花奈がやってきたその日の倉敷家の朝の食卓は、何やら不穏な空気が流れていた。
「どうしたの京香、そんなむつけた顔して…」
京香の母の結衣は、朝食を並べながら、むすっとした顔で座っている京香に疑問をいだいた。
「うぅ……お母さん聞いてよぉ〜影人が女の子の守護霊に憑かれてて、しかも一緒にその幽霊が添い寝しようとしてたのよ?てかしてたんだけど…」
「ふふ、幻覚見たんじゃないの?にしても、京香がヤキモチ妬くなんてね…」
「………へ?……あ……」
京香は顔を赤くしてそれ以上の言葉を喋れなくなった。
「ふふ、それだけ思われてるなんて、影人君もすごい子ね……あら、噂をすればその想い人が起きたわよ?おはよう、影人君」
「おはようございます、結衣さん」
結衣は起きて一階のリビングにきた影人に軽く挨拶をする。
「影人、花奈はどこいったの?」
「あぁ花奈?あいつはまたどっかに消えてったよ……」
「へぇ、その幽霊の娘花奈ちゃんって言うんだ…ねぇ影人君、今度紹介して?その花奈ちゃんっていう娘」
「あ、わかりました…」
影人が頷くさなか、結衣は朝食をテーブルの上に並べる。すごく健康的な野菜を中心にしたメニューである。
「さて、まずは朝食にしましょうか…いただきます」
――――――――――――
その後影人と京香はいつものように通学路を歩いていた。夕べの話や何気ないTVの話で盛り上がる。京香にも影人にとっても、何気ない、いつもの通学……になるはずだった…
「カぁゲぇト!」
「わぁうあう!?花奈、なんで!?」
ただしそんなものは突然現れた花奈が影人にハグしたことによってあっけなく終了した。ちなみに幽霊なのか、足を浮遊させている。影人は顔を赤くして今にも失神しそうな気配のなか問いただすと…
「もう…そんな声上げなくても…私はカゲトの影なんだから、いつでも影人の近くにいるよ?」
その言葉に京香の眉がピクリと動いた。そして…
「あんたねぇ…それで朝影人失神させたんでしょうが!」
「でもこのくらいのスキンシップはいいじゃん、言ってみれば私はカゲト自信なんだからさ…」
「だからってやっていいこととダメなことあるでしょ!」
女の言い争いが影人の目の前で始まってしまった…彼女たちはぐぬぬとお互いににらみ合うようにしている。
「あ、あの…二人共、そろそろ落ち着いて…」
「影人は黙ってて!」
「カゲトは黙ってて!」
「は、はい…」
中断させようとしたが、2人の鬼迫に押され、何も言えずにそのまま学校へと向かっていった……
―――――――――
「おはよ……って影人、なんだか朝っぱらから疲れてないか?」
学校につくなり、なにやらげんなりした表情の影人を智樹が心配する。
「あぁ…どうやら失神と戦う毎日が始まるみたいだ…」
「あはは、まさかあの京香がか?」
「違うわよ、昨日の幽霊少女…本当に影人に取り付いてるみたいよ…」
「え……まじで?」
京香の言葉を聞くと、少し顔を青ざめて影人の方を見る。
「あぁ、まじで…今朝は添い寝されたし、学校に行く時抱きつかれたし…」
「あ、あはは…難儀だなお前も…」
「同情するなら変わってくれ……」
苦笑いする智樹に対し、呆れた様子の影人である。
「ところで、昨日あの娘が言っていた人じゃなくなるってのは解決したのか?」
ふと思い出したように智樹が尋ねる。だが影人も京香も俯いて何も言わない…智樹はそれで大体の事を察した。
「まだ解決してないんだな…まぁ追々解決するか……
それより影人、英語の予習見せてくれねぇか?今日俺からだしよ…」
「断る」
「こっちは即答かよ!?」
話を変えた途端即座に却下する影人に、落胆する智樹であった。
―――――――――
それから何事もなく一日は過ぎていき放課後。椅子から立ち上がり帰ろうとする影人たちだったが、何やら外が騒がしいことに気づいた。何やらそれは校門付近らしく、窓を開けて声を聞くと……
「かっこいい〜!」
「い、イケメンだ…イケメンがいるわよ!!」
「星見の近くにこんなイケメンいたなんて…」
どうやら声の正体は大体が女性のようだ。
「へぇ、昇降口にイケメンいるんだ…TVのロケかな?」
「……でも、こないだ凛たちが天文台でロケしたばっかりよ?それに、芸能人だとしてわざわざ校門の近くでなんかする?」
「確かに…じゃあなんで…?」
疑問に思う影人たちだが、とりあえず帰宅のために校門に向かう。
そして実際に向かってみると、女子生徒たちから質問攻めにあってる男性を一人発見した。その男性は、黒いストレートの髪で、どこか紳士然とした風貌のスーツを着ていた。
「あ、影人君に京香ちゃん!2人もこの人とお話してみたら?結構かっこいいし優しいよ、この人!」
男性に話しかけていた、影人たちと知り合いらしき女子生徒が影人たちを見つけ話しかける。すると、男性も彼らに気づいたのか、影人たちの元へ歩み寄り頭を下げる。
「こうして会うのは初めてですね、大神影人さん、倉敷京香さん」
自分たちのことを知っているのに疑問を抱きながらも、影人たちも一応挨拶をする。
「さて、僕はこの2人に用事があるので、お嬢様方、気をつけてお帰りください」
「は、はい!」
周りにいた女生徒達は男性の言葉に素直に従い、それぞれに帰宅の途についたのだった。それを確認すると、
「さ、では基地のほうに向かいましょうか」
男性がこう言うと、一瞬にして、学校から、レジスタンスの基地へとたどり着いた。
「え?…えぇ!?またいきなりここに!?」
「もう慣れたよこれ……」
驚く京香に対し慣れきった表情の影人であった。基地につくと、早速男性は自己紹介を始める。
「僕は影無対策室聖獣チームのリーダーを務める、木崎 大地(きざき だいち)と申します。以後お見知りおきを」
「よろしくお願いします…」
「てか、リーダーってあのエリって人じゃなかったんですね…」
「あぁ、あの人、ちょっと抜けてるとこあるので、リーダーには不向きだって多数決になって……」
京香が呟いたことに大地と名乗った男性がさりげなく答えると……
「うぅ〜わかってますよ〜、私はせいぜい副リーダーですよ〜……あ、影人さんに京香さん、ごめんなさい学校終わってすぐに呼び出してしまって…」
近くの机に突っ伏しながらぼやいているエリがいた。
「エリさん、そろそろ転送の準備とかしてくれませんかね?影無出現まで後20分ですよ?」
「え、そんなのわかるんですか!?」
エリと大地の会話に割り込むように影人が叫ぶ。大地がエリの方をチラッと見て、話すように促す。するとエリは立ち上がり自慢気に話し始める。
「ふふ、これも時と空間を操る私の聖獣のクロスディアがなせる技です。なんと未来予知もできるんですよ?
そして、その中の起こる確率が高い未来によると、今からおおよそ二十分後に、中部地方のほうで影無がでるとの予言だったので、影人さんたちを呼んだんです。今回は大地さんと一緒に出撃してほしいので」
「てことは大地さんも……」
「はい、僕も聖獣ですので、一緒に頑張りましょう、影人さん」
エリの言葉に影人は大地の方を向く。大地はにっこりと笑顔を浮かべていた。
「は、はい!よろしくお願いします!」
「すでにアルバ隊が待機していると思いますので、早速合流してきてください」
「了解…では行きましょう、影人さん」
「え!?い、いきなりですね……」
困惑していると、影人の元に京香がやってきて、影人の手を握る。
「影人、私にはあんまりサポートとかできないけど、ここから見守ってるから…頑張ってきてね、影人」
「京香……うん、わかった」
その一言で力になったのか、影人はまっすぐな目で答え、そのまま大地についていった。
――――――――――
たどり着いたのは、まるで発進ゲートのような場所であった。
「もしかして大地さん、ここから発進……ですか?」
「はい。ではエリさん、お願いします」
大地がそう言うと、影人たちの視線の先に巨大な紫の空間が現れる。クロスディアの能力で作ったものだろう。
「影人さん、せっかくなので、発進するのも覚えといてください」
大地はまっすぐその方を見る。そして…
「チェンジ」
大地がそうつぶやくと、影が大地を包み…
《チェンジ、ゼースディア》
電子音声のような声で言葉が聞こえると、神はその姿を表した。
黄色く蠢く目のある緑色の体、両肩と腰から3本ずつ伸びる巨大な植物の弦のような尾。そして手には巨大な斧を持っている。
木星【フォネク】の聖獣、ゼースディアである。
「影人さんも聖獣になって付いてきてください」
すると、ゼースディアはまっすぐにその空間へと向かっていった。
「え?は、はい!……チェンジ!」
《チェンジ、ガイアディア》
影人もその言葉の通りに聖獣になり、その空間へと向かう。
その空間をしばらくくぐると、すこし薄暗い森へとたどり着いた。周りはとても静かで、まるで嵐の前の静寂のようであった。
「さて、時間もいい頃ですね…そろそろ影無が来てもいいころです……ん?どうやらアルバ隊も来たみたいですね」
ゼースディアの下に3体のアルバがやってくる。
『まじかよ、今日の任務は大地さんも一緒か……荒れるなこりゃ』
『あ、ちょっと前の少年君もいる!おーい、よろしくね!』
ニルヴェスタの中にモニターが現れ、2人の顔が浮かぶ。1人は赤い天然パーマの髪の男性。もう一人は、ベージュ色の長い髪で、少々おっとりとした雰囲気の女性であった。すると赤髪の男性が影人に話しかける。
『俺は高峰コウキ、でもってこっちのが…』
『ユウナ=ファルシアだよ!あと、ショウマって人もいるんだよ!』
コウキの紹介を遮るように、ユウナがハイテンションで話す。
「大神影人です。この間はありがとうございました」
『うんうん!少年君じゃなくて影人君だね!よろしく!……おっと?もっと話したかったけど、どうやらターゲットが来たみたいだよ〜?』
ユウナの言葉に一同は警戒する。そんな中突然影無たちが出現する。しかし、どこか普段とは違った。影人も見慣れている青い影無《エルファーデ型》の他に、緑色の、重装甲な影無がそこにいたのだ。
「なんだかわかんないのがいるけど…とにかく倒します!」
『あ、おい!!ちっ……ユウナ、影人を援護しろ!』
『あいあいさ〜!』
ガイアディアはまっさきにその緑色の影無に向かい切り裂くが、カン!という甲高い金属音が鳴るだけで、その影無にはまるで効いてないようだ。その間にユウナのアルバは、スナイパーライフルを構え、撃つタイミングを伺う。
「くっ……なら、ルミナビット!!!」
ガイアディアは早速能力を発動させ、光の粒子を展開しそれを影無めがけて放つ。エルファーデ型の影無は何事もなくその粒子に貫かれて消滅するが、緑色の影無は腕を真正面でクロスして防ぎきっている。
「な!?どうすれば……ってわぁ!!」
自身のいわば奥の手である光の粒子も効かず、どうしようか悩んでいるうちに、思考がそっちに集中し、緑色の影無のパンチを避けきれずに真正面から受け、木々の中に落ちていく。
『こういうのは関節部を狙うんだよ〜って、聞いてないと思うけど〜!』
ユウナのアルバは、スナイパーライフルで、正確に影無の関節部を狙い射撃する。その銃弾はまっすぐに左肘に当たり、体制を崩す。アルバは構わず関節部を集中的に狙い撃つ。
『あとは大地さんお願いしま〜す!』
「了解…じゃあ始めますかね……殺戮ってやつをよぉ!!」
アルバからバトンタッチされると、突然ゼースディアのテンションが変わった。ゼースディアは、両肩から伸びる弦で緑色の影無を縛り、木々の中へとたたき落とし、自身もその後を飛行しながら追いかける。
「うぅ……っ、あの影無!」
近づいて来たのに気付きガイアディアも起き上がり、ゼースディアと並走する。
「大地さん、俺もあいつを!」
「あぁ、構わねぇが、俺の邪魔はすんじゃねぇぞ」
「へ?は…はい!」
口調が変わったことに戸惑いながらもガイアディアは左手に持つ槍から放つ光弾で影無を牽制する。そんななか、ゼースディアは斧を振るう。その斧の先端が光ると、周りの木々の枝がどんどん伸びていき、影無を拘束する。
「おら影人!てめぇの自慢の力でぶっ潰せぇ!!腰狙えよ!」
「はい!エクリプス……グライド!」
拘束された影無に向かって剣に光を纏わせたガイアディアが、すれ違いざまに影無の腰を切り裂く。
「こいつももらっときなぁ!!」
さらにその後からゼースディアの斧で叩くように斬り、完全に影無を消滅させる。
「影人、こっからは俺に任せときな……おいアルバ隊!てめぇらこっちに影無を引き寄せろ!」
怒号のような声で指令を出すゼースディア…大地を見て、影人は、彼がリーダーである理由がなんとなくわかったようであった。
『もうあれ完全に本気ですよ…やりましょう、コウキ隊長、ユウナさん!』
『あれには素直に従ったほうがいいからな……』
『あ〜あぁ……シューティングタイムもおしまいか…ま、“ゼドプラント”植え付けられてやられるよりましだしいっか!』
それぞれに了承して、アルバたちが射撃で牽制しながら影無を森の中に誘導すると、自分たちはゼースディアと影無から離れるように飛行する。
「あれ?援護しないんですか?」
ガイアディアがアルバのパイロットたちに尋ねると、そのうち1機のアルバに捕まれ、ゼースディアから離れる。
『これはもう大地さんの独壇場だ。俺達が援護したら逆に迷惑だ、だから離れた方いいぞ、影人』
「え?は、はい……」
その言葉に大人しくガイアディアも離れる。
そしてここからゼースディアの一方的な蹂躙が始まったのだ…
「おらおら、この森に来たことを後悔させてやらぁ!」
挑発されたと思ったのか、緑色の影無を含めた影無群は、ゼースディアに向けて掌のバルカンを撃つ。ゼースディアは、両肩の蔦を周辺の木に巻き付け、立体的な軌道で動いて回避しながら、バルカンを撃つ影無に向けて、斧の先端を突き刺す。すると、緑色の光る物質が、その先端から影無の体内に向けて放たれた。
「あの、大地さんの聖獣からでてるあれはなんですか?」
『あれ?あれはね〜、ゼドプラントっていってゼースディアの持つ植物だよ』
影無が逃げないように遠くから射撃で追い詰めながらガイアディアは通信で尋ねると、ユウナが素っ頓狂な態度で答えている。
『まぁ見てなって、恐ろしいこと起きるから…』
その後も立て続けにゼースディアはゼドプラントと呼ばれる物を影無に植え付け、
「ラストぉ!」
ようやく最後の一体にゼドプラントを植え付けた。するとゼースディアは地面に斧の先端を突き立てる。そして
「gou ih-rey-i gee-gu-ju-du zwee-i;」
ニルヴェスタの中で大地が詠唱すると、彼の目の前に、文字化して表示される。斧の先端が光だし、さらに影無たちに植え付けられたゼドプラントも光り始めた。
すると…影無たちが、たちまち空中で磔にされたように大の字のように両手両足を広げながら動きを停止させる。そこから、さらに影無の内部から枝が現れ、影無の体を貫き、“植物”が成長しているのであった。そして、その枝がさらに伸びていき、そして蕾を出現させ、花となって咲き開く。そのころには、影無は抵抗する力を失っていた。
そして花の先から黄色い光のようなものが、ゼースディアの斧【ケラノウス】に集まっていき、緑色のオーラを纏わせる。
「いくぜ……デバスティング…グロウ!!」
そのまま、オーラを纏わせたケラノウスでゼドプラントの一部と化した影無たちを、その植物ごと切り裂いていく。その威力は、装甲の厚い緑色の影無すら、紙のようにあっさりと切り裂いた。爆発するように消滅した影無。その時に散っていく花びらがゼースディアを彩り、月夜と共にその禍々しさを強調させた。
「あんなことできるんですね……聖獣って……」
『影人君のガイアディアもなかなかなことできるじゃん。』
『お前もこんなことできるんじゃないのか?影人』
驚きそれ以上の言葉がでない影人に、通信でユウナとコウキが突っ込む。
「ど、どうでしょうかね…あはは…」
彼らの突っ込みには苦笑いで答え、遠くからゼースディアの姿を見ながら、ガイアディアは剣を握りしめていた。
(俺もあんな風に…か……本当に、とんでもない力を手にしたんだな、俺は……)
そんなことを自分に痛感させたゼースディアを、ガイアディアは帰還命令がでるまで、まじまじと見つめていた…
エリ「うぅ〜最近忙しすぎますよ〜、おかげで撮りだめしてる特撮とか深夜アニメも見れてないし…しかもSNSでネタバレくらうわで散々ですよ……へ?クロスディアの力で時間止めてその間に撮ったの見ればいいだろ……?それですよそれ!あぁ、なんで今まで思いつかなかったのか……
次回、SDガンダムバインド聖獣神話、第八話『祈る者、壊すモノ』新たな神話のページを開け」
いかがでしょうか?ゼースディアの能力がそこそこ驚異に描けてたら幸いです。さて次回も新たな聖獣が登場!さらに新たな組織も登場……?お楽しみに!