んだ影人より少し背の小さい少女がいた。驚いた影人は尻餅をつき少し震える。
「ま、まさか…君が、卯月さん達が見た幽霊……?」
「そうなるかな…まぁ厳密には私は幽霊じゃないんだけどね?そういうあなたは…もしかしてオオガミ カゲト?」
「う、嘘!?影人のことも知ってるの!?」
自分は幽霊ではないと言い張るその少女はまじまじと影人のことを見つめている。京香は目を丸くしてその少女を見て、智樹は本当にいたとは思ってなかったのか何も言わずにいた。
「う、うん…俺、確かに大神影人だけど…」
「あぁ……」
影人は自分だということを言う。すると、その少女の表情はみるみるうちに喜びと感動といった表情に変わる。
「やっと……会えた……」
「へ?」
「……カゲトぉぉ!」
「ちょ、そんなくっつくないで、待って!」
その少女は突然影人に抱きついた。影人はとても顔を赤くし、なんとか離そうとしてる。しかしそれは…
「いいから影人から離れなさい!!」
京香が二人を引き離したため、あっけなく離れた。
「うぅ、キョウカぁ…そんなに強く引き離すことないじゃん…」
「私のことも知ってるのね……ん?てか私…さっきお化けに触った?……ねぇ、あんた何者?」
京香はキョトンとしながら少女のことをじーっと見つめる。少女のほうもキョトンとするが、すぐにハッとする。
「あ!そういえば私、まだ自己紹介してなかったね!そりゃみんなわからないよ……私は日向花奈、ヒナタ カナです。そして、カゲトの影で〜す!」
「「「………はい?」」」
明らかに影人たち三名は花奈と名乗った少女の言葉に困惑している。この幽霊は何を言っているのだろうか、とでも言いたげな表情であるが、気にせず花奈は続ける。
「まぁ簡単に言えば、カゲトに取り付いてる幽霊…って感じかな。だから私はカゲトの守護霊だと思ってくれればいいよ?」
「は、はぁ…」
「じゃあ影人を知ってるのは当たり前として、なんで卯月さんとか京香のことまで知ってるんだ?」
「え?それは、カゲトのここを覗いたから」
智樹の質問に、花奈は影人の頭を指さしながら答える。
「俺の頭?てことは……記憶を?」
「うん、だから昔カゲトとトモキでやってたあんなことも知ってるよ〜?」
「お、おい花奈って言ったよな、やめろ、絶対にここで言うなよ?」
花奈が言おうとしてることを察したのか、影人は止めるようにいうが、逆に京香の興味を誘った。
「ねぇ、それ耳元で教えてくれない?」
興味を持った京香が花奈に耳打ちして訪ね、花奈に耳打ちしてもらいそれを聞くと、京香はクスクスと笑いながら影人を見る。
「ふふ、影人、あんたも…ははは!」
「……花奈ぁ……」
京香は笑いをこらえずに影人を見る。対して影人はジト目で京香と花奈の両方を見つめる。完全に智樹は蚊帳の外だ。
「な、なぁ、影人の守護霊ってことは、これからも影人に憑いてるってことか?」
「うん、だからこれからもよろしくね、カゲト、キョウカ、トモキ!」
「へぇ、よろしくな、花奈」
智樹は頷いているが、京香は何やらただならぬ思いでいた。そんな京香は花奈のほうに歩み寄って肩に手を置く。
「いい?影人は絶対に渡さないわ…」
「ふふん、それはキョウカ次第かもね…」
「へぇ、言うじゃない……」
早速ライバル宣言をした両者は、すでに静かに火花を散らしていた。しかし何かを思い出したのか、花奈は影人の方を向く。
「そうだカゲト、マイソロジーのことについて教えておかなきゃいけないことがあったんだ」
「聖獣のこと?」
「そう…」
花奈はまっすぐに影人の目を見つめる。
「なぁ影人、聖獣ってのは…」
聞きなれない単語に智樹が影人に尋ねるが、
「おいおい話す」
とだけ答えて花奈が話し出すのを待つ。
「カゲト、このままマイソロジーの能力を使い続けたら、カゲトは人間じゃなくなるかもしれない、それだけは頭の片隅にいれて戦って欲しいんだ…」
「え…ど、どういう……お、おい!!」
影人がその言葉の真意を確かめようとしたがその言葉を最後に花奈は消えていった…
「消えちゃった……」
「ちょ、影人、人間じゃなくなるってどういうこと?まさか、この間のあれが…」
京香が影人に歩み寄り、心配そうな声で話す。その京香の脳裏には、以前光の粒子を放出していたガイアディアの姿があった。
「それはわからないけど…人間じゃなくなる…か……」
「おいおい、いきなりすぎて話がわかんねぇよ…影人がそのマイソロジー…とかいうやつで、そいつになると、お前は人間じゃなくなるとかよ…影人、いつかは教えてくれよ?」
「あぁ。とりあえず帰ろっか、もう夜も暗いし…」
智樹の心配に軽く頷き、3人はひとまず解散することとなった…
――――――――――
それは翌日の朝に起きた……
「うぅん……んん…ん?」
影人がいつものように布団で寝ていると、ある異変に気づいた。おかしい、寝返りがうてない。誰かに後ろから抱きしめられてるような、まるで金縛りにでもあったような感覚だ。しかも…
「すぅ…」
聞き覚えのある少女の寝息が耳元で聞こえてくる。意識の覚醒していった影人が、なんとか動いた首を後ろに向ける。すると影人は即座に顔を赤く染める。そう……
「……ん?あぁ…おはよ〜カゲト〜……むにゃ…」
「な、なななな、なんでお前がここで寝てるんだよ花奈!?……てことは一緒に寝た…へ?嘘だろ?……きゅう…」
昨晩消えていったはずの花奈が影人を後ろから抱きしめながら寝ていたのだ。しかも同じ布団で。影人はとても顔を赤くして、ついに失神してしまった。
「影人…おはよ……え?」
さらに運悪く京香が影人の部屋に入ってきてしまう。
「キョウカも起きたんだ、おはよ〜」
「おはようじゃないわよ!?なんであんたが家にいるのよ!?てか、しかも影人失神してるじゃない!?」
「え?だって私、カゲトの影だからいつでもカゲトと一緒だよ?……へ?あぁほんとだ、カゲトまた寝ちゃった…」
「ど、どういうことよそれ……と、とにかく今後は影人との添い寝は基本禁止、影人の記憶覗いてるなら、こういうの弱いのもわかってるでしょ!!」
「……あ、そうだった!!」
花奈は何かを思い出したのか目を丸くして驚く。どうやら影人はこの手のものに弱いらしい。
「ご、ごめんカゲト、悪気はないんだよ……」
「絶対に何かありそうね…とにかく、影人の影なら影人が失神しないようにすることよ!」
「う、うん、わかってるよ…」
影人の知らぬ場所で、女の戦いは少しずつ激化しているようだ……
花奈「うぅ、そうだった…カゲトこういうの抵抗あるんだっけ…確か水着姿の女の子見ただけでも鼻血だしちゃうっていうし……なんていうんだっけ、初心?
あ、それよりも、次回SDガンダムバインド聖獣神話『芽吹く緑王』新たな神話のページを開け!」
さて、次回はまた新たな聖獣が登場!影人の恋の行方と一緒にお楽しみに!!